調査・研究コラム

2025年-2026年人事トレンドワード解説‐管理職の罰ゲーム化/「年収の壁」緩和/生成AIのインフラ化

公開日:

人事担当者へのアンケート結果などを参考に、パーソル総合研究所が2025~2026年の人事トレンドワードとして選出した《管理職の罰ゲーム化》《「年収の壁」緩和》《生成AIのインフラ化》について、言葉の概念や注目されるようになった背景などを解説します。

《管理職の罰ゲーム化》管理職の負担増大で企業が弱体化 次世代リーダーをどう育成するか

《管理職の罰ゲーム化》の注目ポイント

  • 「管理職の罰ゲーム化」というフレーズに多くの管理職や人事担当者が共感し、バズワード化した
  • 「管理職の罰ゲーム化」がバズワード化したことで、企業での反応や対応に勘違いや誤解が生じているケースがあるため注意が必要
  • 今後の対応策として4つの処方箋を提案:①ワーク・シェアリング・アプローチ、②キャリア・アプローチ、③ネットワーク・アプローチ、④フォロワーシップ・アプローチ

バズワード化した「管理職の罰ゲーム化」

かつて管理職は昇進・栄達の証とされ、男性会社員が当たり前のように目指すべきポジションとみなされていた。ところが現在では、責任ばかりが重く、権限や裁量は限られ、むしろ「誰もやりたがらない役回り」として敬遠される傾向が広がっている。

手前味噌ながら、拙著『罰ゲーム化する管理職』(集英社インターナショナル、2024年)でこのフレーズを取り上げ詳述したことが、管理職負荷の議論のきっかけとなった。「罰ゲーム」という言葉そのものは現場発のワードだが、予想以上の反応をいまだにいただき、驚きを隠せない。「まさにうちの会社で起こっていることだ」「当社のことを取材したのか」と、多くの管理職や人事担当者が共感を寄せてくださった。

では、なぜ管理職が「罰ゲーム」として広く受け止められたのか。背景には3つの構造的要因と1つの言説的要因がある。

第1に、ほとんどの企業でマネジメント遂行の難易度が上がり続けていることだ。ハラスメント防止の気運、人材の多様化、キャリア観の変化によって、従来の一律的な指導は通用しなくなった。第2に、役職者の賃金の伸び悩みだ。初任給や組合員の給与は上昇しているが、その分、管理職昇進で得られる報酬増が期待できなくなった。第3に、働き方改革の副作用がある。時間外労働規制やワークライフバランス重視の風潮の中で、メンバーに仕事を振りにくくなっている。その結果、管理職が業務を抱え込むことになった。

こうした条件が重なった上に、専門職等級やエキスパート職を整備すれば、マネジメントを行う管理職は「割に合わない役割」とみなされてしまう土壌が形成されるのは自然の流れだ。

そうした中、HRM(人的資源管理)を語るアカデミアも実務家も皆「適切なリーダーシップ」や「時代に即したマネジメント手法・スキル」を語り、「管理職が変わることによって組織を変えること」というロジックを説き続ける。この偏りを逆方向に回したことが、「罰ゲーム化」という言説的な新規性だったといえよう。

バズワード化による「錯誤」に気を付けよ

こうして「罰ゲーム化」は、昨今のマネジメントを語る際の「定番の決まり文句」となったが、その後の議論を見ているとバズワードにありがちな錯誤もやはり見られる。中でもよくある錯誤は、「当社の管理職はエンゲージメントサーベイの数値が高いから大丈夫」という勘違いだ。管理職になった従業員は、すでに「選ばれた側」にいる。そもそも社内で回答者が特定されやすい管理職は、匿名サーベイでも高めに答えがちだ。問題は管理職手前の層との「ギャップ」にこそある。管理職が精力的に働いているほど、下の世代からは「あのようには、なれない/なりたくない」と管理職になることが罰ゲームに見えるという二重性を見逃してはならない。

