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株式会社TSIホールディングス様/人事制度設計

ポジション・バリュー(職務価値)を軸に、ホールディングス組織の新人事制度を再構築するとともに運用力向上の取り組みを共同作業で実施

株式会社TSIホールディングス様

「ナノ・ユニバース」や「ナチュラルビューティーベーシック」、「マーガレット・ハウエル」、「ローズバッド」など、数多くの人気ブランドを展開する株式会社TSIホールディングス。東京スタイルとサンエー・インターナショナルという老舗アパレル企業の統合により共同持株会社として誕生した同社では、双方の企業文化とそこに根差した人事思想の違いを捉えながら、「ポジション・バリュー(職務価値)」をベースとした人事コア制度(等級・評価・処遇制度)の再構築を行いました。その狙いや定着に向けた工夫について、同社管理本部人事部の中本文太部長、辻本マリコ氏にお話を伺いました。

CONTENTS

  1. 組織再編~ブランドの個性を、より際立たせるために
  2. 人事制度改定の狙いと課題
  3. 人事制度を再構築
  4. 新制度展開時の注力点
  5. パーソル総合研究所のコンサルティングに対する評価
  6. 今後の展望

組織再編~ブランドの個性を、より際立たせるために

― 御社の統合の経緯をお聞かせください。

中本氏:当社は、偶然にも同じ1949年創業の老舗アパレル企業である東京スタイルとサンエー・インターナショナルの統合により、共同持株会社として2011年に誕生しました。リーマンショック後、百貨店の統合が先行して進む中、アパレルメーカー同士の統合は業界再編の先陣を切るチャレンジでした。統合直後の組織は1層目にTSIホールディングス、2層目に東京スタイルとサンエー・インターナショナル、3層目に双方の子会社を配置するものでした。統合後しばらく経過した2014年、2層目・3層目に位置づけられていたすべての子会社がTSIホールディングスの直下に入る2層構造の文鎮型組織へと再編しました。よりブランドの個性を際立たせるため、よりブランドのDNAを濃くするための組織再編であり、人事においては子会社にも人事機能を設け、例えば採用は、再編後はブランドにより適した人材を子会社人事が採用する等、機能の組み換えを行いました。以降、数年が経過した現在も業績の推移や外部環境の変化に対応した経営・ガバナンスのあり方を常に検討しつつ、グループ全体でよりスケールメリットを追求すべき領域の見直しを行う等、常に変革の途上にあります。

人事制度改定の狙いと課題

― 統合を経て、2018年に1層目であるTSIホールディングスの人事制度を見直されていますが、どのような課題があったのでしょうか。

中本氏:1層目であるTSIホールディングスはグループ全体の事業活動を管理・統治するため設立された会社であり、東京スタイルとサンエー・インターナショナルから主に管理系部門を集約しました。両社は創業年こそ同じながら、個性や文化はまったく異なる会社でした。東京スタイルは百貨店の婦人服売り場を主力とするブランド展開を行い、人事においては年功が重視されていました。一方のサンエー・インターナショナルは多様なチャネルに対応したブランドを展開し、成果重視の人事制度をいち早く導入・運用していました。アパレルメーカーという共通項はあるものの、採用方針や平均年齢から社員の服装に至るまで真逆の個性を持っていました。

株式会社TSIホールディングス 管理本部 人事部長 中本文太氏

株式会社TSIホールディングス
管理本部 人事部長 中本文太氏

業界の競争激化や技術進展によって職務の価値が大きく変わっていく時代において、年功で職務の価値を測ることは困難です。2014年の組織再編時、1層目としてのTSIホールディングスの人事制度を再考し、サンエー・インターナショナルが施行していた成果重視の人事制度をベースに新人事制度を導入しました。不利益が生じないよう報酬を維持する形での移行プロセスを組み、それまでの報酬と最も近い等級にスライドさせました。

辻本氏:しかし長らく年功運用に慣れていた管理職が多く、成果重視の人事制度を導入したとはいえ、どうしても運用は年功に引っ張られがちでした。企業競争力を高めるためには若手や中堅層でも成果を適正に評価される運用を徹底することが必要です。制度と運用が不整合な状態で数年経過し、経営からも「ポジション・バリュー(職務価値)」というキーワードが挙がり、人事制度を再考したいとの要望がありました。

中本氏:人事からは経営に対し「制度ではなく、運用に課題がある」という点を伝えました。そして協議を重ね、運用の課題を解決するためには、仕組みそのものを年功的視点が入り込みにくいものに改訂する必要があると考え、人事制度の見直しに踏み切ったのです。

人事制度を再構築

― 人事制度を見直すにあたって注力された点はどのようなことでしたか。

株式会社TSIホールディングス 管理本部 人事部 辻本マリコ氏

株式会社TSIホールディングス
管理本部 人事部 辻本マリコ氏

辻本氏:経営から挙がった「ポジション・バリュー(職務価値)」のキーワードをいかに紐解き人事制度に落とし込んでいくかというミッションがありましたので、まず私たちが世の中にどのような仕組みがあるかインプットするため、複数のコンサルティング会社にお問い合わせさせていただきました。

