事業ポートフォリオ多角化・グローバル事業拡大を実現する長期人材戦略の策定・実行支援

当クライアント企業(以下、本社と同義)はインフラを担う運輸サービス業を核に長期的に事業成長を遂げている企業でした。
一方で、多様な環境変化に対応し今後も持続的な成長を実現するためには、これまでに培ってきた創業事業に集中するだけではなく、事業ポートフォリオの多角化とグローバル事業の拡大が必要であると、新たな長期経営戦略が策定されました。

この新経営戦略には、同社としてこれまでに経験のない領域への果敢なチャレンジが不可欠であり、その実現にあたっては人事の考え方・組織風土・これまでの慣習等を大きく変える必要がありました。
そして、同社CHROより「人事としてこの経営戦略実現を推進するため中長期的観点で何を目指し何を実施すべきか」「これまでグループを包括した人事ビジョンや戦略が存在しなかった同社において、何から手を付けどのような優先順位・スピード感で進めるべきか」とのご相談を受け、二人三脚でのプロジェクトがスタートしました。

CONTENTS

  1. グループ共通人材ビジョンと人材戦略の設計
  2. 長期人材戦略実行主体としての人事部門の立ち上げを支援
  3. 長期人材戦略を推進するアクションプラン策定と実行サポート支援

グループ共通人材ビジョンと人材戦略の設計

⾧期経営戦略に示された事業ポートフォリオの多角化やグローバル事業拡大の実現には、同社単体だけではなく、グループとしての力やシナジーを高めることが必要であり、本件で視野に入れるべき対象は国内外のグループ会社百社以上におよびました。
しかし、多種多様な会社があるため規模や文化の違いは顕著であり、これまで事業的な交流はあったものの、人事間のコミュニケーションは希薄でした。そのためまずは、グループ一丸として目指すべき方向性とアクションを明確にすべく、グループ全体を束ねる人材ビジョンとグループ人材戦略を策定しました。

これは同社にとって初めての取り組みであり、かつ、ジョブローテーションを通じた人材育成を主としていた同社では「人事のプロ」が不足していました。そのため、初期段階では毎週複数回のミーティングを重ね、他社事例や人事トレンドなどの情報のインプットから始めて成果物のイメージを固め、終盤ではまさに二人三脚で推敲を重ねつつ、約半年をかけてグループ人材ビジョンと人材戦略の策定を支援しました。

短期間集中型のプロジェクトではありましたが、経営メンバーであるCHRO自らプロジェクトミーティングに参加頂けたことで、いい意味でこれまでの人事慣習にとらわれず、経営目線でのディスカッションができたことはとても有意義でした。
結果として経営戦略実現に向けた「あるべき」ベースでのビジョン・戦略策定に至り、社外発表後は社外の人事のプロからも賞賛される内容にまで磨き上げることができました。

図表 全体方針(人材ビジョン)の考え方

長期人材戦略実行主体としての人事部門の立ち上げを支援

長期人材戦略の策定と実行にあたっては、従来の「本社をスコープとする人事部門」とは別に、グループ全体を統括するための新人事部門立ち上げが急務であり、前述の人材ビジョン・人材戦略策定と同時並行で支援しました。

具体的には、本部署の役割・機能および人員体制について部署名の検討から始まり、どのような機能が必要なのか、他社事例やトレンドを抑えつつ、同社に相応しい部署立上げを支援しました。
人員も限られる中で初めから完璧な体制整備は難しい一方、経営の要望にスピーディーに応えることも必要なため、まずは部署の立上げを優先しつつ、その先も見据え約10年の長期スパンをフェーズ1,2,3に分割し、各フェーズで必要な将来組織体制を描けるように支援しました。

このように、「あるべき」や「正解の型」の押しつけではなく、その時々の状況や組織の成熟度合いに応じて最適解を一緒に作る姿勢は、先方からも他コンサルとは明らかにアプローチが異なると評価を頂きました。
あるべきと現状の折り合いをつけつつ、ただし目的はぶらさず経営の要望にベストを尽くす、今よりも一歩挑戦的な落としどころを一緒に見つけていくのが弊社支援の特徴です。

長期人材戦略を推進するアクションプラン策定と実行サポート支援

続いて長期人材戦略を実際の行動に促すためのアクションプランの設計を行いました。その中で要としたのは、国内外グループ全体での適所適材の基盤作りです。

まず、グループ全体の戦略的に重要なポジションの特定とその要件・ジョブディスクリプション策定を通じた「ポジションの見える化」、および各ポジションの現任者とその候補者に対するスキルアセスメントを実施し「人材の見える化」を行いました。人材の見える化については、各グループで異なる人事制度があることを踏まえ、これとは別に新基準としてグループ共通スキル体系を整え、一定階層以上の人材を明確にし、統一した評価を可能にしました。

この基盤が整ったことにより、これまで慣習的に本社人材に占有されていたグループの重要なポジションに外国籍の人材や本社以外の企業在籍者など、グループ全体から最適人材が抜擢されるようになりました。
また、次ステップとなる次世代リーダー育成も、これまで本社および一部の国内のみで行ってきた対象幅をグループ・グローバルに広げました。ただし、全グループの人材育成を本社だけで支援することは困難であるため、本社では一定階層以上の人材に対する育成指針を設定し、研修や配置、薫陶などを、本社が示したガイドラインに沿って、各社・各地域で行う仕組みとしました。

とはいえ、これまで希薄であったグループ各社との関係性の中で、一方的に本社からの依頼ばかりが飛んでくるのは当然グループ各社からの反発も大きいことが予想されたため、その前段としてグループ各社とのコミュニケーションハブの設定と定期的なコミュニケーション機会の設計も行いました。
新部署のトップ自らが海外含め各所を回って対面でのコミュニケーションを行い、人材ビジョンと人材戦略の理解・浸透を促すと共に、複数回にわたるオンライン含めたコミュニケーションやイントラネット等を通じた発信を通じ、理解促進・信頼関係構築を行いました。

今後は各社・各地域でのベストプラクティスの共有など、本社からの一方向ではなく双方向のコミュニケーションを活性化していく予定です。

まとめ

同社にとって初めての取り組みが多かったことから、基盤作りからスムーズな運用に移るまで、徹底的な現場志向による地に足のついたコンサルティングを行いました。

戦略や制度設計のみならず、長期人材戦略の実行主体である人事部門の立ち上げやアクションプラン設計まで運用がスムーズに乗るための実効性のある施策・制度設計を行うことで、1年間の運用を経て、新人事部門が実感値を持ちながら進めていける体制も整いました。

既に、適所適材実現に向けた人事異動や次世代リーダー育成もスタートしており、外国人人材や女性人材の重要なポジションへの登用も始まり、事業ポートフォリオの転換とグローバル事業拡大に向けた人材戦略領域の基盤作りに大きく貢献出来たと考えています。

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