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2011.06.15

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特集Report Vol.3 震災後3ヶ月間の採用動向について

キャリア 採用

震災から3ヶ月が経過しましたが、この3ヶ月間で企業の採用活動がどのように動いたのかを振り返った上で、注目が集まるエネルギー関連分野での人材動向について考察します。
※なお、考察の基にしたデータや情報が主に自社データに依拠するものであることから、考察内容が限定的かつ暫定的な範囲に留まることをご了承ください。

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震災後3ヶ月間の採用動向

転職市場 : 震災の影響は限定的で、昨年とほぼ同じ傾向

前回のレポートでは、4月2週までの採用動向を紹介し、一部で採用活動再開の遅れがみられることをお伝えしました。GW以降の新規求人数をみると、5月2週には震災前と同水準まで回復し、その後、震災前を上回る形で増加が続いています。昨年と比較しても、ほぼ同数の求人数となっており、震災の影響は限定的だといえます。(【図表1】)

【図表1】新規求人総数

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※DODA人材紹介サービスよりHITO総研作成

業種別にみると、電気・電子・機械・輸送機器などのメーカーは、GW前の段階では回復が遅れていたものの、GWが明け5月3週に入ると震災前の水準を上回り、5月5週目時点では震災前を3割近く上回るニーズがみられます。前回までのレポートで「採用の見通しが立つのはGW明けになる」とお伝えしていましたが、GWが明けるとともに採用活動も再開され、多くの企業が「当初予定していた採用計画の変更はしない」という方針を固めています。
一方、4月中旬に震災前の求人数を上回った建設/不動産に関しては、その後やや減少し横ばいが続きました。5月下旬には増加がみられるものの、絶対数としては昨年を下回る数となっており、復興に伴う採用ニーズの増加は正社員領域にはみられない状況となっています。ただ、耐震補強や改修分野での即戦力人材を求めるケースもみられており、これから本格的に需要が増加してくることも予想されます。
震災後も堅調だった素材・食品メーカーについては、5月2週には震災前を4割以上上回る増加がみられました。その後求人数は落ち着いたものの、引き続き昨年を上回るペースで推移しています。IT/通信/インターネット関連では、ほぼ昨年と同様のトレンドで推移しており、今回の震災の影響が最も少なかった業界の一つだといえます。(【図表2】)

【図表2】業種別新規求人数

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※DODA人材紹介サービスよりHITO総研作成

今後の見通しに関しては、新卒採用の選考後ろ倒しに伴い、一部企業で例年5月に高まる中途採用ニーズが後ろ倒しされているため、7月以降もう一段の回復が見込まれます。しかしながらメーカーを中心とした国内産業の空洞化に対する懸念は依然存在しており、引き続き注視が必要です。

アルバイト、派遣、アウトソーシング市場: 昨年の水準に戻りつつある。

震災直後には大きな低下を示したアルバイト、派遣、アウトソーシング領域についても、求人数は昨年の水準に戻りつつあります。
派遣領域では、震災直後に殺到したインバウンド型のコールセンター需要が4月以降落ち着きをみせましたが、各社の営業再開に伴いアウトバウンド型のコールセンター需要や事務スタッフのニーズが回復しています。「派遣切り」の増加を懸念する声もありますが、インテリジェンス派遣サービスにおける派遣契約更新状況は昨年とほぼ同じであり、リーマンショック後のような大規模な「派遣切り」は起きないとみています。
また今回の震災を受け、BCP(事業継続計画)の対応を進める企業も目立ち、アウトソーシング領域にもその影響がみられています。既に一部の情報通信系企業では拠点分散を進めており、今後も地方を中心にこうした動きが加速していくことが予想されています。しかし、電力不足問題は関西にも波及しており、こうした動きが企業の拠点分散に与える影響には今後注視が必要です。
アルバイト領域に関しても、オフィスワーク関連のニーズを中心に回復の兆しがみられています。特に、5月中旬以降の生産再開により、製造ラインの採用ニーズも戻りつつあります。しかしながら、夏商戦に向けた販売職や配送ドライバーの採用ニーズが出遅れているほか、飲食業については自粛ムードや電力対応などを踏まえた今後の消費動向を見極める動きも目立ち、採用には慎重な姿勢がみられています。

