公開日 2015/07/22
前回は現在の激変する経営環境でビジネスを成功させるために、個人の自律的なキャリア形成が要請されていることについて述べた。では、働く人はどうやって自律的なキャリア形成を行なっていけばいいのか? NPO法人キャリア権推進ネットワークで行った3氏へのトップインタビューから検証したい。
キヤノン電子の酒巻社長は「ある程度環境の変化に対して汎用性のあるスキルとキャリアを自分で守り、常に磨き続けるという意識が必要である」とおっしゃっていた。またUAゼンセンの逢見会長は「継続的な職業人生を築いていくために能力を最大限に発揮すること、そして高める努力をすること」とした。元富士電機会長で現独立法人国立公文書館の加藤丈夫館長は「雇用され得る能力を持ち、発揮し続ける覚悟と仕事を通じた専門能力を高めること」という。共通するのは、仕事を成功に導くために「能力」を発揮することと、目的を持って「能力」を高めることだといえるだろう。
そのために何をすればいいのだろうか? 加藤館長は「元電通の藤岡和賀夫さんが提唱された『オフィスプレイヤーへの道』が参考になります。ビジネスパーソンの成長過程を『スレイブ(slave)→ワーカー(worker)→プレイヤー(player)』という3段階に分けています。『スレイブ』とは、仕事の基礎をゼロから学ぶ下積み期間のことです。その後、徐々に専門能力を高め、ある程度自分の裁量で仕事を進める『ワーカー』へと成長します。ワーカー期に専門能力を高め続けることができた人のみが成長の最終フェーズである『プレイヤー』へと成長します。プレイヤーはすべて自分の裁量で仕事をするプロフェッショナルのことです」と、段階をきちんと踏まえて仕事に熟達していくこと、特に『スレイブ』での下積み期間の重要性を説いた。
また酒巻社長は「1つは自分のいる業界に精通し、第一人者になること。もう1つは少し離れた業界の人脈を持つということ。1つ目は多くの人が意識しますが、少し離れた業界との人脈を持つという点は疎かにしがちです。業界の枠組みやプロジェクトの在り様は常に今の形のままであり続けるわけではありません。隣接する業界と人脈を作っておくことが将来の助けになることもよくあります。自分の持っているスキルが社外に出ても通用するものかどうかを冷静に問うという意味でも、社外の人脈と触れながら自身のキャリアを棚卸ししてみることをお勧めします」と、仕事で突出した成果を出すこと、そのために社外人脈を作る重要性を説いている。
加藤館長も社外人脈との対話によるリフレクションは学びにつながると奨励している。「専門外の優れた人と対話をすることで、できる限り多くの時間を専門外の人と付き合うことに費やすことです。専門外の人と付き合うことで自分自身の専門の限界や陳腐さが嫌というほどよく分かります。そこで得た様々な学びが次への励みになります」。キャリア権につながる自律的キャリアをどう形成していけば良いのか、非常に示唆に富むお話しをいただけた。
※本記事は、2014年7月~12月まで労働新聞(http://www.rodo.co.jp/)にて連載されていた「キャリア権の時代」(全24回)の2014/11/3号の転載です。
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