HOMEコラム・レポート レポート 【第5回HITOフォーラム「キャリアマネジメントの未来」】報告vol.01:第1部冒頭講演

レポート

2014.08.19

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【第5回HITOフォーラム「キャリアマネジメントの未来」】報告vol.01:第1部冒頭講演

キャリア

2014年7月28日、ベルサール九段にて、第5回インテリジェンスHITOフォーラムを開催しました。
第1部では、主に経営層の方々をお招きし、リーダーシップとは何か、どう育てるのかなど、経営に資するリーダーシップを創るキャリアについて議論しました。第2部では、企業の人事部門の方々をパネリストに迎え、各社のキャリアマネジメント事例をご紹介いただいたほか、キャリアに対する考え方や人事部門が果たすべき役割についてディスカッションを行いました。

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開催報告の第1回は、第1部のファシリテーターを務めていただいた一橋大学大学院の守島教授からの問題提起と、パネリストにお迎えした日本IBMの橋本孝之氏、マーサージャパンの古森剛氏、BOLBOPの酒井穣氏の冒頭講演をリポートします。

<報告記事INDEX>
vol.01:〔第1部〕登壇者による冒頭講演
vol.02:〔第1部〕パネルディスカッションの模様

〔第1部〕経営に資するリーダーシップを創るキャリアとは<パネリスト>

日本アイ・ビー・エム株式会社 会長            橋本 孝之 氏
マーサー ジャパン株式会社 代表取締役社長
マーサー ファーイースト地域代表              古森 剛 氏
株式会社BOLBOP 代表取締役CEO             酒井 穣 氏

<ファシリテーター>
一橋大学大学院 商学研究科 教授              守島 基博 氏

※文中の肩書は取材当時のものです。

【問題提起】
経営に資するリーダーシップとその確保
一橋大学大学院 商学研究科 守島基博 教授

第1部の冒頭では、まずファシリテーターの一橋大学大学院 守島教授が演台に立ち、「なぜリーダーシップが重要なのか」「リーダーシップの具体的な内容とは何か」について語った後、第1部での議論テーマを提示しました。

なぜリーダーシップが重要か

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一橋大学大学院 守島基博 教授

ここ10数年、人事の世界でリーダーシップが重視されてきた理由について、守島教授は次のように指摘しました。
「企業経営とは人を動かして物事を成し遂げること。そして、人の力を結集させ組織の目標を達成する際、必須なのがリーダーシップです。そんな非常に重要な経営資源であるリーダーシップを獲得するために、企業が力を注ぐのは当然でしょう」。

具体的にリーダーシップとは何か

次いで、リーダーシップとは何かという問いに対しては、「目標の設定・ビジョンづくりができること」「信頼やコミュニケーション力など人としての魅力があること」「メンバーのエンパワーメントを高められること」「最後の責任を持つこと」の4点を挙げました。

とはいえ、やはりリーダーシップは曖昧で明確にしづらい部分があり、そんな曖昧なものを育成できるものなのか。守島教授は、そんな疑問を持っている人事担当者が多いのではないかと会場に問いかけた後、この第1部における議論のテーマとして、次の3点を提示しました。
・優れたリーダーシップとは何か
・リーダーはどう育てるのか
・よいリーダーを獲得するために人事部門や経営ができること

では「リーダーシップ」について、実際に経営の立場にある今回の3名のパネリストはどのような意見をお持ちなのでしょうか。ここからは、各パネリストにご講演いただいた冒頭講演の内容を紹介していきます。

【パネリスト講演1】
グローバル時代のリーダーシップ
日本アイ・ビー・エム株式会社 会長  橋本孝之 氏

パネリストによる冒頭講演では、はじめに日本アイ・ビー・エム(IBM)会長の橋本孝之氏が登壇。IBMの取り組みの紹介を通して、グローバル時代のリーダーシップについて語りました。

20年に1度ビジネス変革を繰り返してきたIBM

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日本アイ・ビー・エム株式会社 橋本孝之 氏

橋本氏は、IBMが100年を超える長い歴史の中で、何度も大きなビジネスモデル変革を行ってきた点を示しました。例えば、1990年代はハードウエアが売上の過半を占めていたのに対し、現在はソフトウエアやサービスが8割を占めています。この事業構造の変革とともに社員に必要なスキルも大きく変化したこと、さらに近年では事業の展開エリアも広範になり、社員の多国籍化や働き方の多様化も急速に進んでいる状況を紹介しました。

そこで、変革し続けるために必要なことは、「変革を促すための企業のカルチャーや土壌を作ることである」と強調し、IBMのダイバーシティへの取り組みを紹介しました。IBMでは現在、第3世代のダイバーシティ、つまり「企業成長に結びつけるダイバーシティ」を進めていると言います。なかでも、日本IBMが特に注力しているのが、「女性」「障害を持つ社員」「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)」「マルチカルチャー(多国籍社員)」「ワークライフ(仕事と個人の生活の統合)」の5つの領域です。多様な意見を取り入れることによって、新しい気づきや世界の広がりが生まれ、企業変革につながっていく。その基盤となるダイバーシティは、非常に重要な取り組みであると、橋本氏は改めて強調しました。

