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ベトナム労働法制
ベトナムの労働法制も労働者に有利に設計されている。具体的には、労働契約の終了事由及び解雇事由が法律上明記されており、又、解雇する際には法定の退職金を支払わなければならない。会社が労働者を懲戒解雇する場合には、事前に労働者及び労働組合との間で懲戒処分に関する会議を開催しなければならず、労働者は、自ら弁明する権利を有し、又は労働組合に自己の弁護を求める権利を有する。整理解雇を理由に労働契約を終了する場合において、12カ月以上勤務していた労働者の職がなくなる場合には、直ちに労働契約を終了することができず、訓練を実施した上で、新たな業務を提供する義務がある。有期契約の更新は1回までしか許容されない、最低賃金が定められている、などとされている。
外国人のビザの取得についても、必ずしも寛容と評価することはできず、ベトナムもインドネシア同様労働管理が非常に難しい法域の一つであると評価できる。
2021年1月より、新労働法が施行された。新労働法の内容の多くは従来のものから変更されておらず、新労働法においても労働者優位の路線は踏襲されている。
労働管理において気を付けなければならない点、労務慣行の特徴、近年の労働政策の状況
労働者優位
ベトナムではベトナム共産党の一党支配の下、中央集権制と民主制を統合した「民主集中制」に従い、国家運営がなされている。立法権、行政権及び司法権は、抑制と均衡を保つためではなく、このような国家運営を支えるための分業として機能している。このうち行政は、以前は18省8機関で構成される政府(Government)が担っており、労働法制については主に労働傷病兵社会省(Ministry of Labor, Invalids and Social Affairs(MOLISA))の所管であった。
しかし、Resolution No. 176/2024/QH15により、ベトナム政府は2025年に大規模な省庁の再編成が実施された。その結果、政府組織は5省4機関が削減され、13省4機関の体制になった。この再編成において、労働傷病兵社会省(MOLISA)は内務省(MOHA)へ統合された。
社会主義国家であるベトナムにおいて労働者の保護は手厚く、日本よりも労働者に有利な労働法制となっている。例えば、有期雇用の場合には一定期間以上の雇用が続くと無期雇用化しなくてはならず、会社側から行う労働契約の終了又は解雇についても原因が限定されている等の特色がある。又、紛争となった際にも労働者に有利な判断がなされることが多く、後日の紛争を避けるためには、細心の注意を払い労働契約の終了又は解雇手続きを行う必要がある。
2019年12月6日に、旧労働法(Law No.10/2012/QH13)に代わる改正労働法(Law No.45/2019/QH14、以下「改正労働法」又は「労働法」という)が公布され、2021年1月1日に施行された。
改正労働法においても、既定の労働者優位の路線は踏襲されている。例えば、定年年齢の引き上げや、有期契約の労働者からの事前通知のみで一方的に労働契約の解除が認められるなど、雇用者にとって厳しい改正がなされている。
労働組合とストライキ
社会主義国家であるベトナムは、共産党体制の一部としてベトナム労働総連を頂点とする労働組合が組織されており、企業内だけでなく、中央直轄市・省レベルでも労働組合が組織されているのが特徴である。
ベトナムにおいては、一定の類型の労働紛争について、調停や仲裁によって紛争解決がなされなかった場合、法律上ストライキをする権利が認められている(労働法199条)。ストライキはベースアップを求めるものが多いが、過重労働、社員食堂の食事の質の低さを原因とするものもよくみられる。ストライキの手続は、①労働者全体又はストライキを組織する労働組合からの意見聴取、②ストライキ実施の決定及びストライキの開始時間の通知、③ストライキ実行、という流れとなる(労働法第200条)。もっとも、法によって定められているストライキの手続きは労働者にほとんど知られておらず、実際には法律に従わない違法なストライキがほとんどである。しかしながら、違法なストライキの場合、中央直轄市・省の労働当局や労働組合は、雇用者と労働者の代表機関と面会し意見を聴取し、通常業務に復帰できるよう両者を支援する1
最低賃金の上昇
2014年以降インフレ率は一桁台で留まり比較的落ち着きをみせている。しかしながら例年最低賃金の増額は続いており、2026年1月から、従前(2024年7月)のものより月額平均で約7.2%引き上げられている(全地域)2。なお、最低賃金の改定前の時点ですでに、改定後を上回る賃金支払いがあったとしても、労働者は最新の改定率に基づきベースアップ要求することが多いため、会社は常時改定内容を確認しておかねばならない。
その他
