HOMEコラム・レポート コンテンツ 人手不足時代のアルバイト&パート採用・育成術 ~25,000人の大規模調査から見えてきた採用とマネジメントの要諦とは?~

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2018.04.11

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人手不足時代のアルバイト&パート採用・育成術
~25,000人の大規模調査から見えてきた採用とマネジメントの要諦とは?~

アルバイト・パート

アルバイト・パートスタッフの確保が難しくなっている昨今、外食・小売りをはじめとする多くの企業が人手不足問題の解消に向け、さまざまな取り組みを実施している。こうした中、パーソル総合研究所と東京大学・大学総合教育研究センター准教授・中原淳氏は、長期化・深刻化する人手不足を見据えて、アルバイト・パート領域の科学的調査を行い、戦力確保に必要な打ち手を創造する「アルバイト・パート戦力創造プロジェクト」を発足させた。さらに約25,000人を対象とした大規模アンケート調査も実施。この結果をもとに、アルバイト・パートの採用率や定着率を向上させるための研修プログラムが開発された。1月29日に開催された本セミナーには、中原淳氏や研修導入企業である株式会社ナムコ、株式会社ゲオホールディングスの研修担当者が登壇し、アルバイト・パートの採用事情や研修内容、各社の導入事例などが話された。

彼らはなぜアルバイトを辞めるのか?

図1.pngまず最初に登壇した東京大学・大学総合教育研究センター准教授・中原淳氏からは、25,000人を対象に実施された大規模アンケートの調査結果をもとに、アルバイト・パートスタッフが"採れる""辞めない""活躍する"ための面接と職場マネジメントのポイントが伝えられた。

そもそもアルバイト・パート離職者の就業期間はどれくらいあるのか。調査結果によると、離職者の5人に1人以上が1カ月未満で辞めてしまい、さらに離職者の2人に1人は入社後半年未満で辞めてしまうという。つまり多くのアルバイト・パートが一人前になる前に辞めてしまうことで、採用教育のコストが回収できず、生産性を著しく損なっているということだ。では、彼らはどのような理由で離職するのか。1カ月未満での離職理由で最も多かったのが、「面接とのギャップ」。1カ月以上~半年未満での離職理由で最も多かったのが、「ベテランの態度の悪さ」だった。こうしたことから、面接での対応と、ベテランの管理やフォロー体制などの職場づくりが大きな鍵になることがわかる。

「調査結果によると、応募者のうち2人に1人は複数の仕事に応募して、事前に職場の様子を下見に来ます。そして4人に1人は採用しても辞退します。人手不足の今、企業は誰かを選んでいるつもりでも、実は選ばれているのです。『選ぶ面接』から『選ばれる面接』へ――。この感覚は、残念ながら大量採用時代の人にはなかなか通じません」と中原氏。

求職者は何を重視しているのか?

次に、応募時に求職者が重視している点を聞いたところ、1位はシフト(自分の生活時間に合わせて働ける)、2位は職場の雰囲気(働いている人たちの雰囲気がよい)となった。「例えば職場が店舗なら、面接に訪れたときの店員の対応や、バックヤードの雰囲気、トイレの清潔さなどもチェックされています。つまり職場こそが、きわめて重要な"採用メディア"なのです。」(中原氏)。

では、面接において「ここで働いてみたい!」と思ってもらうために重要なこととは何だろうか。調査結果によると、1位は「仕事のやりがい・魅力がわかった」、2位は「希望する仕事内容をしっかり聞いてもらえた」という順番だった。応募者にしっかり魅力を伝え、じっくり話を聞くことが重要というわけだ。そもそもやりがい・魅力を伝えるとはどういうことなのか。その点において中原氏は、応募者にとっての"やりがい"が重要だと語る。

では、スタッフが「長く続けたい」と思う職場の上司(店長)の行動で重要なこととは何だろうか。調査結果によると、1位は「平等に接してくれる」、2位は「注意や叱り方に納得できる」だった。さらに評価される管理者像を属性別に見ると、学生の場合は「ねぎらい・感謝の言葉を掛け、仕事を任せてくれる」、主婦の場合は「スジを通す公平な態度と納得感」、フリーターの場合は「長期的な展望や目標を共有できる」という結果だった。 「アルバイト・パートが辞めずに活躍する職場づくりのポイントは3つあります。1つは、背伸びの仕事でステップアップできること。2つ目は、"知る""見る""声掛け""感謝する"など、お互いにフォローし合える関係づくり。そして3つ目は、ベテランを活かすマネジメントです。ぜひ職場づくりの参考にしてみてください」(中原氏)。

こうして25,000人の調査結果を受け、パーソル総合研究所と中原氏は共同で新た研修を創り出した。それが今回紹介された「スタッフが採れる!辞めない!活躍する!ための店長・職場マネージャー向け研修」――『採用・面接編』と『職場づくり編』の2種類である。研修は映像とテキストブックによって進められ、研修運営担当者は映像のスタートボタンを押すだけで研修の実施が可能だ。

ナムコの取り組みと成果

図2.png本セミナーでは、実際にこの研修を導入して成果を上げている2社の担当者が登壇し、それぞれの導入事例や成果について講演を行った。まず1社目は、エンターテイメント施設の企画・運営を行う株式会社ナムコ。

