公開日 2017/04/10
2017年3月21日東京新宿マインズタワーで「アンコンシャス・バイアス・トレーニング」体験会セミナー(パーソル総合研究所主催)が開催されました。長年ダイバーシティ推進に取り組んできた荒金雅子氏に、ダイバーシティを推進するにあたって気を付けなければならない「無意識の偏見」(アンコンシャス・バイアス)についてワークショップを交えてご講演いただきました。以下、当日お話いただいた内容から、荒金先生のご講演のエッセンスをご紹介します。
ダイバーシティ推進とは、「個」を尊重し、組織の力に活かすことです。一人の社員は様々な属性をもっています。年齢や性別、国籍などのデモグラフィック(人工統計学的)ダイバーシティ、価値観やライフスタイル、キャリア志向などのサイコグラフィック(心理学的)ダイバーシティ、そして経験や能力、スキルなどのタスクダイバーシティ。ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)とは、これらの属性を理解・尊重し、活かしながら組織の力に変えていくことを意味します。
多様性を活かし生産性を向上させる上で重要なことは、その職場で自分が受けいれられている、尊重されている、発言を歓迎されているという、働く人の心理的な安全性が保障されていることです。この心理的な安全性を脅かし、力を発揮する上で障碍となっているのが「無意識の偏見」です。私達は物事を認識し次の行動をおこすにあたり、大量の情報から素早く判断するために、あるパターンに当てはめて行動しようとする習性を持っています。その際に、思い込みや固定観念にとらわれていると、現実と認識の間にギャップが生じることがあります。例えば「○○部門の意見は通りやすい」とか「女性は管理職になりたがらない」と決めつけてしまうことがありませんか。このように自分の思い込みで物事を処理してしまうことで、正しい判断や評価ができないままに相手と向き合い、それが受け手にネガティブに作用し、結果として組織のパフォーマンスに影響を与える、ということが起こるのです。
では「無意識の偏見」をどのように取り扱えばいいのでしょうか。ここでは2つのポイントを紹介します。
まず自分の持つ思考スタイルに気付くことです。起こった出来事を、自分はどのように捉えているのか、どのような信念や価値観を持っているか、と言うことにアンテナを立てると、自分の考えや意見は、必ずしも常識や当たり前ではないことに気付かされます。2つ目は、自分のコミュニケーションスタイルを深く認識し、その上で周囲と柔軟なコミュニケーションを図ることです。コミュニケーションに関するアセスメントなどを用い、「観る、聴く、肯定する」などの力がどの程度備わっているか、自分の傾向を把握します。適切なタイミングでコミュニケーションスキルを活用することで、安心感や信頼感を与え、よりよい関係を築くことができるようになります。
「無意識の偏見」に関しては完全に取り除くというよりも、どのようにコントロールしていくかが重要です。常に、周りと適切なコミュニケーションをとり、「無意識の偏見」に陥ってしまっていないかを内省することが必要です。「ダイバーシティは終わりのない旅」だとよく言われますが、ここまでやれば終わりとか、これをやっていれば大丈夫というものではありません。組織が持続的に成長する上で、ダイバーシティ推進は不可欠な取組なのです。ダイバーシティ推進を本当に効果的なモノとするために、是非管理職や社員のみなさんに「無意識の偏見」にアンテナを立て、それをうまく取り扱うスキルとマインドを手に入れてもらうトレーニングを行って頂きたいと考えています。
都市計画コンサルタント会社、NPO法人理事、会社経営等を経て、株式会社クオリアを設立、代表取締役に就任。長年、女性の能力開発、キャリア開発、組織活性化などのコンサルティングを実践。1996年、米国訪問時にダイバーシティのコンセプトと出会い強く影響を受ける。 以降一貫して組織のダイバーシティ推進やワークライフバランスの実現に力を注いでいる。近年は組織開発の研究を続け、「学習する組織」、「U理論」「アクションラーニング」 「ファシリテーション」「女性のリーダーシップ開発」等に取り組んでいる。
著書:「多様性を活かすダイバーシティ経営~基礎編」、「(同左) ~実践編」(日本規格協会)
活動:経営行動科学学会会員/ 日本キャリアデザイン学会会員/ 昭和女子大キャリアカレッジ非常勤講師(2015年~)/NPO法人日本ファシリテーション協会理事/IAF協会日本支部会員/日本アクションラーニング協会認定シニアALコーチ/MPF社グローバルマインド養成トレーナー
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