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転職率の高さ
ベトナムでは労働者が自身の両親や親戚の面倒までみる社会的慣習があり、給与や福利厚生への関心が高い。多くの労働者は、より良い条件があれば転職に躊躇しないため、有能な人材の流出を防ぐために、給与や待遇について労働に見合う手当が必要となる。又、会社は、一度労働者を雇い入れると、適用される労働法令を完全に遵守した形で労働契約の終了又は解雇が行われない限り、簡単には労働契約の終了又は解雇できないことにも留意し、会社は、契約期限などバランスの取れた雇用契約を締結することが肝要である。
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定年
旧労働法における定年年齢は、男性60歳、女性55歳であったが、改正労働法においては、定年年齢は段階的に引き上げられていき、男性62歳(2028年まで毎年3カ月ずつ上昇させる)、女性60歳(2035年まで毎年4カ月ずつ上昇させる)となる(労働法第169条2項)。別段の合意がある場合を除き、定年年齢に達したことは労働契約の解除事由となる(労働者による解除について(労働法第35条2項 e)、(雇用者による解除について(労働法第36条1項 dd))。なお、2014年社会保険法においては、定年年齢に基づく労働契約の解除の際には、労働者が年金受給資格を得るには少なくとも満20年間の社会保険料の納付が必要であった3が、2024年社会保険法では社会保険料の納付期間が15年に短縮された4。
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労働者の秘密保持
業界の成熟に伴い、ベトナムにおいて、企業秘密を保護する必要性が高まっている。会社は、労働者が労働法の定める営業又は技術上の秘密に直接的に関係するとき、秘密保持の義務及び違反時の損害賠償につきその労働者と事前に書面で合意する権利を有すると定められている(労働法第21条2項)。企業秘密に触れている労働者からの「秘密保持の義務が明示的に課されていなかった」との後日の反論を許さないためにも、労働契約書や就業規則において秘密保持に関する取り決めを明確に示しておいたり、労働者の在職中に別途秘密保持に関する合意書を締結しておくことが望ましい。ただし、労働者の権利・就労を過度に制限するような守秘義務条項や競業避止義務条項は、紛争となった場合に裁判所により無効とされる可能性があるので注意を要する。
又、労働者は、当たり前のように、会社メールアドレスをプライベートで使用したり、プライベートのSNSツールを業務で利用している。そのため、これらについての取り扱いルールを明示しておくことも重要である。
基本的な労働法制の概要
基本的労働法制
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特徴
日本と同じ大陸系シビル・ローを採用するベトナムであるが、労働法の内容については手探りのものが多く、必要に応じて発行される各法規規範(令(Order)、決議(Resolution)、政令(Decree)、決定(Decision)、指示(Directive)及び通知(Circular)で、2025年法規規範文書公布法(2025年改正により修正・補充)で定める法規規範文書(Legal Documents)として認められるもの)による充足が必要となることも少なくない。新たに公布された改正労働法下においても、この点は同様であり、労働者の不利に働くような処分を行う場合には、新たに細則やガイドラインが示されていないか、制定されている場合にはこれらの内容に違反した手続きとなっていないかを確認することが求められる。
※コモン・ロー/シビル・ローの概略
「コモン・ロー」とは、イギリスのほかかつて大英帝国領であった諸国(アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど)で中心に採用されている、伝統・慣習・先例に基づいて判断してきた判例を重視する法体系を指す。
他方、「シビル・ロー」とは、フランス・ドイツなどの大陸側で発達した概念であり、コモン・ローに比べて制定法を重視する法体系である。なお、日本は、シビル・ローの法体系に属する。 -
労働法制
① 2019年労働法(Law No.45/2019/QH14)