次に、「管理職の魅力を発信すれば人は集まる」という幻想だ。見せかけの魅力のアピールだけでは、現場の実態は改善されない。当然ながら、管理職には部下の成長や組織運営の視点など、昔から変わらないやりがいがある。問題はその変わらぬやりがいが、次世代からは「コスパが悪い」とみなされていることであり、それを直視しないのは、典型的な現状維持思考に過ぎない。

さらに、「管理職の負担を軽くする」という発想にばかり議論が偏ることだ。後述するワーク・シェアリングのアプローチやITツール導入などによる負荷軽減は確かに必要だが、それだけに偏ると、管理職の負担感は下がっても企業に必要な次世代の強いリーダーはいつまで経っても育たないだろう。

今後への4つの処方箋

現状を放置すれば、管理職の機能不全が深刻化するとともに、経営人材のサクセッションの機能もまた弱体化する公算が高い。そこで、今後の方向性となる4つの処方箋を紹介する。

その4つとは、①ワーク・シェアリング・アプローチとして、評価・育成・業務管理を分散し、複数でマネジメントを担う仕組みを整えること。②キャリア・アプローチとして、優秀人材を早期に健全に「えこひいき」し、平等にではなく戦略的に人材へ投資すること。③ネットワーク・アプローチとして、縦・横・外のネットワークを強化し、管理職が孤立しない環境をつくること。④フォロワーシップ・アプローチとして、部下側にも育成や知識付与を進め、主体的に上司を支える力を育むことだ。

現在、管理職問題に取り組み始めた企業で主に先行しているのは、①ワーク・シェアリング・アプローチと③ネットワーク・アプローチの2つだ。人事評価やキャリア面談を専門人材に任せたり、メンバーのキャリア育成をベテランに任せたり、管理職同士のピア・コミュニティを形成したりする動きが多くの企業で見られる。一方で、②キャリア・アプローチや④フォロワーシップ・アプローチの強化施策への踏み出しは、これからの大きな課題として残っている。

管理職負荷は、管理職への「期待」の裏返しである。次世代リーダーを平等主義的に発掘したい日本企業は、「広く従業員を鍛える」ことによって、「その中からリーダーが現れてくる」ことを期待し続けている。「罰ゲーム化」とは、その期待感がこれまでは女性から退避され続け、今や男性からも拒否されるようになったことだ。各業界の大手企業からこそ、「優秀人材から先に辞めていく」という現象が起こっている。

日本企業がマネジメントを再設計し、次世代リーダーを育てるために今求められているのは、負担軽減だけではなく「挑戦と成長を引き出す設計」だ。「管理職の罰ゲーム化」を乗り越えられるかどうかが、日本企業の競争力の行方を左右する。

《「年収の壁」緩和》「年収の壁」緩和が労働市場に与える影響

《「年収の壁」緩和》の注目ポイント

  • 労働力不足が深刻化する中、「年収の壁」がパートタイム就業者などの働き控え(就業調整)の要因となり、ジレンマが限界に達している
  • パートタイム就業者の労働時間は、最低賃金の上昇に伴い減少傾向。推計結果では、就業調整の解消により、労働力不足が約2~3割緩和する見込みである
  • 2025年の税制改正で「103万円の壁」は160万円に引き上げられた。今後、企業は「キャリアの壁」にも取り組む必要がある

深刻化する労働力不足と「年収の壁」というジレンマ

昨今の日本経済を語る上で、「労働力不足」という言葉はもはや枕詞となった。特に、私たちの生活に直結する小売業やサービス業の現場では、労働力不足が事業存続を脅かすほど深刻化している。この構造的な課題の深層に横たわり、長年解決の糸口が見えなかった問題、それが「年収の壁」である。

年収の壁とは、パートタイム就業者などが一定の収入を超えると、税や社会保険料の負担によって手取りが減少する逆転現象が生じる基準額を指す。この制度の存在が、働きたくても働けない「働き控え(就業調整)」という歪んだ状況を生み出してきた。

昨今、この問題が再びクローズアップされた背景には、複数の要因が潜む。急激な物価高や円安が家計を圧迫し、人々は収入増を切望している。一方で、最低賃金は毎年引き上げられ、意図せずとも壁に直面してしまう労働者が増加した。企業は「もっと働いてほしい」、労働者は「もっと働きたい」。しかし、制度がその思いの前に立ちはだかる。この社会的なジレンマが臨界点に達したことこそ、2025年を振り返る上で、「年収の壁」の見直しが最大のトピックのひとつとなった理由と考えられる。

