公開日 2012/05/15
これまでの委員会では、グローバル人材マネジメントにおけるハード的な側面を中心テーマにして議論を重ねてきた。採用・育成・配置・処遇はどうあるべきかという視点である。しかし、経営に資する人材マネジメントのあり方を考えれば、ハード面としての人材マネジメント(以下、HRMとする)だけではなく、一人一人の個に着目したソフト的な側面としてのタレントマネジメント(以下、TMとする)にも着目する必要がある。言い換えれば、HRMとTMの双方を機能的に展開することが必要だということである。そして、こうした議論に基づき、これまで日本企業においては、HRMやTMを機能させるための具体的な仕掛けや仕組みを検討することが目下の人事戦略上の課題とされてきた。しかし、経営のグローバル化に伴い、トランスナショナル型組織を志向する企業において、その課題設定は十分とは言えない。なぜなら、従来の日本型HRMやTMは、市場が国内に限定され、競争力がインプルーブメントモデル(既存モデルの磨き上げ)であった時代に、同質的な日本人を前提としたハイコンテクストな組織文化の下で機能してきたものであるためである。しかし、時代は変化し、競争力の源泉はグローバルマーケットを舞台にしたイノベーションモデル(新規モデルの創新)へと移行している。ビジネスを展開するフィールドやビジネスモデルそのものが変わる中、求められる人材も大きく異なる。つまり、これまでの「タスク処理型/日本人」から、「知識創造型/多国籍人」へという変化である。国籍、人種、性別などの異なる多様な人材がマネジメントの対象となるトランスナショナル企業において、これまでのようなハイコンテクストな組織文化に立脚した日本型HRM、TMが機能しないことは明らかである。
それでは、日本型HRM、TMをグローバル人材マネジメントの中で機能的に位置づけるためには、何が必要なのだろうか。それは、日本型HRM、TMの根底にある組織文化の見直しである。これまでの委員会で議論されたトランスナショナル企業におけるHRMやTMのあり方についてはグローバル仕様に改められた組織文化を前提とするものである。
例えば、HRMのあり方として、新卒一括採用に代表されるような同質的な採用選考ではなく、明文化されたバリュー・カルチャーに基づいた採用選考を行うべきという提言に表れている。また、TMのあり方についても同様に、グローバルを前提とした組織文化をベースにして、ワールドヘッドクオーターやローカル、さらに一部代行業務を請け負う外部アウトソーサーの各セクションが担うべき役割について検討されなければならない。具体的には、以下の通りである。
・ワールドヘッドクオーターセクション:「変革のエージェント」として各機能における基本ポリシーを策定し、ガバナンスすること。
・ローカルセクション:「戦略パートナー」「従業員のサポーター」として、ビジネスの要求に応じて具体的なプランを立案し、デリバリーすること。
・アウトソーサー:「管理のエキスパート」としてそれらのアドミニストレーションの一部を請け負い、プロセスをサポートすること。
本委員会では、日本型HRM、TMをグローバル人材マネジメントの中で機能的に位置づける上でインフラとしての役割を担う組織文化を「グローバルマインドセット(以下、GMとする)」と定義する。以下、グローバルマインドセットのあり方について検討する。
グローバルマインドセットには、「個人の次元」と「企業の次元」の2つの側面がある。
まず、「個人の次元」から見たグローバルマインドセットには、「成長意欲の高さ」、「ショートスパン的時間意識」、「多様な考えを受容する姿勢」などが挙げられる。一方、「企業の次元」から見たグローバルマインドセットには、「役割(≠年次)によるマネジメント」、「企業=社会的存在としての自覚」、「コアバリューの共有化」、「言葉の壁を越える仕組み」などが挙げられる。
つまり、グローバルマインドセットとは、組織として大切にする価値観や目標に対する共通意識(インクルーシブさ)を持つ一方で、そのアプローチにおける個々人の多様性(ダイバーシティさ)を許容するものである。
<グローバルHRMトライアングル・モデル>
日時:2012年5月15日(火)18:30~21:00
場所:株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 会議室
参加者:
早稲田大学 政治経済学術院 教授 白木三秀氏
コマツ 常務執行役員 日置政克氏
株式会社日本総合研究所 調査部長 チーフエコノミスト 山田久氏
アジレント・テクノロジー株式会社 取締役 人事・総務部門長 島田智氏
コーチジャパン ヴァイスプレジデント 人事部 島村隆志氏
HOYA株式会社 アイケア事業部 人事部長 内海将隆氏
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員 須東朋広氏
事務局:
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 田中聡
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 森安亮介
※肩書きは当時のものです
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