ベトナムの基本的労務関係を総合的に規律する法律である。雇用契約、労働時間、休暇等について定めを置くほか、労働紛争の解決手続(労働法179条以下)、社会保険の大枠(労働法第168条及び第169条)等も定めている。また、労働法の細則として、定年退職年齢に関するDecree No. 135/2020/ND-CP、労働条件や労使関係に関するDecree No.145/2020/ND-CP、およびベトナムで就労する外国人労働者に関するDecree No. 219/2025/ND-CPが公布されている。外国人労働者の雇用に際しては、2025年8月7日以降、Decree No. 219/2025/ND-CPの発効に伴い、労働許可証の取得にあたって必要な外国人労働者の使用需要申請を行う前に、その役職についての採用情報を掲載することが要求されることになった。従来の規定(Decree No. 70/2023/ND-CP)で義務付けられていた指定の電子ポータルサイトへ募集情報掲載する要件は廃止された5。雇用者は自ら、又は人材紹介会社・アウトソーシング企業を通じて募集情報を掲載できる6。
未成年者や高齢者、身体障害者、女性について、労働時間の短縮や追加休暇等の保障があり、勤務時間が法定の勤務時間よりも短いパートタイマーについてもフルタイム労働者と平等の待遇・賃金体系が保障されていることに、注意が必要である(労働法第32条3項)。② 労働組合法(Law on Trade Unions 2024(Law No. 50/2024/QH15)
新しい労働組合法が、2025年7月より施行され、2012年法に取って代わった。現行労働組合法は、労働組合の結成、権利、義務等につき定めている。労働組合の就業規則作成への関与や労働協約交渉、労働紛争窓口としての機能(紛争関与、訴訟提起)、労働局との関係(調査協力等)をはじめとして、適法なストライキ手続等も規定されている。
会社は労働組合設立に協力しなければならず、組合設立後に労働組合への情報提供、協議、協力等の義務が課され、社会保険算定の基礎となる賃金の2%相当を労働組合基金に拠出しなければならない(労働組合法29条)。
注目される点としては、従来の労働組合法が、ベトナム人労働者についてのみ労働組合の結成、加入、活動への参加の権利を認めているのに対して、2024年労働組合法では、少なくとも12か月以上の労働契約で雇用されていることを条件に、外国人労働者についても基礎レベルの労働組合への加入や活動への参加が認められるようになった(2024年労働組合法5条2項)。また、企業が負担する労働組合費についても、不払いが明確に禁止事項とされた(同法10条5項)。今後は、組合費の不払いがないよう各企業において留意する必要がある。③ 雇用法(Employment Law 2025 (Law No. 74/2025/QH15))
従来の2013年雇用法は全7章62条で構成され、雇用の登録、労働市場に関する情報、国家技能資格、人材募集サービス、失業保険等について規律する。
2025年雇用法は2013年雇用法に代わるものとして公布され、全8章55条に改定された。重要な点として、政策適用範囲の拡大と2024年社会保険法との整合性を図るため、2025年雇用法では、失業保険加入対象者の範囲が拡大されている。
Decree No. 318/2025/ND-CPは、2025年雇用法に基づく労働者登録および労働市場情報システムに関する一定の規定について詳細を定めるものである。本政令は全4章25条から構成されており、初めて、労働者登録の対象となる以下の3つのグループについて法的枠組みを確立している:(i) 2024年社会保険法に基づき強制社会保険加入対象となる労働者、(ii) 就労しているが強制社会保険の加入対象とならない者、(iii) 失業者(就労しておらず、就労を希望し、かつ就労可能な状態にある者)7。
労働者は自らの労働者登録情報を申告する責任を負い、その情報の正確性および真実性について法的責任を負う一方、雇用者は、労働者の採用時ならびに労働関係の変更または終了時において、法令に従い、労働者に関する完全、正確かつ適時の情報を収集し、申告し、提供する責任を負う8。本政令は2026年1月1日から施行される。もっとも、労働者登録の実施は段階的に行われ、強制社会保険加入対象グループについては2026年7月1日から、その他のグループについては2027年1月1日から適用される。④ 社会保険法(Social Insurance Law 2024(Law No. 41/2024/QH15))
従来の2014年社会保険法は、全9章125条で構成され、社会保険にかかる会社と労働者の権利及び義務、基金の積み立て等の詳細を定められていた。会社及び労働者は、社会保険、健康保険及び失業保険への加入・拠出が義務付けられている。2018年12月1日より、ベトナムで働く外国人についても、法定の要件をみたす場合は、原則として強制保険(社会保険及び健康保険)の対象者に含まれることとなった(Decree No.143/2018/ND-CP)。