日本の雇用慣行が生んだ歪み

この問題の根は深い。日本の社会は、長らく男性が主たる稼ぎ手となり、女性が家事・育児を担うという性別役割分業を前提に形作られてきた。企業は男性正社員(とその家族)の生活を保障する代わりに長時間労働を求め、その結果、女性が家事・育児と両立する働き方として、パートタイム就業が定着した。

この構造をさらに固定化してきたのが年収の壁だ。2022年の総務省「就業構造基本調査」によれば、非正規雇用者の実に4人に1人に当たる約540万人が、収入を抑えるために就業調整を行っている。特に103万円、106万円、130万円といった壁の周辺である年収100万円前後では、約450万人が調整し、その大半を女性が占めている。これは単なる労働問題ではなく、ジェンダー問題でもあることを示している。

皮肉なことに、労働者の待遇改善を目的とする最低賃金の上昇が、この就業調整を助長してきた側面も示唆される。壁となる年収額は変わらないため、時給が上がれば上がるほど、労働者は目標年収が年収の壁に達しないよう労働時間を短く調整する。事実、1993年から2023年にかけて最低賃金は上昇する一方、パートタイム就業者の月間労働時間は反比例し、この30年間で1人当たり約20時間も減少している。

就業調整の解消が労働力不足解決の鍵となるか

もし、就業調整の問題が解消されたなら、日本の労働市場はどう変わるのだろうか。パーソル総合研究所と中央大学の共同研究「労働市場の未来推計2035」では、複数のシナリオでそのインパクトを試算している(図表)。同研究では、このままパートタイム就業者の月間労働時間の減少傾向が続くと仮定した場合(図表左/標準シナリオ)、2035年には1日当たり1775万時間の労働力が不足すると予測。これに対し、仮に就業調整が解消され、2023年と同水準の月間79.3時間まで労働時間が維持された場合、労働力不足は1418万時間/日(図表中央/労働時間一定)に、さらに2023年よりも労働時間が増える場合は1257万時間/日まで緩和される見込みだ(図表右/労働時間増加)。就業調整が解消されれば、労働力不足は約2〜3割(357万〜518万時間/日)緩和される可能性があり、未来の労働市場にとって大きな希望だ。

図表.パートタイム就業者の潜在的な労働力

パートタイム就業者の潜在的な労働力

出所:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2035」

こうした中、事態が動いたのは、2024年10月の衆議院議員総選挙後の政局だ。選挙で過半数を割り込んだ与党に対し、国民民主党が政策協議で「103万円の壁」の引き上げを要求。この政治的取引をきっかけに長年膠着していた議論が一気に加速した。結果、2025年度税制改正で「103万円の壁」は「160万円」へと約30年ぶりに引き上げが決まった。

残された「社会保険の壁」と次の一手

今回の税制改正は、深刻な労働力不足を緩和する切り札となり得るが、これが就業調整の解消、ひいては労働力不足問題の解決に直結すると考えるのは早計だろう。今回の見直しで税や社会保険の壁の一部は見直されたものの、就業調整の最大の動機のひとつとされる社会保険の「130万円の壁」は手付かずのままだからだ。この壁は、社会保険料の負担発生のみならず、扶養から外れることによる配偶者側の控除や(企業独自の)家族手当の減少などにも直結し得るため、就業調整の強い動機となっている。社会保険料の負担や手取りの逆転現象を前にしては、働き方を抜本的に変えるインセンティブにはなりにくいだろう。

重要なのは、この改革を一過性に終わらせず、本丸である社会保険制度の議論へとつなげることだ。そこでは財源の問題も加味しつつ、複雑に絡み合った社会保障と税の制度を抜本的に見直す姿勢も求められる。誰もが自身のライフプランに沿って働き方を自由に選択できる、シンプルで公平な制度設計を最終目標とすべきと考える。

