公開日 2016/06/21
マネジメント職の転職者が入社後、新たな職場に定着し、活躍するにはどのような要素が重要なのか。転職経験のあるマネジメント職400人を対象に行った調査で、転職後の自身の変化について「転職は成功だと思える」との設問に対し、「とてもあてはまる」「ややあてはまる」と答えた人を「成功実感あり層」、「全くあてはまらない」「あまりあてはまらない」と答えた人を「成功実感なし層」とし(※参照:マネジメント職の転職の実態を探る)、「成功実感あり層」と「成功実感なし層」の回答傾向の単純比較により、成功実感に影響がありそうな要素を探った。その結果とともに、そこから見えてきた、転職者個人がとるべき行動と企業が行うべき支援について、簡単ではあるがご紹介したい。
転職者が新しい職場になじむには、企業側からの支援が重要であろう。では支援の主体になっているのは誰か。「組織への適応をサポートしてくれた人」について聞くと、「成功実感あり層」で最も多かった回答は「直属の上司」で37.2%を占め、「成功実感なし層」の14.5%と22.7ポイントのギャップがあった。また、「成功実感あり層」は「同じ職場の上位者(直属の上司以外)」(16.4%)や「経営者」(13.1%)も高く、転職先の上位者に支援者が多いことが分かる。
一方、「成功実感なし層」で最も回答が多かったのは「この中にはいない」で34.5%である。転職先で「まずはお手並み拝見」と、上司や周囲から十分な支援を受けられていない様子が想像される。
組織への適応をサポートしてくれた人
次に、ギャップ1の「組織への適応をサポートしてくれた人」から受けたサポート内容を聞いたところ、すべての項目で「成功実感あり層」のほうが、「成功実感なし層」に比べ回答割合が高い結果になった。なかでもギャップが大きく生じたものは、社内関係者とのつながりを強めるサポートについてだ。
例えば、「社内ネットワークづくりとして顔合わせなど」や「社内関係者との懇親会」などでは30ポイント前後のギャップがあった。これらの結果から、「成功実感あり層」の転職者が、業務に必要な情報だけでなく、人的ネットワークを構築するための手厚いサポートを受けられていることがうかがえる。
どんなサポートを受けたか
転職先の職場風土について聞いた設問でも、総じて「成功実感あり層」のほうが「成功実感なし層」に比べ回答割合が高く、最もギャップが大きかったのは「十分なコミュニケーションが取られていた」であった。これ以外にも「気軽にアドバイスを求めることができる」「人を育てるため、みんなで教え合う」など、職場のコミュニケーションや相互支援に関する項目でギャップが開く傾向が見られた。
転職先の職場風土について
転職直後に困ったことや課題に感じたことを挙げる設問では、全体的に「成功実感なし層」の回答が「成功実感あり層」を上回り、「過去の仕事の信念が通用せず困惑した」で最もギャップが見られた。また、社内人脈がないことや職場での自身の役割・評価基準が分からないといった項目でもギャップが大きかった。「成功実感なし層」は前職との考え方のズレや求められている役割がつかめず困惑しているようだ。
転職直後に困ったことや課題に感じたこと
ギャップ4で示したような転職直後の課題を「成功実感あり層」はどう解決しているのか。現在の会社や職場における自分の働き方や考えについて聞いた設問のギャップから、そのヒントを探ってみる。
まず「成功実感あり層」と「成功実感なし層」で最もギャップが大きかったのが、「自分の仕事が会社にどう役立っているか分かっている」だ。「成功実感あり層」は、会社における自分の仕事の位置づけの明確化、見方を変えると会社から期待される役割の明確化と把握ができているといえよう。また、2番目にギャップが大きいのが「部門の同僚が職場にもたらす知識・技術を分かっている」だったことから、「成功実感あり層」は、人的ネットワークの把握もできていることが分かる。
現在の会社や職場における自分の働き方や考えについて
転職したマネジメント職の間で、転職成否の捉え方にギャップが生じるのはなぜか。ギャップ1~3の結果から、情報提供や社内ネットワークの構築などに関する支援に加え、コミュニケーションの活発さや相互支援があるかどうかといった、転職者を受け入れる職場風土が鍵となっていそうだ。
ギャップ4は採用自体のミスマッチの可能性とともに、転職者に対し、企業が自社における思考様式や行動様式を明示し考え方のズレを調整したり、転職者に期待する役割を明確化したりする機会の必要性を示唆している。
以上の内容は、ギャップ5からも支持されよう。前職で実績のあるマネジメント職だからといって支援の手を緩めず、必要な支援をしつつ業務は任せるというマネジメントを意識的に行うことが有効だろう。また、転職者個人としては、自ら仕事に必要な資源の獲得に動きつつ、自身の役割を周囲と擦り合わせて明確化していく努力が重要といえそうだ。
■調査概要
・調査名:マネジメント職の転職実態調査
・調査主体:インテリジェンスHITO総合研究所
・調査対象者:管理職から管理職へ転職し、その後現在も管理職の人 200名、管理職から一般メンバーへ転職し、その後現在は管理職の人 200名 計400名
・調査期間:2015年12月25日~ 27日
・調査方法:インターネット調査
※引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所(旧インテリジェンスHITO総合研究所)「マネジメント職の転職実態調査(2015)」
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