ダイバーシティを推進することは企業が今後も発展していくために欠かせない取り組みとなっています。今回はダイバーシティについて、必要とされる背景や実践するうえで必要なことを紹介しましょう。また、近年ダイバーシティと合わせて語られることの多い「インクルージョン 」についても解説します。
ダイバーシティとは?
ダイバーシティとは「多様性」を意味し、ビジネスの分野では国籍・性別・年齢などの区別なく多様な人材を積極的に登用する戦略のことを指します。企業がダイバーシティを推進することで、優秀な人材の確保やイノベーションの創出につながり、世界での競争力の獲得や業績向上、生産性向上などといったメリットが期待できると言われています。
ダイバーシティが必要となった背景
ダイバーシティが必要となった背景にはさまざまな理由があります。それらを具体的に見ていきましょう。
- 人材不足
ダイバーシティが必要となった背景には、まず人材不足が挙げられます。
日本では、少子高齢化の影響で労働人口が減少し、この流れは今後も続くと予測されています。企業が人材を確保するのが難しくなったことで、優秀な人材を確保するためにも、性別や国籍、人種などさまざまな人材や働き方を受け入れていくことが必要なのです。
- 労働に対する考え方の変化
労働に対する考え方の変化も、ダイバーシティが必要となった背景のひとつに挙げられます。
これまでの「男性は仕事、女性は家庭」というような考え方ではなく、誰もがやりがいを持ちつつ仕事と生活を両立させるという、ワーク・ライフ・バランスが重要視されるようになりました。ワーク・ライフ・バランスの実現のためには、必ずしも毎日同じ時間に決まった場所で仕事をするという働き方が正しいとは限りません。柔軟な働き方を受け入れるためにも、ダイバーシティは必要です。
- 多様な視点の重要性
多様な人材を確保することによって、互いの価値観や思考スタイルの違いが刺激となり、イノベーションが生まれやすい環境を作ることができると期待されます。さまざまな視点や角度からものごとを捉えることができれば、新しいサービスの提供や、ユーザーの隠れたニーズにこたえていくことができます。競争が激化するビジネスの中でダイバーシティを推進することは、人材を確保するだけでなく、このように多様な視点から事業を生み出すことでイノベーションを生み出すことができるのです。
- 女性の社会進出実現
今までは結婚や出産、介護などで女性がキャリアを中断せざるを得ない場面が多くありました。優秀な女性が仕事を辞めてしまうのは、各企業にとってだけでなく社会全体にとっての損失と言っていいでしょう。労働人口そのものが減少している今、女性の社会進出の実現は不可欠です。女性が働き続けるためには、男性がこれまで以上に家庭に関わることが求められますし、そのためには労働環境の整備も必要です。
ダイバーシティを推進するために必要なこと
ダイバーシティを推進するのには、経済産業省による「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」に示されている通り7つのアクションと3つの視点に則って取り組むことが求められます。ダイバーシティ2.0行動ガイドラインとは、経済産業省が立ち上げた「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会」で定められました。強制力はないものの、企業がダイバーシティを推進するうえでの重要な指針となっています。そのアクションと視点を見てみましょう。
【7つのアクション】
- 経営戦略への組み込み
- 推進体制の構築
- ガバナンスの改革
- 全社的な環境・ルールの整備
- 管理職の行動・意識改革
- 従業員の行動・意識改革
- 労働市場・資本市場への情報開示と対話
【3つの視点】
まず何よりも、経営トップのコミットメントとリーダーシップが必要になります。そのうえで、組織全体でダイバーシティを推進する体制やルール、指針を整えます。現場レベルにおいては管理職と従業員が主体的に取り組みを推進していく必要があるでしょう。ダイバーシティを定着させるためには、企業内部のみならず、外部のステークホルダーに対してもどのような取り組みをおこなっているか情報を発信し、評価を受けることが肝要です。
ダイバーシティだけでなくインクルージョンも必要に
最近ではダイバーシティと併せて「インクルージョン」というキーワードが使われるようになりました。ダイバーシティの「多様性」とはまた異なる戦略です。インクルージョン について見ていきましょう。
- インクルージョンとは何か
インクルージョンは直訳すると「包括」という意味です。ビジネスの分野では、多種多様な従業員すべてが仕事にかかわっている状態で、かつそれぞれの価値観やバックグラウンド、スキルを活かせている状態を指します。
- インクルージョンが求められる背景
上述の通り、少子高齢化社会とそれに伴う労働人口減少によって、女性や外国籍、高齢者などの労働力の必要性が増しています。国籍や性別、年齢の違いを受け入れ、個人と組織が成長するための多様性が進められているなかで、意見の違いなどといった多様性が生み出すひずみやデメリットに対するひとつの解決策として、包含や包括を意味する「インクルージョン」が求められるようになりました。
- インクルージョンとダイバーシティの違い
インクルージョンとダイバーシティの違いは、ダイバーシティ は「多様性」という意味で、国籍や性別、年齢など個々の違いを生かし、多様な視点から企業と個人の成長を促す戦略です。それに対してインクルージョンとは多様性のある意見やアイデアを組織でまとめるといった意味合いです。ダイバーシティは多様性を生かすのに対し、インクルージョンはその多様性を受け入れるといった違いがあります。
- インクルージョンを導入するメリット
インクルージョンを導入するメリットは、個人が持つ個性の尊重や新しい提案を受け入れることによる企業の成長、イノベーションの創出などが挙げられます。ダイバーシティの推進による多様化がますます進む中で、個性や個別のスキルを埋没させない取り組みがインクルージョンと言えるでしょう。
ただし、ダイバーシティもインクルージョンもむやみに促進しても良い結果は得られません。会社の成熟度や、それぞれの個別事情に合わせた推進でなければうまくいかないことにも留意しましょう。
まとめ
競争が激化する企業活動において、企業がさらに発展していくには、個人の個性や強みを受容し、生かしていくことが重要になってきます。これまでの組織のあり方を変えていくのは簡単なことではありませんが、進化をしていくためには欠かせない取り組みです。ダイバーシティやインクルージョンを導入するにあたっては、全社をあげて取り組み、形だけで満足せず、社内に定着させていきましょう。