同時に、企業の役割もこれまで以上に重要となる。「年収の壁」の先に待ち受ける「キャリアの壁」に取り組む必要があるからだ。パートタイム就業者を単なる補助的労働力とみなさず、スキルアップのための研修機会の提供、正社員への登用制度、多様なキャリアパスの整備などを通じ、彼らが組織の中核を担う人材へと成長できる環境を整えることが不可欠だ。

壁はひとつ動いたが、それは構造改革の入口に立ったに過ぎない。この一歩を確実な前進とするために、行政、企業、個人の次の一手が問われている。

《生成AIのインフラ化》生成AIのインフラ化が人事に求める3つの挑戦

《生成AIのインフラ化》の注目ポイント

  • 2022年のChatGPT登場から3年、生成AIはもはや一過性のブームではなく、仕事を進める上での基盤として組み込まれている状態になった(=インフラ化)
  • ただし、生成AIのインフラ化の進展度合いは企業間で差が見られる
  • 生成AIのインフラ化が進む中、人事にはAI活用を前提とした仕事そのものの再設計に向けた中心的役割が求められる

登場から3年 特別なツールから「仕事の前提」へ

2022年にChatGPTが登場してから3年。生成AIは多様な業務で活用されるようになった。当初は一部の実験的な試みだったが、今や多くの就業者にとって身近な存在となっている。総務省『情報通信白書(令和7年版)』によれば、生成AIサービスを「使ったことがある」と回答した個人は、2023年度の9.1%から2024年度には26.7%へと約3倍に増加した。この急激な伸びは、2025年が生成AIにとって「一部の試行」から「社会的に不可欠な基盤」へと移行する転換点であることを示しているだろう。

もはや生成AIの活用は、一過性のブームではなく、インターネットのように仕事をする上で欠かせない「インフラ」へと変貌しつつある。ここで述べているインフラ化とは、電気や水道のように、それが存在することを特別に意識せずとも、仕事を進める上での基盤として組み込まれている状態のことだ。

生成AIの業務活用が急伸した背景には、主に2つの要因がある。第1に、技術の進化とアクセシビリティの向上だ。AIを組み込んだアプリやサービスが増加し、専門知識がなくとも誰もが日常的にAIの支援を受けられる環境が整った。第2に、労働力不足を背景とした企業の生産性向上への取り組みである。限られた人材で成果を出すために、多く
の企業が定型業務の自動化などを目的にAI活用を推進し始めた。その結果、AIはさまざまな職場で思考のパートナーとしても機能し始めている。

「インフラ化」といえど差が見られる企業の活用度

すでに多くの業務において、文書作成や情報検索の一部を生成AIが担うのが自然となりつつあるが、インフラ化の進展は企業間で差も見られる。

先述の『情報通信白書』によれば、自社で生成AIの活用方針を定めている企業は2024年度時点で49.7%。裏を返せば、約半数は方針を持っていないということだ。このように、多くの企業では活用方針の整備などが遅れ、従業員個人の利用にとどまり、全社的な活用推進に踏み出せずにいる。

一方で、国内で先進的に生成AIを活用する企業では、独自の「社内専用AI」を構築し、社内の膨大なナレッジの共有のほか、顧客対応や意思決定支援といった基幹業務にもAIを組み込む動きが加速している。こうした企業では、活用のガイドラインやリスク管理体制など、生成AIを前提とした仕事のための制度を急速に整備しているのである。

セキュリティ・情報管理体制の構築、実態に即した活用ルールの策定・教育は不可欠であり、人事部門も他部門と連携して推進する役割を担うことが期待される。特に、従業員教育や利用ルールの浸透は人事の領域であり、情報セキュリティ部門が仕組みを設計しても、現場で定着させるには人事との協働が欠かせない。利活用が急拡大している潮流に遅れを取らないためにも、人事部門の対応スピードは問われるだろう。

人事部門に求められる3つの挑戦

生成AIのインフラ化が進むにつれ、企業にとっての課題も変容する。かつては生成AIを「導入するか否か」が主要な論点であったが、今後は「いかにして標準業務に安全に組み込み、全従業員が安心して生成AIを活用し、付加価値を生み出せる環境を整えるか」という、より高度なマネジメントの段階へと移行する。だからこそ、この変革のドライバーとして、人事部門は中心的役割を果たすことが求められる。具体的に人事部門が求められる挑戦は、次の3つに整理できるだろう。

