公開日 2017/02/15
ヤフー株式会社 上級執行役員 コーポレート統括本部長 本間浩輔氏
前回の大和証券グループ本社望月常務執行役に引き続き「働く未来フォーラム」(2016年11月29日開催)にて「働き方改革先進企業」としてご登壇いただいた、ヤフー上級執行役員、コーポレート統括本部長本間浩輔氏の事例紹介をレポートいたします。
先日、メディアで報道されましたが、現在週休3日制の導入を検討しています。今日はまず、なぜ週休3日制の導入を目指すのかについての4つの理由からお話を始めたいと思います。
1つ目の理由として、IT(情報技術)革命は、企業には利潤を、働く人には余暇をもたらすべきだと考えるからです。歴史的に産業革命など産業の革新は企業には利潤を働く人には余暇をもたらしてきました。IT革命も産業の革命、革新であるならば、ITを使うことで働く人には余暇をもたらすべきだと考えています。IT企業としてこのことに率先して取り組み、実現していきたいという思いがあります。
2つ目の理由は、優秀な人材を採用、確保したいということがあります。労働人口が年々減少する中で、優秀な人材を確保するためには多様な働き方への対応が不可欠です。自由な働きかたを認めることで、例えば介護や育児を理由に退社してしまう社員を減らすことができないか。社員の抱える様々な課題に対して人事が率先して会社の制度を変えていき、社員が安心して働ける環境を整備したいということを考えています。
3つ目は仕事より大切なことを諦めて欲しくないという理由があります。家族のことや余暇など仕事より大切だと思うことをしっかり尊重しながら仕事に励んで欲しいと考えています。
最後の理由は5~10年後、働きやすい環境づくりは、は経営の根幹の課題になっており、その解決を最優先に取り組むべきだと考えているからです。週休3日制に関しても様々な抵抗や反対もありますが、優秀な人材の確保や社員の生産性の向上という人事課題を解決するには必要な対応で、このことに取り組むことは将来の経営の根幹になると考えています。
今年から紀尾井町にオフィスが移転したのですが、働きかた改革を行う大きなきっかけになったのは、このオフィス移転でした。なぜきっかけになったかというと10年後 の会社の姿、働き方に見合ったオフィスにしようということが議題になったからです。例えば社員の人口ピラミッドはどうなっているのか、会社の利益はどの事業が稼ぎ出しているのか、その時イノベーションを生み出すにはどのような環境を整備すればいいのかなど会社の姿と働き方についての多くの議論をしました。その結果、冒頭でご紹介した週休3日制の導入を目指すことも含め、多様な働き方に対応していこうという考えに至りました。今日は私たちが実施する「新幹線通勤」「どこでもオフィス」「全館フリーアドレス」「CCO」という4つの働き方に関する施策をご紹介し、それぞれの施策の背景にどのような考えがあるのかをご紹介していきたいと思います。
まず、ご紹介する施策は新幹線通勤の導入についてです。新幹線通勤は、通勤時間が2時間以上かかっている従業員を対象に、新幹線代を含む通勤交通費を会社が負担するというものです。これにより、100キロ圏内の場所から新幹線での通勤が可能となりました。 この施策の導入の背景には、いくつかの理由があります。1つは介護のことでやめていく社員に対し、実家からの通勤を認めることで退社を食い止めることができないかということです。2つ目は生活コストを下げるということも狙っています。将来、額面の金額は伸びたとしても、社会保障や年金などの理由で手取りの賃金は伸び悩む可能性があります。そんな時、家賃などの生活コストを下げることで社員の生活を応援できないかと考えています。3つ目の狙いは地方活性化、地域創生に貢献できないかということです。ITリテラシーを持ったヤフーの社員が地方に住み、ITの力で地方を変えていくお手伝いをすることを想定しています。これは単にCSR(企業の社会的責任)という視点ではなく、2026年以降も社会から支援されて会社が生き残っていくには必要なことだと考えています。
2つ目にご紹介するのはどこでもオフィスという施策についてです。これは、月に5回まで自宅やカフェなど自分の好きなところで働くことができるという制度です。この施策の1番の狙いとしてはオフィスという場所にこだわらず、最も自分の生産性が上がる条件で仕事をして欲しいということです。またもう1つの狙いとしては通勤時間の時間のロスやストレスなどを軽減したいということがあります。いかに労働生産性を高めるかと考えたときに、1日2時間満員電車に乗って職場にくるような環境は好ましいとはいえないのではないかと考えています。
3つ目にご紹介するのは全館フリーアドレスについてです。この施策の背景には普段話す機会がない人と話し、様々な情報を交換することでイノベーションを起こして欲しいという狙いがあります。この施策を導入するにあたり、1番多かった反対意見としては部下がどこにいるか把握できず、管理や評価ができないのではないかということでした。しかし今後、固定デスクで勤務時間中の部下の一挙手一投足を管理し、その仕事ぶりを評価するような働き方は難しいと考えています。どこでもオフィスやフリーアドレスを前提とし、仕事のプロセスに対する管理やパフォーマンスへの評価に移行することが必要ではないでしょうか。
4つ目にご紹介するのはCCO(Chief Conditioning Officer)の設置です。この施策は社員のコンディショニングに積極的に関わっていこうという意図で始めたものです。社員が病気にならないための健康維持から1歩進んでコンディショニングをより良くすることを考えています。今後、ITデバイスなどを利用し、正しく定期的に体の状態を計測することで、社員のコンディショニングを把握し、生産性の高い状態に改善していくことを目指しています。
最後になりますが、今後、人事課題は経営の根幹に関わる課題になっていくと思います。その中で人事が考えるべきことは、優秀な人材を確保することと、社員の生産性を上げることです。この2つの目的に向かって必要な施策を早急に実施していくことが必要だと考えています。
本記事はお役に立ちましたか?
前のイベントレポート
次のイベントレポート
《Well-Being》「働きやすさ」のその先へ 一人ひとりの「働きがい」を実現するために
2025年版 人事が知っておきたい法改正のポイント-高年齢雇用継続給付に関する改正/雇用保険制度の拡充と見直し/高年齢者雇用安定法の経過措置終了/育児・介護休業法等改正 仕事と育児・介護の両立支援制度の強化
教員の職業生活に関する定量調査
2024年版 人事が知っておきたい法改正のポイント-労働条件明示ルールの変更/時間外労働の上限規制と適用猶予事業・業務について/パートタイム・アルバイトの社会保険適用事業所の拡大
特別号 HITO REPORT vol.12『「副業」容認しますか?~本業への影響、人事の本音、先進事例などから是非を考える~』
働き方改革の進展と働く人の心的状態の変化
「動かない部下」はなぜできる?マイクロマネジメントの科学
テレワークに役立つHRテクノロジー、アフターコロナを見据えた導入を
働き方改革の最大被害者──"受難"の管理職を救え
特別号 HITO REPORT vol.8『解説 同一労働同一賃金 ―人事・労務が知っておくべきこと、企業が対応するべきこと―』
働き方改革の影響 Vol.3 経営方針を浸透させ労働生産性を高める
働き方改革の影響 Vol.2 働き方改革の意図せざる結果
働き方改革の影響 Vol.1 労働時間の短縮は幸福度を高めるか
労働市場の今とこれから 第11回 働くことの未来
【イベントレポート】大和証券グループが取り組む働き方改革
【イベントレポート】働き方改革と企業の持続的成長に向けて
【イベントレポート】労働市場の未来推計
特別号 HITO REPORT vol.1『労働市場の未来推計 583万人の人手不足』
follow us
メルマガ登録&SNSフォローで最新情報をチェック!