働く上で、人はどのようなことに「幸せ」や「不幸せ」を感じるのでしょうか。パーソル総合研究所の「はたらく人の幸福学プロジェクト」では、全42問の質問に答えることで、働くことを通じた「幸せ/不幸せ」の普遍的な14の因子(要因)の状態を計測することができる診断ツール(短縮版)を開発。さらに、簡易的に14問の回答によって診断ができる「スーパーショート版」も開発しました。ここでは、そのスーパーショート版の尺度を用いたアンケート調査の結果(※)を基に、はたらくことを通じた「幸せ」「不幸せ」の状態について、性年代や業種・職種などによる特徴があるのかを分析しました。
※パーソル総合研究所「働く10,000人の成長実態調査2024」
公開日:2024年10月4日
そもそも、「幸せ」とは極めてパーソナルなものですが、職業生活という範囲においては概ねこれらの因子によって予測することができます。そのため、どの因子も重要ではありますが、各因子の「はたらく幸せ/不幸せ実感」への影響度(各因子の状態がどの程度「はたらく幸せ/不幸せ」に影響するのか)はわずかに異なります。
例えば、全体的な傾向として、「はたらく幸せの7因子」の中では、「自己成長」が最も、「はたらく幸せ実感」への影響が強くなっています(下図参照)。つまり、一般的には、仕事を通じた学びや刺激は、幸せに働くために特に重要であるということです。
「はたらく不幸せの7因子」の中では、「評価不満」が最も、「はたらく不幸せ実感」への影響が強くなっています。つまり、一般的には、自分の努力に対する正当な評価・給与は、不幸せに働かないために特に重要であるということです。
※本サイトの掲載データはスーパーショート版での測定結果であり、短縮版やオリジナル版とは結果が異なる可能性がある(以降同様)。
一方で、幸せとはパーソナルなものであるため、どの因子が最も「はたらく幸せ/不幸せ」に影響するかは、1人ひとり微妙に異なります。そうした個別性を踏まえた上で、ここでは、基本的な社会属性による違いをみていきたいと思います。
例えば、性別で「はたらく幸せの7因子」の「はたらく幸せ実感」への影響度を見ると、男性は「自己裁量」の影響が強く、女性は「自己成長」が強くなっています。つまり、男性は仕事のコントロールが重要ですが、女性は仕事を通じた学びや刺激が、幸せに働くために特に重要な傾向があるのです(※)。
※女性・男性が「全員必ず」このような傾向があるという意味ではない。日本の男性就業者・女性就業者を広く見ると、このような「傾向」が見られるということだ。以降の年代や業種・職種別などの傾向も、同様の点に留意いただきたい。
年代別に見ると、10代は「役割認識」、20代は「自己裁量」、30代・40代は「チームワーク」、50代は「リフレッシュ」、60代は「役割認識」の影響が強い傾向にあります。学生アルバイトが多い10代は仕事での主体性発揮が、社会人になりたてで職場でまだ裁量の少ない20代は仕事の裁量が、幸せに働くために重要であるようです。しかし、裁量が増え責任が重くなる30代・40代は助け合える仕事仲間の存在が重要になってきます。また、体力の衰えを実感する50代では精神的・身体的消耗からの回復が、定年を迎える60代では仕事に意味を見いだし主体的に働くことが重要になることが分かります。
※性別・年代別の相関係数から全体(就業者1万人)の相関係数を引いた値をもとに、縦方向のみに色付け(横方向には比較ができない)
次に、「はたらく不幸せの7因子」の「はたらく不幸せ実感」への影響度を見ると、男性は「評価不満」の影響が強いですが、女性は「自己抑圧」が強くなっています。つまり、男性は努力が正当に評価されなければ「はたらく不幸せ」につながりやすいのに対し、女性は能力不足による自信の欠如が「はたらく不幸せ」につながりやすいのです。
