副業時代に企業が行うべきマネジメントとは
消極的な「放置型容認」から本業へのプラス効果を生み出す積極的な「支援型容認」へ

公開日 2021/09/03

執筆者:シンクタンク本部 研究員 青山 茜

副業コラムイメージ画像

2018年に厚生労働省のモデル就業規則から「副業禁止規定」が削除され3年が経った。コロナ禍による経済環境の激変によって副業への注目度はさらに高まり、副業拡大へ追い風が吹いている。厚生労働省によって2020年9月に改訂された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によれば、副業を促進することによる企業側のメリットは「労働者のスキル・知識の獲得」「労働者の自律性・自主性の促進」などが挙げられている。一方で、留意点としては「健康管理への対応」や「職務専念義務」などが指摘されている。そこで本コラムでは、副業によるメリットと留意点の観点から、企業が行うべきマネジメントのポイントを紹介する。

  1. 副業者の3~4割は副業による本業へのプラス効果を実感
  2. 副業が、本業へのプラスの効果を促進する要因は「職場や上司による支援」
  3. 過重労働を引き起こす要因は「本業の勤務日における労働時間の長さ」「成果報酬型の副業」
  4. まとめ

副業者の3~4割は副業による本業へのプラス効果を実感

はじめに、厚生労働省が策定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の通り、副業を促進することによるメリットや留意点が実際に発生しているかどうかを見てみよう。パーソル総合研究所が実施した副業者に対する調査では、副業を実施したことによって「本業に役立つスキル・知識が身についた」「視野が拡大した」「新しいことを取り入れることに抵抗がなくなった」など、スキルやマインドセット面で本業にプラスの効果があったと回答した人は3~4割程度いる(図1)。これは企業側のメリットである「労働者のスキル・知識の獲得」、「労働者の自律性・自主性の促進」にあたるだろう。

また、留意点として指摘されている「健康管理への対応」「職務専念義務」などに密接にかかわる「過重労働」については、「過重労働となり、体調を崩した」(16.1%)、「過重労働となり、本業に支障をきたした」(14.1%)となり、15%前後の副業者に発生していることが分かった(図2)。想定されているメリットやデメリットは、実際に一定の割合で発生しているようだ。

図1:副業による本業へのプラスの効果

図1:副業による本業へのプラスの効果

図2:副業によって発生した問題・課題

図2:副業によって発生した問題・課題

副業が本業へのプラスの効果を促進する要因は「職場や上司による支援」

それでは、企業側のマネジメントとしてメリットを促進し、デメリットを抑制するには、どのようなポイントが挙げられるのだろうか。調査データを分析した結果、本業へのプラスの効果(本業への還元)を促進する要因は「副業者本人の要因」と「職場要因」があることが分かった。

まず、副業者本人の要因である「副業動機」について、調査結果から「スキルアップ・活躍の場の拡大」「自己実現」「本業への不満」「現職の継続就業不安」「なりゆき・頼まれ副業」「収入補填」の6つの因子を抽出し、これらの動機が本業へのプラス効果にどのように影響するのかを分析した。その結果、「スキルアップ・活躍の場の拡大」「自己実現」「なりゆき・頼まれ副業」がプラス効果を促進していることが分かった(図3)。「なりゆき・頼まれ副業」がプラス効果を促進するのは一見理解しにくいが、「仕事を頼まれ、断りきれなかったから」「本業の仕事の性格上、別の仕事をもつことが自然だから」など、ある程度専門性の高いスキルが求められ仕事を頼まれているケースが想定され、専門性の高いスキルを活かせる副業であれば本業への効果が高まることは想像しやすい。一方で、「本業への不満」が発端となっている副業は、本業へのプラスの効果を抑制するということが明らかになり、留意する必要があるだろう。

図3:「副業動機」が副業による本業へのプラスの効果に及ぼす影響

図3:「副業動機」が副業による本業へのプラスの効果に及ぼす影響

次に、職場支援や上司のマネジメントなど職場要因について見ていこう。職場や上司の支援による本業へのプラスの効果を促進する要因を分析すると、企業による「副業の労働時間の把握」や「副業のやり方などについてのアドバイス」など、積極的に従業員の副業に関与していくことが促進要因であることが分かった。また、「副業についてのアドバイス」「副業に対する肯定的な評価」などの上司による副業への肯定的な態度も、本業へのプラスの効果を高めている(図4)。副業による本業へのプラスの効果を期待する場合には、職場と上司いずれもの「積極的な副業への支援」が重要であるといえそうだ。

