HOMEコラム・レポート レポート 第5回 議事要旨『組織能力からみたタレントマネジメント』

レポート

2012.03.15

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第5回 議事要旨『組織能力からみたタレントマネジメント』

タレントマネジメント

<問題提起>

本委員会では、これまで「企業価値を高める採用・育成・評価」、「学習する組織実現に向けた施策」、「適材適所を実現するタレントの発掘と配置」などの観点からからタレントマネジメントに関する議論を行なってきた。最終回となる今回は、組織能力という観点からタレントマネジメントを考えてみたい。
組織能力を高めるために何が必要なのか?リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所の調査結果によれば、組織の業績に直接寄与するのは「実行・変革力」であり、それらを高めるのは「ビジョン共有力」や「知の創出力」であった。
本委員会では「変革力」を高める要素としてリーダーシップ、「実行力」を高める要素としてマネジメント、そして「ビジョン共有力」や「知の創出力」を高める手法として組織開発をあげ議論した。それぞれについて、日本企業が抱える課題、またその解決に向けた具体的な施策については以下の通りである。

<課題>

・組織開発
多くの企業が米国流のAIやワールドカフェなどを実践しているが、実施目的や向上したい組織能力の定義が不明瞭なまま組織開発を行なっているケースが多い。そのため実施したことそのものに満足し、成果に結びついていない。
・リーダーシップ
過去の実績等に基づいてリーダーが選出・育成されるため、変革を起こすようなリーダーが生まれず組織の変革がなされない。また、学習する文化が根付いていないため高い職位についてから学習しなくなるケースが多い。
・マネジメント
どんな人でも実行でき、継続的な成果を出すための仕組み開発や、継続的な成業績向上を実現するための仕組みの定着が出来ていない。

<施策>

(1)組織開発によるビジョンの共有や知の交流

組織能力の向上には、ビジョンや価値観、思考様式などの共有が必要である。従って、組織開発を用いることで、組織を横断して意思の疎通や知の共有を図ることは有効である。ただし形だけを取り入れてもその効果は期待できない。まず向上させるべき組織能力や導入目的を明確に定義し、成果に焦点を当てた組織開発の手法を検討することが望ましい。

(2)リーダーシップによる、ストレッチした組織目標の設定

組織の優先順位付けや方向付け、高い目標の設定などの点でリーダーシップが組織能力向上には欠かせない。過去、本委員会でも議論したように、リーダーを選定するための評価基準の明確化やリーダーになってからも学習し続けるような文化醸成が求められる。

(3)マネジメントによる仕組み開発や定着

実行力や組織開発の定着という点ではマネジメントによる影響が大きい。従業員が誰で
も出来るようになるための仕組みの開発や、実践における規範を示すことが重要である。また、変革の際にはマネジメントによる定着が成功の可否に大きく影響する。

<要旨詳細>

組織能力を高めるために何が必要か?リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所などの調査結果によれば、組織の業績に直接寄与するのは「実行・変革力」であるが、「実行・変革力」を高めるのは「ビジョン共有力」や「知の創出力」であることが示唆された。
各々の要素を高めるにはいかにすれば良いのだろうか。本委員会では、組織能力を高めるための施策として、組織開発、リーダーシップ、マネジメントの3つの観点から議論を行なった。

(1)組織開発による「ビジョン共有力」や「知の創出力」向上

組織能力を高めるためには、ビジョンの共有や、組織を横断した知の交流が求められる。では組織間を超えてビジョンや知の共有を促すために、組織開発はどうあるべきだろうか?組織開発には「診断型」と「対話型」の2つのタイプがあり、両者のポイントについては下記の通りである。

・診断型

現状を調べた上でプロセスを改善するタイプの組織開発手法である。トップが主導で行うことがポイントであり、変化を導入する際には、まずは旧来のものを緩め、変革を受け入れる風土に"解凍"した上で、実践する。実践後はさらに定着(="再凍結")させることが重要である。例えばアクション・リサーチにおいてはまずしっかりとリサーチし現状を把握した上でアクションを起こし、さらにアクションの効果についてリサーチすることが必要である。

・対話型

<対話を通してビジョンの共有や組織を横断した知の交流を図るタイプの組織開発手法である。部門間や職種間はもちろん外部の利害関係者も含めて組織のあらゆる部分から参加し、対話をすることで知の横断を活発にし独創的なものを生み出すもの。成功した企業においては、ビジョンを浸透させるために全マネージャー層を集め対話を行なった事例もみられた。
尚、組織開発を実践する際の注意点として、導入目的を明確にし、成果に焦点を当てることが挙げられる。例えば日本でもワールドカフェを実践する企業が増えているが、米系企業の形式だけを切り取って持ち込むケースが多い。ワールドカフェは通常交流が無い部署同士の対話を通じてビジョンの共有や知の共創を図ることが狙いである。これは多様な人材が集まっていることや、職種別の分業が進んでいることから『意識的に組織開発を行わないと、個々がバラバラになってしまう』ことが背景にあると考えられる。他方、日本企業は新卒一括採用やローテンションの異動により、部門を超えた知の共創は普段から行われており、無意識のうちに組織開発が行われていたと言える。従って短期的に対話の形式だけを持ち込んでも成果が結びつかない。

(2)リーダーシップによる「変革力」の向上

組織能力を高めるには、既存の組織能力自体が硬直化しないように常に見直し、ダイナ
ミックに変革していく能力が求められる。なぜなら一度組織能力が構築されると、その固有性や模倣困難性を高めることに主眼が置かれるため、環境変化に気づかず結果として競争優位を失うためである。組織の慣性に縛られることなく、組織における変革を主導するためにはリーダーシップの存在が重要になる。また組織の方向付けや優先順位付け、ストレッチした高い目標設定などにもリーダーシップは不可欠である。
しかし日本企業はリーダーの育成について、有効な打ち手が打てていない。『企業が勝ち続けるための採用や育成、そしてミドルの学習』(第2回)や『学習する文化の醸成』(第3回)で議論されたように、過去の実績で評価が決まったり、課長職以上が"上がり"になっているため、変革力が向上しない。適切なリーダーが選ばれ、リーダーになって以降も学習し続けるために、リーダーを選定するための評価基準明確化や学習し続ける文化醸成が求められる。(※リーダー選定や学習する組織実現のための具体策については本委員会の第2回・第3回参照)

(3)マネジメントによる「実行力」の向上

組織能力の向上には、決定事項を実行し、最後までやりきる「実行力」の向上が求められる。マネジメントは「実行力」の向上に寄与する。組織能力向上に成功した企業の事例をみると、どんな従業員でも実行でき、継続的に成果が出るような仕組み開発に注力していた。また、とくに企業が変革期にある場合には、特に仕組みの定着を意識したマネジメントが必要であろう。

日時:2012年3月15日(木)18:30~21:00
場所:株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 会議室
参加者:
産能大学大学院 総合マネジメント研究科 教授 城戸康彰氏
株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山哲人氏
バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社 執行役員 人事総務部長 石山恒貴氏
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 主席研究員 須東朋広氏

事務局:
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 田中 聡
株式会社インテリジェンスHITO総合研究所 研究員 森安 亮介

※肩書きは当時のものです

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