公開日 2018/09/11
一定規模の営業組織を持つ企業の多くが、一度は検討する「SFA(営業支援システム )」の導入。一方で、導入後の運用がうまくいかず、定着しないケースも少なくありません。ここでは、SFAの基本的な機能に加えて、CRMとの違いについても解説します。そのうえで、SFAの活用に失敗してしまう理由や、システムの運用を成功させるために導入前に必ず検討すべきポイントについて紹介します。
SFA(Sales Force Automation)とは、顧客情報や案件の進捗など、営業活動に必要な情報をシステムで共有し、営業活動全体の生産性をアップさせるシステムです。日本では20年ほど前からその概念が提唱されており、現在ではさまざまな種類のSFAパッケージやクラウドサービスが存在します。
CRMとSFAは機能面で重なる部分も多く、CRM的な機能も内包しているSFAは多く存在します。両者の違いは、主な目的と重視している機能にあります。
SFAで重視されるのは顧客情報の管理だけではなく、例えば営業日報や売上レポート、予算管理など、日々の営業活動を効率化する機能です。これに対してCRMは、顧客の問い合わせ履歴の管理や見込み顧客へのメール配信など、営業活動以外での顧客との関係構築に必要な機能を多く搭載しています。顧客との関係性のフェーズとしては、新規の見込み客発掘から受注が発生するまでをSFA、既存顧客となってからの長期的な関係性づくりや、アップセル・クロスセルのフェーズではCRMを活用するという区切りになります。
SFAを導入することでチームの営業効率がアップし、業績の向上が期待できます。一方で、そうしたITツールをうまく活用できずに終わってしまうケースも少なくありません。ツールに投資しても営業の成果が改善されないとき、次の2つのポイントに原因がある可能性があります。
「使いづらい」「現場のマネジャーが知りたい情報を得られない」など、現場がツールの利用をためらうケースです。ツール導入時の教育が不十分だったり、そもそも現場の声を取り入れず、トップダウンで使いづらいSFAを入れてしまったりすることで、運用が十分に行われなくなってしまいます。
SFAの導入によって営業プロセスそのものを効率化できても、肝心の提案内容が改善されておらず、数をこなすだけの営業活動になってしまっているケースです。案件や顧客との接触回数こそ増えますが、契約や受注など、最終的な成果には結びつかずに終わってしまうでしょう。効率化を考えるだけでなく、営業活動そのものの質ややり方を見直すことが必要です。
では、SFAを実運用までしっかり行い、定着化させるためには、どのようにシステムの選定・運用を行えばよいのでしょうか。そのポイントをまとめました。
必要な機能が備わっておらず、逆に目的に対して過剰な機能が多いと、結局現場で使われなくなります。さらに、新たな機能要望のためのカスタマイズの費用がかさむといった問題にもつながります。自社に必要な機能が過不足なく搭載されているか、導入前に必要なSFAの機能を洗い出す必要があるでしょう。
すでに自社で利用しているCRMや経費精算などの業務システムと連携できれば、営業活動に付随する業務全体をシームレスに管理できます。ばらばらのツールで管理するよりも情報共有の効率が上がるため、システムの連携機能はぜひチェックしておきましょう。
日々忙しく活動している営業担当者が少しでも入力や閲覧を面倒に感じると、なかなか現場で使ってもらえず、導入しても宝の持ち腐れになってしまいます。SFAの活用が進んでいる欧米では、ほぼシステムの独自カスタマイズがなく、入力項目や入力方法がシンプルなシステムが好まれる傾向があります。「画面デザインや操作性がシンプルである」「マルチデバイスで使える」など、現場の社員が使いやすいインターフェースであることが大切です。
SFAそのものを使いこなせるだけでなく、効率化されたプロセスによって行われる営業活動そのもののクオリティを上げる必要があります。好成績の営業担当者の知識をチームで共有したり、一般化や仕組み化できる業務を洗い出したりなど、チーム全体で営業活動の質を上げる取り組みが最も重要になってきます。
SFAを導入することで営業活動の効率化が図れ、生産性アップにも寄与します。ただし、目的や機能要件などを十分に検討しないで導入したり、そもそもの営業活動の改善が後回しになったりしてしまうと、結局現場で使われずに宝の持ち腐れになってしまうケースもあります。導入する前に営業プロセスの再定義や改善を行い、しっかりと目的を定めて導入を検討していきましょう。
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