HOMEコラム・レポート HRLFレポート HRリーダーズフォーラム 第14講(後編)「人事変革ストーリー③ 味の素株式会社 理事 グローバル人事部長 髙倉千春氏」

HRLF レポート

2019.05.31

HRリーダーズフォーラム 第14講(後編)
「人事変革ストーリー③ 味の素株式会社 理事 グローバル人事部長 髙倉千春氏」

コンプライアンス 戦略人事

パーソル総合研究所は、「企業経営における戦略パートナーとしての人事」を実現するにあたってキーパーソンとなる次期リーダーの育成を本格的に支援するための学びの場として、「HRリーダーズフォーラム」を開講しました。10テーマにおよぶ人事領域の理論やプラクティスを学ぶ講義と、自社・自組織の課題への打ち手を考察するワークショップ、著名な人事変革リーダーの実体験を聴講する「人事変革ストーリー」など、さまざまな角度から人事パーソンとしての専門性とリーダーシップを高める全15回のプログラムを2019年3月まで開催していきます。


味の素株式会社 理事/グローバル人事部長 髙倉千春氏の人事変革ストーリー

第14講の後半は、味の素株式会社 理事/グローバル人事部長 髙倉千春氏をお招きし、130の国と地域で、3万4千人(グループ全体)の従業員が活躍する味の素株式会社のグローバル人事戦略についてお話を伺いました。

Profile
1983年 農林水産省入省
1990年 Georgetown大学
1992年 同大学にてMBAを取得
1993年 コンサルティング会社にて組織再編、新規事業実施などに伴う組織構築、人事開発などに関するコンサルティングを担当
2004年 日本べクトン・ディキンソン株式会社に入社し、人事へ転じる
2012年 ノバルティスファーマ株式会社に入社 人材組織の要職を歴任
2014年 味の素株式会社へ入社
2018年4月から現職。同社のグローバル戦略推進に向けたグローバル人事制度の構築と推進のリード役を務めている

外資系企業を中心に、グローバル人事のキャリアを築き上げてこられた髙倉さん。髙倉さんが就職活動をされていた頃は、雇用機会均等法がまだ施行されておらず、総合職を目指す女性の就職が大変難しい時代だったそうです。ご自身の人事キャリアは、常に手探りで積み重ねてこられました。「私も若い頃にHRリーダーズフォーラムのようなプログラムを受けていたら、今の人事キャリアはもっと変わっていたかも?」という軽快なトークから、この日のご講話がスタート。髙倉さんご自身のキャリアの変遷とともに、髙倉さんの人事変革ストーリーを聞かせていただきました。


登壇する味の素理事/グローバル人事部長 高倉千春氏

人事が強ければ会社は勝てる!『年功序列』から『適所適財』へ

「私が就職活動をしていた頃は、女性の選択肢が本当に少なかった時代です。少ない選択肢の中で、英語が使えることを重宝されるかもしれないと考え、門を叩いた農林水産省に運よく入省できることになりました。決して、最初から人事のキャリアを目指していたわけではないんです。」

その後、北米でMBAを取得され、帰国後は外資系企業へ。実は、日本企業で働かれるのは、現在の味の素が初めてだそうです。味の素に入社した際に直面した変革の課題は、何年も前にファイザー製薬時代に経験したものと全く同じだったといいます。

「従業員の年齢と給与を分析してみたら、完全に一致。つまり、年功序列だったんです。」

髙倉さんの味の素での最初のミッションは、世界130の国と地域でビジネスを展開する同社の「人事制度のグローバル化」でした。日本における旧式の人事制度である『年功序列』から、ポストに最適な人財をマッチさせる『適所適財(*)』へ変えるためのチャレンジを行ったそうです。

(*)味の素では「人材」を「人財」と呼んでいます。

「適財適所」ではなく、あえて、「適所適財」と表現するのは、事業戦略を実現するために組織に必要な職務(=ポジション)を明確化し、そのポジションに最適な人財を発掘・育成することを、味の素のグローバル人財マネジメントプラットフォームの柱としているからです。

