不動産会社の若手育成に対する育成担当と管理職の意識を並行的に変えるワークショップ

当クライアント企業では、各営業拠点における目標達成および成長拡大の実現にむけて拠点長(管理職)を中心とした組織一体での事業活動と、それを可能にする若手層の早期戦力化が重要視されていました。

一方で、現場では計画的な育成がされておらず、若手社員は必要な知識や情報、スキルが不十分なまま営業活動を行っているという課題感をうけて、既存のOJT制度の検証とそれを踏まえた新育成施策の設計を目的に当プロジェクトは立ち上がりました。

CONTENTS

  1. 根本課題を見極めた上でプロジェクト目的を設定
  2. 当事者意識を育てる対話型ワークショップの採用
  3. 縦連携と横連携の双方に働きかけるプログラム設計

根本課題を見極めた上でプロジェクト目的を設定

若手育成の課題は企業ごとに要因が異なるため、画一的な育成施策を行うのではなく、その根本課題を見極めた施策設計が重要です。今回のプロジェクトでは同社が抱える若手育成の課題を把握するため、社内で実施していた既存のOJT制度に関する社員アンケートの結果を改めて分析することからスタートしました。

分析の結果、若手育成が思惑通りに進まない要因として、育成の仕組みではなく拠点長の若手層育成への関心・関与が薄く、現場任せとなり、結果としてOJT担当者が若手社員に対して適切な働きかけができていないという実態が浮かび上がってきました。
このことから、拠点長とOJT担当者の意識を変えない限り、若手育成の課題は解決しないと考え、プロジェクトの目的を当初の「育成施策の構築」からより本質的な「拠点長とOJT担当者の意識変革と、中核メンバーが連携しながら若手を育成する土壌の整備」へと転換することを決めました。

図表1 育成施策が浸透しない、現場での育成がやりきれない要因

当事者意識を育てる対話型ワークショップの採用

「若手育成の土壌整備」にむけては、2つの重要課題を設定しました。 1つめは若手社員の早期戦力化方法の確立です。同社では若手社員が習得すべき知識・情報やスキルが整理・明示されておらず、育成の仕組みも整っていなかったため、OJT担当者が独自のやり方で育成を行っていました。
それに加え、OJT担当者はどうしても自身の業務が優先となってしまうため、若手の教育が後回しになり、質・量ともに若手社員へ十分な教育・フォローがなされていない状況でした。その打開策として、明確な若手社員育成ゴールの設定とそのゴール達成に向けたメソッドや仕組みの整備が有効と考えました。

2つめは拠点長のマネジメント意識の転換です。若手社員の育成責任者でもあるべき各拠点長の責任・決裁権限は多岐に及び、ゆえに業績管理が最優先事項となり、組織や人材のマネジメントにあまり意識が向けられていませんでした。
その結果、拠点長は若手育成をOJT担当者に一任するが、任されたOJT担当者は何をどのように教えるべきかわからずに、また自身のリソースを育成に割り当てることも叶わず、結局必要な育成がなされないため、若手の戦力化に時間がかかり、拠点長含むメンバーの業務負荷が改善されないというサイクルに陥っていました。

この2つの重要課題にアプローチする取り組みとして、当プロジェクトでは、「若手の早期戦力化の阻害要因」や「それに対する対策・取り組み」に関するディスカッションと、それを踏まえた育成計画立案を行うワークショップを拠点長とOJT担当者の両者に対して実施しました。
若手層の早期戦力化の要点を現場視点で洗い出し、若手社員の早期戦力化方法の確立をするとともに、若手育成のキーマンである拠点長とOJT担当者が自ら問題に向き合い、何に取り組むべきかを自分たちで具体化することを通して当事者意識を醸成することを目指したものです。

図表2 ワークショップ後に目指す姿(チームワークによる継続的人材育成)

縦連携と横連携の双方に働きかけるプログラム設計

ワークショップは3回構成で実施しました。
第1回では、OJT担当者が集まり、「若手の育成阻害要因」を洗い出し、「若手育成にむけて本人、OJT担当者、拠点長が取り組むべき課題」について検討を行いました。
第2回では、第1回でOJT担当者が策定した「若手育成にむけて本人、OJT担当者、拠点長が取り組むべき課題」を拠点長がブラッシュアップし、さらに、組織的に行うべき課題の具体化し、第3回では、OJT担当者と拠点長の両者が集い、第1回および第2回の検討・議論内容も踏まえて、自分たちの拠点における若手育成の目標と計画を立案しました。

これらの役割別ワークショップ実施の背景には、異なる環境や社内外の人間関係の中で培った職務経験に基づいた他社員との意見交換を通じて、自らのOJT担当者や拠点長としての課題認識を促す意図があります。
また、同じ責任・役割を担う者同士が集まり、普段は話しにくい自身の悩みや弱みを共有しつつ、どう解決するかを話し合うことで醸成される仲間意識が、中長期的な計画遂行につながると考えました。

図表3 ワークショップを採用する狙い

まとめ

ワークショップ受講後コメントでは、「自身の役割を理解できた」「業績管理だけでなく、人材マネジメントの必要性を感じた」「人材育成のビジョンやツールが共有できてよかった」といった、前向きな意見が多く、当プロジェクトの最終ゴールである若手育成の土壌整備に大きく貢献できたと考えています。

一方で、1度の研修で人材育成の意識や取り組みを定着させることは難しく、ワークショップで策定した育成計画とアクションプランの遂行を支援する仕組み作りといった中長期的な働きかけが必要不可欠であると考えています。

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