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レポート

2018.10.09

HRリーダーズフォーラム 第4講
「人材開発論 ~自社の人材育成状況をチェックする10のポイント」

人材育成 戦略人事 研修

パーソル総合研究所は、「企業経営における戦略パートナーとしての人事」を実現するにあたってキーパーソンとなる次期リーダーの育成を本格的に支援するための学びの場として、「HRリーダーズフォーラム」を開講しました。10テーマにおよぶ人事領域の理論やプラクティスを学ぶ講義と、自社・自組織の課題への打ち手を考察するワークショップ、著名な人事変革リーダーの実体験を聴講する「人事変革ストーリー」など、さまざまな角度から人事パーソンとしての専門性とリーダーシップを高める全15回のプログラムを2019年3月まで開催していきます。


人材育成を科学する

第4講は「人材育成を科学する」と題して、本プログラムの監修委員でもある、立教大学 経営学部の中原淳教授が登壇。最新の研究知見から導かれた「人材開発」領域における10のチェックポイントを学びながら、自社の人材開発のあり方を振り返り、受講生各人の次のアクションを見定めることを試みました。新人・若年性の育成から、中堅・マネジャー・管理職の育成、研修開発やTransfer of Training(研修転移)にまでおよぶ幅広いテーマを約3時間に凝縮した濃厚なセッション。

中原先生曰く、「研修設計のコツは、研修が終わったときにどんな気持ちで会場のドアを出るのか」。"よし、あんなことをやってみよう"という気持ちにさせられるかが大事なのだそう。今回の第4講を終えた受講生の皆さんがどんな気持ちで会場を後にし、普段の業務に戻ったのか。本編と併せて、文末の「受講生の声」もぜひご一読ください。

※本プログラムでは学び・気付きを言語化し、次のアクションを思考する「リフレクション」を大切にしています。文末の「受講者の声」では、実際に受講後のアンケートで寄せられたリフレクションの一部をご紹介しています。

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人材開発って何?

人材開発とは何なのか?

このシンプルな問いから始まった今回のセッション。「従業員の成長を引き出すもの」「組織としての戦力を高めるもの」・・・と様々な声が受講生から上がりましたが、学問的には「組織の目標・成果達成のために必要な知識、スキル、信念等を、組織メンバーに獲得させ、行動・現場の変化を導くこと」と定義されるのだそうです。この定義において最も大事になるのが、「組織の成果や戦略の達成に効果をもたらす」という部分。つまり、「人が変わり、経営に資する」という要素が人材開発の領域においても当然求められ、HRリーダーズフォーラム共通のテーマである「経営に資する人事たりえるか?」という命題に直結するものでもあります。

また、労働力不足を始めとする様々な人材課題が押し寄せてくるなかで、「全員戦力化」が求められる昨今の経営環境においては、「社員ひとりひとりが望む多様な働き方に応じた人材開発」がキーファクターとなり、あらゆる企業で、従来の"職能制に基づく日本人男性を対象とした"学びの手法では不十分という状況に陥っています。

セッションではまず、縦軸に「学習による変化の有無」、横軸に「経営に役立つか否か」のマトリクスを用いて、自社の研修がどこに分類されるのか、現状の見直しからスタート。研修の設計や運営に携わっていると、「人が学び、変化があったか否か」と縦軸にばかり目が行きがちですが、そうした状況を中原先生は「学び温泉」と表現し、のぼせに注意警報を鳴らしたうえで、だからこそ経営にインパクトをもたらすことのできる人材開発の原理・原則を知っていることは極めて重要と説明されました。

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どんな課題でも原理原則に立ち返

課題は様々でも、原理・原則は共通でシンプル。
根底にある研修の要諦は、「聞いて、考えて、対話して、気付く」ことで、受講者の思考を揺らすこと。
では、立ち返るべき原理・原則とは何か?
セッションでは、新入社員や中途社員、メンバーを対象とした「職場での育成編」、管理職を対象とした「リーダー/マネジャー育成編」、そして研修を設計する際のポイントをまとめた「研修編」の3分類で10の原理・原則が紹介されました。

【職場での育成編】

  1. 職場での育成は「背伸び経験」と「振り返り」で決まる
  2. 人が育つのは「かかわりあう職場」である
  3. 中途社員は「アンラーニング」が必要である

【リーダー/マネジャー育成編】

  1. マネジャー育成の基礎は「プレビュー」と「フォローアップ」である
  2. マネジャーには「フィードバック」が必要である
  3. 異業種アクションラーニングは多様なチームを率いる力を獲得できる

【研修編】

  1. 研修の効果は「研修」だけでは決まらない
  2. 研修は「双方向」を心がける
  3. 研修デザインは「U字」を心がける
  4. 追っかけコーチングは研修効果を高める

これら10項目をひとつずつチェックした後は、「自社の人材育成25問チェックシート」で該当する項目を「快晴/晴れ/曇り/雨」で評価し、グループでディスカッション。理論を学び、自社の状況を振り返り、他社の知見を得て、さらに自社の改善策を考える。限られた時間の中で、まさに「聞いて、考えて、対話して、気付く」を体感したことで、より深い学びとなったようです。

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何に注力し、何を止めるのか?経営へのインパクトで見極める