そのグローバル人財マネジメントプラットフォームの実現に不可欠となるのが、「ポジションマネジメント(適所)」と「タレントマネジメント(適財)」。3万4千人の従業員のうち2万人がnon-Japaneseである味の素にとって、人的資源の最適配分の実現は必須でした。具体的には、一千を超える数の職務記述書の作成を2年間かけて全世界で実施し、等級制度を導入するとともに、各自のキャリアプラン・適性を踏まえ将来の職務要件に見合ったところに登用する「適所適財」の実現を加速しています。

倉さんには、かつて業界6位だったファイザー製薬を1位まで押し上げたご経験から、「人事が強ければ会社は勝てる!」という確信があったのだとか。ただし、人事に綺麗な解はなく、厳しい局面もいっぱいあるからこそ、「人事は人間力がとても重要だ」とおっしゃいます。

人事こそ、いつもニコニコの笑顔を保ちたい

人事は、社内の幅広い従業員と接点があるため、社内で「顔」が知れている存在になります。だからこそ髙倉さんは、「いつもニコニコの笑顔を心がけ、笑顔でポジティブな雰囲気作りに努めるようにしているんです」と言います。社内をいつも明るい雰囲気に保つだけでなく、「この人の話に耳を傾けたい」と思ってもらえるように、困難な局面においても前向きな姿勢を示し続けることが大切だそうです。

ただし、変革を推進するときに、抵抗勢力とどのようにコミュニケーションをとるかが重要というご指摘もありました。ご講話の中では、ボストンコンサルティンググループが提唱する「チェンジモンスター(変革の阻害因子)」を用いて、抵抗勢力との向き合い方の留意点をご紹介もいただきました。きっと、悔しい思いもたくさんご経験されていらっしゃるのだと想像します。

実際に、髙倉さんが「ポジションマネジメント&タレントマネジメント」のプランニングをしている際、反対意見にも遭遇しました。後日、若手社員の意見を採用して「いろんな大きさや色の椅子(ポジション)がありますから、それにぴったりの人を座らせましょう」という表現にし、相手目線に立ったコミュニケーションの重要さを改めて実感したそうです。

髙倉さんは、「人事は事業戦略を継続的にサポートするドライバーのような存在」だといいます。事業戦略の実現に向けて、従業員が同じ目標に向かって一丸となるために、人事は人間力をもって上手に周囲を巻き込んでいく必要があるそうです。

そのためには、常に平常心を持ち、相手に「分かるように」「伝わるように」と、コミュニケーションを工夫していくことが大切だとおっしゃいました。いつも笑顔を心がけるながら、そのような日々の努力を積み重ねることで、人事の人間力が築かれていくのですね。

変革における重要な視点は「自社にとって何を変えて何を残すべきか」

登壇する味の素理事/グローバル人事部長 高倉千春氏
ご講話の後半、「味の素のこれから」のお話の中で、変革における重要な視点として「自社にとって何を変えて何を残すべきかを考えることが大切です。」ということをお話くださいました。

「皆さんの会社のビジネスモデルは何ですか? 人事はまず最初に、自分の会社のビジネスモデルをしっかりと捉えることが大切です。そうでなければ、間違った処方をしてしまうかもしれませんよね。」

皆さんもご存知の通り、味の素のビジネスは「食」にまつわるものが中心です。食文化は、世界中で様々な多様性に満ちており、例えば「おでん」という商品一つをとっても、日本はかつおダシだけど中国では豚のダシを使っているんだとか。つまり、味の素にとっては、現地の文化への適合(=ローカライズ)を通じて、世界の食と健康に貢献することが社員全員の使命だとおっしゃっていました。

一言に「グローバル人事への変革」と言っても、各社にとって有効な戦略は、各社それぞれであるべきなのですね。HRリーダーズフォーラムが掲げる「経営に資する人事」というテーマに照らし合わせて、改めて人事パーソンが経営的な視点を持つことの重要性を認識したご講話でした。

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