HOMEコラム・レポート レポート HRリーダーズフォーラム 第6講「組織開発論 ~多様性が進む組織に求心力を~」

レポート

2018.12.20

HRリーダーズフォーラム 第6講
「組織開発論 ~多様性が進む組織に求心力を~」

リーダー育成 人材育成 研修

パーソル総合研究所は、「企業経営における戦略パートナーとしての人事」を実現するにあたってキーパーソンとなる次期リーダーの育成を本格的に支援するための学びの場として、「HRリーダーズフォーラム」を開講しました。10テーマにおよぶ人事領域の理論やプラクティスを学ぶ講義と、自社・自組織の課題への打ち手を考察するワークショップ、著名な人事変革リーダーの実体験を聴講する「人事変革ストーリー」など、さまざまな角度から人事パーソンとしての専門性とリーダーシップを高める全15回のプログラムを2019年3月まで開催していきます。

組織開発とは何か?

第6講は本プログラムの監修委員でもある、立教大学 経営学部の中原淳教授と、ヤフー株式会社で長年組織開発に携わっていらっしゃる小向洋誌氏のお二人に、アカデミック/ビジネスそれぞれの視点から「組織開発論」を語っていただきました。今回の会場は、ヤフーの本社オフィス(紀尾井町)。ヤフーの数々の工夫が詰まった大変ユニークなオフィスを見学しながら同社の変革の歴史を学び、最後は同社・常務執行役員であり、本プログラムの監修委員も務める本間浩輔氏による人事変革の講話を拝聴。長時間に渡るセッションでしたが、大変学びの多い一日でした。

他社のオフィスに実際に足を運び、オフィス設計秘話を聞き、その会社の哲学を肌で感じる。普段の業務で他社オフィスを訪れる際とは全く異なる視点を持つことができ、受講者も多くの気付きを得られたようです。自社オフィスから一歩外へ出れば、いつもと違う学びが得られるきっかけになります。それでは、第6講のセッションを見ていきましょう。

「組織開発」という言葉は風呂敷のようなもの

「組織開発論」は、受講者への事前アンケートでは皆の興味関心が非常に高いテーマでしたが、一方で「それってつまり何?」の部分はなかなかしっかりした定義を持てず、事前課題の参考文献を読んで、さらに「?」が増えたという受講者も。それもそのはず。「組織開発」は、学問的な定義が様々あり、実践手法も実にバラエティーに富んでいて、なかなかとらえどころのないテーマであるようです。

中原先生は、組織開発の歴史や様々な手法を解説した後に、「組織開発という言葉は、いろいろなものを包み込める風呂敷のようなワードである」と喩え、受講者のモヤモヤした気持ちを言語化してくださいました。

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【組織開発手法の一例】

  • サーベイフィードバック
  • Tグループ
  • ホールシステムズアプローチ
  • アプリシエイシブインクアイアリー
  • フィーファーサーチ
  • ギャップアプローチ
  • センシティビティトレーニング 

組織開発という言葉の定義自体が"ゆるふわワード"なため、具体的な手法がたくさん開発されたジャンルでもあります。手法を列挙してみると、舌を噛みそうな横文字ワードのオンパレード。それぞれの手法を理解することは組織開発の「芯」を捉える事にはならないので、「組織開発は"捉える"のではなく、"感じる"ことが大切」だそうです。

中原先生曰く、組織開発とは「多様化」の先に必要になる「求心力」。つまり、組織が多様化していくと個がバラバラになり、全体としてのパフォーマンスが落ちてくる。そうなると、組織開発で求心力を作ることで、組織全体のパフォーマンスを高めていく必要が発生します。手法は様々ありますが、組織開発を用いる目的はここに集約されます。

そして、手法にかかわらず進め方の原理はこの3つのステップ。

  1. 見える化/What?
  2. ガチ対話/So What?
  3. 未来作り/Now What?

組織において表面化している課題は、氷山の一角であることが多いと言います。それゆえ、組織開発の一丁目一番地は、顕在化していない課題も含め、「真因」の探求と見える化が重要になります。

例えば、「会議で皆が発言しない」→「会議ツールを導入しよう」というアプローチ。これは、真因に迫れておらず、課題かどうか分からない問題事象を安易に消すことを目指してしまっている打ち手であると言えます。真因を探求していくと、メンバー間の信頼関係や個々の意識の問題が起因しているというケースもあるので、問題事象を解決しても、真因となる課題の解決には繋がらないのです。「自社にとっての課題は何か?」を捉える技術は、組織開発においても重要となるようですね。

