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2011.09.20

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はたらくを楽しもう Vol.3 キャリア4Sモデルとリーダーシップ

キャリア

前回のレポートでは、人が活き活きと主体的に働くようになるための要因を考察しました。各タイプからAタイプへの移行には、「有意味感」、「自己決定感」、「自己効力感」が大きな影響を持つというポジティブワークモデル仮説をご紹介しました。

本レポートでは、各タイプをそれぞれの特徴にちなんで、Success志向タイプ(Aタイプ)、Select志向タイプ(Bタイプ)、Status志向タイプ(Cタイプ)、Sustain志向タイプ(Dタイプ)と名づけ、以下「キャリア4Sモデル」としてすすめていくことにします。

【図表1】キャリア4Sモデル

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ビジネスパーソン824名を対象に行った志向性調査結果(以下、ビジネスパーソン調査とする)から明らかとなった各タイプの割合は、一組織内においても同様なのでしょうか。今回、某ベンチャー系企業(以下、A社とする)の一部門472名を調査対象に、キャリア4S調査を行い、各タイプの属性について詳しく見てみることにしました。

【図表1】タイプ別分類

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調査の結果(【図表1】)、タイプ別ではビジネスパーソン調査と比較してSustain志向が約1割少なく、Select志向とStatus志向がやや多い結果となりました。一方、Success志向タイプはビジネスパーソン調査時とほぼ同じ割合で存在することが分かりました。

管理職はSuccess志向タイプor Sustain志向タイプに二極化傾向?

さらに詳細を調べてみると、興味深い事実が明らかとなりました。
管理職と非管理職に分けてみると、【図表2】のように、各タイプの比率に大きな差が見られます。非管理職では、ビジネスパーソン調査とほぼ同じ割合で各タイプが存在するのに対して、管理職ではSuccess志向タイプとSustain志向タイプの合計が全体の約8割近くを占める結果となっています。

【図表2】管理職・非管理職別各タイプ比率

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では、管理職で二極化傾向にあるSuccess志向タイプとSustain志向タイプは、マネジメントスタイルにどのような違いがあるのでしょうか。以下、360度サーベイ結果やインタビュー調査を通じて、両タイプのマネジメントスタイルの違いを明らかにしてみたいと思います。

Success志向タイプとSustain志向タイプのマネジメントスタイル

今回、両タイプのマネジメントスタイルの違いを明らかにするために、A社が定期的に実施している360度サーベイの結果を参考にしました。「主体力」「育成力」「探求力」「上通力」の4項目について、それぞれ本人評価、部下評価、上司評価を両タイプごとにまとめたのが【図表3】です。

【図表3】360度サーベイ結果

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部下評価では全ての項目でSuccess志向タイプを高く評価し、上司評価でも育成力以外の全ての項目でSuccess志向タイプを高く評価している傾向がわかりました。さらに見てみると、Success志向タイプとSustain志向タイプで評価の差が顕著だった項目が【図表4】です。

【図表4】両タイプの評価の特徴

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Success志向タイプの管理職は、ビジョン・戦略を自分の言葉で語ると同時に、自ら率先して行動することで組織を牽引していくタイプであることがわかります。また視点を高く持ち、上司に対しても発言力を持つことも特徴の一つです。(※キーワードは「ビジョン」「自ら率先」「行動」)

一方、Sustain志向タイプの管理職は、周囲との円滑な連携に配慮し、部下の仕事・課題・心身の状態に関把握に長けているタイプであることがわかります。また上司の業務であっても、積極的に補う姿勢が見られることも特徴の一つです。(※キーワードは「円滑に」「把握」「受容」)

つまり、Success志向タイプ管理職は、ビジョナリー・リーダー的要素が強く、Sustain志向タイプ管理職は、サーバント・リーダー的要素が強いことが明らかとなりました。

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変革期に求められるビジョナリー・リーダーシップ

リーダーシップ研究では、企業の置かれた状況によって求められるリーダーシップが異なることが分かっています。野田(2005) によると、企業の置かれた状況を「定常期」「変革期」に分けた場合、定常期にはサーバント・リーダーシップが、変革期にはビジョナリー・リーダーシップがそれぞれ効果を発揮するというものです。では、多くの企業が変革期に直面する今、必要とされるビジョナリー・リーダーシップとはどのようにして生まれるのでしょうか。

