HOMEコラム・レポート レポート 第1回 議事要旨『ミドル躍進を阻む課題は何か?』

レポート

2012.07.02

このエントリーをはてなブックマークに追加

第1回 議事要旨『ミドル躍進を阻む課題は何か?』

ミドル・シニア

<問題提起>

今ほど「ミドルの躍進」が求められる時代はないのではないだろうか。
企業の視点から見た場合、ミドルの躍進が求められる背景には、就労人口におけるボリュームゾーンの高齢化という問題が挙げられる。2020年には45歳以上の労働者が全体の過半数を占め、2050年には労働者の平均年齢が56歳にまで達すると言われている。全世界でも類を見ないペースで高齢化の一途を辿る労働市場において、企業がミドル人材の有効活用に目を向けはじめてきたことは当然のことと言えるだろう。つまり、産業構造の変化に伴って人的資源が企業競争力の源泉へとシフトする中、多くの企業はボリュームゾーンを占めるミドル人材の能力・スキルを最大限に引き出し、企業価値に転換する術を模索しているということである。

一方、個人の視点から見た場合、ミドルの躍進が求められる背景には、職業人生の長期化が挙げられる。厚生労働省の健康寿命調査によれば、男女の健康寿命はそれぞれ70.42歳、73.62歳という結果であった。「70歳現役社会」を前提に考えると、平均20歳からスタートする職業人生はちょうど45歳で折り返し点を迎えることになる。55歳定年制が一般的だった高度経済成長期の職業人生では、45歳とは職業人生を締めくくるキャリアの集大成として最後の10年を迎える時期であった。しかし、70歳現役社会において、45歳とはまだ職業人生の折り返し地点を過ぎたばかりの時期である。これから変化の激しい環境の中で職業人生を歩む上では、これまで培ってきた能力・スキルだけを頼りにするのではなく、新たな働き方への挑戦が求められることだろう。

以上のように、「ミドル躍進」が企業・個人双方にとって重要な問題と位置づけられる一方で、職場におけるミドルの現状とは「不活性化」や「弱体化」といった言葉に代表されるように、「躍進」とは程遠い実情にある。
それでは、ミドル世代が企業組織において躍進し、また自分自身のキャリアにおいてはたらくを楽しむためには、いま何が求められているのだろうか?研究会第1回目となる今回は、ミドルを取り巻く様々な課題について議論を行った。

<問題の原因>

ミドルの躍進が社会的に求められる一方で、それを阻害する様々な問題が取り巻いていることも事実である。第1回会合では、主にHRMとキャリアの観点から課題を整理した。それぞれについては以下に挙げる通りである。

(1)HRMの観点

ミドル世代に対して、組織からは「不活性化」や「弱体化」といった課題が挙げられている。こうした問題の一因は、時代や外部環境の変化に合わせてHRMを変化させていないことにある。委員会ではHRMの観点から、下記のような問題点が指摘された。

・金銭的報酬や職位に偏ったインセンティブ設計

日本企業の多くは金銭的報酬や職位など外発的な動機付けをベースにしたインセンティブ設計となっている。報酬や職位による動機付けは、市場の成長による組織拡大があってこそ成り立っていたが、市場の成長や組織拡大が停滞することでもはや限界を迎えている。他方、競争力の源泉が"既存モデルの磨き上げ"から"イノベーション"に移行し、従業員の労働観も変化するなか、旧来の外発的動機付けでは企業の成果に結びつかなくなっている。働きがいなど内発的動機に軸を移したHRMに移行する必要がある。

・同質性を重視し、学び直しを歓迎しない採用慣行

採用時において、職場との相性や人間関係を重視した採用を行っている。しかし、調和のとれた職場は個人のキャリアにおける自己実現は追求できないというジレンマをもたらす。組織が同質的な人員によって構成されることは、ミドル世代にとっても、異質な価値観に接する妨げにもなっており、ミドル世代の不活性化を招く一因である。
また、実務経験を過度に重視し、業務遂行に必要な能力の有無という本質的な視点を無視した採用が横行している。例えば、ミドル期に業務をする上で必要な資格を取得しても、これまでに実務経験がないために採用できないというケースがよくある。これではいつまでたっても、キャリアチェンジは実現されない。こうした学び直しや新たな挑戦を歓迎しない採用慣行が続く限り、ミドルの躍進は望めないのではないか。

