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HOMEコラム 「動かない部下」はなぜできる?マイクロマネジメントの科学

執筆者:上席主任研究員 小林 祐児

中間管理職コラム②メイン画像

上司にとって、部下というのは常に悩みのタネだ。中でも最近よく耳にするのは、「部下が積極的に動いてくれない」「自分で考えようとせず、正解を与えられるのを待っている」といった部下の消極性を嘆く声だ。これらの悩みは、プレイングマネジャー化が進み、働き方改革やコンプライアンス遵守、ハラスメント防止などさまざまな課題が次から次へと降ってくる今の職場において深刻化しつつある。こうした事態を重く見て、「活性化」「自律化」を組織全体の課題として対策を練る企業も多い。

居酒屋談義ならば「今どきの若者は我々の頃とは違うね......」といった安易な世代論で片づけて終わりだが、それはあまりに短絡的だ。日々の職場コミュニケーションにおいて、「動かない部下」を生み出す何らかの理由があると考えるのが筋だろう。勘と経験に頼った安易なステレオタイプを頼る前に、もう少し科学的な視点からこの問題を探るべく、我々は上司と部下の関係について、2,000人の中間管理職への定量データを収集し、分析を実施した。

  1. 上司の負担感に大きな影響を与える部下マネジメントの苦労
  2. 上司のマネジメント次第で変わる部下行動
  3. 意外と多いマイクロマネジメント型の上司
  4. まとめ

上司の負担感に大きな影響を与える部下マネジメントの苦労

上司(中間管理職)が職場で果たす役割は部下マネジメント以外にも多く存在するが、やはり上司の負担感は、部下マネジメントの苦労の度合いに大きく紐付いている。なかでも、「世代の違う部下との意思疎通の難しさ」や「部下のメンタルヘルス問題」などが大きく負荷増大に影響している。また、下のグラフに示したように、管理職の負担感は、部下の人数、そして管理職の役割の数に比例するように多くなっていく。

図1.部下人数と管理職負担・管理職1人あたり役割数
図1.部下人数と管理職負担・管理職1人あたり役割数_SP用図1.部下人数と管理職負担・管理職1人あたり役割数_PC用

さて、「部下が動いてくれない」という今回の話にフォーカスを絞ろう。部下が上司の下でどのように働くかについては、学術的にはフォロワーシップ研究として研究されてきたが、今回の分析では先行研究にならい、部下の意識・行動(フォロワーシップ)を「配慮的」「批判的」「積極的」の3つに分類した。
※西之坊穂. "日本の組織におけるフォロワーシップ: フォロワーシップの内容と成果の検討." 大阪府立大学 博士論文 201 (2015).を参照

「配慮的」行動とは、「些細なことも報告する」「会議同席を依頼してくる」など、上司への目配せやご機嫌伺いのような行動だ。やたらメールのCCに上司を入れたり、根回し・社内調整ばかりする部下像を想像すれば分かりやすいだろう。

「批判的」行動とは、上司に構わず自分の提案を通そうとしたり、上司の行為を直接批判したりする部下行動だ。動いてくれないどころか、反抗的で言うことを聞いてくれない部下の行動である。

「積極的」行動は、自分の能力を積極的に発揮し、求められた以上の仕事を進んで行うなど、能動的に働こうとする行動だ。いわゆる「動いてくれる部下」の行動だと思ってよいだろう。

この分類を行った上で、(1)管理職自身のマネジメント行動がどのような部下の行動を引き出し、(2)そうした部下行動が管理職負担をどの程度増やす、あるいは減らすのかについての分析を行った。図示すると下図のようになる。

図2.「マネジメント行動→部下行動→管理職の負担感」の影響分析の構図
図2.管理職のマネジメント行動による部下の行動への影響_SP用図2.管理職のマネジメント行動による部下の行動への影響_PC用

そして、これら3つの行動が部下に現れたとき、管理職の負担感にそれぞれどのような影響を与えるのかを見たのが下図である。ちなみに、年齢や性別、業種や職種といった基本的な属性については、すべて影響を取り除くようにコントロールしてある。

図3.管理職の負担感に影響を与える部下行動
図3.部下のフォロワーシップと管理職負担感_SP用図3.部下のフォロワーシップと管理職負担感_PC用

この分析結果からは、部下の「配慮的」行動と「批判的」行動が、上司の負担感を増大させていることが明らかになった。「動かない」部下も、「言うことを聞かない」部下も、ともに負担感を上げているという、納得の結果だ。

一方、唯一負担感を下げているのが、部下の「積極的」行動である。「1を指示すれば10やってくれる」といえば大げさだが、やはり指示待ちではなく、能動的に動いてくれる部下の行動があれば、管理職の負担は減り楽になっている。

上司のマネジメント次第で変わる部下行動

では、上司がどのようなマネジメント行動をとれば、そうした部下の積極的行動を引き出すことができるかということだ。そこで、部下と同様に上司のマネジメント行動も3つに類型化した。

(1)部下を信頼し、仕事ぶりを認めていく〈信頼・承認〉のマネジメント行動
(2)新しい仕事のやり方を教えたり、その場で解決の方法を都度示していくような〈柔軟・臨機応変〉なマネジメント行動
(3)仕事の量や規則、計画のことを厳しく部下に指示していく、〈厳格・厳密〉なマネジメント行動

の3つである。部下の行動まで詳細に管理するマネジメントは、「マイクロマネジメント」とも言い換えられる。

それぞれが前出の部下行動にどのような影響を与えているかを分析した結果が下図である。

図4.マネジメント行動別に見た部下行動に与える影響
図4.上司のマネジメント行動と部下行動_SP用図4.上司のマネジメント行動と部下行動_PC用

結果、部下の積極的行動を最も引き出していたのは〈信頼・承認〉のマネジメント行動であった。上司が部下を信頼し能力を認め、きちんと話を聞いて適切に評価すると、部下は上司のために積極的に頑張ろうとするようだ。

