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HOMEコラム 外国人留学生の日本での就業を阻む要因

執筆者:研究員 青山 茜

グローバル戦略を展開する一環として日本政府が2008年に策定した留学生30万人計画は、目標としていた「2020年までに」という期間を待たずに達成された。しかし、受入れの数値目標は達成されたものの、留学生の日本での就職率は57.4%に留まり(注1)、日本人大学生の就職率97.6%には遠く及ばない(注2)。※
この背景には何があるのか。パーソル総合研究所がパーソルキャリアの「CAMP」(キャリア教育支援プログラム)と実施した共同調査(注3)のデータをもとに、外国人留学生の日本での就業を阻む要因を紐解いていきたい。

注1:平成29年度 私費外国人留学生生活実態調査/平成29年度外国人留学生進路状況調査結果(日本学生支援機構)のデータから筆者算出
注2:平成30年度大学等卒業者の就職状況調査(文部科学省)
注3:パーソル総合研究所×CAMP「外国人留学生の就職活動と入社後の実態に関する定量調査」「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」
※就職率は学部生の数値を引用

  1. 「将来、独立したい」外国人留学生は58.9%、日本人学生は23.3%
  2. 「大手志向」「身につくスキル」重視の外国人留学生
  3. 外国人留学生は就職活動中に「やりたいことが決まっている」
  4. "職種を問わない採用"に違和感
  5. 外国人留学生の就職率が低い要因
  6. 優秀な外国人留学生獲得のために企業がおこなうべきこと
  7. 最後に

「将来、独立したい」外国人留学生は58.9%、日本人学生は23.3%

まず、外国人留学生のキャリア意識について触れていきたい。外国人留学生と日本人学生のキャリア意識を比較してみると(図1)、外国人留学生の独立志向の高さが際立つ一方で、日本人学生は安定志向の高さが目立っている。特に、独立志向の数値GAPは大きく、一見すると衝撃的であるが、母国を離れて海外で学ぶ意欲のある外国人留学生に積極性や自立心が備わっていることは想像に難くない。

図1.キャリア意識 外国人留学生と日本人の比較
図1.キャリア意識 外国人留学生と日本人の比較図1.キャリア意識 外国人留学生と日本人の比較

「大手志向」「身につくスキル」重視の外国人留学生

次に、外国人留学生は就職先選びにおいて何を重視しているのか。日本人学生との比較で見てみると(図2)、「知名度の高い会社であること」は2.15倍の開きがあり、外国人留学生が非常に重視していることがわかる。これは「知名度の高い会社」は、「母国でも名前が知られている会社」と考え、帰国したときに職歴として優位に働くことを念頭においているからだろう。
また、「どこでも通用するスキルが身につくこと」や「若いうちから活躍できること」についても日本人学生よりも重視している。将来の独立を視野に入れる外国人留学生にとっては、スキル習得や成長機会に恵まれることは、就職先選びにおいて重要なファクターであるといえる。一方、日本人学生は「安定して長く働けること」や「仕事とプライベートが両立できること」など、雇用の安定や働きやすさを重視していることが読み取れる。
このように就職先選びの重視点においても、外国人留学生と日本人学生の傾向は大きく異なることが明らかになった。

図2.就職先選びにおいて重視していること
図2.就職先選びにおいて重視していること図2.就職先選びにおいて重視していること

外国人留学生は就職活動中に「やりたいことが決まっている」

ここからは、就職活動について、日本人学生との違いを見てみる。
まずは、「就職活動開始時期」と「やりたいことが決まった時期」の関係性を見てみると(図3)、外国人留学生は就職活動の開始時期とやりたいことが決まった時期がリンクしているが、日本人学生はタイミングにズレが生じている。この結果から、外国人留学生はやりたいことが決まった上で就職活動に臨んでいる学生が多く、日本人学生はやりたいことが明確に決まらないまま就職活動を行う学生が一定数いることが読み取れる。

図3.「就職活動開始時期」「やりたいことが決まった時期」の比較
図3.「就職活動開始時期」「やりたいことが決まった時期」の比較図3.「就職活動開始時期」「やりたいことが決まった時期」の比較