エネルギー関連産業における採用動向

今回の震災では原発問題や電力不足問題が大きく影響を及ぼしています。原子力推進計画の見直しに加え、いわゆる「サンライズ計画」や太陽光パネル設置義務付けを検討する動きもみられています。今回の震災を機に注目が集まるエネルギー関連産業ですが、採用動向は現在どういった状況なのでしょうか。

現状、エネルギー関連産業の採用動向に新しい動きはみられない

まず、原子力を含めた火力、水力など従来型エネルギーの発電分野において、採用に関する大きな動きはまだみられていません。背景には、国のエネルギー政策がまだ固まっていないことや諸外国の原子力政策の成り行きも見通せないことなどから、各社が今後の動向を見極めている状態にあることが挙げられます。
次に、自然エネルギーを活用した発電についても震災前後で大きな変化はみられず、震災前と同様のニーズが続いています。例えば、太陽光に関してはパネル設備に伴う技術営業や施工管理職が、風力発電については、大規模な工事を管理できる人材や運転・保全のためのエンジニアなどの人材が求められています。そして、震災後特に注目されるスマートグリッドや蓄電池、次世代自動車など電力管理や省エネ関連の採用動向も、同様の動きが継続しています。これらの分野は、震災前から成長が期待されており、パワーエレクトロニクスやリチウムイオン電池の開発・設計に携わる人材は、以前から必要とされていました。

必要なのは、政府のリーダーシップと民間のベンチャースピリット

以上のように、震災を機に注目が集まるエネルギー関連産業ですが、現時点では採用動向に大きな動きはみられません。政府の方針が固まらない中で、企業各社は静観せざるを得えないため、政府の一刻も早い方針決定が求められます。エネルギー政策を早急に固め世界に伝えると同時に、需要喚起や供給コスト低減につながる支援施策を具体的に推し進めていく必要があります。
しかし、企業においても、政府決定をただ待つだけという姿勢ではなく、各社が積極的にビジネスを推進することで政府の早期決定を促すような動きが必要だと私たちは考えています。日本のエネルギー分野には、それまでの常識に立ち向かい、自ら切り拓いていったベンチャー企業がいくつもあります。例えば、平成6年に創業した中央電力。電気契約をマンション一括で行うことで、料金の削減と電気の安全を提供する「マンション電力一括契約サービス」を切り開いてきたこの企業は、業界のリーディングカンパニーとして、このサービスをさらに世の中に浸透させ、広めていく役割があると考えています。また、ESP(Energy Service Provider)事業を日本で初めて開始したイーキュービックは、消費エネルギーを「見える化」することで、これまで固定費とされていたエネルギー消費に対する意識の改革に挑戦してきました。イーキュービック取締役の榊原氏は「今回多くの人がエネルギーの大切さに気づいたはず。これを一時的なものに終わらせず、日本に定着させたい」と語っています。
思えば、日本の戦後復興を支えたのは政府だけではなく、トヨタ、ソニー、ホンダといった"ベンチャー企業"が挑戦する姿勢でした。政府のリーダーシップが問われていますが、今必要なのは動きを待つ姿勢ではなく、攻めの姿勢で積極的に臨むベンチャースピリットなのではないでしょうか。私たちHITO総研はそんなチャレンジ精神こそ日本転換のカギになると信じ、そういった企業を応援します。

【インタビュー】 村上 和之さん(株式会社フレッシュファーム)

これまで3回にわたって震災後の採用動向についてお伝えしてきました。取材を進めていく中で、東北のみならず日本全体の農業を変えようという志を持つ一人の方にお会いしました。震災によって農地をすべて失ったにも関わらず、農業復興のために立ち上がる姿に私たちは胸を打たれ、こうした姿勢こそ学ばなければと思っています。最後にご紹介させてください。



