公開日 2014/05/27
本記事では、日本を取り巻く雇用環境や日本の課題をデータとともにお伝えする。
今回のテーマは日本の「職業能力開発」。機関誌「HITO」vol.03『ミドルの未来』ではインタビュー記事などで、学び直しや継続的な職業能力開発の必要性はお伝えしているが、実際にどれくらいの層が学習をしており、それは年代や業界によって差があるのか? データをもとに日本の現状を確認したい。
平成19年就業構造基本調査(※1)によると、「直近一年間に職業訓練・自己啓発をした」層は全産業平均で36.6%。年齢別にみると25 ~ 34歳をピークに減少し、45 ~ 54歳で60%、55 ~ 64歳で70%もの層が「職業訓練・自己啓発をしなかった」と回答している。
※1:5年に一度実施。次回は平成24年10月1日に行われる。
産業による違いも顕著である。同調査の回答を産業別(図表タテ軸)にみると「職業訓練・自己啓発をした」層が最も高い産業は教育・学習支援(66.5%)。一方、最も低い産業は飲食・宿泊(21.7%)で、その差は3倍以上に上る。しかし、「職業訓練・自己啓発をした」と回答した比率は、正社員比率が上がるにつれて高まる傾向にある。2つの比率を軸にプロットすると、運輸、製造、建設などがむしろ正社員比率の割に職業訓練・自己啓発を行なった比率が低いグループであることがわかる。
同調査では「職業訓練・自己啓発を行なった」という回答について、自発的に行なったものか、勤め先が実施したものか等を聞いている。それによると、全産業において「自発的に行なったもの」が「勤め先の実施によるもの」よりも低い結果となっている。「自発的に行った」比率が最も高い情報通信や医療福祉でも33% 程度に過ぎず、職業能力開発の自発性の低さが伺える。
能力開発には、実施有無に加えてその方向性も重要であろう。日本企業では、方向付けの役割を上司が担ってきた(※2)が、近年はその機能低下が叫ばれている。日本経団連の調査をみると、11 項目中経営トップと管理職自身との認識に最もギャップがある項目は「部下のキャリア・将来を見据えて必要な指導・育成をする」。経営トップの60.9%が同項目を「達成できていない」と回答したのに対し、管理職の同回答は37.1% に留まる。
※2:キャリアデザインの場の提供について、職業能力開発基本調査では約4割の事業所が「提供している」と回答している。その内訳をみると「上司との面談」(88.2%)が圧倒的に高い。
学び直し先進国として知られるスウェーデンでは、大学入学に労働経験者の定員枠を設ける制度や教育休暇法、成人教育義務資金法など、成人の職業能力開発が公的に支援されており、近年注目を浴びている。しかし、制度が機能する背景には、主体的にキャリアを築こうとする自主の精神がある。例えば内閣府「青少年意識調査」(2003年)をみると、不満の有無に関わらず「転職する方がよい」というキャリア観を持っている層は91.7%に上り、アメリカなどを大きく上回る。同項目に対し日本は32.1%と5ヵ国の中で最も低い、一方つらくても「一生一つの職場で働き続けるべき」との回答割合がもっとも高い。
《参考文献》
総務省「平成19年就業構造基本調査」
厚生労働省「平成23年能力開発基本調査」
NHK放送文化研究所「日本人の好きなもの」2008年
内閣府「第7回 世界青年意識調査」2003
※本記事は、機関誌「HITO」vol.03 『ミドルの未来』からの転載記事です。
※文中の内容等はすべて掲載当時のもの。
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