社内コラボレーション事例CONSULTING ✕ THINK TANK

「中高年はやる気がない」が起こる
本質にメスを入れた
ミドル・シニアプロジェクト

その後のキャリアに生きる
「日本雇用の構造課題」に挑んだ
大きなチャレンジ

パーソル総合研究所では、異なる高い専門性を有するプロフェッショナルが、部署を横断して連携・協業し、お客様に高い提供価値を創出しています。今回は、「ミドル・シニアプロジェクト」に参加した、コンサルティング事業本部 アシスタントマネジャー 中島夏耶とシンクタンク本部 上席主任研究員 小林祐児に、共同プロジェクトを通じて得たものや⾃⾝のキャリア成⻑ついて話を聞きました。
対談者
中島 夏耶
コンサルティング
事業本部
中島 夏耶
×
小林 祐児
シンクタンク
本部
小林 祐児

ミドル・シニアの躍進に何が必要か
研究からソリューション提供、書籍発刊まで完走

「ミドル・シニアプロジェクト」の概要について教えてください。
小林 祐児
小林
少子高齢社会で生産年齢人口が減る中、70歳まではたらく時代を迎え、ミドル・シニア(40歳~69歳)はますますの躍進が期待されています。それにもかかわらず、ミドル・シニアは「停滞がち」と評されることが少なくありません。これは本人のやる気云々といった単純な話ではなく、年功で賃金の上がりやすい日本企業の雇用構造の特徴によって、彼らの成果と報酬とにギャップが生じていることが問題なのです。しかも、ミドル・シニアは働き手のボリュームゾーンを占めるため、企業への影響も大きく、日本企業のアキレス腱といわれ長年課題視されてきました。

では、ミドル・シニアが活躍するために何が必要なのか?経験則で語られがちなこのテーマを、エビデンスに基づいて明らかにしようと発足したのが本プロジェクトです。調査・研究だけでなく、コンサルティング事業本部と協業してソリューション開発まで行い、実際に企業様にお役立ていただこうと方針を定めました。

法政大学大学院 政策創造研究科 石山恒貴教授をはじめ、一番多いときで約30名の関係者を巻き込みながら、企業数社のベテラン社員に調査を実施。データを基にミドル・シニア層の就業意識と実態をあぶり出し、ミドルからの躍進を促す5つの行動特性「PEDAL(ペダル)」モデル(※1)を開発するに至りました。

それを広く届けるために、書籍『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』(ダイヤモンド社)、『ミドル・シニアの脱年功マネジメント』(労務行政)を出版し、機関誌『HITO』も発行しました。
中島 夏耶
中島
私たちコンサルティング事業本部は、その調査・研究結果を企業様に活用いただくソリューションの開発を担いました。ミドル・シニアの躍進行動を促すには、直属上司のはたらきかけが重要であることが分かったので、石山研究室をはじめ社内外のメンバーでプロジェクトチームを編成し、『上司向けの躍進行動促進1on1マニュアル』を作成しました。例えば、マニュアルでは、ミドル・シニア社員に対する上司マネジメントの在り方や具体的な1on1の進め方を対話例を使って説明しています。書籍『ミドル・シニアの脱年功マネジメント』はこれらの内容をベースに執筆しました。一般的に、こうした執筆は上位の役職者が担当することが多いかと思いますが、入社してすぐにチャンスをいただけたのは、大変貴重な経験だったと思っています。
小林 祐児
小林
今はこのプロジェクトの発展系である、60代にフォーカスした「シニア・プロジェクト」を、シンクタンク本部とコンサルティング事業本部とで進めています。

日本雇用の構造課題に取り組む高い壁
2つの視点で思考する力がついた

協業による本プロジェクトのどのような場面でおもしろさを感じましたか?
小林 祐児
小林
石山先生のお人柄もあり、誰かがアイデアを出すと「それいいね!」と、前向きに受け止める雰囲気がプロジェクト全体に流れていたので、すごく楽しかったですね。そこにさらに誰かが意見を被せて、議論がどんどん発展していきます。

ミドル・シニアの課題は、社会人であれば誰しも「あるある」という肌感覚を持っている問題。前提の知識が同程度のひとつのテーマに対し、異なる専門性を持つプロフェッショナルたちが、それぞれの知見を持ち寄って多角的にアプローチすることで、相乗効果が生まれたのではないでしょうか。
中島 夏耶
中島
私はこの仕事で、具体と抽象を行き来するプロセスを経験できたことがおもしろかったです。

実はもともとミドル・シニアに対する課題解決に強く興味を抱いており、それがプロジェクト参加のきっかけでもありました。プロジェクトでは、世の中で起きている問題を一歩引いて俯瞰的な視点で捉え、その起きているメカニズムを解明し、具体的な解決策を見いだしていく。そしてそのソリューションを実際にお客様に提供し反応を伺いブラッシュアップしていくーー。この一連の流れを通じて、目の前の課題解決に向き合う視点と、事象を客観的に見る視点の両方を持てるようになりました。視点の上げ下げをすることで、新たな気付きが生まれ、お客様への提供価値が高まることにもつながると分かりました。
小林 祐児
小林
データ、フレームワーク、理論などを用い、メタ視点を持つと、普段の個別の仕事のときにもすごく役立ちますよね。
中島 夏耶
中島
また、シンクタンク本部と協業することで、お客様特有の課題解決だけでなく、社会全体の課題解決に挑戦できたことは刺激的でした。
小林 祐児
小林
私もそれまではパート・アルバイトの採用・定着といった具体的な業務課題を解決する調査・研究に関わることが多かったので、日本の雇用の在り方と切り離しては語ることのできない、ミドル・シニアという大きな問題に取り組むことはチャレンジでした。「なぜやる気がなくなってしまうか?しかも、どうしてそうした人が多く生まれるのか?」を解明するには、日本雇用の構造を明らかにし、その構造が生まれた歴史も知る必要があったからです。その意味では、日本の雇用全体を考えると同時に、働き手一人ひとりのキャリアに寄り添うことができた、いいきっかけだったのではないかと思います。そして、雇用の構造、歴史を知ったことは、以後携わったすべてのプロジェクトに活きています。