宮城県岩沼市で14代続く農家の次男として育った村上和之さん。小さいころから農家の手伝いに
触れ農業の楽しみを知った村上さんは大学卒業後、アメリカに留学し貿易を勉強。1997年に帰国し就農するものの、今までのやり方に疑問を持ち始めます。
「もっと良いやり方があるんじゃないか?本当においしいものを、本当に必要としている人に届けたい」そんな思いから、東北大学と共同で活性酸素消去農法の研究を進め、仙台農協との連携や農・商・工の連携プロデューサーとして他地域へ販路を拡大。今年に入り、野菜スイーツ専門店「パティスリー ポタジエ」で有名な柿沢安耶さんの「野菜寿し ポタジエ」と契約を結び、6月には大手広告会社との健康野菜プロジェクトにも参加する予定でした。しかし、そんな矢先、震災に見舞われます。

report_sinsai_vol3_07-170x300.jpg地震で全てが一瞬にしてなくなった

「今まで育ててきた田畑も苗も、そして技術も。自分が今まで必死に積み上げてきたものが一瞬にしてなくなりました。津波にやられた田畑をみて、あぁもうダメだ...って呆然としてしまいましたね。ちょうど昨年、大規模な設備投資を行ったばかりなので、ゼロどころかマイナスです」
重い口を開き、心境を語ってくれた村上さん。
「笑っちゃいますよね。いい年して、自分にはもう何もないんです。避難所にいてもぼーっとしてしまい、『あぁ俺ってもう何もないんだなぁ...』とか『明日から一体何をするんだろう』とかそんなことばかり考えていました。
不思議なもので、涙が勝手に出てくるんです。
でもしばらくして、このままじゃダメだって思い始めました。そんな時に東京の人たちから心配の声を頂き、一度東京に行って今後の相談をしようかって思ったんです。もう何もない自分に一体何ができるのか、前が全く見えませんでしたが『とにかく前に進まないと...』という一心でした」

周りの人に助けられ、奮い立った

「東京に来ると、今までお付き合いしていた方々が集まってくださり、今後についてアドバイスやアイデア出しをしてくれました。現状や将来の見込み、農業への思い...そんなことを話しているうちに大事なことに気付かされました。
それまで自分は何もかも失ったって思ってたんですよね。でも話すうちに"俺にはあるじゃないか"って気付かされたんです。土地や機材がなくてもノウハウがある。本当にうまいものを作る農家を知っている。販路もある。そして何より力を貸してくれる仲間が全国にいる。俺っていう人間すべてをぶつけて体当たりで挑もうって思い直すようになっていました」

誰かが一歩を踏み出さないとダメになる

「今、ネット上で農家と消費者をつなげるネット農園や、ニュージーランドなど海外との連携を企画しているほか、『野菜のキセキ』というプロジェクトを立ち上げて東北の農家と東京の消費者をつなげるべく東京で直売のイベントなどを行っています。ネットや海外、直売、新しいイベント...ネットワークや人脈をどんどん拡げ、復興のために一人でも多くの農家とつなげたいんです。
日本がこれから世界と同じフィールドで戦うには、安いものを作るか品質の高いものを作るかのどちらかしかない。でも冷静に考えて、日本の道は後者なんです。良質な"点"をネットワークとして繋げ、本当に良いものを本当に欲しい人に届けることで、東北や日本全体の農業を強くしたいです。
新しいことをやろうとすると時として冷たい目でみられることもあります。でも、誰かが一歩を踏み出さないとダメになるんです。失敗を恐れず楽しくやって、子どもたちが夢見、憧れるようなそんな農業にしたいんです。だって自分自身小さいころから農業に触れてきましたが、農業ってめっちゃ面白いんですよ。今年の天候や気温を予想して、苗や肥料、設備投資を決める。そして心をこめて育てていくとちゃんとそれに応えてくれる。収穫のときは、本当に充実感を感じます。『そのニンジンは、そんなに簡単には育たないんだぞ』とか、『本当にうまい野菜は全然違うんだぞ』とか、そんなことと一緒に農業の楽しさを伝え続けていきたいです」

2011年6月15日
主任研究員 美濃 啓貴
研究員 田中 聡/森安 亮介
URL:http://rc.persol-group.co.jp

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