図4:職場の支援、上司のマネジメントが副業による本業へのプラスの効果に及ぼす影響

図4:職場の支援、上司のマネジメントが副業による本業へのプラスの効果に及ぼす影響

過重労働を引き起こす要因は「本業の勤務日における労働時間の長さ」「成果報酬型の副業」

続いて、副業のデメリットのひとつとして懸念される「過重労働」の要因について見ていきたい。

調査データより過重労働を引き起こしやすい副業者の働き方について分析を実施した。分析から見えてきた過重労働を引き起こす働き方の要因は大きく2点ある。「本業の勤務日における労働時間の長さ」と「成果報酬型の副業」である(図5)。

まず、「本業の勤務日における労働時間の長さ」について分析した結果、本業で長時間の残業を行っているような働き方や、平日(本業の勤務日)に長時間の副業を行っているような働き方が過重労働を引き起こしやすいことが分かった。副業者に過重労働が疑われるような状況が認められた際には、本業の勤務日に行っている副業の労働時間を減らす提案など、働き方の見直しを促すこともひとつだ。

2点目の「成果報酬型の副業」だが、これは成果によって報酬が支払われる仕組みであるため「頑張りすぎ」につながる可能性が高い。本業と副業のバランスをとりながら自己コントロールができない場合、過重労働につながりやすいといえる。自己コントロールができるかどうかは個人によるところが大きく、個別の対応が必要といえる。

図5:過重労働の発生リスクが【高い/低い】副業者の特徴

図5:過重労働の発生リスクが【高い/低い】副業者の特徴

この2つの要因は、過重労働が懸念される状況になった場合に、状況を改善するためのヒントになるといえそうだ。また、この他にも、副業の在宅率が高い場合には過重労働になりにくい、という分析結果も得られている。これらの情報は、副業者が副業を開始する前の副業選びの段階で参考にすることができれば、過重労働による健康被害を未然に防ぐことにつながるだろう。前述の「上司のマネジメントが副業による本業へのプラス効果に及ぼす影響」にあるように、副業者への支援のひとつとして上司からアドバイスすることも留意いただきたいポイントである。

まとめ

冒頭で触れた通り、副業によるメリット・デメリットはいずれも一定程度生じている。そのため、副業によるデメリットを抑制し、メリットを最大化することを目指すのであれば、企業は従業員の副業に対する「完全放置」の態度は見直す必要があるだろう。

以上を踏まえると、企業が行うべきマネジメントのポイントは次の3つにまとめられる。

 ① 従業員の副業を積極的に支援すること
 ② 本業だけでなく副業の働き方にも気を配ること
 ③ 副業の動機を見極めること

特に、本業へのプラスの効果を期待するのであれば、職場や上司の副業への積極的な関与は必須である。何も支援せずに本業へのプラスの効果を求めても、成果が出るとは言い難い。また、過重労働を抑制するためには、副業を含めた働き方の状況把握は必要だろう。これらは1on1などを定期的に行うことで、情報収集を行い、コミュニケーションをとっていくことで対応していくことも可能だろう。そして、副業者の「副業動機」の把握も重要なポイントになる。副業動機によって本業へのプラスの効果は大きく変わってくる。スキルアップや自己実現など、ポジティブな動機であれば問題はないが、「本業への不満」のようなネガティブな動機には注意が必要だ。本人の自己申告では「本業への不満」という動機は把握しづらいかもしれないが、日常のコミュニケーションの中で探っていくこともできるだろう。本業への不満があるのであれば、副業云々の前にまず不満の解消を優先していただきたい。

副業の容認は企業の中でも徐々に広がってきており、また、個人においても副業への関心は高まりつつある。企業側はすでに、副業を容認するか否かの議論から、副業者をどうマネジメントするべきかを考える段階にきているのかもしれない。副業を容認するのであれば企業にとってのメリットは大きいほうがよい、と考えれば、企業は従業員の副業をポジティブに捉え、副業に対する消極的な「放置型容認」から、積極的な「支援型容認」を検討していくことが必要である。

執筆者紹介

青山 茜

シンクタンク本部
研究員

青山 茜

Akane Aoyama

大学卒業後、大手信販会社、自動車メーカー系金融総合サービス会社にて金融業界の営業を通算で5年経験。その後、元同僚の紹介でかねてより興味のあった分野であるマーケティングリサーチ業界へ転職。
マーケティングリサーチ業界では、フィールドワーク業務を経験後、データ集計・分析部にて調査結果データの集計・分析業務に従事。ここで多変量解析も学ぶ。そして企業内サーベイに出会い、労働現場にある課題を肌で感じ、この分野の研究への期待の大きさを実感。より深く関わっていきたいと考え転職。2017年5月より現職。

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