A社のなかでビジョナリー・リーダーシップを発揮するSuccess志向タイプの管理職2名(以下、それぞれX氏、Y氏とする)を対象にインタビュー調査を行いました。X氏は現在同社10年目の社員で、部長職として45名の部下をマネジメントしています。またY氏は現在同社7年目の社員で、新規事業責任者として8名の部下をマネジメントしています。
まずインタビューを通じて明らかになったのは、両者共に組織の状況を俯瞰した上でビジョンの必要性を感じ、意識的にビジョナリー・リーダーとしての役割を演じているということです。元々ビジョナリー・リーダーとは対照的なタイプだったと自認するX氏がビジョナリー・リーダーシップを発揮し、チームの変革に成功したのは管理職2年目のことでした。当時X氏が担当していたチームの業績は非常に好調で、もう一段上のステージへと飛躍することが期待されていました。しかし好調な業績とは対照的に、チームメンバーのモチベーションは低下していました。当時のメンバーは、「やらなければならないこと(=目の前の目標)」を必死で追うことに疲弊し、「心から実現を望むこと(=ビジョン)」が欠けていたのではないか、とX氏は振り返ります。そこで、「シェア○○%奪取」や「社内でベストグループ賞獲得」といったこれまでのチーム目標を見直し、「日本の▲▲を変革する」というビジョンを掲げることにしました。
またX氏は、ビジョンの実現に向けて周囲を巻き込むために、ビジョンの発信だけでなく、メンバー一人ひとりに日々の仕事に対する意味づけを行うことを徹底しました。日々の仕事に対する意味づけと、その先にあるビジョンの浸透の両輪がしっかりと絡み合うことで、メンバーのモチベーションは高まり、より一層高い目標を達成できるチームへと成長を遂げたといいます。
またY氏の場合、現在担当している組織が立ち上げ期にある新規事業であることから、特に組織にビジョンを浸透させる必要があると感じ、ビジョナリー・リーダーとしてのマネジメントスタイルを意識的に実践しています。日々の全体発信からメンバー一人ひとりの目標設定に至るまで全てにビジョンとのつながりを意識して、一貫性のあるマネジメントを心掛けています。また、周囲を巻き込んでビジョンを実現するために、その伝え方にも意識をしています。口で発信するだけではなく、自ら率先して模範となる行動を示すことも組織にビジョンを浸透させる上で有効な施策だといいます。
では、変革期の組織を牽引する上でその原動力となるビジョンとは、一体どのようにして生まれるのでしょうか。両者のインタビューを通じて浮かび上がったキーワードは、リーダー自身による「内省と対話」です。X氏はメンバー時代から社内で表彰される経験が多く、そのたびに自分自身の行動や思いを語ることによって、自分自身の内にあるビジョンに気づき、また深めることが出来たといいます。メンバー時代から内省と対話を繰り返していた経験が、リーダーになってメンバーの共感を得られるビジョンを醸成するのに役立っていたのではないか、とX氏は振り返ります。
またY氏の場合、カーネギーやドラッカーなど古典的な経営書を読み直すことで、定期的に自らの行動や思いを省みるといいます。さらに同氏は、組織外にメンターと呼ぶ人たちとのネットワークを築き、そうした人との定期的な対話を通じて、自身の思いや志を内省する機会を意識的に設けているといいます。

以上、ビジョナリー・リーダーシップを発揮するSuccess志向タイプの管理職2名へのインタビューを通じて明らかとなったのは、以下3点です。第1に、リーダー自身が組織の状況を俯瞰した上で、意識的にビジョナリー・リーダーとしての役割を演じていること。そして第2に、ビジョン実現に向けて周囲を巻き込むためには、ビジョンの伝え方が重要であるということ。さらに第3に、多くの人の共感を集めるビジョンの醸成には、リーダー自身の「内省と対話」が大きく影響をしているということです。

まとめ

これまでのレポートを通じて、Success志向タイプのビジネスパーソンが日本を元気にする層だと主張してきましたが、本レポートの調査結果から、マネジメント層についてもSuccess志向タイプの人材が変革期には求められることが明らかとなりました。
多くの企業が変革期に直面している現代において、企業に必要なのはビジョナリー・リーダーシップを発揮して組織をあるべき方向へ導くリーダーの姿です。残念ながら、今の日本にビジョナリー・リーダーが十分にいるとは言いがたい状況で、これからの社会を担う次世代ビジョナリー・リーダーの育成についてはわが国にとっては喫緊の課題です。しかし本レポートを通じて、ビジョナリー・リーダーシップはカリスマリーダーだけが兼ね備えている天賦の資質ではなく、誰もが意識することで発揮することが可能なスキルだと分かりました。つまり、リーダー自身が日常的な内省と対話を通じてビジョンを育み、日々の仕事の意味づけと同時にビジョンを掲げ、時には自ら率先垂範して行動することで、変革期の組織を牽引するビジョナリー・リーダーシップを発揮することが出来ると考えられます。
本レポートでは、変革期におけるビジョナリー・リーダーシップの必要性をお伝えしてきましたが、必ずしも一組織内において全ての管理職がビジョナリー・リーダーの役割を演じる必要はありません。組織に求められるリーダーシップを目的別に役割分担することも必要です。
今回の調査では検証できませんでしたが、最もパフォーマンスの高い組織では、各タイプの管理職がどの程度の割合で存在し、そのうちビジョナリー・リーダーシップを発揮する管理職はどの程度いるのか。またビジョナリー・リーダーの下で次世代のビジョナリー・リーダーは生まれやすいのか。など、いくつもの興味深い問いが浮かび上がってきます。
今後、HITO総研では様々な調査を通じて長期的に本研究を深めていきたいと思います。

2011年9月20日
研究員 田中 聡/森安 亮介
URL:http://rc.persol-group.co.jp

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