まだらテレワーク職場で発生する評価不安とその解消法

公開日 2021/04/12

執筆者:シンクタンク本部 研究員 青山 茜

2020年、新型コロナの感染拡大により世界は一変した。人々の生活様式、働き方のいずれにも大きな変化がもたらされている。また、新型コロナの影響は長期化し、いまだに収束の兆しは見えていない。長期化するコロナ禍において、職場ではテレワーカーと出社者が混在する「まだらテレワーク職場」がニューノーマルとなりつつある。その中で、今までにない新たな課題が顕在化してきている。

本稿ではまだらテレワーク職場において発生する新たな課題のひとつ、テレワーカーの「評価不安」に着目し、その解消方法のヒントをパーソル総合研究所で実施した調査結果(※1)を基に紹介していく。

※1 「テレワークにおける孤独感・不安感に関する定量調査」

  1. コロナ禍において急激に拡大したテレワーク
  2. テレワークによって生まれる新たな不安感
  3. 最も注意すべきは〝評価不安〞
  4. 評価不安を解消する2つのポイント
  5. よりよい方法の模索は一時的ではなく継続を

コロナ禍において急激に拡大したテレワーク

新型コロナの感染拡大は、奇しくも遅々として進まないテレワークの普及を強力に後押しした。パーソル総合研究所ではテレワーク拡大の実態を追うべく、2万人規模の新型コロナ対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査を3回にわたり実施。3月に実施した1回目の調査では全国平均13.2%、4月に実施した2回目の調査では27.9%と、テレワーク実施率は一気に2倍に増加。そして、5月末の緊急事態宣言解除直後に実施した3回目の調査では25.7%と微減し、全体傾向としては減少の方向に進んだ。

しかし、一部の大手企業やIT関連企業を中心に、緊急事態宣言解除後もテレワークを継続することを発表する企業が少しずつ現れている。もともとテレワーク導入率が高かった情報通信業のみならず、導入が遅れていたそのほかの業種でも、テレワークの積極活用の方針を示す企業が増加してきている。コロナ禍でテレワークが問題なく機能すると認知されていけば、新型コロナ収束後もテレワークを継続する企業が一定数見込まれるだろう。

テレワークによって生まれる新たな不安感

テレワークが常態化した職場では、テレワーカーにさまざまな不安が生じてくることが調査から分かってきた。調査では「評価」「コミュニケーション」「ジョブアサイン」「キャリア」「同僚との人間関係」の5つの観点から、テレワークにおいて感じている不安について聴取(図1)。その中で、「非対面のやりとりは、相手の気持ちが察しにくく不安だ」が最も多く、約4割の人が不安に感じていた。そのほかの項目についても、おおよそ3割前後の人が不安を抱えているという実態が明らかになった。なお、こうした不安感の高さを職場におけるテレワーク比率別に見ると、『まだらテレワークの状態』で最も高くなることが分かっている。

図1.テレワーカーの不安感
図1.テレワーカーの不安感

最も注意すべきは〝評価不安〞

その中でも、軽視できない不安感がある。それが「評価不安」だ。5つの観点における不安がテレワーカーに及ぼす影響について詳細に分析を行ったところ、評価不安が継続就業意向や転職意向に直結していることが分かった(※2)。評価不安を抱える層と、そうでない層では、前者の方が後者と比較し1.7〜1.8倍転職意向が高いことが数値から読み取れる(図2)。さらに、評価不安は会社満足度を低下させることも詳細な分析結果から明らかになった(※2)。つまり、テレワーカーが抱える評価不安を解消しなければ、離職リスクの上昇は避けられないといえる。

※2 重回帰分析(企業規模、業種、職種、勤続年数などを統制して実施)

図2.転職意向の高さ
図2.転職意向の高さ

評価不安を解消する2つのポイント

それでは、テレワーカーの評価不安を解消するには、上司はどのようなマネジメントを行えばよいのだろうか。2つのポイントを紹介する。

1つ目は、「観察力(部下に関する情報を把握するスキル)を高めること」だ。テレワーカーが評価に対し不安を抱く原因のひとつは「見られていない感」である。テレワークは職場に出社しないことで物理的に「見えない状況」が生まれる。この見えない状況の中で、部下は日常業務に取り組む姿を見せることができず、成果のみで評価されることに不安を覚える。これを解決するために重要になるのが、部下に「見てもらえている感」を与えることだ。

では、部下に「見てもらえている感」を与えるためにはどうすればよいのだろうか。それは、これまで以上に部下に関する情報を収集することである。また、それは思い込みや周囲からの情報によるバイアスのかかったものではなく、客観的に捉えられた正確な情報である必要がある。

特に把握すべき部下についての情報は「現状のスキル」「現状の業務」だ。「現状のスキル」は具体的には知識、得意業務、苦手業務、経験業務などが挙げられる。「現状の業務」には、メイン業務の範囲や仕事で抱えている課題などが含まれる。テレワーカーがこれらの情報を上司から「把握されている」と認識しているとき、評価への納得度が高まることが分析から明らかになっている。つまり、テレワーカーが抱える評価不安が緩和されていると言い換えることができる。