真因に当たりがついたら、関係者一同を集めて腹を割った対話を行い、これからどうするかを関係者一同で決めるという流れ。真因となる組織課題に対する打ち手が、「組織開発」となることもあれば、時には「人材開発」になることがあります。前述の3つのステップは、実は人材開発とも同じ理論的ルーツを持っていて、両者は密接に絡んでいるとのこと。両者の違いの理解に悩んでいた受講者も多くいましたが、その目的は同じ。組織課題を解決するための手法であるということでした。

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組織開発はひとつの武器でよい

今回、スペシャルスピーカーとしてご登壇くださったヤフー・小向氏からは、同氏がビジネスの実践から学んだ「組織開発とは?」のお話を聞くことができました。小向氏は、これまでのヤフーの様々な改革を支えてきた人事変革パーソンのお一人です。この日の冒頭に行った同社のオフィス見学ツアーのセッションの中でも、小向氏から現在のオフィス設計に込められたヤフーの経営哲学を学ばせていただきました。

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小向氏は、組織開発を、「共通の目標達成のために組織を効果的にしていくことや、そのための支援をしていくこと」、と定義されました。これまでに同社が取り組んできた全ての打ち手は、「ヤフーの組織ミッションを達成するために、組織課題を解決するための改革」であったとのこと。組織は企業ごとに形も様々ですから、同社が作った手法を別の会社がそのまま移植しても、効果は発揮されない理由はここにあります。

小向氏は自身が組織開発設計者として大切にしている点として、以下を挙げています。

  1. 経営活動に必要な取り組みになっているか
  2. 組織のカルチャーやサービスに合っているか
  3. 組織開発に頼りすぎていないか
  4. サイクルではなく、「螺旋」を描けているか

世の中には、ヤフーを始め優れた企業の優れた取り組みがたくさん書籍化されています。しかし、その時々の組織課題に応じた打ち手を選択することが重要で、筋の悪い選択をすれば、組織の成長を停滞・鈍化させるリスクも。小向氏は、「それぞれの組織開発手法は、ひとつの武器でしかない」と説明されました。

ヤフーでは現在、組織開発の主体を人事から現場の管理職へとローカライズさせているフェーズにあります。つまり、現場管理職に、「組織開発」という武器を持たせるということですね。武器は必ず使わなければいけないわけではありません。「必要となったときに使える武器を持っていた方が良い」という発想で、現場管理職に組織開発手法を伝授するとともに、同社の様々な現場で実施された組織開発ナレッジを集めビジュアライズし事例集を展開。ケースが蓄積されることで、全社の組織課題がデータとして見えるようになり、組織開発という武器を鍛えているそうです。

その行動に哲学はあるのか?

この日、最後のコンテンツはヤフー株式会社常務執行役員/コーポレートグループ長・本間浩輔氏による、人事変革ストーリー。これまで数々の人事変革を進めてきた本間氏自身の人事パーソンとしての哲学についてのお話を聞かせていただきました。

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多くの受講者の心に響いたのは、「人事が人についての理想を語らず、誰が語るのか?」という言葉。もともと学生時代には心理学を学び、「"人材開発"ではなく人間本来の成長力をサポートする"人材発達"である」という理念に立つ本間氏。ずっと人に向き合い続けられるという点で、人事はとても幸せな仕事だと感じるそうです。

本間氏は、「人事パーソンであるなら、人を表現するボキャブラリーをどれだけ持っているかを意識しよう」と言います。例えば、雪とともに暮らすエスキモー人は、「雪」を表す言葉をたくさん持っているそうです。人事パーソンにとって、「人」はまさに仕事上において最も重要な関心対象。人を評価する際に使用する言葉一つ一つに対しても、最新の注意を払って言葉選びをすることが大切なんですね。

また、自身が変革を牽引する際には、強い信念と共に、いつ会社を辞めてもいいという覚悟を持っていらっしゃるのだとか。受講者からは、「自分たちはそこまでの覚悟を持てていないな」という声も上がりましたが、そこまでの覚悟があるからこそ、どんな行動にも自分なりの哲学を持つことができるのだと言います。

「哲学のない人にはフォロワーはつかない」という言葉も、大変印象的でした。前回の課題解決ワークショップの個別レビューでは、かなり辛口のフィードバックをもらった受講者も、この日、「本間氏の人となり」に触れることができ、フィードバック内容の重みが増したのではないでしょうか。

受講者にとって、本間氏の"ヤフー常務執行役員"という肩書きは、とても遠い存在に感じさせるかもしれませんが、今回のセッションのような距離感で「その人の人となり」を感じることができるのは、本プログラムならではの価値のひとつですね。

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