年代別に見ると、10代は「自己抑圧」、20代は「疎外感」、30代は「オーバーワーク」、40代・50代は再び「疎外感」、60代は「協働不全」の影響度が強くなっています。20代、40代、50代は周囲とのすれ違いや疎外感が「はたらく不幸せ」につながりやすく、働き始めたばかりの10代では能力不足で自信が持てないことが、また子育てと仕事の両立に取り組むことが多い30代では精神的・身体的な過度の負担が、そして定年を迎え働き方が変化する60代では「足を引っ張られる」といった周囲の非協力的態度が「はたらく不幸せ」につながりやすい傾向があります。
※性別・年代別の相関係数から全体(就業者1万人)の相関係数を引いた値をもとに、縦方向のみに色付け(横方向には比較ができない)
職種別に「はたらく幸せの7因子」の「はたらく幸せ実感」への影響度を分析し、各職種に従事する人が、一般的に、「幸せに働く」ために特に重要なポイントを見ました。どの因子も重要であり、個人差があることが前提ではありますが、職種ごとに特徴的な傾向が見られました。
※職種別の相関係数から全体(就業者1万人)の相関係数を引いた値をもとに、縦方向のみに色付け(横方向には比較ができない)
※「その他」職種は省略
職種別に「はたらく不幸せの7因子」の「はたらく不幸せ実感」への影響度を分析し、各職種に従事する人が、一般的に、「不幸せに働かない」ために特に重要な因子を見ました。
※職種別の相関係数から全体(就業者1万人)の相関係数を引いた値をもとに、縦方向のみに色付け(横方向には比較ができない)
※「その他」職種は省略
雇用形態別に「はたらく幸せ/不幸せ実感」を見ると、医師・弁護士・会計士などの専門家、自営業者、自由業者(フリーランス)は、「はたらく幸せ実感」が高い傾向です。一方、正社員・公務員・団体職員は、「はたらく不幸せ実感」が高い傾向が見られました。
※1(あてはまらない)~5(あてはまる)の5段階で聴取し、得点化
専門家、自営業、自由業の「はたらく幸せ実感」が高い要因を探るため、「はたらく幸せ因子」の実態を見ました。
自営業、自由業は、「自己成長」「役割認識」「自己裁量」が高くなっています。つまり、自営業、自由業は、その他の雇用形態(雇われる働き方)に比べ、仕事で成長や刺激を実感し、主体性を発揮し、仕事を自分でコントロールしており、それらが高い「はたらく幸せ実感」につながっているのです。ただし、自営業、自由業は「チームワーク」が低く、独立しているがゆえに助け合える仲間が少ない点は、「はたらく幸せ実感」を押し下げているとも考えられます。
専門家は「他者貢献」が高い傾向です。その専門性により、社会や仕事で関わる他者への貢献を実感しており、それが「はたらく幸せ実感」の高さにつながっています。
※分散分析でその他の雇用形態と比べて有意差があった部分を枠づけ
正社員、公務員・団体職員の「はたらく不幸せ実感」が高い要因を探るため、「はたらく不幸せ因子」の実態を見ました。
その他の雇用形態(有期雇用や自立・自営する働き方)と比べれば、すべての「はたらく不幸せ因子」が高くありましたが、中でも「理不尽」「オーバーワーク」「協働不全」「評価不満」が高い傾向です。正社員、公務員・団体職員は、組織の一員として働くため、仕事を自分で選べず多忙感が強くなりやすいことに加え、上司・同僚・顧客といった関係者からの理不尽な言動や非協力的態度、人事評価や給与への不満に直面することが比較的多いと考えられます。それらが「はたらく不幸せ実感」の高さにつながっているようです。
※分散分析でその他の雇用形態と比べて有意差があった部分を枠づけ
「はたらく不幸せ実感」が平均的に高い雇用形態である正社員、公務員・団体職員ですが、職位別に「はたらく幸せ/不幸せ実感」の実態を見ると、職位が上昇するに従って、「はたらく幸せ実感」が高まっていることが分かります。「はたらく不幸せ実感」も、部長相当で低くなっています。
管理職になりたがらない若手が増えているといわれていますが、実際に管理職として働いている人々は、一般社員・従業員より「はたらく幸せ実感」が高いのです。
※1(あてはまらない)~5(あてはまる)の5段階で聴取し、得点化
※正社員、公務員・団体職員に限定して分析