"職種を問わない採用"に違和感

次に、外国人留学生が日本の就職活動を通して感じている「日本の就職活動のあり方への違和感」にも触れておきたい。
「職種を問わずに採用していること(57.5%)」「入社後に配属部署が決まること(54.3%)」など、入社する前に入社後の具体的な業務をイメージできない状態に、過半数を超える外国人留学生が違和感を抱いていることがわかった。これらの違和感は、外国人留学生にとっての「グローバル・スタンダード」は、「ジョブ型」雇用であることからきているのだろう。やりたいことが決まっている留学生にとって、入社後に行う業務がイメージできないことはマイナスでしかない。そのような状況に違和感を抱くことは納得の結果である。

外国人留学生の就職率が低い要因

以上の調査結果から、日本での就業を希望する外国人留学生が就職に至らない要因として2点推察される。

1点目は、外国人留学生の大手志向の強さである。おそらく多くの外国人留学生は、大手企業に絞り込んだ就職活動を行っていると考えられる。内定をもらえなければ日本での就職を諦める、もしくはタイムリミットが来てしまい「進学か母国への帰国」の選択を余儀なくされるケースがあるだろう。

2点目は、日本の新卒採用で一般的な「総合職採用」である。日本企業の多くはメンバーシップ型雇用と呼ばれる「職種を限定しない」総合職として新人を採用し、入社後しばらく経ってようやく配属を決める。しかし、留学生側は自身のやりたいことが決まっている傾向が強いため、入社後の具体的な業務、身につくスキル、キャリアのイメージがつかず、自分の意向をかなえられるか分からない状況では、応募になかなか踏み切れないことは容易に想像がつく。

優秀な外国人留学生獲得のために企業がおこなうべきこと

それでは、意欲溢れる優秀な外国人留学生を採用したい日本企業は何をするべきか。2つのポイントを提案したい。

1つ目は「職種別採用枠の拡大」である。直近の企業の動きでも、日立製作所から、職種別採用拡大の施策を含む2021年度採用計画の作成が発表されるなど、職種別採用の拡大の動きはすでに広がりを見せつつある。この動きは留学生の採用にもプラスに働く可能性が高い。
データで見てきた通り、外国人留学生は日本人学生よりも就職活動中にやりたいことが明確に決まっている学生が多い。また今回の調査では、学生生活中にビジネス活動を行っている外国人留学生は41.6%という実態も確認できており、将来の具体的なビジネスイメージを持っている学生も多いと考えられる。入社後のミスマッチを防ぐためにも、職種別採用は有効だと言える。

2つ目は「留学生に向けた積極的な情報発信」をあげたい。
大手志向が強い外国人留学生は、何らかの働きかけが無ければ大手企業しか視野に入れないだろう。しかし、留学生が本質的に求めていることは「入社後にどのような成長を遂げられるか」であり、「どのようなスキルが身に付き、どのようなキャリアを積んでいけるのか」である。そこで「成長機会の提供」という軸を明示できれば、留学生を惹きつけることは十分に可能である。
外国人留学生の積極採用を謳う企業がまだまだ少ない今こそ、外国人留学生を採用したい企業は留学生向けの就職サイトの活用、会社説明会の実施、大学のキャリアセンターの活用など様々な手段で留学生にアプローチし、まず留学生に認識される活動を積極的に行うことを提案したい。待っているだけでは留学生の目に留まることも難しい。企業の方から能動的にアプローチすることで、優秀な人材獲得のチャンスを是非つかんでほしい。

最後に

すでに国内には31万人程度の留学生がおり、日本での就職を希望する者も多くいる。withコロナの社会においてグローバルな移動は鈍化するものの、日本で働きたい留学生のキャリアをサポートしていくことは、今後の日本社会にとって必要不可欠だ。日本での活躍を期待された留学生が、のびのびと働ける日本社会になることを期待したい。


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執筆者紹介

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研究員

青山 茜

Akane Aoyama

大学卒業後、大手信販会社、自動車メーカー系金融総合サービス会社にて金融業界の営業を通算で5年経験。その後、元同僚の紹介でかねてより興味のあった分野であるマーケティングリサーチ業界へ転職。
マーケティングリサーチ業界では、フィールドワーク業務を経験後、データ集計・分析部にて調査結果データの集計・分析業務に従事。ここで多変量解析も学ぶ。そして企業内サーベイに出会い、労働現場にある課題を肌で感じ、この分野の研究への期待の大きさを実感。より深く関わっていきたいと考え転職。2017年5月より現職。

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