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HRリーダーズフォーラム レポート

2019.05.15

HRリーダーズフォーラム 第12 講
「組織・人事マネジメント論① ダイバーシティ」

ダイバーシティ 戦略人事

パーソル総合研究所は、「企業経営における戦略パートナーとしての人事」を実現するにあたってキーパーソンとなる次期リーダーの育成を本格的に支援するための学びの場として、「HRリーダーズフォーラム」を開講しました。10テーマにおよぶ人事領域の理論やプラクティスを学ぶ講義と、自社・自組織の課題への打ち手を考察するワークショップ、著名な人事変革リーダーの実体験を聴講する「人事変革ストーリー」など、さまざまな角度から人事パーソンとしての専門性とリーダーシップを高める全15回のプログラムを2019年3月まで開催していきます。


社会性のダイバーシティと経済性のダイバーシティは違う!

第12講は、株式会社CORESCO代表取締役、マーサージャパン株式会社シニア・フェローの古森剛氏をお招きし、企業におけるダイバーシティの位置付け、多様性を許容/活用することで生まれる効果について学びました。参考図書として提示されていたのは、フレデリック・ラルーの『ティール組織 - マネジメントの常識を覆す次世代組織の出現』(英治出版,2018年)。講義の中でも、最先端の企業組織のお話を聞くことができました。

第12講「ダイバーシティ」に登壇した株式会社CORESCO代表取締役、マーサージャパン株式会社シニア・フェロー小森剛氏
講義の冒頭で、この日の講義の趣旨として以下のようなスライドが提示されました。

"Diversitiy & Inclusion"について、
企業=社会の公器としての社会的価値を生む視点だけでなく、
営利企業として経済価値や競争力を生むところまでつなげるために、
何が必要かを考えてみよう。

ダイバーシティには、①社会的価値の提供、②経済価値の創出という2つの側面があるそうです。一般的に、ダイバーシティと聞くと、「女性活躍推進」や「障害者採用」などを思い浮かべる方も多いと思いますが、これらは①社会的価値の提供に当たります。それを行うことで企業の利益が上がるということではなく、「社会的に正しいとされていることだから儲かるかどうかはさておき、やならければいけないこと」です。

一方で、②経済的価値については、実践できている企業の事例がまだとても少ないため、「理論的にはわかるけど、具体的にイメージしにくい」と感じられるかもしれません。

時間軸と目的によって変化するD&Iへの期待効果

第12講「ダイバーシティ」小森剛氏登壇の様子

昨今、ティール組織を始め新しい組織形態に注目が集まっていますが、「多様性は常に経済合理性があるか?」というと、必ずしもそうではないそうです。古森氏によると、「ケースによっては、多様性を殺した方が勝率が上がることも多いのが現実」なんだとか。企業にとって、多様性が経済価値につながるかどうかを考えてみる際に、「時間軸」で整理してみると以下のようになるそうです。

短期戦(もしくはゲームのルールが明らか)
多様性を抑え、一糸乱れず集団として同質な行為をする方が勝率が上がる(?)

長期戦 (もしくはゲームのルールが不透明)
多様性を内包して活かす方が、変化し続ける環境下での将来の勝因を見出せる(?)

古森氏は、具体的な例をあげて、さらに掘り下げてご説明下さいました。

「例えば、野球の試合中に、メンバーが「俺、アメフトがやりたいんだよね」と言い出したとします。次の試合に勝つためには、そのメンバーの「アメフトがやりたい」という気持ちを押さえて、野球の練習をきっちりやらせた方が良いでしょう。しかし、もしあなたが球団のスポンサーで、50年後も確実に野球が最もポピュラーなスポーツであり続ける確証が持てなかったとしたら、今流行っている野球だけでなく、他のスポーツにも協賛しておくことが長期的な観点では勝率を上げるかもしれません。」

野球が得意な人しかいない組織なのか、様々なジャンルの人を揃えている組織なのか。不確実・不透明な経営環境の中で、中長期的に成長し続けるためには、短期的効率性を少し犠牲にしたとしても、様々な「個」が持つ特性を許容・活用することが、組織を持続的に活性化させることにつながるのだとか。