中本氏:いくつかご提案いただいた中には、我々の要望に近い制度思想はあるものの、制度を導入した後もずっとコンサルティングの手を借り続けなければならないような、複雑な運用のものもありました。そんな中、パーソル総合研究所様からはポジション・バリュー(職務価値)を測定するための職務評価ツールを早い段階から提案いただき、そのツールの明解さから、これであればトライ&エラーを重ねながらも運用していけるだろう、と現実的なイメージを持つことができました。

パーソル総合研究所様とセッションを重ねるうち、改定前の人事制度の課題も整理することができました。旧人事制度では等級が大括りに3つのみの設定であり、管理職相当である最上位等級はリーダークラスから執行役員まで職責サイズの様々な階層が同じ等級に括られていましたが、4等級に分割しました。等級の検討にあたっては職務評価ツールを用いて例えば「財務経理部長」や「経営企画課長」等、実在する様々な役職のポジション・バリュー(職務価値)を試行的に測定しました。

また、役職の有無にかかわらずポジション・バリュー(職務価値)の高い機能も存在します。特に事業戦略に照らし強化が必要なIT、ビッグデータ解析等の高度な専門性を持つ人材は市場でも獲得が困難ですが、改定前の人事制度の年功や役職者優位の運用においては採用競争力が低く、採用チャンスを逃すこともありました。ポジション・バリュー(職務価値)の測定においては、縦軸を役割遂行能力要件、横軸を役割責任要件とし、それらの掛け合わせで職責サイズの面積の広さが決定します。役職者ではないが専門性の高い人材も、マネジメント人数が多く実務を束ねている人材も、同じ職務評価ツールを使い、面積の広さによりポジション・バリュー(職務価値)を決定することができます。管理職相当等級を4等級に整理し、さらに職務に応じマネジメント、エキスパートの2つの職群を設定しました。

このようにポジション・バリュー(職務価値)を軸に等級、職群の概念を整理した後、経営理念や中長期戦略と紐づける形で等級別に求める人材像、コンピテンシー項目を見直し、考課フローやウェイト配分等、考課運用も整理していきました。

辻本氏:これらの検討は2017年後半からスタートし、経営承認を得て2018年9月より新人事制度を施行し、半期を移行期間と位置づけました。ポジション・バリュー(職務価値)を測定した結果、旧人事制度では高い報酬を得ていた社員が、新人事制度に移行した結果、報酬が下がるため、報酬ギャップを調整手当として補填するケースもありましたが、2019年3月に調整手当も廃止し、新制度への移行を完了しました。同時に新人事制度による考課、格付運用も一通り実施しました。

新制度展開時の注力点

― 新制度を展開する際に注力された点とは?

中本氏:旧人事制度の課題は、制度そのものではなく運用面でした。新たにポジション・バリュー(職務価値)の概念を導入したからといって、すべてが解決するわけではありません。運用面で年功重視が続くようであれば、制度を入れ替えても課題は残ります。そのため制度運用の適正化に最大限の努力を払いました。例えばポジション・バリュー(職務価値)の測定にあたっても、管理職の独断で運用しないよう、必ず人事部との協議の上で決定しています。

辻本氏:考課や格付の実施においても、必ず人事に集約し、部門長と個別にコミュニケーションしながら調整する運用に変えました。部門長は自部門の考課・格付案を策定することはできますが、自身の評価が甘いか辛いかはわからないものです。人事との調整においては、考課者単位で甘辛も数値化し開示します。格付決定にあたっては、全社を横軸で捉えた場合、本当にその社員がその格付で妥当か、他部門の同一等級にいる社員と比較するなど情報共有しながら見極めます。ポジション・バリュー(職務価値)が高いか、価値を発揮しているかを冷静に見極めるため、「定例業務をしっかりこなした」「いつも頑張っている」等の理由で運用がブレないように対面でコミュニケーションしながら制度思想を浸透するように図っています。

新制度展開時の注力点

中本氏:人が人を評価するということの限界は、いかに素晴らしい制度を整えようと必ず生じるものです。「今の役割・ミッションに基づく項目評価ではあなたのポジション・バリューは4です」とポジション・バリュー(職務価値)を決める段階においても、数値化には限界があります。制度をどこまでも細かくロジカルに細分化、数値化することで精度や納得度を高めるという考え方もありますが、結局、会社がどのような思想・文化を持ち、どのような人材を評価するのか、会社の意思や、それを反映した人事制度の思想が重要であり、制度運用においては、考課者から社員までそれを理解しなければ意味がありません。だからこそ、丁寧にコミュニケーションをとることを念頭において、新人事制度の浸透を図りました。

