公開日 2017/02/17
テンプホールディングス株式会社 グループ人事本部本部長 美濃啓貴
前回に引き続き「"進化"するタレントマネジメント」フォーラム(パーソル総合研究所主催)の様子をご報告します。アサヒビール株式会社人事部長杉中宏樹氏の事例紹介に続き、テンプホールディングス株式会社グループ人事本部本部長美濃啓貴がタレントマネジメントを実施する中で見えてきた課題と展望についてご紹介しました。
テンプホールディングスでは、人材の採用から人事制度、異動配置、人材開発などを通じて企業価値の向上に資することが人事の仕事だと捉えています。そして、そのカギとなるのがタレントマネジメントではないかと考えています。まだ取り組みを始めたばかりで、わからないことが多く、試行錯誤をしている状況ですが、実務の様子をご紹介いたします。
タレントマネジメントを探索、実施する中で、重要と思われるポイントが少しずつ見えてきたように思います。1つは個人プロフィール、個人の情報をいかに充実させるかということです。タレントマネジメントシステムの中に、「社員・組織を把握する為の情報」「業績などの日常行動の記録」「研修などの人事施策の記録」など様々な個人の情報を蓄積していくことが重要です。もう1つのポイントは①個人の情報の記録②集まった情報の分析③分析から見えてきた仮説の活用といった一連のプロセスを循環させていくことです。分析から様々な仮説を導き、人事施策に活用するのですが、実際に活用してみると仮説通りにならないこともあります。そのような情報を含め、活用した情報をまた記録し、循環させることが重要なのかなと考えています。
ご参考程度ですが、テンプホールディングスで実施しているタレントマネジメントの流れをご紹介します。
まず、様々な個人の情報を蓄積する為のハコを準備します。テンプホールディングスでは「HITO-Talent」を利用しています。給与や住所、名前などの基本的な人事情報は基幹システムから自動連携、自動更新させる仕組みをつくり、常に最新の情報がハコに入ることが重要なのかなと考えています。
「社員・組織を把握する為の情報」や「業績などの日常行動の記録」、「研修などの人事施策の記録」などの個人の情報を蓄積しています。「社員・組織を把握する為の情報」とは社員の意識調査や異動意向調査などを指し、それぞれ1年に1度実施しています。特に異動意向調査は個人の意向や組織の状態などを分析できる情報が集まるので、タレントマネジメントの根幹に関わる施策の一つではないかと捉えています。「業績などの日常行動の記録」は週に1度の上司と行う「1on1」(面談)に関するメモなどの記録です。「研修などの人事施策の記録」は3年に1度実施しているキャリアディベロップメントプログラム(キャリア開発に関する研修)やサクセッションプラン(次世代経営者候補の育成)、キャリアチャレンジ制度(社内の別部署への異動申請)などの情報を記録しています。
次に、様々な個人の情報を分析し、仮説を立てています。本日は試行錯誤しながら見えてきた2つの予測モデルをご紹介いたします。1つ目は退職予側モデルです。蓄積された個人の情報をランダムフォレストなどの統計解析手法を駆使して、退職確率を予測するためのモデルを作ることができました。最終的に退職確率を約90%の精度で予測できているので、この結果を活用してリテンション施策等につなげています。2つ目は異動配置予側モデルです。各職場で活躍する社員を分析し、どういった特性を持つ社員がどのような特性の部署で活躍する可能性が高いのかを予測するモデルを構築し、実際にこの結果に基づいた異動を実施して、結果を検証しているところです。今後はこれをさらに踏み込んで、性別や入社歴、家庭状況などの個人の情報も含めて、どの上司とどの部下の愛称が良くパフォーマンスが上がるのかといった観点も分析することで、よりマッチングの精度を上げることができないかと考えています。
構築した仮説やモデルを活用できればと思い、人材戦略会議を実施しています。これは部レベル、本部レベル、全社レベルの各レベルで実施され、構築された仮説やモデルを基に組織施策や異動配置、人材育成などについて議論しています。
ここまでテンプホールディングスで実施するタレントマネジメントについてご紹介しました。まだまだ試行錯誤を繰り返している状況ですが、タレントマネジメントを実施していて改めて感じるのは、情報を蓄積することの重要性についてです。短期的に情報を分析、活用していくのは勿論ですが、5年後、10年後に活用する為にも情報の蓄積や一元化は大変重要ではないかと考えています。これまではパーソルグループの中でもインテリジェンスの社員(7,000人)を中心にタレントマネジメントに関する施策を実施していましたが、将来的にはもっと探究を進めて、グループ社員全員(3万人)に、また派遣スタッフなども含めた10万人に対象を拡大し、人材の成長に寄与できたらと考えています。
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