2014年社会保険法は、2025年7月1日に施行された2024年社会保険法に取って代わられた。2024年の法は全11章141条の法律に改められており、重要なポイントとしては、給与が支給されていない企業管理者(CEO、取締役、監査役)および一定の条件を満たすパートタイム労働者が社会保険の対象となる点が挙げられる。⑤ 健康保険法(Health Insurance Law 2008 (Law No. 25/2008/QH12))
健康保険法は、健康保険制度を規定する法律で、加入者、健康保険料率、健康保険証、健康保険の受給資格、保険の対象となる医療費の支払い、健康保険基金、健康保険関係者の権利義務などを定める。健康保険法は、2008年に制定されたのち、2014年に改正、2015年1月から施行されている。2018年の政令(Decree No. 146/2018/ND-CP)によって、支払いに関する条項が一部補完されている。
なお、2014年健康保険法は、2024年に改正され、2025年7月1日に施行される。改正法の重要なポイントとしては、給与が支給されていない企業管理者(CEO、取締役、監査役)が健康保険の対象者となる点が挙げられる。これらの者の月額健康保険料は、強制社会保険の対象となる月給の最大6%であり、自己負担で支払わなければならない。新しい健康保険法の施行に伴い、Decree No. 146/2018/ND-CPは、新しい健康保険法に関する詳細規定及び指針を定めるDecree No. 188/2025/ND-CPに取って代わられた。⑥ その他
・職業教育訓練法(Law on Vocational Education and Training 2025 (Law No. 124/2025/QH15))
職業教育訓練機関の組織や運営方法、職業教育訓練内容等について定めている。
・男女平等法(Law on Gender Equality 2006 (Law No. 73/2006/QH11))
男女平等を促進するための諸施策について定めた法律である。雇用に関しては、職場における取扱いの平等などが定められており、民間企業も対象とされている。
・障害者法(Law on Persons with Disabilities 2010 (Law No. 51/2010/QH12))
障害者の権利義務及び国家、家族、並びに社会の責任について定めている。障害者の教育訓練や社会活動への参加の保障等、障害者の社会参加を促す法律である。
・労働安全衛生法(Law on Occupational Safety and Health 2015 (Law No. 84/2015/QH13))
労働安全衛生の確保、労働災害・職業病の被災者に対する政策・制度、労働安全衛生に関する各団体・個人の責任及び権利、労働安全衛生に関する国の管理について定めるもので、労働契約書を交わしていない労働者も対象に含まれる。
雇用契約
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労働法と労働者
労働法は、①ベトナム人労働者、②雇用者、③ベトナム国内勤務の外国人労働者、④労使関係に直接関連を有するその他の機関・組織・個人に適用される(労働法第2条)。役員等管理職についても、国内外を問わず「雇用者」(例:外国親会社の上司)の指揮命令に服しているものと実質的に判断される場合には「労働者」として労働法が適用される可能性があるため注意を要する。
会社は、人民委員会に属する労働管理機関に対し、事業を開始した日から30日以内に雇用状況について届出を行い、事業の過程で生じた労働に関する変更状況を定期的に報告しなければならない(労働法第12条2項)。
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労働契約
労働契約とは、報酬、賃金を得られる業務、労働条件、労使関係における労働者と使用者の権利および義務に関する労働者と使用者の合意と定義されており、加えて、契約の名称を問わず、報酬、賃金が得られる業務及び当事者の管理、監督に関する記載があれば、それは労働契約とみなされる(労働法第13条1項)。
労働法上、労働契約には以下の内容を記載する必要がある(労働法第21条1項)。
- 参照 労働契約書記載内容
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①雇用者情報(企業の名称・住所、署名者の役職・氏名)
②労働者情報(労働者の氏名・生年月日・性別・住所・身分証番号)
③職務内容・勤務地
※変更には労働者の同意が必要となるため、限定しすぎない方が会社の便宜にかなうこともある。
④労働契約の期間
⑤賃金(支払時期・支払方法・手当・その他の付加的給付)
⑥昇給・昇進制度
⑦勤務時間・休憩時間
⑧労働者の労働安全設備
⑨社会保険・医療保険・失業保険
⑩訓練・技能向上のための研修等