・画一的な評価・処遇

本来、一人前になるまでの期間やパフォーマンスが最大化する時期は、個人や職種によって大きく異なる。学術界を例に挙げれば、最も高いパフォーマンスを上げる時期が比較的早い自然科学系の学問に対して、社会・人文科学系の学問では一般にパフォーマンスのピークは60歳を超える時期に迎えるという。これはビジネスの世界においてもある程度言えることだと思われるが、日本企業は年次に基づいて一様な評価・処遇を行なっているケースが多い。こうした個々のポテンシャルを最大限発揮させるような環境整備が十分でないことも、ミドル躍進を阻む一因として考えられる。

・OJT中心の人材育成

OJTは、ビジネスモデルやスキル・ナレッジに大きな変化がなく、時間をかけて伝承できる環境であれば有効である。しかし、近年は環境変化のスピードや大きさによりOJT以外の教育スタイルが必要となっている。特にミドル世代においては、蓄積した経験を一度捨てる学び直しが必要であろう。しかし企業は外部での学びを評価しないため、外部での学び直しを行うインセンティブが妨げられている。

・組織依存型キャリア意識を醸成するCDPの実施

これまで日本企業が実施してきたキャリア・デベロップメント・プログラムには、「会社がキャリアを用意してくれる」といった安易な風潮を生み出す側面がある。個人の自律的なキャリア形成を促すような土壌が無いことが、個人がキャリア形成を組織に委ねてしまし、ミドルの不活性の原因となっている。

(2)キャリアの観点

ミドル世代の悩みとして挙げられるのが、自らのテーマや専門性、自分らしい「仕事観」の欠如である。本来、キャリアを重ねる過程で自己を内省し、「自分は何が出来るのか」「何のために働くのか」といった仕事観が築かれる。しかし、入社以来、組織から与えられる課題に応え、組織の論理に従ってきたことで、自らの信念に向き合わなかったミドル世代がいるのが実情である。また、職業生活の折り返しを迎えたミドル期には、これまでのキャリアを棚卸し、環境変化に応じてキャリアを統合していくこと(キャリアインテグレーション)が今後の豊かなキャリア形成において重要である。しかし、ミドル期に専門性や仕事観がある程度確立していないと、キャリアの統合は容易ではない。委員会では、キャリアの観点から、下記のような問題点が指摘された。

・課題設定力の欠如

課題とは自らの「志」から生まれる。従って、自らの志や仕事観が曖昧だと、内発的に沸き起こる課題が生まれない。
これは組織に対しては、「組織や社会の課題を自ら見出し、解決に向けて尽力すべきミドル世代が、未だに組織から与えられた課題の解決にのみ終始してしまっている」という問題をもたらし、個人に対しても仕事・キャリアへの不満足感、不納得感という問題を引き起こしている。

・プロフェッショナルの欠如と"上がり意識"の醸成

自分の軸があれば、それに基づいた専門性や強みを認識し自発的に磨き続けるであろう。しかし、専門性や強みを認識できない、もしくは認識はしていても目の前の業務に忙殺されていた、という理由で専門性や強みを磨いてこなかったミドルの存在がいま職場で目立っている。彼らはプロフェッショナル性がなくエンプロイヤビリティの低いミドル層となっている。個人にとってもモチベーションの拠り所を職位や報酬に依存している場合、昇格を諦め "上がり"の意識が発生してしまう。

第2回会合以降では、HRM、キャリア、さらに社会的視点に立ってそれぞれの課題に対する対応策について検討していくことにする。

日時:2012年7月2日(月)18:30~21:00
場所:株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 会議室
参加者:
法政大学大学院政策創造研究科 教授 諏訪康雄氏
プライスウォーターハウスクーパース株式会社 パートナー 山本紳也氏
株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 執行役員人事部長 工代将章氏
経済産業省 大臣官房秘書課 総括補佐 梶川文博氏
日本電気株式会社 コーポレートコミュニケーション部
広報統括マネージャー 中島英幸氏
ディー・エイチ・エル・ジャパン株式会社
人事本部ヒューマンリソース マネージャー 牛島仁氏
グリー株式会社 ヒューマンリソース本部組織開発部マネージャー 堀尾司氏
株式会社インテリジェンス 取締役兼専務執行役員 小澤稔弘
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員 須東朋広

事務局:
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 田中 聡
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 森安 亮介

※肩書きは当時のものです

関連コンテンツ

このエントリーをはてなブックマークに追加

【経営者・人事部向け】

パーソル総研 メルマガ

雇用や労働市場、人材マネジメント、キャリアなど 日々取り組んでいる調査・研究内容のレポートに加えて、
研究員やコンサルタント・講師のコラム、お得なセミナー・研修情報などをお届けします。

メルマガ詳細はこちら
PAGETOP
PAGETOP