【イベントレポート】現場のやる気を削がない労働時間管理

公開日 2017/03/07

2017年2月8日東京三菱ビルで「現場のやる気を削がない」労働時間管理セミナー(パーソル総合研究所、インテリジェンスビジネスコンサルタンツ共催)が開催されました。第1部ではインテリジェンスビジネスコンサルタンツ(IBC)ワークスタイル・コンサルタント成瀬岳人が『働き方改革』の背景や必要性などについて、第2部ではパーソル総合研究所シニアマネージャー為田香苗がグループワークを交えながら具体的な長時間労働削減のポイントなどについて、第3部ではインテリジェンスビジネスコンサルタンツ(IBC)カンパニー長小野隆正が実施事例を紹介しながら、長時間労働の削減のプロセスなどについてご紹介しました。

働き方改革推進の背景

まず、IBCワークスタイル・コンサルタント成瀬が「2016年の女性活躍推進法以降、『働き方改革』というキーワードは非常に注目されており、政府や地方自治体を含めて取り組むべき課題となっている。この傾向は2017年も続き、世の中の『働き方改革』がより活性化するだろう」と述べ、「働き方改革」が2017年も重要な人事キーワードなると指摘しました。

このようなトレンドの背景には労働人口の減少傾向の影響もあるとし、2025年に583万人の人手不足が発生するというパーソル総研の試算(労働市場の未来推計)を紹介しました。その上で「『働き方改革』を通じて、色々な人が活躍できる環境を整備し、生産性を高めていくことが重要」だと指摘しました。

では生産性を高めるにはどのような具体策があるのか。4つのテーマを紹介しました。
「1つは長時間労働の改善、2つ目はテレワークの導入、普及、3つ目は副業、兼業の解禁、4つ目は同一労働同一賃金」。この中で、長時間労働の問題については「法令違反による社会的な信用の毀損、採用や人材流出などによる人材確保、メンタルヘルスなど社員のパフォーマンス低下」など多くのリスクがあり、改善していく必要性を強調しました。

長時間労働削減に向けて

kai102小.jpg第2部ではパーソル総研シニアマネージャー為田がまず「残業時間と利益率に相関関係はない」「残業は企業の評判に直結している」「全体の6%の社員に総残業代の30%が支払われている事例があり、実質的に成果ベースの評価になっていない例もあるのではないか」など長時間労働の問題点を指摘しました。

その上で、「長時間労働には2つのパターンがあります。1つは『非自発的残業』です。これは人手不足や上司からの指示などにより残業が発生するパターンです。もう1つは『自発的残業』で、社員自らが『よりよいものを作りたい』『残業代を稼ぎたい』などの自らの意思で残業するパターンです。この『自発的残業』のパターンは社員自身が残業の削減を望んでいないので、長時間労働の削減を実施するのは難しいケースと言えます。」と長時間労働のパターンを分析しました。「本日のテーマでもある『現場のやる気を削がない労働時間管理』とはまさにこの『自発的残業』をいかに現場のやる気を削ぐことなく削減していくかということになります。」

では『やる気を削がない労働管理』を成功させるポイントはどのようなものでしょうか。「1つは成果を『量』ではなく『質』で語り社員の意識を変えることです。成果を労働の『量』ではなく、労働の『質』(生産性)で語り、生産性向上の重要性を、トップが言い続けることが重要です。2つ目は労働時間を会議、移動、メール対応などの『フロー時間』と付加価値を生み出す『ストック時間』に分けて考え『フロー時間』から削減できないか考えていくことです。まず、業務改善やシステムの導入などにより『フロー時間』を削減し、その後、オフィス環境の改善などにより『ストック時間』の中で有効に活用できていない時間を削減していきます。3つ目は現場のマネージャーなどに残業削減プランを考えてもらうことです。現場マネージャーに長時間労働のリスクをインプットしてもらい、納得した上で、具体的な残業削減プランを考えてもらうワークショップを開きます。」

13522小 -e1488856061998.jpg第3部ではIBCカンパニー長小野がエンタメコンテンツ企業の実例などから見えてきた長時間労働削減成功への4つプロセスとそのポイントを紹介しました。「まず、アセスメントなどにより労働時間を可視化していきます。誰がどのような理由でどれくらいの時間労働しているのかを明らかにします。このような労働時間の可視化によって、長時間労働になりそうな時にマネージャーにアラートを流すだけでも残業時間削減にかなり効果があります。そして次に、アセスメントから見えてきた長時間労働の原因に対し、打つべき施策とその順番を決めていきます。3番目に現場マネージャーの意識改革の為、長時間労働に関するセミナーなどを実施します。このフェーズで現場マネージャーを味方に付けることが重要です。そして最後に、現場マネージャーに残業削減の具体的なプランを考えてもらい、前年対比どれくらい生産性を上げるかなどを自ら設定をしてもらいます。」

最後に

セミナーから労働人口が減少する中で、社員それぞれの働き方を尊重し労働生産性を高めることは今後ますます重要になっていき、生産性を高める為には労働時間の適切な管理が必要であるということが分かりました。また実例からは、社員のモチベーションを下げずに『自発的残業』を削減するには現場を粘り強く巻き込むことが成功のポイントになることが見えてきました。

※記事内容・肩書きは取材当時のもの


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