労働契約は、書面の他、電子メールなどの電子的形式によって締結することが可能である(労働法第14条1項、電子取引法10条)。2026年1月1日より施行されるDecree No. 337/2025/ND-CP電子労働契約の締結及び履行、並びに電子労働契約プラットフォームの設立、更新、管理、維持、運営及び使用に関する詳細な規定を定めている。なお、契約期間が1カ月未満の労働契約は、口頭で締結可能とされている。
労働契約には、①無期契約、②36カ月までの有期契約の2つに分類されている(労働法第20条1項)。旧労働法においては、12カ月未満の契約、12~36カ月の契約、及び無期限の契約の3つに分類されていたところ、現在は上記のとおりの2つの分類となっている。
①無期契約(労働法第20条1項(a))
無期限雇用の労働契約で、ベトナムでの基本的な労働契約となる。労働法上、労働契約の終了及び解雇原因が限定されており、労働者への保護は手厚い。
②36カ月までの有期契約(労働法第20条1項(b))
契約期間が36カ月までの有期とされている労働契約で、契約期間の満了により会社は契約関係を終了させることができる。有期契約の更新は1回に限り可能で、有期契約を再度締結することを会社が望む場合には、新たに有期契約を結びなおさなければならない。期間満了後30日以内に労働契約が締結されないまま、労働者が勤務を続けた場合には無期契約への切り替えとみなされるため注意を要する(労働法第20条2項)。更新後に期間満了を迎えた際には、契約を終了するか無期の契約を結ぶかを会社が選択しなければならない。契約終了にあたっては黙示での契約更新等とならないよう、その旨書面にて事前に通知しておくことが推奨される。更新が一度に限定されるため、有期契約による雇用は最長でも6年間(36カ月間の初回雇用+36カ月間の雇用契約の更新に基づく追加雇用)となる。
これらに反する運用をする現地会社も少なくないが、罰金(200万から2500万ドン)や後の紛争手続で契約無効と判断されるリスクを抱えることになる。
会社は、労働者に対して、労働契約締結時に、下記情報を提供しなければならない(労働法第16条1項)。
- 参照 労働者への事前告知事項
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①業務内容
②勤務地
③勤務条件
④勤務時間
⑤休憩時間
⑥職務の安全・衛生条件
⑦賃金
⑧賃金の支払方法
⑨社会保険・医療保険・失業保険
⑩営業秘密・技術秘密の保護に関する規定(もしあれば)
⑪その他労働契約締結にあたって直接関連する事項のうち、労働者が要求するもの
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試用期間
ベトナムにおいても労働者を試用することは可能である。ただし、労働者の試用は、1つの業務について1回のみ可能とされており、また、職務内容によって試用可能な期間の上限が定められている(労働法第25条)。
試用期間中の賃金は、両当事者の合意で決定されるが、最低でも同種業務の賃金の85%以上に設定する必要がある(労働法第26条)。
会社は、試用契約期間終了の際に、採用の諾否を通知しなければならず、試用結果が使用者の要求レベルに達していた場合、会社は試用者と雇用契約を結ばなければならない(労働法第27条1項)。
試用期間中は、使用者・労働者のいずれも、事前通知や損害賠償を行うことなく、試用契約を中途で解除することが可能である(労働法第27条2項)。
就業規則の作成義務及びその内容
就業規則の作成義務・登録等
旧労働法においては、労働者を10名以上雇用する会社は、就業規則の作成・通知及び勤務地での掲示が義務付けられていた(旧労働法119条1項、4項)。改正労働法においては、雇用する労働者の人数にかかわらず、すべての使用者に就業規則の作成・通知及び勤務地での掲示が義務付けられている(改正労働法第118条1項、4項)。
労働者を10名以上雇用する会社は、後の「3-3 手続き」で述べるように、就業規則を書面化しなければならず、又、一定期間内に就業規則の登録申請を労働当局へ実施することが必要となることも忘れてはならない。
内容
社内に労働組合がある場合、労働組合から意見を聴取し、それを参考としなければならない(労働法第118条3項)。就業規則に記載が必要な内容は、以下のとおり(労働法第118条2項)。旧法において定められていた内容に加えて、改正労働法においては、以下のうち、④、⑥及び⑨が新たに必要的記載事項となっている。
①就業時間・休憩時間
②勤務地規則
③勤務地における職務の安全・衛生
④職場のセクシャルハラスメントの予防・防止に関する事項及び職場においてセクシャルハラスメントがなされた際の懲戒処分手順、手続
⑤会社の資産、営業秘密、技術上・営業上の秘密、知的財産の保護
⑥労働契約と異なる業務に一時的に労働者を異動させる場合
⑦労働者の労働規律違反行為及び懲戒処分の形式
⑧損害賠償責任
⑨懲戒処分権限を有する者
手続き
