公開日 2017/03/30
2017年3月13日東京森永プラザビルで「無期転換ルールにおける人事労務対応と今後の人材戦略」セミナー(パーソル総合研究所、テンプスタッフキャリアコンサルティング株式会社共催)が開催されました。第2部ではパーソル総合研究所ディレクター渕田任隆が「無期化後を見据えた人材戦略」と題して、労働市場や働き方改革の現状や来年4月以降の「有期契約社員の無期契約への転換ルール」後を見据えた人材戦略のポイントなどをご紹介しました。
約20年間、コンサルタントとして様々な企業に接していますが、昨今労働人口の減少などの理由により、企業の人手不足が深刻化していると思います。パーソル総研では昨年、2025年に583万人の人手不足が発生するという推計を発表しました。推計が示す通り、今後ますます人手不足が深刻化し、企業間での優秀な人材の奪い合いや働き方改革による生産性の向上、人材の活躍推進などが課題となるのではないでしょうか。
そんな労働市場の中で、平成30年4月から「有期契約社員の無期契約への転換ルール」が始まります。本セミナーでは有期契約社員の無期転換ルールを契機とした人材戦略について考えていきたいと思います。
有期契約社員の無期転換に関する人材戦略を考える上で、最も重要なのは中期的な経営戦略を明確にし、そこから人材のポートフォリオを考えることです。中期的に各部門で、有期契約社員、無期転換社員、無期正社員などが何人必要で、どのような職務を担ってもらうのかなどを明確にすることが必要です。
上記を踏まえたうえで、有期契約社員の無期転換に関するプロセスの一例をご紹介します。
まず、有期契約社員が何を求めているのかニーズを把握します。有期契約社員は賃金や人間関係、勤務地などそれぞれ求めているものが違うので、その多様なニーズを正確に把握することが重要です。
次に無期正社員と有期契約社員の職務を分析し、難易度や専門性などから求める役割・職務を明確化します。この際に中期的な経営計画の視点に立ち、どのような職務が必要になり重要なのか、どの職務を有期契約社員に任せるのかなどを規定していきます。
そして、ニーズと役割・職務が明らかになったら、それを評価制度や報酬制度、現場でのマネジメント体制の構築などに落とし込んでいきます。評価・報酬制度では同一労働同一賃金の観点に留意し、無期正社員と有期契約社員の差が説明可能な形で制度構築する必要があります。また有期契約社員に関しては、現場でのマネジメントの影響が強いので、現場マネジャーが積極的にコミュニケーションをとることが重要です。そして、評価結果のフィードバックを徹底するなどの対策も重要になります。今後は、有期契約社員を重要な人材と定義し、無期正社員と同じようにタレントマネジメントの体制を構築することも必要になってくると思います。
今後は雇用区分による人材マネジメントの壁が低くなり、より一体として人材マネジメントする方向にあると考えます。タレントマネジメントを有期・無期両方を対象として実施する、有期・無期合わせた適材適所の実施、職務をベースとしたグレード・報酬への移行、等へ進展していくことが想定されます。また体制面においても従来は、無期正社員の管理は本社人事、有期契約社員は各現場がマネジメントする、という企業が多かったと思いますが、両者がより関係を密にし人材マネジメントしていく必要があります。
有期契約社員の比率の高い企業にとって、有期契約社員の無期転換は人材戦略の変更を伴います。自社の中期的な経営戦略に基づき、有期契約社員制度の改定に留まらず、無期正社員制度を含めた人材戦略を考える必要があると考えています。
パーソル総合研究所ディレクター渕田任隆
※記事内容・肩書きは取材当時のもの
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