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2014.10.28

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出る杭を伸ばす、異才を受け入れる

タレントマネジメント ダイバーシティ

1998年設立のインターネット総合サービス企業のサイバーエージェントは2000年に東証マザーズに上場後、2014年9月には東証一部へ市場変更した。2005年頃より、毎年100人前後の新卒を採用。現在では単体約1,800人、グループ3,000人の社員を抱える。企業ビジョンに「21世紀を代表する会社を創る」を掲げる同社は、人材育成と事業の成長を結び付けることを最大の人事課題と捉え、独自のタレントマネジメントの構築に向けて注力している。

人材マネジメントは「採用」「育成」「活性化」「適材適所」の4軸で展開

同社の人材マネジメントは「採用」「育成」「活性化」「適材適所」――の4つを軸に展開している。これは同社の藤田晋社長の「採用・育成・活性化・適材適所の好循環が組織の成長と業績向上につながる」とする創業以来の考え方に基づいている。

採用に当たっては新卒重視の姿勢を貫く。採用基準は、変化への対応力が高い「素直さ」に置く。曽山哲人人事本部長は「変化の激しい時代に真摯に向き合い、自らの考えを変えることも厭わず、朝令暮改にも耐えられる変化に素直な人材」と指摘する。採用シーズンは単体の社員の4分の1にあたる250人の社員が面接などの採用業務に関わり、全社一丸となった人材の発掘に注力している。

発掘した人材の才能を引き出すためには才能が発揮できる場を提供することが必要だ。なかでも重視しているのがビジネス現場での「決断経験値」である。

「人は環境によって育つということを人材育成の基本的コンセプトに据えている。OFF-JTも重要であるが、育成イコール研修では絶対ないと考えている。どんなに優秀な人材でもつまらない仕事を与えれば、それだけの人材にしか育たない。現場の仕事を通じて主体的に企画し、自ら決断を下すという決断の経験が豊富でなければビジネスの修羅場では戦えない。つまり、決断の量が豊富であればあるほど困難な決断にも耐えられる人材になる。そうした『決断経験値』を高めることを育成の基本に据えている」

経営人材の育成は経営経験を積ませることから

特に経営人材の育成は、経営の経験を積ませることが不可欠だ。同社の藤田晋社長自身が24歳で起業、26歳で上場した人物。経営をするのに年齢は関係なく、経験したことによって人は成長するという観点から経営人材の育成のため、入社間もない時期から子会社の経営を任せるケースが毎年あるという。

その受け皿となるのが子会社だ。同社は近年毎年4〜6社の子会社を立ち上げており、その数は現在40社を超える。新卒入社の社員の中から毎年2人から4人程度が子会社の経営陣に加わり、すでに43人の社長や役員が誕生している。その多くは20代であり、2011年には内定者に子会社社長を任せて話題になった。

日本企業に特有の年次制限などはなく、入社後2年目にマネージャーに昇格する社員が毎年10人程度誕生するなど能力と意欲に基づく柔軟な登用制度を導入している。

ビジネスと人、両方の成長を図る仕組み「ジギョつく」

子会社の経営陣に抜擢する仕組みのひとつに「ジギョつく」(事業をつくろう)と呼ぶ新規事業プランコンテストがある。

jigyotsuku-211x300.jpg応募資格は内定者から経営幹部までの社員全員。これまで半年に1回実施していたが、2014年より、24時間365日、いつでも事業案を応募することができるようになった。それまでは、半年に1度400案近くが応募されていたが、いつでも応募できるようになってからは、月に80案近くが応募されるペースとなった。

応募された案は、毎週社長室と執行役員による1次審査、その後取締役員8名による審査を経て、ダイヤモンド~アイディア賞の5つの賞を決定する。ダイヤモンド賞には 100万円、金賞50万円、銀賞30万円、銅賞10万円、アイディア賞5万円が贈呈され、提案した事業の条件が整えば事業部長もしくは子会社社長に抜擢される。これまでに「ジギョつく」では内定者の優勝者が08年と11年に誕生している。もちろん狙いは人材の登用だけではない。

「案件やプレゼンを見て優秀な人材を発掘し、育成するだけではなく、同時に会社の成長につながる新たな事業の種を見つけることも狙っている。次世代リーダーの育成だけを目的にするのではなく、我々のビジネスの成長と人の成長を重ね合わせながら会社の躍進を図ることに主眼を置いている」

ただし、入社まもない社員がいきなり経営者に就き采配を振るうには、経験がない分、遠回りになる可能性もある。そのため当初は本社の役員が経営陣に入り、経営判断のサポートや人事・財務などの本社機能のサポートチームがフォローしている。

たとえば前出の24歳の社長の場合は、入社1年目に3,000万円の資本金で会社を創立。本社の副社長が役員として入るほか、サポートチームが管理面をフォローし、社長が事業戦略などの経営判断を行う形でスタートし、半年後に黒字化を達成している。

「子会社の社長にはとにかく経営に関する判断をしてもらう。それから事業遂行のための資金面を見ることも重要な仕事であり、資金が不足すれば、新たにこういう事業を展開するので増資したいという提案もさせている」

経営と現場を結び付ける場でもある「あした会議」

もう一つの人材発掘と登用の仕組みが「あした会議」と呼ぶ本社の役員対抗の新規事業立案合宿である。単なる新規事業発案の場にとどまらず、会社の事業の方向性を決定する重要な経営会議と位置づけている。「あした会議」は社長を除く役員、及び執行役員の17名全員が経営課題に即した事業案を考え、役員自ら指名した社員3~4人の協力を得て練り上げた事業計画案を競うものだ。