10名以上の労働者を雇用する会社は、就業規則の公布後10日以内に、労働組合がある場合には労働組合との協議を持ったことを示す議事録、懲戒事由等について定めた書面等と併せて就業規則を現地の省レベル労働当局に提出しなければならない(労働法第119条2項、第120条)。労働当局は就業規則の内容を審査し、法令上問題がなければ登録を行う。以下で述べる修正や再提出等が必要なければ、労働局の受理から15日後に就業規則は有効となる(労働法第121条前段)。労働局は就業規則の内容に法令違反を発見したとき、修正や再提出のための指導を行う。問題がある場合には労働局が申請を受理した日から7営業日以内に指導を行うこととなっているが(労働法第119条3項)、実際は提出から2週間、長くて1カ月程度かかることも珍しくない。
上記以外の場合(10名未満の労働者を雇用する会社)は、就業規則公布後、就業規則に定める有効期間の開始日より、就業規則が有効となる(労働法第121条2項)。
就業規則に関する注意事項等
会社が懲戒処分をしようとする場合、会社の裁量権濫用から労働者を保護するため、労働法上以下の事項が要請されており(労働法第122条1項)、①けん責、②6カ月を超えない昇給期間の延長、③降格及び④解雇の4種類のみ行うことができる(労働法第124条)。罰金や減給を懲戒処分として実施することはできない(労働法第127条2項)。又、懲戒事由が複数にわたる場合であっても、処分は最も重い処分が予定されている一つの事由に限られる点(労働法第122条3項)や、懲戒処分該当事実の発生から原則として6カ月以内(違反事由が財務や技術上の秘密の漏洩に関する場合には12カ月以内)に行わなければならない点に留意が必要である(労働法第123条1項)。
- 参照 懲戒処分について
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①労働者の過失(落ち度)についての会社側立証責任負担
②労働組合の懲戒手続への参加
③労働者の懲戒手続参加及び防御の機会の保障
④書面での議事録作成
就業規則、労働契約その他労働法に定めのない違反行為を理由とする懲戒処分は禁止されている(労働法第127条3項)。したがって、就業規則において、使用者が任意に設定する個別の懲戒事由及びこれに該当する具体的行為を明示しておくことが実務上重要となる。ただし、懲戒処分としての解雇を実施可能な場合は、法によって定められている(詳細は、「5-3 懲戒解雇」参照)。
なお、実務上、後日の紛争に備えた証拠確保の観点から、違反の事実があったときに労働者から署名付き書面を得ておくことも推奨される(例えば、違反の事実があった際に、違反の具体的な事実や懲戒事由等を記載した書面を労働者に交付し、文書の内容の詳細に同意する旨の署名を得ておく等)。
賃金(賞与・退職金・残業代)などの法制の概要
賃金
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支払等
賃金とは、合意に基づいた業務を行うために支払われる金銭で、業務や職位に基づく報酬、賃金手当その他の支払いを含むものである(労働法第90条1項)。
会社は、労働者に対して直接、全額、期限通りに賃金を支払わなければならない。(労働法第94条1項)。賃金の支払いは、現金払いでも銀行振込払いでも可能であり、銀行振込払いの場合、口座開設および振込手数料等は使用者の負担となる(労働法第96条2項)。
賃金の支払い時期は以下の通りである。
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時間外労働
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①残業等
あらゆる労働者が残業代等支払い対象となる。通常労働時間は、原則として1日当たり8時間、かつ1週間当たり48時間を超えてはならないとされている(労働法第105条1項)。通常時間外の労働を行わせる場合、使用者は、労働者に対して通常の給与に対する以下の割増賃金の支払いが義務付けられる(労働法第98条1項(a))。
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②深夜労働
深夜労働(午後10時から翌午前6時における労働)については、通常の賃金に対して30%以上の割増賃金が加算された金額を支払う(労働法第98条2項)。
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③時間外かつ深夜労働の場合
時間外かつ深夜労働の場合には、上記①及び②において記載した割増賃金の支払いに加えて、更に時間外労働の割増賃金の20%に相当する金額が加算される(労働法第98条3項)。
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最低賃金