理論と実践の両方を磨けるから成長できる

反対に、難しさはありましたか?
中島 夏耶
中島
関わる人が多い、大きなプロジェクトならではの難しさはありました。同じ言葉を使用していたとしても、その背景や意味が人によって違うということもあったので、プロジェクトメンバーで共通言語を使用し、全員の目線を常に合わせることを意識しました。
小林 祐児
小林
アウトプットも同様で、同じデータであっても、企業視点から見たときと、はたらく個人視点から見たときでは、メッセージが変わります。出版した2冊の書籍を始め、対外的にメッセージを発表する際は、「誰宛なのか」を意識し、表現を変えることに気を配りました。リサーチャーであればお客様のため、研究者は研究のために執筆すればよいのですが、はたらく個人、企業の実務家、研究論文といった異なる宛先に向けてアウトプットするのは、パーソル総合研究所ならでは。苦労も多いですが、その分、力はつきます。
中島 夏耶
中島
成長できる土壌のある会社ですよね。私がこのプロジェクトに参加したように、意思があれば挑戦させてくれる風土もあります。

また、ミドル・シニアプロジェクトを通じて具体と抽象を行き来するおもしろさを身をもって知ることができたことは、私のキャリアにとって大きな価値があったと思います。常に理論をアップデートし続けるとともに、それを実践につなげられるコンサルタントを目指していきたいと思っています。
小林 祐児
小林
パーソル総合研究所は、理論と実践をつなぐ、「場」と「情報」がある会社だと思います。今回のような社内連携にとどまらず、現在134社(※2)あるグループの総合力で顧客に価値発揮すべく、『ONE PERSOL』で日々協業しています。常にお客様の課題が共有される環境であるので、お客様が今どんなことに困っているのか、感度が高くなっているかといった、鮮度の高い情報に触れられます。これは普通の研究者ではあり得ない恵まれた環境。さらに、自分が考えた知見を、直接お客様に還元することもできるおもしろさがあります。
中島 夏耶
中島
情報だけでなく、グループの総力により、案件の機会やテーマにも非常に恵まれています。良質な顧客から、やりがいのあるテーマに挑戦させていただける機会を通じて、成長できると感じます。

また、社内連携もプロジェクトに限らず、部署横断での読書会や、顧客向け勉強会など、日々協業していますよね。シンクタンクの知見が知りたいときは、すぐ小林さんにチャットして聞いています(笑)。高い専門性を持ったプロフェッショナルな仲間が、いつでも知見を共有してくれる贅沢な環境です。
小林 祐児
小林
プロフェッショナルである限り、その語源のとおり、実名で「表現する」ことがすごく大事だと思います。パーソル総合研究所では、顧客である企業や、はたらく個人、学術研究に対して「自分はこう思う」と伝えるチャンスがあります。それこそが仕事のおもしろみではないかと思います。

とはいえ、当社は未だ急成長中。発展の最中にあり、今後も大きく変化し続けるでしょう。その変化を楽しみ、一緒に革新できる方をお待ちしています。
  • ※1「PEDAL」は、ミドルからの躍進を促す5つの行動特性「まずやってみる=Proactive」「仕事を意味づける=Explorer」「年下とうまくやる=Diversity」「自ら人と関わる=Associate」「学びを活かす=Learn」 の頭文字をとったもの。
  • ※22021年5月1日時点
中島 夏耶
コンサルティング事業本部 
アシスタントマネジャー 
中島 夏耶
東京都立大学大学院経営学研究科修了。大手調査会社において、企業の中に埋もれている資産の顕在化、それを活用した経営に関する調査・研究に多数参画。2018年3月より現職。人事制度改革やキャリア自律支援、次世代リーダー育成プログラム構築等数々の組織・人事コンサルティングプロジェクトに従事。
小林 祐児
シンクタンク本部 
上席主任研究員 
小林 祐児
上智大学大学院総合人間科学研究科社会学専攻修了。世論調査機関で勤務後、総合マーケティングリサーチファームに入社。市場調査の企画からレポーティング業務まで幅広く従事。2015年10月より現職。既刊書籍に『アルバイト・パート 採用・育成入門――「人手不足」を解消し、最高の職場をつくる』(中原淳との共著・ダイヤモンド社)、『残業学──明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』(中原淳との共著・光文社新書)。近刊として『働くみんなの必修講義 転職学 ――人生が豊かになる科学的なキャリア行動とは』(中原淳との共著・KADOKAWA)など。
公開日:2021年6月21日

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