第1に、人事労務オペレーションの効率化・高度化である。採用広報の文案作成やエントリーシートの一次評価、従業員サーベイの自由記述欄の分析など、人事業務には多くの定型処理業務が含まれる。こうした業務に生成AIを活用し、迅速かつ低コストで処理することで、より戦略的な課題に取り組む時間を確保できる。人事部門はセンシティブなデータを扱うことが多いため、安易な外部ツールの利用は重大なリスクを伴う。その点には注意を要する。その上で、既存の業務プロセスをAI前提で再設計し、人事自身がその実践者となることが、全社的な生成AIのインフラ化に向けた出発点となるだろう。

第2に、従業員のスキル開発と評価制度の再設計である。生成AIが文章作成や分析の多くを代替する中で、社員に求められる能力は「問いを立てる力」や「生成物を批判的に評価する力」へとシフトしている。例えば、プログラミングの場面では、経験の浅い担当者がゼロからコードを書くよりも、生成AIが提示したコードを経験豊富な人材がレ
ビュー・修正するほうが、はるかに生産性が高いケースが増えるだろう。これからの人事には、こうした変化に対応するための研修体系の見直しや、「生成AI活用能力」を評価・等級制度にどう位置付けるかが、人事制度設計の焦点となる。

第3に、生成AIを前提とした組織文化と制度の構築である。生成AI活用を価値創造の手段と位置付けるには、従業員が安心して挑戦できる心理的安全性と、それを後押しする制度や組織づくりが不可欠である。「生成AIを使うことは横着ではなく、付加価値を高める行為である」という認識を企業文化として共有し、チャレンジや失敗を許容する環境を整える必要がある。人事は制度や評価の仕組みを通じて、変化を受け入れやすい環境を整える。そして、現場を後押しし、文化を醸成して制度として定着させることこそが、核心的な役割である。

仕事そのものの再設計へ

生成AIのインフラ化は、もはや避けられない現実である。AIはすでに「導入するかどうか」の段階を過ぎ、使われていることを前提に仕事そのものを再設計する時代に入った。

組織内で生成AIのインフラ化を実体のあるものにしていくには、まず全社的な活用方針を明確にし、部門横断での小規模な実証を積み重ねること。そして、成果と課題を可視化し、改善を繰り返す仕組みを早期に整えることが必要になる。それと同時に、人事部門は、先述した①オペレーションの効率化、②スキル・評価制度の再設計、③組織文化と制度の構築、という3つの挑戦を同時並行で推進しなければならないだろう。生成AIをインフラと捉えたとき、人事の役割は導入時の教育やルール浸透といった支援では終わらない。これからの仕事そのものを再設計するための中心的な役割が求められている。2026年以降の企業競争力は、この設計をどこまで早く実装できるかにかかっている。

3大人事トレンドワード2025-2026に見る兆し 共通項は「再均衡(リバランス)」

2025~2026年の人事領域を展望する上で象徴的な動きを表すワードとして、《管理職の罰ゲーム化》《「年収の壁」緩和》《生成AIのインフラ化》という3つのトレンドワードを選出した。これらのワードから読み取れる2025~2026年のトレンドのポイントとは何だろうか。

まずは、2025-2026年の3つの人事トレンドワードに関して、ここまでの解説の内容を基に簡単に整理する。

第1のワードは、《管理職の罰ゲーム化》である。管理職は「権限と報酬を伴う花形ポジション」ではなくなり、今や「責任過重で報われない役割」へと変容している。2025年はそうした課題に多くの人事の耳目が集まった年であった。成果主義や人員削減により業務量が増大したといった課題が、大きなうねりとなって議論を巻き起こした。

