HOMEコラム・レポート レポート HRリーダーズフォーラム 第9講「人事変革ストーリー② カゴメ株式会社 常務執行役員 有沢正人氏」

レポート

2019.04.10

HRリーダーズフォーラム 第9講
「人事変革ストーリー② カゴメ株式会社 常務執行役員 有沢正人氏」

キャリア 人事制度 戦略人事

パーソル総合研究所は、「企業経営における戦略パートナーとしての人事」を実現するにあたってキーパーソンとなる次期リーダーの育成を本格的に支援するための学びの場として、「HRリーダーズフォーラム」を開講しました。10テーマにおよぶ人事領域の理論やプラクティスを学ぶ講義と、自社・自組織の課題への打ち手を考察するワークショップ、著名な人事変革リーダーの実体験を聴講する「人事変革ストーリー」など、さまざまな角度から人事パーソンとしての専門性とリーダーシップを高める全15回のプログラムを2019年3月まで開催していきます。


グローバルで勝ち続けるための人事制度の構築

第9講登壇するカゴメ株式会社CHO有沢正人氏

第9講は、人事変革ストーリー第二弾として、カゴメ株式会社・常務執行役員の有沢正人氏をお招きし、グローバル人事制度の構築をテーマに、有沢氏の人事パーソンとしてのこれまでの仕事についてお話を伺いました。

グローバル人事のスペシャリストとして、数々のメディアで取材を受けられていらっしゃる有沢さん。実際にお会いしてみると、関西弁で明るくお話され、とてもフランクなお人柄でいらっしゃいました。お話の随所に「オチ」があり、会場にドッと笑いの渦が起こるシーンもしばしば。しかし、そんな有沢さんですが、「平坦な道はほとんどなかった。どちらかというとエライ目に遭うことが多かったけど、自分の中で貫いたこと、曲げなかったことがありました」という波乱万丈エピソードへのリード文で、一気に有沢さんの人事変革ストーリーの世界へ受講生を引き込みます。

MBAを取得後、バブル崩壊の日本へ

新卒で入社した協和銀行(現りそな銀行)で、MBA取得のため渡米。帰国後、日本はバブル崩壊を迎え、自分が融資した先にご臨終を伝えなければいけない辛い業務を経験したそうです。「企業の経営目標通りに融資を実施したけど、本当は融資すべきではなかった先があったかもしれない。」と感じ、倒産していく企業を目の当たりにしたことが、自分の仕事の仕方について深く考えるきっかけになったと言います。

当時の日本は、「上司の言うことは絶対」というような風土が色濃かったため、あまり気の進まないことも仕方なくやっていたように見える上司・先輩たちも多かった時代。有沢さんは、「自分は反対だ」「こんなの絶対うまくいかない」と言いながら結局は承認印を押す先輩や上司を見て、「そんな無責任なことやらないで欲しい。自分が正しいと思うことを、正々堂々とやるべきだ」と感じるようになったそうです。この経験が、有沢氏の人事パーソンとしての哲学につながっていきました。その後、HOYA、AIGと外資系企業の人事制度改革を経験した後に、2012年よりカゴメ株式会社へ入社されます。

全く統一性のなかった評価制度を一から立て直し

カゴメ株式会社は、2019年に創業120周年を迎えるそうです。ケチャップを中心とするトマト製品のリーディングカンパニーであるカゴメ社ですが、缶詰トマトとトマトケチャツプのメーカー別売上高は世界3位。海外にも35社の事業拠点を持ち、世界中にトマト生産拠点を持っています。

企業理念は「開かれた企業」。

しかし、有沢氏の着任当時は、世界各国の人事制度が全く統一されておらず、誰がどれくらい給与をもらっているのかもよく分からない状況だったそうです。それを知った有沢さんは、オーストラリアを皮切りに、海外の事業拠点を順番に周りながら、評価制度や報酬制度を実地調査されます。

