「社内コンサルタントとしての人事」の専門性をさらに高める、重要な経験だった

公開日 2024/11/14

矢島 厚子氏

矢島 厚子氏

部品製造会社2社にて人材開発を担当。1社目では、総務・秘書、国内外技術系人材の育成、海外営業、業務改革推進、経営企画など社内業務を幅広く経験。その後、人材開発に課長として異動し、人事としてのキャリアがスタート。専門性を持たずに人事業務を行うことに危機感を抱き、キャリアカウンセラー国家資格取得や大学院にてキャリアと人材開発の知見を深め修士号を取得。2社目では、人材開発の責任者として、新卒採用・キャリア採用・人材育成分野で各種施策の企画・立上げを行う。また、全社課題(ダイバーシティ推進・働き方改革・DXなど)を人材育成の文脈で、課題の定義化から施策の企画・運営までに携わる。

  1. コンサルティングの前工程を学べる研修は他になかった
  2. 自分流でやってきたことも含めて思考の整理ができた
  3. 「5-Dコンサルティングモデル」の活用
  4. 経営層と関わる、研修を立ち上げる、いずれも合意形成が重要
  5. 「自分ひとりではない」…仲間と相談しあえるサードプレイスができたことも成果の一つ
  6. 人材開発に関わりはじめた人も、経験豊富な人も、それぞれに学びがある
  7. 能力や知識には有効性に限られた期間があるから、人事として学び続ける

コンサルティングの前工程を学べる研修は他になかった

― なぜATD認定プログラムに参加しようと思ったのですか?

最近、経営環境や時代の変化によって、答えのない課題が増えてきています。言い換えれば、明確な定義がない事柄に取り組まなければならない状況になってきたと感じています。

このような不確実性の中で、効果的に問題解決をするためには、よりコンサルティング的な視点を持って仕事を進める技術が必要だと考えていました。そんなときに、パーソル総研が提供する『ATD認定プログラム』が目に留まりました。ATDは、世界の最先端の情報や最新の知識を提供しているという点にも魅力を感じ、その必要性を感じたのが最初のきっかけです。

第一印象として、他にはない独自性を感じました。一般的なプログラムは多く存在し、人材育成担当としてたくさん目にする機会がありますが、研修効果測定をテーマとしたものはあっても、コンサルティングの前段階のクライアントと期待や合意形成を得るプロセスに具体的にアプローチしているプログラムは他になく、重要な視点であると考え受講することにしました。

自分流でやってきたことも含めて思考の整理ができた

― ATD認定プログラムを受講して、どのような学びがありましたか。

10年以上にわたり人材開発や人材育成のさまざまな案件に関与させていただいたおかげで、多くの知見が増えてきました。しかし、ダイバーシティや働き方改革、DXといったテーマについては、なんとなくその方向性に向かっているとは思いつつも、これまでは自己流で進めていた部分もあり、これでいいのかと不安や自信のなさを感じていました。『ATD認定プログラム』を受講することで、体系化された型を理解し、きちんとできているところはできているという自信につながり、思考が整理されました。また、短時間の中でも多くの学びを得られたと感じています。

「5-Dコンサルティングモデル」の活用

― 学習のデザインや技法で印象に残っていることは何ですか。

「5-D(ファイブ・ディ)」と呼ばれるコンサルティングの5つのステップです。特にコンサルティングの前段階で取り組む「クライアントとの関係構築、期待の合意(Define and Agree)」はコースの中心的な要素となっており、ケーススタディや解説、参加者同士の深い議論を通じて、その重要性を強く感じました。

「合意形成」がしっかりできれば、その後の調査分析や結果報告、決定のステップに進むことができ、あとは実行するだけというのは言い過ぎかもしれませんが、それぐらい重要な部分と理解しました。実際に、自分のこれまでの経験と研修の内容が一致したことで、非常に腑に落ちました。

図1:ATD 5-Dコンサルティングモデル

図1:ATD 5-Dコンサルティングモデル

経営層と関わる、研修を立ち上げる、いずれも合意形成が重要

― 学んだスキルを仕事でどのように活用していますか。

先ほどお話したように、「合意形成」はとても重要なため、言葉の定義が曖昧な業務については、どれだけその部分を一致させていくかが肝要になります。中には合意できるところとできないところも出てくると思いますが、それも含めてマネジメントしていくことが重要です。普段の活動の中では、合意形成を意識して行っています。