新入社員のOJTからはじまり、中途社員の戦力化、管理職が直面する壁とそのフォローアップの工夫、そして研修転移を促す研修設計のコツ。多岐に渡り、そしてそのどれもまた人事担当者の関心が高いテーマに関する「目からウロコ」のインプットを数多く受け、「じゃあ早速、こんなことをやってみよう」というアイディアが次々に浮かんだようです。そんななか、この日のまとめとして中原先生が強調されたのが、コストや人員といった制約もあるなかで、全部やる必要はないということ。むしろ、これまでやってきた自社研修も含めて、「どれをやるのが最も経営にインパクトを与えるか?」という視点で見直し、注力するものと止めるものを見極められるかどうかが今、人事に求められていることだと総括されました。

みなさんの会社で行っている研修。「経営にインパクトを与える」ものになっていますか?
止める決断はなかなかし難いものですが、経営パートナーとしての人事に必要なコンピテンシーと言えそうです。

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※本セッションで講義された10つのポイントは下記著作に詳述されています。これらは参考図書として、受講生に事前課題として紹介されたものになります。

・中原淳、荒木淳子、北村士朗、長岡健、橋本諭(2016)『企業内人材育成入門』 ダイヤモンド社
・中原淳(2017)『フィードバック入門』 PHP研究所
・中原淳(2014)『駆け出しマネジャーの成長論 - 7つの挑戦課題を「科学」する』 中央公論新社

受講者の声

最後に受講者の声を紹介します。

人材育成チェックシートをつけてみて、自社の人材育成の課題が多いことに気づかされました。「自分から聞かないと誰も教えてくれない」と教育されてきた過去から、1人1人と向き合いながらフィードバックする重要性を学びました。 職場で具体的に提案することとして、「新人育成>管理職育成」となっている中で、課長候補者向け研修の導入を新たに提案しようと考えています。来年3月から行う研修プログラムを今回学んだ研修編の4つのポイントを活かして組み立てていきます。(小売業 K.Y様)

人材育成の10のポイントは、言われてみるとその通り、と思うものの、実践出来ていないことが多いと感じた。ストレッチゾーンに当たるような仕事を、マネジメントは付与できているのか、また、そのような仕事付与を促すような環境を、人事が整えられているのか。人材育成のために、人事が現場に対して働きかけられることはまだまだあると感じた。 また、研修転移に影響を与える要因はとても興味深かった。今期、自職場の若手社員の人材育成を企画している。上司にあたるリーダーと議論しながら、施策の目的を明確化し、振り返りまでのフローもしっかり視野に入れた内容にしていこうと思う。(運送用機器 T.K様)

先生の話は軽やかなのにコンテンツが凝縮されていて時間が短く感じた。人材育成には科学的に分かっている原理原則がある、という自分に無かった視点を得ることができた。自社においても長い時間をかけながら新卒社員をじっくりと育てていくことが難しい環境になりつつあるため、今回学んだ原理原則に基づいて育成体系を洗い直し、より効率的・効果的な内容とすべく見直しを行いたい。セッション直後の「やればできる感覚」、そして高揚感、があったため、その勢いのまま育成見直しに関わらせて欲しいと上司に伝えた。(石油・石炭製品 Y.I様)

難しいことを簡単な言葉で教えていただき、とても楽しく学ぶことができました。またシンプルな言葉がすっと入ってきます。今回のセクションを通じて、まず自分のできるところからやってみようと思いました。研修前後に上司へ一本のメールをし、『部下の研修への送り出し』の質を変え、『研修の振り返りを促す』ようにします。(運送用機器 R.N様)

プログラム監修委員 櫻井's VIEW ―経営に資さない人材開発はただの自己満足―

人ののちの能力の可能性に期待した営みであるという点で、人材開発というのは凡そ未来志向的である。当時、今の中原教授のように人材開発を科学的に分析し、現場にわかりやすい言葉で解いてくれる方がいなかったこともあり、私が過去に人事部長として出会った人材開発担当者は、ポジティブかつ性善説ではあったものの、「経験的にいいとされていることはいい」「効果はすぐには出ない」と、研修内容にもまたその効果にも科学的検証姿勢が低く、事業戦略などお構い無しに研修参加者に寄り添い守ってしまう方が多かった。

ある日、以前から部門も人事もモチベーションを気にしている社員が研修に参加しているので、「研修室で気になる言動があったら、ビジネスパートナーに連携するように」とその場にいた人材開発担当者に指示したところ、「いえ、それはできません。なぜなら、研修の場で素の自分を出してもらうため、ここは安全地帯で教室内でのことは外には出さない、と約束していますから」と言下に断られたこともあった。「人事は何のために仕事をしているのかわかっていますか?あなたがそう言うのだったら、研修は外部の会社に"コスト"としてアウトソースしてしまえばいいし、あなたを人事部の社員として雇っている意味がない」と言ったのを記憶している。

さて、第4講は中原教授の「人材開発を科学する」である。冒頭、中原教授は「人材開発」とは『組織の目標・成果達成のために必要な知識・スキル・信念等を、組織メンバーに獲得させ、行動・現場の変化を導くこと』であり、人材開発が効果的であるためには科学的に証明された10のポイントがある、と喝破された。これは、第一講から続く「戦略人事」のコンセプトそのものである。

現代の人材開発担当者を多く含む本プログラムの参加者には冒頭のような考えの方はいないと確信しているが、それでも今回の講義では、「人材開発は入社から退職まで続く「従業員のライフサイクル」をサポートするシームレスな「戦略人事の営み」の一つである」ということを再確認する良い機会になったのではないだろうか。(櫻井 功  パーソル総合研究所 副社長 兼 シンクタンク本部 本部長)

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