職位が上昇するに従って「はたらく幸せ実感」が高まる要因を探るため、職位別に「はたらく幸せ因子」の実態を見ました。すると、職位が上昇するに従い、すべての因子が高まっており、特に「自己成長」「役割認識」「他者承認」「自己裁量」が高まっていました。つまり、職位が高いほど仕事で成長や刺激を感じ、主体性を発揮し、周囲に高く評価され、仕事を自分でコントロールしており、それらが「はたらく幸せ実感」につながっているのです。また、多忙なイメージがある管理職ですが、「リフレッシュ」も上昇しており、身体的・精神的消耗から回復しやすい傾向も見られました。
※正社員、公務員・団体職員に限定して分析
一方、職位別に「はたらく不幸せ因子」の実態を見ると、「自己抑圧」は職位が上昇するに従い低下。「オーバーワーク」は、部長・事業部長相当ではじめて低下しています。しかし、それ以外の「はたらく不幸せ因子」は統計的に有意な差がありませんでした。
職位が高いほど、成果を出す自信がつく傾向があり、部長・事業部長相当では多忙感も低下します。周囲から評価される人が上位職につくという点も影響しているのかもしれません。これらが、部長・事業部長相当の「はたらく不幸せ実感」の低さにつながっていると考えられます。
※正社員、公務員・団体職員に限定して分析
従業員規模別に、被雇用者(個人事業主などは除外)の「はたらく幸せ/不幸せ実感」を見ると、10人未満の小規模組織が最も「はたらく幸せ実感」が高く、100人未満の規模までは高い水準です。「はたらく不幸せ実感」も10人未満の小規模組織で最も低く、100人未満の規模まで低い水準です。賃金が安い、人手が足りないなどのネガティブなニュースが多く聞かれる中小企業ですが、実際にそこで働く従業員は平均的に幸せに働いているようです。
また、「はたらく幸せ実感」は、100~200人未満規模の組織を底に、規模が大きくなるにつれ高まる傾向があります。
100人未満の小規模組織で働く被雇用者の「はたらく幸せ実感」が高い要因を探るため、「はたらく幸せ因子」の実態を従業員規模別に見ました。すると、「自己裁量」は100人未満の組織でやや良好であり、少人数ゆえに個々の仕事の裁量が大きい点が「はたらく幸せ実感」の高さにつながっていることがうかがえました。一方、「自己成長」「チームワーク」「他者承認」「他者貢献」は、100人未満規模の組織でむしろ低く、大規模になるほど高まります。つまり、仕事で成長や刺激を感じる、助け合える仲間がいる、周囲から評価される、社会や他者への貢献を実感するといった点が大規模ほど高まるのです。そのために、100~200人未満規模の組織を底に、大規模組織ほど「はたらく幸せ実感」が高まるのだと考えられます。
※被雇用者(正社員、公務員・団体職員、派遣社員、契約社員、嘱託社員、パート・アルバイト)を対象に分析
※分散分析で有意差があったはたらく幸せ因子を抜粋して掲載(自己裁量因子は有意差なし)
100人未満の小規模組織で働く被雇用者の「はたらく不幸せ実感」が低い要因を探るため、「はたらく不幸せ因子」の実態を従業員規模別に見ました。すると、100~200人未満規模までは、規模が小さいほど「自己抑圧」「不快空間」「オーバーワーク」「協働不全」「疎外感」「評価不満」が低く、小規模組織の「はたらく不幸せ実感」の低さにつながっています。これは、小規模な組織のほうが、人間関係が密になりやすいため、疎外感や従業員同士の非協力が生じにくいことや、大規模組織に比べ残業時間が平均的に少ないこと、人数が少ないために各人の会社への貢献度が分かりやすいことなどが理由として挙げられます。
※被雇用者(正社員、公務員・団体職員、派遣社員、契約社員、嘱託社員、パート・アルバイト)を対象に分析
※分散分析で有意差があったはたらく不幸せ因子を抜粋して掲載
人の「人生幸福度」は、40代後半~50代前半を底にしたU字カーブを描くといわれています(※)。しかし、「はたらく幸せ実感」は、30代前半を底に、それ以降は右肩上がりです。「はたらく不幸せ実感」も20代後半をピークに低下を続けます。
