仕事を作れる社員に ~入社3年間でスキル強化~

公開日 2015/08/28

個人へ機会提供を

前回はキャリア権につながる自律的キャリアを働く個人がどう形成すべきか述べた。今回はキャリア権獲得のための企業支援の在り方について述べたい。

私が行った調査によると、高い専門性を有し、かつ高い会社貢献をしている社員は「顧客や目的志向の行動」「変化対応行動」「社外交流活動」といったキャリア開発行動を取っていることが分かった。またそういった社員は会社からのキャリア支援に対して「情報共有がなされ助け合う風土のある職場」「上司からの支援」「自主裁量が認められる」「仕事上の高い要求」を強く感じ取っていることも分かった。

UAゼンセンの逢見会長は企業に求められる支援として3つ挙げる。第1にキャリア形成に意欲的な個人への機会提供、第2にワークライフバランスの推進、第3に社外で学ぶ社員へのサポートの充実だ。1点目については、高い専門性を持ち、会社への貢献度も高い社員は、キャリア形成に意欲的で行動する傾向があるため、そういった社員が希望したらチャレンジングな仕事の機会を積極的に与えることは重要ということである。

企業競争力の源に

家族-300x225.jpg第2のワークライフバランスの推進は、米国やEUでの積極的な推進状況を見れば一目瞭然だ。同エリアでは、雇用者の働き方や時間管理の自由を広げることが生産性の向上(高い会社貢献)につながり、学習機会の時間も取れることからワークライフバランスが広がった。このことからもワークライフバランス推進の必要性は言うまでもないだろう。

第3は、問題意識を持ち、スキル向上のために自費で学ぶ社員をサポートすべきというもの。だが、UAゼンセンの調査によると、社会人大学院に通う社員に対して、サポートしていないばかりか「隠れキリシタン」のように肩身の狭い思いをさせている企業が多い。キャリア開発行動を促すためのインフラづくりが必要だろう。

キヤノン電子の酒巻社長はキャリア支援について、こうも語っている。
「最初の3年間に徹底的にポータブルスキル習得のトレーニングを施します。数学や実験の仕方など業務に関連する知識から一人の人間としての心構えまで、自分の知り得る限りを教え込むのです。そのため、座学以上に実学を重視し、能動的なスタンスを習得させるよう意識しています。実学で重視することは、『あらゆることを自分でやる習慣』を身に付けさせることです」。

まさしく、「情報共有がなされ助け合う風土のある職場」で、「上司からの支援」と「仕事上の高い要求」が行われている。また能動的なスタンス、自分でやる習慣化は「自主裁量が認められる」上で必要だ。自分の頭で考え行動できなければ、昨今の高度化する仕事に対応できない。高度化する仕事をつくれる、遂行できる社員を多く生み出すことは企業における競争力優位の源泉となる。だからこそ企業は、働く人のキャリア支援を本気でやっていかなければならない。

※本記事は、2014年7月~12月まで労働新聞(http://www.rodo.co.jp/)にて連載されていた「キャリア権の時代」(全24回)の2014/11/10号の転載です。


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