同社は人手不足時代に生き残るべく、2017年度方針発表会にて、取締役の岩屋口治夫氏が全社員に向け、「雇用確保、スタッフを大事にすることが事業継続の絶対条件である」とメッセージを送った。AM施設営業本部AM営業部もっと元気チーム チームマネージャーの甲斐啓介氏はこう語る。「全社の雇用改善を目指し、本部、現場それぞれの立場でできることを明確にして実践しました。まず新しく雇うことに関しては、本部が人事と連携し、採用改善プロジェクトを始動。従来は補填のための求人が中心でしたが、検索サイトにかかりやすくすることや、求職者へ向けたメッセージを伝えやすくする等、会社全体の求人スタイルを変更しました。次に人材の流出を防ぐことに関しては、それまで面接のやり方やチームワーキングの知識が店舗ごとにバラバラだったため、これらの標準化を推進。そのためのメソッドとして、本研修プログラムを導入しました」

定着率が80.7%に向上。「選ぶ」面接から「選ばれる」面接へ

図3.pngナムコでは2017年6月に全国の店舗責任者226名を対象として、この研修を実施した。ファシリテーターは社内に15名ほどいる企業理念研修の講師が担当。研修後、受講者からは、「多くの応募者が下見に来ている事実に驚いた」、「今まで面接は一方的に説明していた。応募者のメリットを伝え、『互いに選ぶ』面接にしていきたい」、「面接の中で『自分たちが選ばれている』という意識を持つことが重要だ」、「入社後のスタッフが成長の実感を感じられるスイッチが不足していると感じた」といったコメントが寄せられた。また、ある店舗責任者からは、「研修後、『採用してあげる』面接から、『ぜひ一緒に働いてほしい』というように面接のスタイルを180度変えました」と、早くも現場で成果が出始めているという。

2017年12月末現在、入社半年以内のアルバイトおよび契約社員の定着率は80.7%と、2016年の64.8%と比べると、数字にも成果が表れた。また、定着率だけでなく入社者数も増加傾向にあり、地域格差はあるもののスタッフ数が改善傾向にある店舗も増加している。「今後も特に『職場づくり編』のほうは店舗責任者だけでなく、面接に直接関わらない一般社員やパートナー社員のリーダー格の方々にも受講していただき、職場を機能させていくための共通言語を語れる風土にしていきたいと思っています」(甲斐氏)

ゲオの取り組みと成果

図4.png続いて2社目に登壇したのは、CD・DVDレンタルやゲーム販売のゲオなどを運営する株式会社ゲオホールディングス。アルバイトスタッフによって店舗運営が支えられている同社もまた、人手不足は深刻だ。2012年から2015年にかけてアルバイト採用費は約2倍に増加。さらに募集しても応募が少ない、面接後の辞退が多い、採用してもすぐに辞めてしまう、新人教育を何度もやらなければならない、社員の残業時間が増える...という悪循環に陥り、現場は疲弊しているという。

そこで同社では、2015年から2017年にかけて、新たな採用活動に取り組み始めた。アルバイト採用システムの導入や、自社ホームページを立ち上げてアルバイト募集を始めるなど、求人活動の見える化に着手。さらに業務統一、情報の共有化、求人の全国掲載なども実施した。その結果、2015年から2017年にかけて採用費は維持(むしろ微減)し、採用単価も削減できたという。だが、アルバイトの勤続年数を見てみると、51%が1年以内に退職。2017年のアルバイト入社人数は15,026名なのに対し、同年のアルバイト退職人数は14,712名と、応募者は増えているが退職者も多くなっている。さらに店長や職場マネージャーによって面接方法がバラバラになっているという課題も浮き彫りになった。

研修受講者の85%が満足...全国の店長を対象に順次開催

図5.pngこうした中、『採用・面接編』と『職場づくり編』研修を導入した同社。果たして何が導入の決め手になったのだろうか。「(動画を主としたプログラムであるので)教育担当者のスキルに依存せずに、同水準での教育が可能なこと。これは特に多店舗展開の場合に浸透が速いと感じます。また調査結果の根拠が現場に納得感を生むところや、言葉や文字では伝えられない映像でのわかりやすさも魅力です。そして何より、中原先生のお墨付きがあることが決め手になりました」と組織開発部 人材開発課マネージャーの川辺雅之氏は語る。

2017年8月に東北地区の店長13名、エリアマネージャー15名を対象に研修を実施したのを皮切りに、11月には東海地区の店長29名を、2018年1月には関東地区の店長32名を対象に研修が行われた。関東地区の店長研修では、「採用・面接&職場づくり」で5時間30分の研修になったが、85%の参加者が満足したと答えたという。研修実施後は、「面接準備を心掛けるようになった」、「応募者の希望を聞いたり、仕事の魅力を伝えるようになった」、「希望の条件など応募者からしっかり聞いて、魅力ややりがいを伝えるようになった」、「面接力、採用率が上がった」などの声が聞かれ、研修実施店舗では定着率が大幅にアップしているという。「2018年は引き続き全国の店長を対象に研修を実施していきます。まずは研修で彼らに一気に"気づき"を与えて、その後は店舗で実践してもらい、定着率や充足率をより一層高めていければと思っています」(川辺氏)

図6.pngこの後、中原氏、甲斐氏、川辺氏が揃って壇上へ。研修の詳細や導入のポイントなど、参加者から質問が相次ぎ、活発な意見が飛び交った。今回のセミナーでは、「人手不足」対策のポイントは「早期離職」を防ぐことであり、「早期離職」を防ぐには「面接」や「職場づくり」を実際に行っている現場の「店長・マネージャー」の意識を高めるための教育を組織として徹底して取り組むことが重要であると認識された。人材の確保が難しいこの時代に、パーソル総合研究所と中原氏が生み出した"採れる""辞めない""活躍する"ための面接と職場マネジメントのノウハウは、会場に大きな気づきをもたらしたようだ。

本コラムは「HR Pro」に掲載いただいたものを再編集して掲載しています。

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