About

本プロジェクトについて

2017年春、パーソル総合研究所は、立教大学・中原淳教授とともに「希望の残業学」プロジェクトを立ち上げました。
学問的に裏打ちされた数万人規模の調査・ヒアリングなど、定量・定性的な分析から、長時間労働の背後にある要因を多角的に探り、
現実を変えていく打ち手を開発していきます。

※「残業学」はパーソル総合研究所と中原淳にて
共同考案し、商標登録済です。

Concept

活動コンセプト

いまこの国では、政府・民間企業ともに労働時間の抑制について多くの議論が生まれています。
その中で本研究を意義あるものにするため、プロジェクトは以下の方針で活動していきます。

01Policy
直感と経験に基づいた議論ではなく、調査データに基づいて長時間労働問題を「科学」していくこと。上司・従業員への大規模なアンケート調査を中心に、各種の定性調査・取材・ヒアリングを含め、多方向から分析していく。
02Policy
「労働時間を減らすこと、それだけを目的とせず、残業を減らしたその先にある企業・組織・働き手への影響(業績・やりがい・意欲・働き方など)も包括的に明らかにしていくこと。
03Policy
学術的な知見獲得にとどまらない、実践的な成果を目指すこと。企業の残業対策の有効性を検討し、職場における組織・上司・個人のインフォーマルな要素と残業の関係を明らかにしながら、実際に打ち手を作っていく。

本プロジェクトの研究成果は、2018年春以降、フォーラム・書籍・研修プログラムなどを通じて公表し、
日本社会の働き方を変えていくための、より実践的なフィールドに展開していきます。

Message

メッセージ

株式会社 パーソル総合研究所
代表取締役社長 渋谷和久

希望の残業学、この「希望」という言葉には2つの意味が込められています。一つには、長らく解決されてこなかった日本の長時間労働問題をついに変えられるチャンスとして、今の世論の高まりを前向きに捉える、という意味。もう一つは、残業を減らしたその先に、企業もひとりひとりの働き手も、より幸せになれる世界が待っている、その「残業減の先にある希望」までを目指していくことです。

いま、働き方改革の旗印のもと、長時間労働是正の機運が高まっています。しかし、日々企業の方とお会いしていると、そうした流れの中で組織の目的や働く人達の想いが置いてけぼりにされている、と感じることも少なくありません。「残業を減らすべき」という理想だけが先走っているようにも見えます。働き方を変えるため、具体的に企業はどんな施策を打っていけばいいのか。働き手はどのように変わる必要があるのか。そうした課題に答えることで、企業にとっても働き手にとっても、前向きな変革を起こしていく道を探っていきたい。

残業が当たり前の組織・働き方をついに変え、“はたらいて、笑おう“が実現できる社会へ

パーソル総合研究所では、こうした想いのもと、立教大学・中原淳教授を共同研究のパートナーとして迎え、本プロジェクトを立ち上げました。皆様のご支援とご協力を、どうぞ宜しくお願いいたします。

立教大学 経営学部
教授 中原 淳

「働き方改革」というワードが世間を賑わしています。長時間労働に代表される、戦後、連綿と続いてきた日本人の「働き方」を見直さなければならない…今日も、口角泡を飛ばした議論が、メディアを賑わせています。

これからの多様性あふれる社会に思いを馳せるとき、わたしたちは、こうした「働き方改革の必要性」を全面的に支持します。また繰り返される「違法な残業」は、ただちに一掃されるべきだと考えます。

しかし、一方で、「働き方改革」という合い言葉のもと、現場で働く人々の現状をあまり顧みない、性急な人事施策が矢継ぎ早に実施されていることにも危惧をもっています。「現場の状況を顧みない施策」が、現場にさらなる「やらされムード」を生み出しかねないことを心配しているのです。

「やらされムード」の根源は「根本的な原因の放置」です。たとえば、長時間労働を生み出してしまう現場マネジメントの機能不全や、不適切な仕事の量、そうした「根本的な原因」を放置して、時間数のみを削減するという「改革」が今、日本全国で進行しています。このままでは「現場への無茶ぶり」や「管理職への労働強化」が発生してしまうのではないだろうか。皆様のお近くでは、「働き方改革」に対する「絶望」に近い「やらされムード」が現場から漂ってきてはいないでしょうか。