とはいえ、予算管理や目標管理など、日々の仕事は短期的な視点がほとんどです。短期的に考えることが習慣になってしまっていると、中長期的な企業利益という視点を持つのはなかなか難しそうですね。

第12講「ダイバーシティ」小森剛氏登壇の様子

本質的に重要な3つの"D&I"感覚

様々な企業のコンサルティング経験を持つ古森氏が、Diversity&Inclusionをうまく実現するために必要な感覚として、「これだけは間違いない!」と確信を持っていらっしゃるのが以下の3つのポイント。

  1. 規則・規範が多い経営環境下で、自然発生的なものを許容できますか?
  2. バイアスへの自覚を持ち、「個に対するフェアネス」の感覚を持てますか?
  3. 属性の多様性で終わらず、意見(Opinion)の多様性を生かせますか?

【自然発生的なものを許容できるか】
ダイバーシティの取り組みがあまり成果に結びつかない・・・という企業の多くは、「多様性を高めよう!」を起点にしてしまっているケースが多いといいます。「組織の多様性を高めよう!」と意識して多様性のある組織をつくり、成果を向上させるという流れもありますが、「個々の個性を活かそう!」の方に注力し、組織の成果が向上した時、結果的に組織が多様化していたということもあります。
古森氏は、ご自身が担当した案件で「いっそのこと掲げる旗を変えて、多様性を打ち出すのをやめてみたらどうか?」と提案したことがあり、その企業は多様性の旗を下ろした結果うまくいったそうです。この事例のように、自然発生的な多様性を受け入れて、個性を活かす努力を重ねていくことで、結果的に組織の成果と多様化につながるケースもあるのです。

【バイアスに対する自覚を持ってフェアネスを意識】
個を活かそうとした時に、一番重要になるのが「個」の理解。異なるバックグラウンドや価値観を持つ個人が、お互いを理解し合うためには、『アンコンシャス・バイアス(無意識に抱いてしまう偏見)』の存在を常に意識する必要があります。「バイアスを完全に排除することはできない」という前提に立ち、特にリーダーは「アンフェアになってしまっていないか?」という意識を持ち続けることが大切だそうです。

【意見の多様性を生かせるか】
女性比率や障がい者採用のような「属性の多様化」だけでなく、個々の思考内容や表明される意見・見解にも多様性が出る状態が土台。多様性が経済効果につながるためには、その土台の上で、多様な意見を一定の論理的要素を盛り込みながら「判断」し、議事を踏まえ意を決して「決断」することができるリーダーの存在が必要不可欠だと言います。

第12講「ダイバーシティ」セッションの様子

ダイバーシティ≠「個人主義」「わがまま」があふれた組織

古森氏いわく、「個人の都合が優先される組織が勝てるわけではない」とのこと。ダイバーシティをうまく機能させるためには、社員が「会社の試合に参加して、その試合に勝つために全力を出せる人」であることが前提となります。

個人の働きやすさを重視した人事制度は、ともすれば、その条件面だけに魅力を感じて引き寄せられる入社希望者が増える可能性すらありますが、いかにしてそのような社員を集めるのか? 講義の中では、参考図書「ティール組織」でも紹介されているアメリカのモーニングスター社の事例が取り上げられました。Plincples配下にある全体の文字数の、実に53%が『COLLEAGUE PRINCPLES』の説明に当てられているという事実を挙げて、つまり、自分たちの組織で一緒に全力を尽くすことができる人物像について徹底的に説明することで、「単純に人事制度面のメリットで応募していくる人は入れないよ」とメッセージを発信している、と考察しました。

まだまだ、進化の発展途上であるダイバーシティというテーマ。

経営者も実務担当者も、ついつい短期的な目標に目が行きがちで、企業の長期的な成長という視点を持てていないかもしれません。しかし、今回の講義を通じで、世界ではすでに組織形態やマネジメント手法が着々と進化しているということを学びました。先行きが不透明な時代において、多様性を備えた組織が勝者となるか。今後も継続的にアップデートしていきたいテーマの一つだと感じます。

第12講「ダイバーシティ」セッションの様子

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