グローバル時代のリーダーシップ

次に、橋本氏はリーダーシップに話題を転じ、「リーダーシップをもって業績を上げているかどうかは、『スキル』と『コンピテンシー』の2軸で見る」と説明。加えて、IBM独自の具体的な9つのコンピテンシーについて紹介しました。また橋本氏は、このスキル×コンピテンシーの結果について、他国と比較して見ると、日本はスキルが非常に高く、コンピテンシーが追いついていない傾向が強い点を指摘。リーダー候補の社員自身がこうしたコンピテンシーを身につける訓練を行うことも大事であるし、企業として社員に訓練の場を提供することも大事だと強調しました。

【パネリスト講演2】
キャリアマネジメントの現実的課題
マーサー ジャパン株式会社 代表取締役社長 マーサー ファーイースト地域代表 古森剛 氏

次に檀上に立ったのは、マーサージャパン代表の古森剛氏です。古森氏は、自身のキャリアの紹介を通して、個人のキャリアを企業がどのようにとらえ、フェアに扱うべきかを語りました。

キャリアは"タンポポの綿毛"のようなもの

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マーサー ジャパン株式会社 古森剛 氏

冒頭、古森氏は「キャリアは、人の人生の大半を占めるものであるため、人生と切り離しては考えられず、会社側もそれを前提とすべき」と指摘し、その後、自身のキャリアを振り返りながら、個のキャリアの多様性について説明しました。同氏は、現職に至るまでに2度の転職を経験し、そのいずれもがふとした思い立ちや、意図せぬ出会いがきっかけだったといいます。「綿毛のように飛んで、着地した先の温度や湿度、栄養分が自分に合えば、そこで芽を出し、花を咲かせるまで懸命に頑張る。結果、振り返れば充実したキャリアだった」という歩みです。

次いで、古森氏は「キャリアを考えるとき、単線的に考えないほうがいい」と指摘し、多様なキャリアの考え方の例として、「方向感覚型」「詳細設計型」「出会い型」の3つのキャリア構築における考え方を提示しました。「方向感覚型」は、職業人生の構築にあたり、目指す方向は明確だが、積むべき個別の経験については詳細に設計しておらず、それぞれの機会の可能性に対し、前向きにトライするタイプです。「詳細設計型」は、方向性や軸が明確であり、かつ積みたい個々の経験も細かく設計しているタイプ。そして、「出会い型」は、その場その場の出会いや縁を大切に未知の将来を楽しむタイプです。

キャリアは1パターンではないことを前提とする

「キャリアは1パターンではない」と古森氏は強調します。もし、マネジメントする側が「詳細設計型」を唯一の正解だと思い込んでいたら、部下が「出会い型」である場合、「計画性がない」と部下のキャリアの考え方を受け入れられなくなってしまいます。キャリアには1つの標準的な正解がなく、それぞれ異なるということを前提として個人をとらえ、フェアに接する。ダイバーシティにも通じるこの意識や姿勢、視点の共有が、組織にとって非常に大事であると訴えました。

【パネリスト講演3】
リーダーシップ
株式会社BOLBOP 代表取締役CEO 酒井穣 氏

最後に登壇したのは、BOLBOP代表の酒井穣氏です。酒井氏は、動物行動学の理論をもとに、リーダーシップについて語りました。

人間も無意識に従っている「群れのルール」

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株式会社BOLBOP 酒井穣 氏

複雑な社会を作り上げ、いまや、その本質を知るのが非常に難しい人間について、酒井氏は動物行動学からのアプローチで理解を試みます。特に今回は、「リーダーシップ」の観点での考察が発表されました。

注目したのは、「群れのルール」です。酒井氏は、動物の「群れ」がうまく保たれるルールとして、「衝突を避ける」「中心位置に向かう」「近くにいる個体と同じ速度を守る」の3点を挙げました。そして、われわれ人間も往々にして、無意識にこのルールに従って生きているといいます。進路選択や就職など、自分の意思で決めたと思っていることも、案外「群れのルール」に沿っていることが多いのです。しかし一方で、人間は「群れのルール」から自分の意思で外れることができる生き物でもあると酒井氏は言います。自分のリーダーシップについて考えるときは、どこまで「群れのルール」に従っていて、どこからが「自分のルール」で動いているかを、冷静にとらえる必要があるでしょう。

自らルールを外れて動く、それがリーダーシップ

酒井氏は、さらに具体的なリーダーシップの在り方について、「ミツバチのダンス」を例に説明を続けます。「ミツバチのダンス」とは、餌場を見つけた数匹のハチが巣箱の中で8の字に動くことで餌場の方向を仲間に教える習性のこと。つまり、ミツバチの社会では、たった数匹が進むべき方向を指し示すことにより、目的地を把握していない他の何千匹というミツバチも餌場へたどり着けるようになっているのです。人間社会でも、課題意識を持った人がまず動き始めることが重要です。自分の意見を周囲に説得する必要などなく、まず自分が動けばいいのです。その方向へ皆が向かい、やがて社会の中心が動き始めるのです。

なお、動くべき領域は、経営視点で考えるならば、「自社にできること」と「顧客が求めること」の重なり合う部分だと酒井氏は言います。その領域で"群れから外れるリーダーシップ"、つまり今までにない視点を提供することで目立ち、市場に選んでもらう力を発揮する。それが経営に資するリーダーシップの発揮ということになるのではないか。酒井氏の講演は、このような提言で締めくくられました。

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