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コラム

2017.12.19

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「引き出し」型アプローチで組織風土を変える!<前編>

組織開発

閉鎖的な風土が、会社を揺るがす問題を起こしている

昨今日本の名門企業における不正の発覚が相次いでいる。この問題は深刻で、モノづくり大国としての日本の権威を揺るがしかねない事態となっている。経団連でも品質データをめぐる改ざんを受けて、不正の実態調査を約1,300の会員企業に要請している。不正の理由は様々であるが、不正を起こしたある企業のデータ改ざん問題に関する原因分析と再発防止策をまとめた社内報告書によると、原因5項目のうちの1つが「閉鎖的な組織風土」であった。

ここで組織風土の定義を確認したい。組織風土とは、「仕事環境で生活し活動する人が直接的に、あるいは間接的に知覚し、彼らのモチベーションおよび行動に影響を及ぼすと考えられる一連の仕事環境の測定可能な特性」(Litwin and Stringer)である。社員が感じることのできるものであり、環境変化に合わせて作り変えることができるものである。さて、皆さんの会社の組織風土はどのようなものだろうか?上述した不正を起こした企業は他人事・・・と思いたいところだが、あらためて自組織を点検すると、「上には良いことだけしか言わない」、「タコツボ化している」等、問題を抱えていないだろうか。

一般社団法人日本能率協会が実施しているアンケートでは、現役の取締役・執行役員を対象に「社長になったらまず何に取り組むか」を聞いたところ、1位利益率向上、2位組織活性化という結果になった。多くの企業では何等かの組織風土の問題に直面し、何とか現状を打破しようと努力していることがわかる。また「階層関係なく意見を言い合える活発な組織」、「問題点、失敗も議論し合える組織」、「風通しの良い組織」等の目標を掲げ、改革活動に取り組んでいるという企業も多い。しかしなかなかうまくいかず、風土が変わらないばかりか、更に悪い方向に進むこともある。

このような状況を打破し、組織風土を改革する上での施策としては、制度、組織構造等色々な観点があるが、本稿では時間がかかり難しいとされている「人」(改革の主体となる社員の改革の意思を引き出すこと)に焦点を当てたい。

押しつけ型の風土改革が、失敗を招いている

多くの企業において組織風土を変える改革が上手くいかない原因は何だろうか。「現状をしっかりと見ず、モグラ叩き的に進めてしまった」、「改革活動が形式的なものになっていた」、「途中で諦めて止めてしまった」等原因は色々とあると思う。いくつもの企業をご支援してきた中で、何か手を打ったものの失敗した企業においてよく見かけるのは「トップの指示を受けて現場はその場限りで仕方なく対応しているだけ」という実態である。つまり、「押し付け」のため、現場はやらされ感があり、改革が自分事にならず、とりあえず言われたことだけをやるという状態になってしまう。結果として、改革活動が形式的なものに陥り、一部の社員が盛り上がるだけになってしまうのだ。

当然ながら組織を一人で変えることはできない。改革が現場主体で回らないと組織全体を変えていくことは難しい。現場主体で改革活動を推進し、組織風土を変えていくためにはどのようにしたらよいだろうか?

組織風土の改革を成功している企業は社員の改革の意思を引き出し、現場主体で改革を進めている

組織風土改革をうまく進めている事例として、弊社がご支援した企業(仮称:A社)の事例を挙げたい。

A社をご支援したのは、複数の組織が合併したタイミングであった。このような状況の中、コミュニケーションを活性化させ、一人一人が働きがいを持つ組織に変えることを目標にして改革活動がスタートした。改革活動を進めるにあたり、改革活動事務局と共に改革の全体シナリオを企画した。進め方は、まず、社員アンケートや幹部層へのインタビューを通して組織の現状を把握し、改革課題を設定した。そして、部署横断の選抜メンバーで構成する変革チームを結成し、この変革チームが主体になって、自分達の組織のありたい姿を描き、計画を立案していった。現在では、変革チームのメンバーが当事者意識を持って、自分達で作った計画を実践し、改革活動を主体的に進める変革推進者として活躍している。そしてこの輪が徐々に広がりつつある。

現状把握→ありたい姿づくり→課題設定→実践という進め方自体は、一般的な進め方だ。ここでのポイントは、トップの考えややり方を押し付けて進めるのではなく、社員に自分達の組織をどう変えていくか考えることを徹底して任せ現場主体で進め、トップは社員のフォローに徹したということである。A社においては、部署横断の変革チームを編成し、ここが主体となって活動を回すよう仕掛けた。具体的なポイントは下記である。

・組織を変えていく上で、その理想像をトップから落とすのではなく、変革チームメンバー自ら組織のありたい姿を考える
・ありたい姿を実現するための計画、体制を社員が主体になって具体化する
・トップは自分の想いや経験を共有し、改革を進める必要性やそのメリットを伝えながらフォローをする
・トップは改革を進める上での体制面の社内調整等、社員では実現しづらいことのフォローをする

つまり、変革チームのメンバーが自ら考え、実践できるよう任せたのである。変革チームのメンバーが自分達で考え、悩み、実践していくことで、危機意識が醸成され、それが当事者意識に変わることで、主体的に改革活動を推進するような社員に変わったのである。すなわち、社員の改革の意思をうまく引き出すことが出来たのである。

弊社では組織改革の主要成功要因を踏まえ、一連のプロセスや様々な仕掛けを企画し、A社の改革活動をご支援した。

中田図1.png

ではなぜ、改革の意思を引き出し、現場に任せることが大事なのか。それは、組織風土を変えるには長い時間がかかるため、自分達で主体的に変え続ける土台を作る必要があるからである。社員が強くなれば、改革活動も継続し、定着する。従来の押し付け型では、強力に活動推進するトップがいなくなると活動が頓挫するというケースが多い。だが社員一人一人が変われば、トップが変わっても自分達で活動を継続することが可能なのだ。そうすれば、組織風土は少しずつ着実に変わっていく。

次回は、風土改革をうまく進めた、いすゞ自動車やオリンパスの事例なども参照しながら、具体的な改革の進め方などについて考えていきたい。

※参考
・一般社団法人日本能率協会 現役の取締役・執行役員に聞いた 「経営者に求められる資質と行動に関するアンケート」 2016年9月28日


執筆者紹介

シニアコンサルタント
中田 奈津子

2007年、株式会社日本能率協会コンサルティングに入社後、研究・開発・生産技術部門を中心に、風土改革、人材開発、商品企画支援等幅広くコンサルティングを実施。特に経営成果に貢献する組織づくりに力を注ぐ。現場に入り込みながら変革を推進することを得意とする。2015年7月より現職。直近では、人事制度改革、風土改革、教育体系の構築に携わる。

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