繰り返しになるが、上司による情報の把握が上司自身の中だけで完結しているのではなく、「見ていること」が部下に伝わることがポイントになる。1on1などのコミュニケーション機会を設け、情報収集しつつ丁寧にお互いの認識のすり合わせを行うことが大切だ。

しかし、注意すべき点が1点ある。それは過度な干渉にならないようにすることだ。情報を得たいからという理由で逐一報告を求めることはマイクロマネジメントになりかねない。マイクロマネジメントを行われる部下は上司から信頼を得られていないと感じ、モチベーションの低下につながる可能性がある。一定の距離感をもって見守ることにより信頼関係を築くことができ、評価不安の解消につながるといえる(図3)。

図3.上司の観察力
図3.上司の観察力

2つ目は、「業務進捗・ジョブアサインの透明性を高めること」が挙げられる。調査結果によると、テレワーカーの38.4%が「仕事をさぼっていると思われていないか不安」と感じ、出社勤務の同僚(出社者)の34.7%、上司の40.0%がテレワーカーに「仕事をさぼっているのではないかと思うことがある」と疑念を抱いていることが明らかになった(図4)。また、出社勤務の同僚への質問からは、「業務負荷が増えており不満(26.0%)」「雑用を振られる傾向があり不満(25.9%)」と、4人に1人以上の割合で仕事の割り振りに不満を抱えていることが明らかになっている。

図4.それぞれの立場の評価不安や疑念
図4.それぞれの立場の評価不安や疑念

このように、見えない相手に対して疑念が生じたり、仕事の割り振りに対して不公平感を感じたりするのは入ってくる情報が部分的であるからだ。全員が出社している職場では、自ずと同僚の働いている姿が目に入ってきたが、まだらテレワーク職場では自然と情報が入ってくるという状況は残念ながらない。出社者が急遽口頭で割り振られた仕事をテレワーカーが知るすべはなく、逆にテレワーカーがメールで割り振られた仕事を、出社者が知るのも困難だ。

ではどのように解決すればよいのだろうか。ひとつの方法として、常に情報をオープンにし、全員が同じ情報を共有できる状況を作ることが挙げられる。これを実践しようとするならばICTツールの活用は避けられない。例えば、グループチャットなどを活用し、仕事のアサインは部門やチーム全員がタイムリーに把握できる仕組みを作ることはひとつの有効な方法だ。また、オンラインで利用できるタスク管理・進捗管理ツールを活用し、チームメンバーの情報を把握できるようにするのもひとつの案である。オープンな情報に、誰もがいつでもアクセスできる状況を作れば情報格差の拡大も防げる。これらの方法を導入すれば「あの人はさぼっているのではないか?」「自分ばかりが仕事を割り振られているのではないか?」といった疑念や不満の一部を防ぐことが可能になる。

観察力を高め、部下に「見てもらえている感」を与えること。そして、業務進捗・ジョブアサインの透明性を高めること。この2点を意識し、まだらテレワーク職場の「情報・状況の見えない化」から生じる評価不安の解消に取り組んでみてはいかがだろうか。

よりよい方法の模索は一時的ではなく継続を

今まで定着が困難であったテレワークが、図らずもAfterコロナ(Withコロナ)時代の到来とともに定着の兆しを見せつつある。テレワーク導入の成功は、ICT環境やテレワーク制度の整備のみでは実現しない。長期的には人事評価制度の見直しなども必要になるだろう。また当然、組織風土やマネジメントなどのソフト面も変えていく必要がある。変革に長期間かかるものもあれば、日常のコミュニケーションや情報共有の仕方など、テレワーカー、出社者、彼らをマネジメントする上司、それぞれの立場から心掛けひとつですぐにでも変えられるものもある。できることからひとつずつ新しい働き方にフィットするやり方を模索していく。この地道な努力を継続できた職場においてのみ、テレワークの成功が見えてくるであろうと考える。

※本記事は、機関誌HITO vol.16「はたらく人の幸福学~組織と個人の想いのベクトルを合致させる新たな概念の探求~」からの転載です。

執筆者紹介

青山 茜

シンクタンク本部
研究員

青山 茜

Akane Aoyama

大学卒業後、大手信販会社、自動車メーカー系金融総合サービス会社にて金融業界の営業を通算で5年経験。その後、元同僚の紹介でかねてより興味のあった分野であるマーケティングリサーチ業界へ転職。
マーケティングリサーチ業界では、フィールドワーク業務を経験後、データ集計・分析部にて調査結果データの集計・分析業務に従事。ここで多変量解析も学ぶ。そして企業内サーベイに出会い、労働現場にある課題を肌で感じ、この分野の研究への期待の大きさを実感。より深く関わっていきたいと考え転職。2017年5月より現職。

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