公開日 2019/02/05
営業は比較的ストレスの多い職種だといえます。会社からは目標達成のプレッシャーがかかり、顧客からは直接クレームをもらうこともあります。なかなか契約が取れず、モチベーションが下がっている営業パーソンもいるかもしれません。営業成績や生産性は、営業パーソンのモチベーションに左右される側面が多いものです。
また昨今では顧客中心主義が進み、営業と顧客の関係性も変わるなかで、営業に求められる役割やスキル、姿勢も従来とは大きく変容してきています。このような環境の変化に対応しつつ、いかにして営業に携わる個人やチームのモチベーションを維持・向上させることができるのでしょうか。ここでは、モチベーションを維持・向上させる方法やモチベーションマネジメントについてご紹介します。
ビジネス環境は日々変化していますが、営業組織はその変化に十分に対応できていません。たとえば、買い手は製品を購入するときに、インターネットを通じてあらゆる情報を手に入れることができるので、その選択肢は無限に広がっています。調査機関CSO Insightsの調査(※)で、買い手に「問題解決のために最初に頼りにするのはどこか」という質問をした結果、セールスを頼りにすると回答したのは全体の23%で、10個の選択肢の中で下から2番目でした。つまり、買い手は営業の存在意義をそれほど感じていないということです。
このような厳しいビジネス環境の中で、営業組織にいるビジネスパーソンはどのようにモチベーションを維持していけば良いのでしょうか。
営業パーソンがモチベーションを上げるには、さまざまな方法が考えられます。ここでは3つを紹介します。
まず第一に、営業活動を行う前のマインドセットが大切です。営業パーソンが顧客と交渉する時のマインドセットは、主に自信とプレッシャーに支配されています。
自信は、自社が提供することのできるサービスの価値によって支えられ、その営業パーソンが交渉にどれだけの準備をしてきたかに左右されます。プレッシャーは、営業パーソン自身の目標や組織から課せられたノルマ、競合他社の存在など多岐に渡ります。この自信とプレッシャーのバランスが取れていないと、営業において高いパフォーマンスを発揮することができません。
マインドセットを整えるためには、特定の質問を自問自答することが有効です。たとえば、「顧客との交渉を前にして、いま自分自身はどのような気持ちなのか」「顧客に提供する価値はどのようなものか」「自分は他にどのような案件を抱えているか」といった質問を自分自身に投げかけます。このような質問をすることで、いま自分自身がどのようなマインドセットなのかを確認し、それを踏まえて交渉の準備をすることができます。
モチベーションを上げ、それを維持するためには目標設定が大切です。目標には2つの種類があります。
営業パーソンは会社組織に所属しているので、組織から目標(ノルマ)を設定されるのが一般的です。しかし人間は、外から設定された目標に対して高いモチベーションを維持するのは難しいと感じる傾向にあります。人から与えられた目標は責任を感じづらく、「設定した目標が悪い」など、責任転嫁することができるからです。
そこで、達成目標だけではなく、自分で行動目標を設定するのがポイントです。心理学の自己決定論的には、人は自ら選択した目標に対しては責任を感じ、モチベーションが上がることがわかっています。
自ら主体的に目標を設定することができたら、その目標を達成するために小さなことから行動を起こします。行動する時、「いまここ」に集中して目の前の仕事に取り組むことがポイントです。
「昨日の商談がうまくいかなかった」「明日の顧客へのプレゼンに不安がある」など、過去や未来にとらわれず、「いまここ」を意識しましょう。そして、小さな行動を毎日繰り返すことで、目標達成に必要な行動を習慣化します。習慣化することができて、行動を無意識でできるようになれば、モチベーション自体に振り回されることはなくなります。
モチベーションは、個人単位だけではなく、チーム単位でも存在します。モチベーションマネジメントは、意図的に営業パーソンや営業チームに対して動機付けを行い、パフォーマンスを高める方法です。心理学的に仕事のモチベーションを高める要因としては、上司や同僚から承認されること、仕事で目標達成すること、自分の仕事が評価されて昇進することなどが、ビジネスパーソンのモチベーションになることがわかっています。
この考え方を応用し、営業チームのモチベーションを高めるには、チームメンバーの存在を認め、メンバーの仕事を適切に評価することが大切です。また日常的には、何気ないことでも声をかける、褒める、一緒に考えるなどのコミュニケーションを通して、チームメンバーに関心があり、承認していることを明確に表すことも効果的です。逆にチームのモチベーションが下がる要因として、目標が明確ではなかったり、目標のハードルが高すぎたりする場合があります。
個人やチームのレベルではなく、企業という組織全体のモチベーションも大切です。組織として、短期的な目標だけではなく中長期的に会社の目指す方向を示しましょう。
個人の目標と組織の目標を完全に一致させることは難しいですが、方向性を合わせることはできます。そのためには、会社のミッションや企業理念を社員一人ひとりが深いレベルで理解している必要があります。例として、アパレルのオンラインショップを運営する株式会社ZOZOの企業理念は、「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」の一文だけです。組織の方向性をシンプルに表現することで、個人の目標とも合致しやすく、組織全体のモチベーションを高めやすいと言えるでしょう。
営業のモチベーションを上げるためには、個人レベルでは、目の前にあるやるべきことを一つずつ習慣化していくことが効果的です。営業チームでは、モチベーションマネジメントの実践によって、一人ひとりとのコミュニケーション強化を図り、やる気を引き出すことが重要です。さらに会社やマネジメント層が中長期的に目指すべき方向を示すことで、個人のモチベーションを維持し、組織全体の成長につながるでしょう。
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