一方で〈柔軟・臨機応変〉マネジメント行動は、部下の配慮的行動を軽減させている。「いちいち報告しなくても、この上司は新しい状況に対してもフレキシブルに対応してくれるだろう」と部下が考えるようになるからだろう。やや影響度は低いが、積極的行動も引き出している。

〈厳格・厳密〉なマネジメント行動については、興味深い結果となった。仕事量や規則について厳しく管理するようなマイクロマネジメントを行うと、「積極的」行動もやや上昇している。だが、それ以上に部下の「配慮的」な行動と「批判的」行動が上昇していた。つまり、マイクロマネジメントで強制的に行動管理をすると、部下はある程度は動くようになるが、それと同時にやたら根回しや調整を多くし、裏で文句を言うような批判的な態度を見せるようになるということだ。

まとめれば、〈信頼・承認〉と〈柔軟・臨機応変〉といったマネジメントは管理職自身の負担感を軽減させ、厳密なマイクロマネジメントは管理職の負担感を増大させると考えられる。子供を叱りつけるとしぶしぶ言うことを聞くように、マイクロマネジメントは、部下がある程度は動くようになるが、それでは能動的に「動いてくれる」部下は育たないということだ。

行動だけではなく、「人」を単位にしてみよう。上司のマネジメント・タイプをクラスター分析で類型化し、「信頼・柔軟型」と「マイクロマネジメント型」の2つのタイプを比較してみた。前者は〈信頼・承認〉〈柔軟・臨機応変〉が高く、後者は〈厳格・厳密〉なマネジメント行動が多いタイプだ。(下図参照)

比較の結果、「信頼・柔軟型」のほうが役割数は多く抱えているにも関わらず負担感が高くなく、また「信頼・柔軟型」の上司のほうが部下の離職率が低く、パフォーマンスが高かった。

図5.2タイプの比較
図5.2タイプの比較_SP用
図5.2タイプの比較_PC用

図6.2つのマネジメントタイプ別に見た負担感やパフォーマンスの状況
図6.管理職の役割数による負担感と部下の離職・パフォーマンスへの影響_PC用図6.管理職の役割数による負担感と部下の離職・パフォーマンスへの影響_SP用

意外と多いマイクロマネジメント型の上司

ところが、調査対象の中間管理職全体のなかの割合をみれば、「信頼・柔軟型」は14.9%に過ぎず、あまりオススメできない「マイクロマネジメント型」のほうが41.2%とはるかに多い(残りは両方低い・両方高いなどのタイプ)。どうやら、世の中の上司は、マイクロマネジメント型のほうが割合として多いということだ。なぜだろうか。

その問いを解くためにさらにデータ分析を進めると、マイクロマネジメントを推進する要因として3つのことが明らかになった。

1つは、働き方改革が進んでいることだ。自社で「働き方改革が進んでいる」と答えた上司の方が、よりマイクロマネジメントに近づいていた。現在の働き方改革は、労働時間に「上限=キャップ」を設けることが中心だ。そうした中、成果を出さなくてはならない上司は、限られた時間でやりくりするために部下の計画をよりタイトに統制し、行動を管理するほうが近道だと考えてしまうのだろう。

2つ目は、人材の多様性が増すこと、つまり職場のダイバーシティが進むことだ。これも興味深い結果だ。人の価値観や国籍、年代といった多様な人材や働き方の確保は、人手不足の市場においてますます求められていく。だが、そうした多様性の上昇は、現場上司からしてみれば、これまでの暗黙のルールやあうんの呼吸が通用しなくなることを意味し、コミュニケーション・コストを高める。多くの上司は、そうしたとき、対話やすり合わせではなく、行動を統制することに力を注いでしまうようだ。

3つ目は、業務量の増加だ。業務負担増の圧力が高まると、管理職はマイクロマネジメントを強める傾向にあることが明らかになった。業務が忙しくあればあるほど、一人ひとりの部下の育成や相談に乗ることができなくなり、「やることだけやってくれ」という行動管理のマネジメントになることは容易に想像できる。

まとめ

今回のデータからは、これから働き方改革やダイバーシティが推進されていくに伴って、日本全国の上司がますますマイクロマネジメントに傾いていくというバッドシナリオの可能性が示されている。そうなれば、部下の離職を増やし、「動かない部下」は増え、結果的に自分で自分の首を絞めていってしまうだろう。

そのシナリオを避けるためには、いかに部下を「信頼」し、「承認」することができるかだ。管理し、統制したくなる思いをぐっと堪え、認めて、任せるマネジメントを意識的に行う必要がある。「部下が動いてくれない」という上司の悩みは、大変だからこそ管理してしまいがちな上司自身のマネジメント行動を変えていくことで消えていくかもしれない。

調査概要


パーソル総合研究所 「中間管理職の就業負担に関する定量調査」
調査内容 [中間管理職調査]管理職自身の就業実態と負担感、その他意識
[企業調査]自社の中間管理職に対する課題感と支援の実態
調査対象 [中間管理職調査]全国・企業規模50人以上の企業の管理職(第1階層の管理職)n=2,000
企業調査]全国・企業規模50人以上の企業の人事部に所属する従業員 n=300
※企業設立年数5年未満を除外
調査手法 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査時期 [中間管理職調査]2019年3月20日~3月21日
[企業調査]2019年2月7日~2月8日

※引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」


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執筆者紹介

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上席主任研究員

小林 祐児

Yuji Kobayashi

NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年入社。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。

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