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HOMEコラム 外国人が嫌う日本人のマネジメントとは

執筆者:上席主任研究員 小林 祐児

「ダイバーシティ」の旗のもと、日本企業の組織マネジメントが大きな岐路を迎えている。これまで日本人の男性が中心を占め続けていた日本の職場は、女性活躍、シニアの雇用維持などによって一気に多様性を増してきている。そして、特に近年、日本の職場風景をガラリと変えているのが、外国人労働者の急速な流入だ。

しかし、こうした急速な多様性の増加によって、現場の上司のマネジメントは、なかなか対応できていない現状も見えてきている。パーソル総合研究所が行った調査を見れば、外国人をマネジメントする日本人上司の3割が「ノウハウがなく、手探りの状態」でのマネジメントを行っている。

同質性の高い職場のマネジメントは、「勘」と「経験」の世界でなんとかなった。自分の元上司、つまり「自分がされたマネジメント」を参考にすればよかったからだ。しかし、急激に増えた外国人部下のマネジメントについては「経験」には頼れず、参考になる客観的な羅針盤が必要だ。調査データから、具体的なマネジメント行動はどういったものかを示していきたい。(パーソル総合研究所「外国人部下を持つ日本人上司の意識・実態調査」)

  1. 日本に足りないマネジメント・スキルは、「言葉による表現力」
  2. いかにスキルを伸ばしていくか
  3. 常識の違いをどう乗り越えるか

日本に足りないマネジメント・スキルは、「言葉による表現力」

図1.【正社員】外国人材の定着・活躍を促すコミニケションスキル・マップ
図1.【正社員】外国人材の定着・活躍を促すコミニケションスキル・マップ

***:外国人材展着・活躍度を従属変数とした重回帰分析で有意な項目
相関係数が低すぎる項目は省略

図は、縦軸に外国人剤の定着に影響している重要度を、横軸に日本人上のスキルの保有率をみたものだ。注目すべきは、定着にとって重要性が高いにも関わらず、上司がスキルを保有している率の少ない「左上」の象限にあるスキルであり、ここに入るものが「要・改善」だと言える。反対に右上にくるのは、保有率が高く、かつ定着に有効なもの、つまり、日本人上司が「得意」とする領域だ。

日本人上司が得意なマネジメントから見てみよう。右上の象限に入るのは、「友好的な態度で相手に接している」「相手の意見や立場を尊重している」といった、対人的な「受容力」の高さを示す項目だ。相手と敵対せず、調和的ムードをつくるマネジメントは、日本人上司が比較的得意な領域だと言える。協調的な労使関係は70年代以来の日本型雇用の特徴であるが、現場レベルでもそうした和を優先するマネジメントはやはり根付いているようだ。

逆に苦手な領域はなんだろうか。左上の象限を見ると、「自分の考えを言葉でうまく伝えられている」という言語的な表現力が、明確な改善ポイントとして浮かび上がる。日本語のコミュニケーションにおいてしばしば指摘されることだが、「伝えたつもり」になってしまい、必要な情報が相手に伝わっていないことは多い。そうしたスキルの差が、外国人材の定着・活躍と正の相関関係にあることがわかる。

図2.【パート・アルバイト】外国人材の定着・活躍を促すコミニケションスキル・マップ
図2.【パート・アルバイト】外国人材の定着・活躍を促すコミニケションスキル・マップ

***:外国人材展着・活躍度を従属変数とした重回帰分析で有意な項目
相関係数が低すぎる項目は省略

パート・アルバイトのマネジメントにおいても、この「表現力」のスキルが改善領域に入ることは同様だ。また、ここでの特徴は、「観察力」と呼べるようなスキルも改善すべきものに当てはまってくることだ。「相手の考えを正しく読み取る」「感情や心理を敏感に感じ取る」など、相手の様子を見て反応や気持ちを汲み取っていくようなスキルも求められているのが特徴だ。パート・アルバイトの現場では、正社員よりも日本語能力が低い外国人材が多い。留学生や外国人の配偶者など、日本語での教育を終えていない従業員が多いため、意思の疎通はさらに難しくなる。そうした背景が、この観察力を必要としていることが示唆されうる。

いかにスキルを伸ばしていくか

日本語のコミュニケーションが文脈に強く依存するということは、同質性が高い日本人の「あうんの呼吸」ベースのコミュニケーションとしてしばしば説明されてきた。たしかに、他国と比べ人種や宗教の違いが顕著でなく、男性稼ぎ主モデルが確立している日本の職場は、メンバーの同質性が高い。
だが、それだけではない。そもそも日本の労働者の多くが、職務範囲が無限定で重複の多い働き方をしているという雇用システムに起因する特徴も考慮すべきだ。日本の労働者は、職務範囲を限定する意識が弱く、現場で都度発生した業務について柔軟に調整していくことを当然のように行っている。
つまり、日本の職場は、メンバーの同質性が高いことに加え、インフォーマルなコミュニケーションによって柔軟に仕事の進め方を決めていくという、二重の意味での文脈依存性をもっている。これは、従業員の職務範囲が明確な他の先進国のベーシックな働き方からは遠く離れる。他国では、そうした働き方は幹部層候補の上級ホワイトカラーに絞られるのが一般的だからだ。雇用されてしまえば、あとは役割外の仕事でも嫌がらずにやるということ自体が、外国人材の常識の範囲外だ。

常識の違いをどう乗り越えるか

こうした雇用システムに張り付いた「常識」の違いに対して、どのように対処していくことができるだろうか。
まず、職場の指示系統を見直す必要がある。そこで目指されるべき方向性は、やはり言葉によって明確に「表現」していくことに他ならない。そのためには、計画的な事業計画や業務進捗が強く求められるし、マネジメントする上司側意識の変革が必ず伴わなければならない。これは中長期的な「育成」の課題だ。日本人と同じ感覚のマネジメントでは、表現が不足してしまいがちだということを、これからの上司層は認識しなければならない。勘の良い人ならうまくこなせるだろうが、属人的な工夫で乗り切るような甘い段階ではない。

より短期的には、コミュニケーションの「様式」を整えることだ。外国人材のマネジメントツールの一つとして、一つ一つの業務に対して「業務指示書」を作成する企業もある。「いつまでに」「誰に」「どのように」「なにを」といった仕事の要素をすべて「文章」で指示するものだ。指示のプロセスとしては一手間かかるが、目の前のコミュニケーション齟齬を無くすには良い方法だろう。何度も見返すことができて、指示を受けてから実行にいたるまでの間で外国人材が迷いがちな判断が明確になるだろうし、文章ならば読み返すことができて便利だ。

コロナ・ショックの影響は大きいが、人口減少が進んでいく日本において、今後も外国人労働者は増えていくことは間違いない。外国人材のマネジメントが広く一般で必要になることは、歴史上初めての事態であり、企業・現場双方で力を注いでいく必要がある。


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上席主任研究員

小林 祐児

Yuji Kobayashi

NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年入社。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。

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