公開日 2015/06/18
前回は、現在のような激変する経営環境において経営は、創造型人材を見極め、活用することが重要だと述べた。商品ライフサイクル短命化する昨今、イノベーションを起こす創造型人材がきちんと機能するよう、経営者自身も人材マネジメントに関わっていく必要がある。前回紹介したキヤノン電子の酒巻社長がおっしゃっていたが、創造型人材は技術や事業に先見性があるため、将来につながらないような日常業務を疎かにする傾向がある。そのため立上げ後に実を刈り取る、日々のオペレーション実務を忠実にこなす人材なしに事業は成立しない。
実際、組織において創造型人材は5%程度で、大半はオペレーション人材から成り立っている。ただし、上司の指示だけをこなすオペレーション人材も少なくない。これまでの長い学生時代に、座学中心の教育を受けているため、学ぶことに受動的なスタンスが身に付いてしまった結果だ。発生した問題・課題に受動的では、昨今の激変する経営環境への対応は難しいと酒巻社長はおっしゃっている。
そういった受動的なオペレーション人材に対して、どう教育すれば良いかお話を伺った。「実務において、問題を解決する能力以上に問題そのものを発見する能力が求められます。そのため、座学以上に実学を重視して、能動的なスタンスを身に付けさせることを意識しています。実学において特に重要視することは、『あらゆることを自分でやる習慣』を身に付けさせることです」。
能動的に問題を発見し解決していくために、自分の頭で考え行動する習慣を身に付け、能力を養い発揮することで、成果を出していけるようになる。酒巻社長が行なっているのはすなわち、職業を通じて成長し、より幸せになるための基盤作りである。これはまさにキャリア権の概念に通じるものである。激変する経営環境においてビジネスを成功させるために、経営はキャリア権を要請されているともいえる。よって、キャリア権という概念を普及・浸透することの意義は高いと酒巻社長はおっしゃっている。
そのためにも上記に加え、社会全体の方向性と働く人の心掛け・行動についても語っている。「キャリアの主体が個人であることは言うまでもないことですが、キャリア『権』と言えば、個人のキャリアを保障・認定する第三者の存在が必要です。誰かの証明が伴わなければ、いくら声高に主張しても認められることは難しいでしょう。日本でキャリア権が普及するためには、そのインフラとして『誰かが誰かのキャリアを認めてあげる風土』が必要だと考えます。そこで重要な役割を担うのが、とりわけ社外人脈です。これからの時代、いかに社外の人脈を持てるかが大きな差別化要因となります」。
企業の中で大勢を占めるオペレーション人材が能動的なスタンスを身に付けて問題発見・解決することができるようになることは、ビジネスが成功するために不可欠である。そのためにも、キャリア権の普及・浸透は重要といえよう。
※本記事は、2014年7月~12月まで労働新聞(http://www.rodo.co.jp/)にて連載されていた「キャリア権の時代」(全24回)の2014/10/27号の転載です。
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