これに加えて、多くの「働き方改革」の議論では、長時間労働を是正したあとに広がる「将来の成果や希望」に対しての目配りが欠けていることも、見逃すことはできません。長時間労働を見直しつつ、どのように仕事の付加価値を高めていくのか。業績を変えずに維持するためにはどうするか。ワークモティベーションや、仕事にかける希望をどのように高めていけるのか。健康状態は向上するのか。わたしたちは、このような長時間労働削減の「その先にある未来」に目配りしていくことが重要だと考えています。

働き方改革の3層分析モデル
「希望の残業学」プロジェクトは、このような問題意識に基づき「働き方改革の3層分析モデル」を掲げ、大規模調査を実施し、問題に切り込みます。人事の世界にはびこっている「KKD(勘と経験と度胸)」ではなく、科学的なアプローチで、「働き方改革」の未来を描き出したいと思っています。

「働き方改革の3層分析モデル」の第一層では、「長時間労働を抑制する施策」の効果性と副作用について明らかにします。この分析を通して、施策の効果の優劣を示すだけでなく、どのような組織マネジメントを行えばその効果が高まるかがわかってくるでしょう。

第二層は、長時間労働を生じさせている根本的な原因やマネジメントの機能不全を徹底的に分析します。根本的な原因の解明は、この問題にとって決定的に重要です。

第三層では、長時間労働を是正した先に広がる「その先の希望」について解明をしていきます。いくつかの国際比較調査によると、日本は、世界でもっとも、ビジネスパーソンが「働くことに熱意を持てない国」であるとのことです。働くことに希望を感じるためには、どのようなマネジメントが必要なのか。私たちは「その先」を考えます。

「希望の残業学」プロジェクトが、仕事の現場に広がる「やらされ感」を「希望」に変える一助になることを願います。そして「働き方改革」の「その先」を描くことを願っています。

http://www.nakahara-lab.net/
東京大学卒業、大阪大学大学院、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等を経て、 2018年より現職。専門分野は人材開発論・組織開発論。単著(専門書)に『職場学習論』(東京大学出版会)、『経営学習論』(東京大学出版会)、人材開発研究大全(東京大学出版会)。一般書に『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長戦略』『アルバイトパート採用育成入門』など、その他共編著多数。

Report

「希望の残業学」調査レポート

「ムダな会議」による企業の損失は年間15億円

長時間労働や労働生産性について議論する際、しばしば指摘されるのが、「会議、打ち合わせの多さ」です。日本企業はいったいどのくらいの時間を会議に費やしているのでしょうか。そしてそれらの会議時間は果たして有益に使われているのでしょうか。ムダにならない会議のあり方を考察し、ムダ会議を防ぐためのポイントをご紹介します。

職場の残業発生メカニズム──残業習慣の「組織学習」を解除せよ

「長時間労働をやめよう」という課題には一定の共通認識があるのにも関わらず、なぜ現実は変わっていかないのでしょうか。パーソル総合研究所は立教大学・中原淳氏とともに「職場においてなぜ残業が発生するのか」というメカニズムを探求し調査を重ねてきました。調査データから導かれた発見を整理すると、長時間労働の習慣は、「集中」「感染」「麻痺」「遺伝」という4つの主要メカニズムによって、組織的に「学習」され、世代を超えて「継承」されてきていることがわかりました。

「日本人は勤勉」説は本当か──二宮尊徳と勤勉革命の歴史

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業種・職種別残業実態マップ──どの業種が、どのくらい働いているのか

労働時間と企業・組織との関係は、これまで労働経済学の分野を中心に研究が蓄積されてきましたが、職場のコミュニケーションや就業意識、ピープル・マネジメントなどのインフォーマルな要素についての科学的エビデンスは十分ではありません。そうした課題意識の中、本PJTは正社員6000人を対象とした独自の定量調査・分析を実施してきました(2017年9月末)。本稿では、そこで得られたデータの中から、残業の実態と業種/職種との関連性についてご紹介します。

残業習慣はなぜ生まれ、なぜ無くすべきなのか――残業のメリットとデメリット

残業習慣/長時間労働は、日本の働き方のシンボルとも言える、古くて新しい課題です。これまでも過労死問題、ブラック企業などのトピックで世論が盛り上がるたびに「変えなければならない」と言われ続けてきました。そこで本PJTは科学的なエビデンスをもって地に足の着いた議論を進め、真に有効な働き方の変革を進めるべく、昨年来、大規模で総合的な定量調査を実施してきました。

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