辻本氏:結果として現在、制度の枠組み自体に異を唱える声は出てきていません。

中本氏:新制度導入の結果、等級、処遇が上がる人もいれば下がる人もいる。全社員がハッピーというわけにはいきませんが、若手・中堅層の中に、これまで年功的運用では処遇が低かったけれども、ポジション・バリュー(職務価値)が高い社員の存在が明らかになるなど、優秀な若手・中堅層を適正に処遇できるようになってきています。こうした人材が離職するような潜在的リスクも減らしていけるのではないかと考えています。

パーソル総合研究所のコンサルティングに対する評価

― パーソル総合研究所のコンサルティングを導入されて、どのような評価をされていますか。

辻本氏:パーソル総合研究所様への期待は、我々と同じように企業統合を経験されていて、文化や思想の異なる企業をマージしていく、経験と実績を持っていらっしゃる点でした。人事制度の改定は制度を構築することにとどまらず、経営や社員に対して人事からコミュニケーションを重ねる必要があります。経営への中間報告、説明会での説明内容、考課者研修等、例えばどの資料をどのタイミングで誰に対して説明していくか、コミュニケーションをどう図るかについて、経験と実績を持ってアドバイスをいただけました。

中本氏:社員への説明会は4回実施し、管理職を対象とした考課者研修では、パーソル総合研究所様に講師として登壇いただきました。考課者研修では、開口一番「制度のせいにしないでください。運用が要です」と、運用の重要性をコンサルタントの立場から考課者に伝えていただけたことが、その後の運用にも大きく影響していると思います。また「自分が部下だった経験の中で、その時々の上司の良い印象と悪い印象を振り返った時、嫌な上司に評価された人事制度に良い印象は抱かない。人事制度のせいではなくても、です。では考課者として、良い上司であるにはどうすべきか」と制度以前の、マネジメントとしての心構えやスキルにまで踏み込んだ研修をしていただきました。

パーソル総合研究所のコンサルティングに対する評価

辻本氏:こうした考課者研修を実施した上で、人事が考課に入って調整を図ったこともあり、考課者間で、横串で目線を合わせるという視点が生まれてきています。「自分はきちんと評価できているか」と良い意味での疑問を持ってくれる考課者も出てきており、考課者研修を定期的に実施してほしいという前向きな声も聞かれます。

中本氏:人事制度そのものは、課題をきちんと提示できれば、細かさに違いはあれ、どのコンサルティング会社様でも構築できたと思います。しかし重要なのは人事制度そのものではなく、運用する側をどう変えるか。その点を現実的にイメージし、理解してくださって、運用上の提案、サポートをいただけたことがスムーズな導入に繋がったと思います。

今後の展望

― 新制度の本格運用が始まりましたが、今後の抱負をお聞かせください。

辻本氏:人事制度は会社の思想やミッションからブレイクダウンしたものであり、会社が求める人材像が等級別に書かれており、行動評価項目にも落とし込まれているわけですが、まだまだ共通言語になっていないと感じています。自身のキャリアプランや、どうすればキャリアアップできるかを考える際、例えば自分の等級よりひとつ上の等級に求められる人材像を読んでみる、意識してみるなど、モチベーションの素にもなるはずです。そのようなことを現在も一部の考課者は社員に伝えられていますが、考課者の認識にはばらつきがあるため、その認識を合わせ高く底上げしていくことが我々の役割だと考えています。

中本氏:最終目標は人事が介入せずに、人事制度が適正に運用される状態にすることです。当たり前のことですが、制度はあくまでもツールでしかありません。制度が変わったと言っても、仕事そのものと等級や報酬をリンクさせることができるのは、日常の上司の指示やコミュニケーションでしかありません。年に2回考課をするためだけに制度を使うのではなく、考課者がチームを率いて目標を達成するためのツールとして位置づけられるように、日々の仕事の中に根付かせることができるように、サポートできればと思います。

担当コンサルタントから

環境変化が激しいアパレル業界。過去のしがらみにとらわれず事業価値を上げていくための人材マネジメントの姿をTSIホールディングス様と共に追求したプロジェクトでした。
異なる2社を包含した旧制度。柔軟さを持ちながらも、未来への価値創造の仕組みになっていない状況。現状維持でままならないことは明らかでしたが、変えていくには人事の方の情熱、信念と強く、しなやかな論理が必要でした。こうした中で相互に知恵を出し合い最適解を導き出す。打ち合わせはいつも新鮮な刺激に満ちた場でした。
制度の限界と運用の重要性をご理解いただいた中で、評価者研修も共に考え、管理職の意識改革もお手伝いさせていただきました。人材マネジメントの更なる発展にむけて、今後もご協力をさせていただきたいと考えています

パーソル総合研究所 シニアマネジャー 石橋 誉・マネジャー 迎 美鈴

取材:2019年5月。部署名、役職名は取材当時のものです。

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