また、『ATDコンサルティングスキル認定コース』で学んだ内容は、特に全社施策のような場面で経営層と関わる際のフレームワークとして非常に活用できると考えています。加えて、『ATDニーズアセスメント認定コース』に関しては、一つの研修を立ち上げる際に、目的やゴールを明確にしなければ結果や効果を測定できないことは理解していましたが、改めてその合意をしっかりと確認しておくことが重要だと意識するようになりました。また、合意により周囲との言葉を一致させることができるようになることは、目的がブレることなく効率よく物事を進めることができるようになります。

「自分ひとりではない」…仲間と相談しあえるサードプレイスができたことも成果の一つ

― どのような成果につながりましたか。

現在、取り組んでいる人材育成施策もコンサルティングのような形で、社内のさまざまな教育担当や施策を繋げることに挑戦していますが、合意を得るのは容易ではありません。ステークホルダーが誰なのかを考えると、その範囲は非常に広く、ゴールの設定も難しいです。そのため、定義作りから始めて、教わったことを活用しながら進めていますが、うまくいくことばかりではなく、理論通りに進まないことも多いです。しかし、できていない部分や進捗がわかることで、着実に進んでいるのか、あるいは戻ってしまったのかを把握できるようになりました。自分の立ち位置を理解できるようになり、プロジェクトを進める上で大変役立っています。

その他にも、社外の教育ベンダーやコンサルタントとの関わり方にも影響がありました。皆さんが同じ思いで関わってくださっていることを感じると、私から悩みを打ち明けることも増えました。また、今の役職はコンサルタントではありませんが、肩書に関わらずそのような業務役割が期待されていると認識してからは、コンサルタントの役割を担う不安がなくなりましたし、参加者同士のネットワークを活用して、他社の人事担当者とお付き合いを続けています。自分で解決できない問題について悩んでいるときに、知り合った人事の方々にアドバイスいただき、一人では気づけなかった視点を広げたアプローチできることが増えました。

この人的ネットワークには本当に感謝しています。一企業の人材開発担当としての立場はありますが、横の繋がりが増えてきたことで、サードプレイス的な位置づけができています。自分の所属は今の会社ですが、それ以外にも職種としてのアイデンティティで繋がっている仲間がいるため、以前よりも一人ではないと感じることができ、相談できる先が増えたことは大きな成果です。

人材開発に関わりはじめた人も、経験豊富な人も、それぞれに学びがある

― どんな方にATD認定プログラム(コンサルティングスキル・ニーズアセスメント)を勧めたいですか。

『ATDコンサルティングスキル認定コース』は、コンサルティングスキルを学びたい方、特に答えのない施策課題に取り組んでいる方々にお薦めしたいです。進め方がわからず足踏みしているのであれば、まずは一度門を叩いてみることをお薦めします。同じような課題を持つ仲間がいるだけではなく、導いてくださるトレーナーやファシリテーターもいますので、悩んでいるのであれば早めに参加してみてください。また、人材開発に長く携わっている方や、全社にかかわる奥の深いテーマを経験された方も、学びや経験を整理し、今後の再現性や進め方の改善、さらには拡大に役立てることができると思います。

『ATDニーズアセスメント認定コース』は、社内ではわかっていているようでなかなか学ぶことのないニーズ調査の手法が多く紹介されており、人材育成を始めたばかりの方でも参加しやすいと思います。また、教育ベンダーやコンサルティング会社との付き合い方がわからない方もいるかもしれませんが、そういった方々もぜひ参加してみると良いでしょう。多くの企業では教育会社に任せてしまうことが多いですが、実際には現場の実情を体感することで、本当のニーズを把握できると思います。このようなコースでしっかりとニーズの抽出手法を学ぶことで改めて自分の役割を再認識する意味でも非常に有益だと考えています。

能力や知識には有効性に限られた期間があるから、人事として学び続ける

― これから受講する皆さんへメッセージをお願いします。

専門性を高めることは、急速に変化するビジネス環境において非常に重要です。特に人事の分野では、理論だけでなく、実践的なスキルや異なる視点を持つことが求められます。海外では、人材開発の専門知識を持つ人材が企業内の人材開発を担当しており、このアプローチが企業の成長に寄与しています。一方で、日本ではまだそのようなアプローチが十分に浸透していないと感じています。

能力や知識は常に時とともに価値が変わるもので、新しい知見を学び続けることは、私たちが直面する問題を本質的に解決するためにも不可欠です。私が人事の道を歩む中で大切にしているのは、問題が発生したときに待っているのではなく、常にアンテナを張り主体的に行動することです。この学びの旅を通じて、自己成長を促進し、組織への貢献を果たすことができると強く信じています。

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