公開日 2018/11/12
営業パーソンにはコミュニケーションスキルが必要だとよくいわれていますが、具体的にコミュニケーションスキルとはどのような能力なのでしょうか。話すことが得意で、優れたトーク力が必要というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか?
もちろん、優れたトーク力で営業成績を上げる人もいるでしょう。ですが、コミュニケーションスキルというのはイコール、トーク力ではないのです。今回は営業活動をするうえで非常に大切な、コミュニケーションスキルについてご紹介しましょう。
コミュニケーションは「話す・伝える」だけでは成り立ちません。「聞く・聞き出す」力が必要です。営業パーソンにとって必要な能力を分解して考えてみましょう。
コミュニケーションスキルとは何かひとつの能力を指しているわけではなく、複数の能力の集合です。そのなかのひとつに「聞く力」があります。といっても、聞く力というのは、ただひたすらクライアントの話を聞くだけではありません。話を聞くことでクライアントのニーズを聞き出すことが何より大切なのです。そのために面談前に十分な情報収集を行い、面談ではクライアントが抱えている課題を引き出すことがなによりも重要になります。
クライアントに自分や自社についてアピールしたいばかりに、つい自社商品の説明ばかりをしてしまう営業パーソンがいます。しかし多くの場合、クライアントが知りたい情報以外は聞き流されていることも多いのです。
基本的にクライアントは営業パーソンの話を聞きたいのではなく、抱えている課題や悩みをとにかく聞いてもらいたいのだと意識しましょう。簡単なようで、それがなかなか難しいものです。
クライアントは潜在的に抱えている課題や悩みを聞いてもらいたいと思っている。とはいっても、黙っていればいいというわけではありません。営業パーソンはいかにクライアントに話をさせるか、悩みを話させるかが重要です。そこでキーワードになるのが「質問」です。クラアントはいろいろな要望を伝えてきますが、それがなぜ必要なのか、絶対に必要なのか、できれば必要なことなのか、丁寧に一つひとつ確認する必要があります。
クライアントの要望をすべて叶えるのは難しいでしょう。しっかり質問しないと、解決が難しい課題になってしまったり、結局クライアントが何をしたいのか営業パーソン自身もわからなくなってしまったり、課題が見えなくなってしまいます。質問と確認を行うことで、課題を見失わずにプロジェクトを進めることができます。
クライアントの本当のニーズを聞き出すために、クライアントに話させるには、「相手の心境を理解するために質問をし、探ること」を効果的に行うことが重要です。そこでは「簡素に行う」「一つひとつ行う」「誘導しない」という3点がポイントになります。冗長な質問や一度に複数の質問をすると、意図がぼやけてしまい、クライアントは的確な回答ができなくなります。また、クライアントに自由に答えてもらうために、こちらが求めている回答に誘導するのではなく、クライアントが中心になって能動的に話してもらう必要があります。
クライアントが皆、はっきりとした要望や悩みを抱えているわけではありません。むしろ自分たちでさえ何がしたいのかわからないことが多いでしょう。商談はこれを前提にのぞみ、クライアントの真の課題を見つけることが重要になってきます。
クライアントの課題の真因を、面談の中での効果的な質問によって言語化するのが営業パーソンの大切な役割です。クライアントの現状や今まで話していた内容などを整理し、そこから導き出しましょう。クライアント本人も気づいていなかった悩みの本質を見つける機会になるかもしれません。
共感力は営業パーソンとして大切な力です。表向き同調しているだけでは、クライアントにも見抜かれるでしょう。クライアントの成功が自身の成功であると考えることによって、両者に特別な関係性が生まれます。本気で「クライアントの悩みを理解しよう」という気持ちで向き合うようにしましょう。
クライアントの会話や話し方、表情などから性格・嗜好などを読み取ることも営業パーソンにとって大切な力です。何気なく会話しているときが最も大切な時間で、その人の人間性や本音が見えるところです。ただ会話を盛り上げて楽しんでいるだけでは、クライアントの本質を見抜くことはできませんし、その時間が無駄になってしまいます。
どんなときに話や表情のトーンが変わるかなど、すべて観察してください。クライアントの立場や役職、抱えている課題への対処方法などによっても、戦略は変わってきます。状況やクライアントの特性を見極めて、課題解決の方向性を探るようにしましょう。
クライアントの要望を聞くことは大切ですが、方向性を示すことも営業パーソンには大切な力です。特にクライアントに絶対的な要望がなく、どうしたらいいのか悩んでいる場合は、根拠を示したうえで何がベストなのかを提示しましょう。もちろん、方向を示すためには、それまでにクライアントとの関係性を強化して信頼を得ていなければなりません。クライアントの課題や心配事に対して臆せず対応することも重要になります。
営業パーソンはあくまでも「悩み」や「要望」を持っている相手の相談役です。しっかりと相談役に徹して、「本当のニーズ」を的確な質問で聞き出し、それを言語化することに力を注ぎましょう。今回ご紹介したコミュニケーションスキルを、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
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