パーソル総合研究所

HOMEコラム ダイバーシティ職場で起こる「外国人受け入れショック」を防ぐには

執筆者:シンクタンク本部 小林 祐児

外国人材をマネジメントしている日本人上司が増えている。コロナ・ショックによる先の見えない経済不況に突入したが、一方で、日本の人口減少は構造的に続いていくし、すでに多くの外国人材が日本で働いている。マネジメントの課題はしばしば指摘されるところであるが、エビデンスをもって示しているものはほとんどない。外国人材について「直感」と「経験」で議論しても実りは少ない。

外国人材が近年急増したということはつまり、外国人材を「初めて」マネジメントするという上司もまた急増したということだ。外国人材急増の副作用として、日本人上司のほうが、不慣れな役割に対してストレスをため、離職してしまうということにつながっている。特に外国人材の多い職場は恒常的な人手不足であることが多く、現場マネジメント職についても多くの企業が人の確保に苦労している。そんななかで、外国人材をマネジメントする上司の負荷が高まっていることは大きな問題だ。パーソル総合研究所の調査でも、「強いストレスを感じることがある」と答えた日本人上司は、パート・アルバイトの上司で約4割、正社員の上司でも3割を超える。(パーソル総合研究所「外国人部下を持つ日本人上司の意識・実態調査」)

外国人を採用した時点で、上司自身も頭ではわかっているかもしれないが、いざ受け入れてマネジメントをし始めると、想定以上に苦労する場面が多いものだ。ここでは、こうした日本人上司が受け入れ前に想定した以上に感じた苦労を、外国人材の「受け入れショック」と呼ぶ。こうしたショックが高いほど、上司自身のストレスを高め、離職したい気持ちへとつながっていることが明らかになった。では、「受け入れショック」には、具体的にどのようなものがあり、どう対応していけばいいのか。調査データを基に見ていこう。

  1. 「文化の違い」で済ませるべきでない
  2. 現場マネジメントに迫られる「開国」

「文化の違い」で済ませるべきでない

調査データを参照すれば、上位には「自己主張が強かった」で46.1%、「日本の常識が通じない」が41.6%、「昇給の要求が強かった」が40.7%と続いた。多くの日本人上司が、日本人部下と比べて自己アピールの強さに想定以上のショックを感じている様子がうかがえる。

図1.外国人材の受け入れ時のショック(全12項目)
図1.外国人材の受け入れ時のショック(全12項目) ※6段階SD法聴取。グラフ数値は片側3段階選択肢の合計割合

こうしたデータをみて、日本と海外の「文化の違い」に着目することは容易だ。たしかに、日本の雇用習慣やマネジメントは独特な面も多く、異なる常識をもつ外国人材との間に齟齬を生みやすい。ただそれらは「国民性」といった大雑把な文化論で説明されるべきではなく、可変的な雇用習慣によって説明されるべき事象だ。
日本人が外国人に比べて職場での自己アピールが弱いのは、戦前の企業内身分制を打破して築かれてきた平等主義的な報酬体系や、戦後、企業別に組織されていった協調的な組合運動、職務範囲のあいまいさが生む仕事の相互依存性の高さといった雇用習慣によって、歴史的に形成されてきた。雇用の在り方に世界統一の「正解」は無く、それに起因するすれ違いもまた、変えることができるものである。

そして、データから見えたもう一つの重要な問題は、日本人上司側の「構え」の問題だ。
日本人上司は、決して「白紙」の状態で職場に外国人材を受け入れるわけではない。マネジメントをするにあたって、外国人材に対して、「既存のルールを守ってほしい」「完璧な成果を出してほしい」「空気を呼んでほしい」「暗黙の了解を理解してほしい」――日本人上司がもつ、外国人材へのこうした暗黙の規範意識が、受け入れショックを強める方向に影響していた。つまり、文化や常識へのギャップの存在に加えて、「こちら側に合わせるべきだ」という意識が、受け入れショックを増加させてしまっていることが示唆されている。

図2."外国人受け入れショック"が起こる要因

現場マネジメントに迫られる「開国」

対策としては何が考えられるだろうか。まず企業は、外国人材の受け入れを現場任せにせず、受け入れ時には越えるべき大きな「段差」があることを意識し、相応のサポートをするべきだ。現場では、日常業務に忙殺されながら、人事側からも「外国人材をわざわざ特別扱いすべきでない」として、事実上、なんのサポートも受けずにマネジメントを実施している上司も多い。しかし、現在のような急激に外国人材が増加している状況は、ある程度「特別扱い」されてしかるべき状況だろう。そうした言葉を、マネジメントへの支援を放置する都合の良い言い訳にしてはならない。

日本人上司は、受け入れに対する「構え」のレベルでも準備ができておらず、その準備不足が、日本人上司自身のストレスを増加させ、離職の可能性を高めていた。つまり、このような「想定外のショック」があることを事前に知っておくだけでもこうしたショックは防げる可能性がある。
例えば、上司への事前の研修や説明はもちろん、職場メンバーにも異文化への理解を求めるなど、組織風土を醸成することに時間は割かれてよい。また、すでに外国人材多く受け入れている職場や上司からの知識やノウハウの共有・蓄積はどんどん進めるべきだ。こうしたナレッジ・マネジメントは計画的・組織的に行ってこそ組織の力になっていく。
人口減少社会は、コロナ禍が収まればまた外国人材の流入が続いていくだろう。グローバルな労働移動は、世界的ロングトレンドであり、徐々に活発化してくはずだ。そうした中で、「これまでの自社の職場」や「これまでのマネジメント」に閉じこもることは得策でない。日本企業の職場が、真の意味で共生できる職場になるためには、こうした現場意識レベルの「開国」に本腰を入れるべきだ。


関連コンテンツ

執筆者紹介

小林祐児のプロフィール写真

上席主任研究員

小林 祐児

Yuji Kobayashi

NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年入社。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。

小林 祐児のプロフィール
小林 祐児の記事一覧

新着記事

パーソル総研 メルマガ

【経営者・人事部向け】

パーソル総研 メルマガ
パーソル総研 メルマガ

雇用や労働市場、人材マネジメント、キャリアなど 日々取り組んでいる調査・研究内容のレポートに加えて、
研究員やコンサルタント・講師のコラム、お得なセミナー・研修情報などをお届けします。

お問い合わせ

お問い合わせはこちら

PAGETOP
PAGETOP