30代前半を底に「はたらく幸せ実感」が上昇することには、年齢を経たときの働き方の変化(職位の上昇、女性の正規雇用率の低下、定年・役職定年等)の影響もあります。つまり、このような働き方の変化がなければ、グラフほど幸せ度が大きく上昇するわけではないと考えられます。一方で、「はたらく不幸せ実感」は、働き方の変化の影響が少なく、20代後半をピークに低下する傾向は、広く一般に認められるものだと考えられます。
※世界の多くの国で、40代後半に人生の幸福度が最低水準となることが、米ダートマス大学のデービッド・ブランチフラワー教授による132カ国への調査で判明している。
「はたらく不幸せ因子」の年齢別の違いを見ると、いずれも大卒であれば新卒2~3年目にあたる20代半ばにかけて一度上昇しますが、それ以降は低下します。このような傾向は、性別、雇用形態問わず見られます。一般的に、20代後半以降、年齢が上がるに従い、成果を出す自信のなさ、周囲からの理不尽な言動・ハラスメント、物理的環境による不快感、多忙感、周囲の非協力、孤立感、不当な評価・給与に直面することが減るため、「はたらく不幸せ実感」が低下するのです。
では、「はたらく幸せ/不幸せ実感」について、雇用形態別に、年齢による差を見てみましょう。
正社員、公務員・団体職員は、役職定年がある50代後半にはじめて、「はたらく幸せ実感」が上昇を始め、60代に急上昇します。60代以降は、定年退職者や嘱託社員・パートへの転換者も多く、そのような中で正社員、公務員・団体職員を選択している人は幸せに働いている人が多い、というセレクション・バイアス(※)もあると考えられます。
一方で、派遣・契約・嘱託社員、パート・アルバイトを見ると、「はたらく幸せ実感」は30代前半に底を打ち、その後大きく上昇します。
これについては後述しますが、30代後半以降、年齢が上がるにつれ、派遣社員やパート・アルバイトの既婚女性の比率が増加することが影響しています。
専門家、自営業、自由業も、30代前半を底に「はたらく幸せ実感」が上昇する傾向があります。ただし、30代後半にはすでに高い水準に達しており、その後の変化が少ない点が特徴的です。
なお、「はたらく不幸せ実感」は、いずれの雇用形態でも年代が上がるにつれ低下します。
※セレクション・バイアス(選択バイアス)とは、原因と結果の関係を調べるときに、偏った対象や条件を選択してしまうことで生じる誤りを指す。ここでは、60代就業者が偏った対象のため、年齢が「はたらく幸せ実感」の原因とはいえないことを表す。
正社員、公務員・団体職員の年代別の「はたらく幸せ因子」の推移を見ると、「自己成長」「リフレッシュ」「チームワーク」「他者承認」「他者貢献」は40代後半に底を打ち、その後上昇するU字カーブを描きます。前述した人生幸福のU字カーブと同じように、40代後半に、成長実感や精神的・身体的回復、助け合える仲間、他者からの承認、貢献感が持ちづらくなるようです。一方、「役割認識」や「自己裁量」は低下せず、50代以降に高まります。主体性や裁量が高まることで、他の因子の低下を補っていると考えられます。
契約・派遣・嘱託社員、パート・アルバイトを見ると、「リフレッシュ」「チームワーク」「役割認識」が30代前半以降に上昇します。30代以降、非正規雇用に女性が増加する影響もありますが、これらの因子の高まりが「はたらく幸せ実感」の上昇を支えていると考えられます。一方、「自己成長」「他者承認」「他者貢献」「自己裁量」は、40代を底としたU字カーブを描きます。仕事のコントロール実感も40代が底になるのが特徴的です。
専門家、自営業、自由業を見ると、「役割認識」「自己裁量」が全年代を通じて高い傾向です。裁量が多く主体性を発揮している点が、「はたらく幸せ実感」の高さにつながっています。一方、「リフレッシュ」「チームワーク」「他者承認」「他者貢献」は年代が上がるにつれ低下します。経験を重ねて独立する人が多いためか、助け合える仲間や周囲からの承認、貢献感が減少するものと考えられます。また、高齢になっても現役でハードに働き続ける人も少なくないため、身体的・精神的回復も低下すると考えられます。
男女別に見ると、30代までは男女差がほぼありませんが、40代以降、女性が男性よりも「はたらく幸せ実感」が高く、「はたらく不幸せ実感」が低い傾向があります。男性の「はたらく幸せ実感」が上昇を始めるのは50代後半と遅いのです。
