データで語る『企業が求める人材』

公開日 2014/10/21

日本を取り巻く雇用環境や日本の課題を、データとともにお伝えする。今回のテーマは日本の「企業が求める人材」。知識社会化する中、専門性を踏まえ自律的に課題を設定・解決できる人材の価値が高まっている。では、そういった人材へのニーズは実際にはどの程度増えているのだろうか。また、日本は各国と比較してどういった状況にあるのだろうか。統計データから実態を探った。

自律性・創造性のある人材へのニーズが増加

日本企業は今どういった人材を必要としているのだろうか。独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)は、育成・確保に際して企業が重視する人材を「これまで重視してきた人材」と「今後重視する人材」に分けて調査している。下図は、タテ軸に今後重視する人材を、ヨコ軸には重視度の増加幅(「今後重視する」割合-「これまで重視してきた」割合)をプロットした図である。

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企業が今後最も重視するのは「自ら考え行動できる人材」(78.0%)。その重視度も19.8ポイント上昇しており、企業が今まで以上に必要とする意向が伺える。また、重視度の増加幅が高い人材を見ると、「事業戦略・事業展開を考えられる人材」や「自社にない新しい発想を持った人材」で35ポイント以上増加している。一方、重視度が低下しているのは「指示を正確に理解し行動できる人材」、「社風になじめる人材」、「チームワークを尊重できる人材」、「担当職務の基礎知識・技能を身につけた人材」である。自ら考え組織を導く人材やイノベーションを起こせる人材の価値が高まる一方で、既存組織内で立ち回るだけの人材や指示待ち型人材の価値が低下している傾向が見て取れる。

求人が最も多い職業は専門的・技術的職業

マクロ観点から、日本の労働市場で求人が増えている職業を確認したい。職業安定業務統計から新規求人数の職業別内訳を確認すると、「専門的・技術的職業」が趨勢的に増加傾向にあることが分かる。2003年では全体の18.7%に過ぎなかった「専門的・技術的職業」は2011年には27.6%に達している。「専門的・技術的職業」とは研究者やエンジニア、 SE、医療系従事者、法務系従事者、経営・会計・金融系従事者、デザイナーなどを指し、いわゆる知識労働者に対するニーズの増加傾向が伺える。

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専門的職業従事者の割合 日本は北欧の半分以下

専門的・技術的職業の増加は世界各国で確認できる。就業者ベースで、専門的・技術的な職につく就業者の占める割合を示したものが右図である。図中には示していないが、ブラジル、マレーシア、タイなど新興国も含め調査対象22カ国中すべての国で増加している。
しかし、海外と比較すると日本の専門的職業従事者・技術者が占める割合は小さい。2010 年において日本における専門的職業従事者・技術者の割合は 15.8%。韓国の19.2% を下回っているほか、スウェーデン(41.3%)、デンマーク(40.9%)など北欧諸国と比べると2倍以上の開きがある。

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臨時雇用を架け橋として活用する欧州、 行き止まりの日本

四方(2011)は25歳~ 64歳の臨時雇用の労働者に対して、3年後の就業状態を国際比較している。それによると日本では6割近くが3年後も臨時雇用のままであり、3年後に常用雇用に転換している人は4人に1人に過ぎない。しかし、欧州をみると常用雇用への転換が6割以上を占める国が大半である。非正規雇用が「行き止まり」となっている日本に対し、欧州では非正規雇用を正規雇用への「架け橋」として活用し、優秀な人材を確保している動きが伺える。

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《参考文献》
・労働政策研究・研修機構「入職初期のキャリア形成と世代間コミュニケーションに関する調査」2011年
・厚生労働省「労働経済白書 平成24年版」
・労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較 2012年版」
・四方理人(2011)『非正規雇用は「行き止まり」か?―労働市場の規制と正規雇用への移行』(「日本労働研究雑誌」No.608 2011年2・3月号)

※本記事は、機関誌「HITO」vol.04 『プロフェッショナルの未来』からの抜粋記事です。
※文中の内容・肩書等はすべて掲載当時のもの。


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