最初に訪れたオーストラリアでは、ある管理職の期初の目標に、「meet many people(たくさんの人に会う)」と記載されており、期末の自己評価欄にはさらに「met many people(たくさんの人に会えた)」とあったそうです。評価者の評価欄には、「Congratulation(素晴らしい!)」と書いてあったのを見て、「こりゃあかん・・と、めまいを覚えた」と笑いを交えておっしゃいました。その後、訪れたポルトガルでも、「ボーナスはどうやって決めているんですか?」という有沢さんの問いに対して、現地企業の社長は、「うーん。フィーリング?」と答える顛末も。当時はカゴメ日本本社でさえ、役員給与が全員一律という状況で、実質的に「評価制度がない状態」であったそうです。

有沢さんご自身の哲学の中でも特に重視されていることが、「公正であること」。有沢さんは、Pay for performanceという言葉で表現されましたが、頑張った人が頑張った分だけしっかり報われる制度の構築に向けて、人事制度がひどく時代遅れとなっていたカゴメにとって天動説と地動説くらいの大きなインパクトを及ぼす大改革を進められました。

人事制度を抜本的に改革するにあたり、経営TOPのマインドを変えることが必須であると考えた有沢氏。では、具体的にどのような手を打たれたのでしょうか。

第9講登壇するカゴメ株式会社CHO有沢正人氏

TOPから変えないと変わらない。有沢流TOPの動かし方とは?

会長、社長などTOP三役を集めて、「今のカゴメの人事制度は超オールドファッションだ!頑張った人が報われる制度に抜本的に変えていく必要がある!」と直談判をされたそうです。その回数は、実に30回以上にも及んだと言います。有沢さんの強い熱意が伺えます。

最初は、「そうは言ってもねぇ・・・」という暖簾に腕押しな温度感であった三役も、30回目の直談判の時には、「分かった。そこまで言うなら、やってみようじゃないか!」と腹をくくってくださったそうです。その抜本的改革についての社外取締役に向けた説明会で、社長自ら「この改革案は、我々三役の意思です。もし、この案を否決される場合は、取締役を解任してください」と発表されたそうです。それを聞いた有沢さんは、内心ではかなり驚かれたそうですが、有沢さんが貫き通そうとした「公正さ」という同じ船に、経営TOPも間違いなく乗ってくれているのを実感されたのだとか。大きな変革の裏には、このような熱い人間ドラマがあるのですね。

その後、カゴメ社は、仕事内容によって人を評価する「職務等級制」を導入。この新制度によって処遇が大きく悪化してしまう社員も出たそうですが、意思を貫き遂行。その結果、世界の職場で働いたとしても、同じ責任で同等の仕事をしている人の給与の格差は無くなります。全員の職務等級をOPENにしたことで、ヨーロッパの社員が「次は日本で働いてみたい!」と手を挙げるようになり、グローバルで人が動く状態にもなったそうです。

第9講登壇するカゴメ株式会社CHO有沢正人氏

正しい行動に躊躇しないこと

有沢氏は、カゴメ社の人事制度を抜本的に作り直したわけですが、「決してカゴメをぶち壊しに来たわけではない」とおっしゃいます。「外から来た人間が、今まであったものを否定するのはとても簡単なこと。しかし、企業として残すべきDNAをしっかり見極めることも大切」なんだとか。

有沢さんが感じたカゴメ社の残すべきDNAは、「親切・優しさ・正直・誠実」という大変人間らしい温かみのある要素。創業以来これまで120年間、一度もリストラをしたことがないというカゴメ社ですから、人事制度立て直しの有沢プランの中にも、「リストラ」は入れなかったそうです。

守るべきDNAを守りながら、時には大きな外科手術を遂行しなければならない時があります。時には、コペルニクス・インパクトのような、組織全体に大きな影響を及ぼすこともあるでしょう。

自分が正しいと思うことに躊躇しないこと。もちろん抵抗勢力が必ず出てくるが、自分の正しさを貫けば、いずれ抵抗は力に変わる」という有沢氏の言葉が、とても印象的でした。グローバル人事だけでなく、すべてのビジネスパーソンの心に響くメッセージであると感じます。

第9講登壇するカゴメ株式会社CHO有沢正人氏

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