「それぞれの役員が指名した3~4人の社員とチームを結成し、2カ月前から徹底的に議論を重ね、投資額や人事案も含めた具体的な実行計画案を1泊2日の会議で発表する。結果はすべて点数化され、その順位も会社内外に公表されるので役員も真剣に取り組まざるをえない」

役員が考える事業計画案のノルマは3つ。メンバーとなる社員は野球のドラフト方式と同様に前回の「あした会議」の上位役員から順に社員を指名していく。広告部門、技術部門などそれぞれの分野のエキスパートが選ばれる。指名される社員は全部で約60人。半年に一度、60人の社員が、役員との刺激的な共同作業や実施の可否を決定する実質的な経営会議への参加を通じて直面する経営課題を実践的に学ぶ機会となる。

「役員も社員から最先端のネットの動きや、現場の感覚をよく知ることができる。また、メンバーも役員との真剣な議論を通じて経営がどんな課題を抱えているのかという経営の目線に直に触れることができるなど、経営と現場を結び付ける格好の場にもなっている」

メンバーには前述の「ジギョつく」に応募した社員も多く、自ら新規事業の責任者に名乗り出る者もいるという。

社員の個性と能力に関する情報を可視化

現在、社員全員の能力を開花させ、適正な配置を実現するための「適材適所」の仕組みの構築にも取り組んでいる。基本的な考え方は「1クラス30人の生徒をイメージし、それぞれの個性を見ながら、それに見合った数多くの事業体の職種を用意し、適正な配置をしていく」ことにある。

この仕組みを「サンゼロメソッド」と呼び、その一つの試みが、社員の個性と能力に関する情報をデータベース化し、それを可視化する取り組みだ。具体的には、30人の組織を前提に一人ひとりの仕事に対する姿勢を(1)成果、(2)価値観、(3)モチベーション―の3つの項目に分けて可視化し、配置の指標にしようというものだ。成果が出ているのかどうか、周囲と溶け込んで楽しく仕事がやれているのか、モチベーションはどうなのかという3つの視点で観察する。項目ごとにその時々の状態を「晴・曇・雨」のマークで表示し、3カ月に1回更新しながら定点観測を行う。

「当然、トップ営業だった社員でも成果が落ちることもあるなど変化する。モチベーションが低い人が先輩のアドバイスで上がる場合もある。時々の状態を観察しながら、例えば雨マークが多い社員は異動による成長の機会を与えるのか、あるいは組織的にフォローするかを判断することになる」

2013年より「GEPPO(月次報告の略)」と呼ぶ、タレントマネジメントデータベースを開発し、ここに人材の定量情報を集約させている。毎月一回、目標に対する成果や、「興味や得意なこと」を必ず全社員に入力させるもので、入力自体はものの数分で終わる設計になっている。このデータベースに入力された情報と、面談でヒアリングした内容を統合し、いわゆる社内ヘッドハンティングチームである社員の情報を管理するキャリアエージェントグループが、社内の人材ニーズとそれにあった社員をマッチングする。「芸術的な適材適所をする」という概念のもと、会社の戦略に沿った形で、特に成長が期待できる分野に適した人材を配置することに、会社として重きを置いている。

GEPPO.pngGEPPOの画面

社員が取締役を目指せる環境と新陳代謝によって経営層を厚くする

ところで、同社は人材や組織を硬直化させないために、本社の役員自ら厳しい環境に身を置いている。それが08年から取締役を8人と限定し、2年ごとに原則2人が交代する「CA8(シーエーエイト)」である。その狙いは社員が取締役を目指す環境をつくると同時に新陳代謝を図ることで経営層を厚くすることにある。

子会社の役員・経営者を経験し、その後は本社の役員としてグループの事業全体を統括する役割を担い、その経験をベースに退任後は新規事業分野で活躍してもらうという経営者のキャリアパスを描く。すでにCA8経験者は12人。現在CA8には入社4〜14年目の4人の新卒入社組が入っている。

「適材適所の仕組みを回していくことで43人の子会社の役員・社長に続く人材が育つことを期待している。また、子会社社長のキャリアで終わるのではなく、その先にある上場企業の役員として活躍することも見据えてやっている。役員交代制度により新卒社長から毎年1人の割合で本社の役員に就任しているが、このまま推移すれば10年後には、計20人の上場企業の経営経験者が誕生することになる」

新卒社長から役員を輩出するというロールモデルがすでに出来上がっている。若くして経営に参画するチャンスを与え、経営人材の育成と事業の成長の両方を追求しながら、企業ビジョンの「21世紀を代表する会社」の実現を目指す。これがサイバーエージェント流のタレントマネジメントである。

※本記事は、機関誌「HITO」vol.02 『タレントマネジメントの未来』からの抜粋記事です。一部、現状に併せて改訂。

機関誌「HITO」vol.02 『タレントマネジメントの未来』

cover02-1.gif知識社会化、サービス経済化、人材の多様化などによって1人ひとりの才能(能力)を最大限活かし、さらに個々の能力を組織の力につなげることがカギとなっています。では、タレントマネジメントの実践にはどのような視点が必要なのか。東京大学の中原淳 准教授のインタビューをはじめ、企業事例などを通してお伝えします。
>>機関誌「HITO」vol.02 『タレントマネジメントの未来』

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