第2のワードは、《「年収の壁」緩和》である。106万円や130万円といった社会保険の加入義務や扶養控除の金額設定が、家計補助的に働きたい女性やシニアの就労を制限するインセンティブを与えてきた。コロナ禍後、労働力不足がさらに深刻化し、名目賃金が上昇したことで、この問題は「労働制約」として課題視されてきたのが近年である。それが2025年、ようやく壁の緩和が一部実現され、参議院選挙でも大きな争点のひとつとなった。物価高対策や社会保障改革と並んで、年収の壁の緩和・撤廃をめぐる各政党のスタンスが注目を集め、労働政策の重要課題として位置付けられた。

第3のワードは、《生成AIのインフラ化》である。2025年、ChatGPTやCopilot、Geminiに代表される汎用的な生成AIサービスはその機能の高度化とともに、ビジネスの現場に一気に浸透した。HRMの視点では、「AIを各現場でどう活用・普及させられるか」という視点から、「AIが活用されることを前提とした人事管理」へと視点が移り変わっている。この転換を「インフラ化」として表現した。具体的には、AIスキルを等級要件に組み込んだり、新卒採用計画を下方修正したりといった企業が現れ始めた。さらにAIによる効率化を見込んだ人材ポートフォリオの再設計を計画する企業も増えており、配置・育成・評価の在り方すべてがAIのさらなる高度化を前提に再考され始めている。

以上3つのワードは、管理職、社会保障、テクノロジーという異なる領域で起こった動向である。しかし、共通していえるのは、いずれも「再均衡(リバランス)」の動きであるという点だ。すなわち、これまでの社会が維持してきたベクトルが、現実の変化の中で、均衡点を変えようとしている動きが始まっている。

《管理職の罰ゲーム化》では、リーダーシップ強化一辺倒の流れから、負荷と権限の再配分、そしてメンバーとリーダーの役割の再定義へと視点が移り始めた。《「年収の壁」緩和》は、就労インセンティブと社会保障のアンバランスを是正しようとする制度的再均衡の動きである。《生成AIのインフラ化》は、ここ数年のAI普及トレンドがひとつの臨界を迎え、人間と技術の役割分担そのものを再設計し、仕事全体の均衡点を新たに描き直している。

過去からの延長線上にあった思考と慣習が、現実の変化とのズレを修正するようにして、今まさに再均衡(リバランス)の局面を迎えている。2025〜2026年のHRトレンドには、そのような「負荷・役割・制度のリバランス」が随所に現れている。

※人事トレンドワード選考の参考としたデータ

選考に当たり、「注目している人事ワード」を聞いた以下①~⑤の事前調査などの結果を参照した。

①~④は上位1~5位を抜粋/カッコ内は件数

⑤のカッコ内はメンション数の前年同月比・増減率(%)。なお、2025年期のメンション数が10,000以上のトピックに限定。メンション数は該当キーワードの投稿回数で、1回の投稿文中に複数回使われている場合は複数回分をカウントしている。X、YouTube、各種ブログ、掲示板、各種ニュースサイト、レビューサイトなど日本国内10万ドメインのデータソースより投稿データ(サンプリングデータ)を取得し、「Quid Monitor」を使用して分析

人事トレンドワード2025-2026コンテンツ

人事トレンドワード2025-2026スペシャル対談

企業の成長には、組織改革が欠かせません。その重要な鍵となるのが管理職の存在です。管理職の課題が浮き彫りとなる中で、これからの組織、そして管理職はどう変わっていくべきなのでしょうか。巻頭対談として、著書『冒険する組織のつくりかた』で組織の新たな世界観を提示する安斎勇樹氏と、『罰ゲーム化する管理職』で、管理職の疲弊を明らかにしたパーソル総合研究所主席研究員の小林祐児に、「管理職は冒険できるのか。それが可能な組織には何が必要なのか」について語ってもらいました。

株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO 安斎 勇樹⽒ × パーソル総合研究所 主席研究員 小林 祐児

企業の取り組みから浮かび上がる「HRキーワード」

企業の人事担当者の方々に、自社の取り組みを中心に、2025年を振り返り、2026年を見通す上で、注目しているHRキーワードを伺いました。

研究者の視点

組織や社会、人に関わるテーマを探究する研究者に、研究に至る経緯や今注目するテーマについて語っていただきました。

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