なお、APAC・北米・欧州17カ国・地域と比べても、日本は、女性が男性より「はたらく幸せ実感」が高い傾向があります(※)。このような日本の傾向は、図のような40代以降の状況によるものと考えられます。
※パーソル総合研究所(2023)「グローバル就業・成長実態調査 はたらくWell-beingの国際比較」
女性の「はたらく幸せ実感」が40代以降に高まる理由の1つは、 40代以降、女性の契約・派遣・嘱託社員、パート・アルバイトの「はたらく幸せ実感」が大きく上昇していることです。40代後半以降は、女性の契約・派遣・嘱託社員、パート・アルバイトは、正社員、公務員・団体職員よりも幸せな傾向があるのです。40代以上の女性は男性に比べ、家計補助などのために自ら選択して非正規雇用で働く人が多いことも影響していると考えられます。
また、女性の正社員、公務員・団体職員も、男性に比べて40代以降、「はたらく幸せ実感」が上昇する傾向があります。これは、女性が妊娠・出産等のライフイベントを迎える30代以降、女性の正社員、公務員・団体職員の割合が減少する中で、幸せに働いている人が残りやすいというというセレクション・バイアスや、40~50代の正社員、公務員・団体職員の女性の残業時間が、男性に比べて短いことなどが影響していると推測されます。
一方、男性の正社員、公務員・団体職員の「はたらく幸せ実感」が上昇を始めるのは、一般に役職定年がある50代後半以降です。
また、男性の契約・派遣・嘱託社員、アルバイトは、30代~50代にかけて、「はたらく幸せ実感」がかなり低い傾向があり、女性とはまったく様相が異なります。男性30~50代の非正規雇用者は、女性と異なり、不本意非正規(※)の割合が多いことが影響していると考えられます。「はたらく不幸せ実感」も、40代まで高止まりする傾向があります。
※正規の職員・従業員の仕事がないために、希望に反して非正規雇用で就業している人のこと
※25歳~59歳は人数が少ないため誤差が大きく、そのためにデータががたついている点にご留意ください。
既婚女性の生活満足度は、金銭面や夫婦関係の満足度が低下する影響で、子供がいるほうが低いことが指摘されています(※)。とりわけ働く母親で生活満足度が低い傾向があるようです。しかし、「はたらく幸せ実感」は、子供のいる女性のほうが子供のいない女性よりも高く、子供の人数が3人以上で最高となります。「はたらく不幸せ実感」も、子供のいる女性のほうが低い傾向です。また男性も、女性よりも緩やかですが、同様の傾向があります。
子供が多い人のほうが、年齢が高い傾向があるため、年齢の影響を除去した分析もしてみたところ、それでも男女ともに子供人数が多いほど「はたらく幸せ実感」が高く、女性のみで「はたらく不幸せ実感」が低い傾向がありました。
※佐藤一磨(2021)「子どもと幸福度-子どもを持つことによって、幸福度は高まるのかー」『PDRC Discussion Paper Series』DP2021-002
子供人数が多いほど「はたらく幸せ実感」が高まる理由を探るため、「はたらく幸せ因子」の実態を見ました。すると、男女ともに、すべての因子が、子供の人数が多いほど高まる傾向がありました。この背景として、子供がいる就業者のほうが、男女ともに長時間労働の是正や育児・介護との両立支援に取り組む、「子育てと仕事の両立ができる」組織に属している傾向があることが挙げられます。もちろん「子供のために頑張れる」といった心理的効果の可能性もありますが、このような職場環境の違いも「はたらく幸せの因子」や「はたらく幸せ実感」を高めていると考えられます。
また、男性では女性に比べて「自己成長」「自己裁量」が上昇しやすく、女性は「チームワーク」が上昇しやすいといった男女の違いもあります。背景には、子供がいる男性が仕事での出世を志向し、子供がいる女性は非正規雇用率が高い、という現在のジェンダーギャップがあると考えられます。
子供人数が多いほど「はたらく不幸せ実感」が低下する理由を探るため、「はたらく不幸せ因子」の実態を見ると、男女ともに、子供人数が多いほど「理不尽」を除くすべての因子が緩やかに低下傾向です。先述の職場環境の違いなどが背景にあると考えられます。
本サイトで紹介した分析の結果から、「はたらく幸せ/不幸せ」において、どの因子がより重要となるかや、各社会属性においてどの「はたらく幸せ/不幸せ因子」がより重要かを見てきました。すると、そもそも「はたらく幸せ/不幸せ」の形は人それぞれ、ということは大前提としてありますが、社会属性によっても一定の傾向が見られました。また、仕事上の立場や職場環境、ライフサイクルによって、「はたらく幸せ/不幸せ因子」の実態が異なっており、「はたらく幸せ/不幸せ実感」の違いにつながっていました。
「働かざる者食うべからず」などといわれるように、社会人になれば、ほとんどの人が生きるために働く必要に迫られます。それならば、幸せに働きたいと、多くの人が一度は願うのではないでしょうか。しかし、忙しさや職場の人間関係、能力不足など、さまざまな「はたらく幸せ/不幸せ因子」が悪化する影響で、幸せに働くことは阻害されてしまうことも少なくありません。「はたらく幸せ/不幸せ因子の影響度」の分析結果から、自分の「はたらく幸せ/不幸せ」にどの因子が重要なのか、一般的な傾向と照らし合わせて、考えるきっかけにしてみていただけたらと思います。また、「はたらく幸せ/不幸せ因子の実態」の分析結果から、一般的な「はたらく幸せ/不幸せ」の傾向を知ることで、自分の現在地を捉え直す参考になれば幸いです。「こうだから、自分は幸せ/不幸せなのかもしれない」「幸せに働くために、このような点を改善したらいいのかもしれない」などと参考になる点があるかもしれません。
あなたがどのような境遇にいるとしても、理論的に自分の“はたらくWell-being”は、「はたらく幸せ/不幸せ因子」の現状を知り、維持・改善することで高められます。自身の「はたらく幸せ/不幸せ因子」の状態を知る手がかりとして、「はたらく人の幸せ不幸せ診断」サイトでは無料診断を提供しています。「はたらく幸せ/不幸せ」は日常的に意識するものではないかもしれませんが、改善ポイントが分かれば、とるべき行動が見えてくる可能性があります。健康診断と同じように、自分の「はたらく幸せ/不幸せ因子」の状態について定期的に現状把握し、改善に向けて取り組んでみてはいかがでしょうか。
働き方の実態と意識、成長について聞いた
働く10,000人の就業・成長定点調査
(調査開始2017年~)
その年の社会影響が色濃く表れたもの、ある視点で一部を切り取って詳細に分析したものまで、さまざまな角度から、人々の「働くことを通じた成長」の実態や変化についてご紹介しています。
年度別データを見に行く株式会社パーソル総合研究所
働く10,000人 の就業・成長定点調査
全国男女 15-69 歳の有識者 10,000 人
(性別及び年代は国勢調査の分布に従う)
2017年より毎年2∼3月に実施
※本ページで紹介した結果は、「働く10,000人の就業・成長定点調査」内における、「はたらく幸せ/不幸せ」に関する尺度(スーパーショート版)を用いた設問の回答結果を基に分析したものです。
※「はたらく幸せ実感」「はたらく不幸せ実感」の質問項目は以下の通り。
「はたらく幸せ実感」:私は、はたらくことを通じて、幸せを感じている
「はたらく不幸せ実感」:私は、はたらくことを通じて、不幸せを感じている
の各項目を提示し、「5.あてはまる/4.ややあてはまる/3.どちらともいえない/2.あまりあてはまらない/1.あてはまらない」の5件法で回答を求め、1~5の5段階得点化
※このページのグラフ内数値について四捨五入処理の関係上、グラフ上の合計と異なる場合があります。
本データの引用にあたっては、必ず以下の【出典記載例】に則って、出典をご明記ください。
【出典記載例】 出典:株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」
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