ベトナムにおいて最低賃金とは、「経済・社会の発展条件に適合する、労働者とその家族の最低限の生活水準を保障するために、通常の労働条件下で最も単純な業務を行う労働者に支給される最も低い賃金」と定義されている(労働法第91条1項)。ベトナムでは、シンガポールやマレーシアとは異なり、あらゆる労働者に対し最低賃金が保障される。具体的な額は、政府・商工会議所・労働総連の三者で構成される国家賃金評議会が定める。
最低賃金は、ほぼ2年に一度のペースで引き上げられており、2026年1月1日から地域別最低賃金(Regional Minimum Wage(RMW))が従前(2024年7月1日)比7.2%引き上げられた(政令293/2025/ND-CP号(「政令293号」))。政令293号によると、地域1の月額最低賃金は現行から約7.1%、531万ドン相当の増額、地域2は約7.3%、473万ドン相当の増額、地域3は約7.3%、414万ドン相当の増額、地域4(地域1~3以外の地域)は7.2%、370万ドン相当の増額へ改定された。
なお、ベトナムの最低賃金は、全国の市町村を都市化の度合いに応じて区分けした地域別に定められている。政令293号では、一部の市町村(又はその一部)について、地域IIから地域Iに変更されるなど、下位の地域から上位の地域に繰り上げられている。この対象地域では、最低賃金が一気に大きく引き上げられたため、注意が必要である。 -
試用期間者の賃金等
試用期間中の賃金は、両当事者の合意によって決定されるが、最低でも同種業務の賃金の85%以上に設定する必要がある(労働法第26条)。
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休業期間中の賃金
ベトナム労働法は、労働者の休業期間中の賃金について、当該休業に対して使用者及び労働者の過失の有無を判断要素として、以下のとおり場合分けをして規定している(労働法第99条)。なお、以下において使用者が賃金を支払う必要がある場合であっても、労働者が社会保険制度を享受して休業している期間、別途合意の無い限り、雇用者は被雇用者に賃金を支払う必要がない(労働法第168条2項)。
①雇用者の責に帰すべき事由による休業の場合:賃金の全額が支払われる(同条第1項)
②労働者の責に帰すべき事由による場合:賃金は支払われない9(同条第2項)
③雇用者の故意・過失によらない停電、雇用者の責に帰すべき事由によらない断水、又は天災、火災、大規模な疫病、敵対行為、国家機関の要請に基づく移転、又は経済的理由の場合、両当事者は以下のとおり賃金につき協議するものとする:
-休業期間が14営業日を超えない場合、賃金は地域別最低賃金額と同等又はそれを超える金額でなければならない(労働法第99条3項(a))。
-休業期間が14営業日を超える場合、賃金は両当事者間で協議され、最初の14営業日の賃金は地域別最低賃金額を下回ってはならない(労働法第99条3項(b))。
賞与
賞与についてのガイドラインや規制などは特に設けられていないが、慣習上「13th month salary」等の名称で13カ月目の賃金を支払う。社内規程に定められている賞与等の金額を変更する場合、会社は労働組合との協議が必要となるため注意を要する。
「13th month salary」はベトナムのテト正月(旧正月)頃に支払われることが多いため、「テトボーナス」と呼ばれることも多い。一年で最も長い休暇であり、多くの人が帰省するテトの時期に支払われるため、ボーナスについて労働者に明確に通知しなかったり、労働者が帰省したまま会社に戻ってこないことを防ごうと、休暇を挟んで2分割して支払うなどするとかえって労働者の反発を招き、ストライキにつながることが多い。1年で最もストライキが発生しやすい時期とも言えるため、早めに具体的な支給額を明確に労働者に通知しておくことが望ましい。
業績やパフォーマンスに応じて賞与を支給する場合には(事業所の労働者代表組織がある職場では事業所の労働者代表組織の意見を参考にした後に)、賞与規則を作成し、職場で公表、公開する必要がある(労働法第104条2項)。
残業代
「4-1(2)時間外労働」を参照。あらゆる労働者に対して適用される点で注意が必要である。時間外労働を求める場合には労使の合意によらなければないが、その残業時間は1日の通常労働時間数の50%、1カ月40時間、年間原則200時間(特別な場合でも最大年間300時間)のいずれも超えてはならない(労働法第107条2項)。月当たりの残業時間が基準を超過した場合には、実務上、超過分の残業代が経費と認められないなど、影響は大きい。
年間200時間の枠は会社にとっての足かせとなっているため、経済界から強い改善要望が出ており、この点を緩和する形で労働法改正が進められる見通しとなっていたが、結局、月の上限残業時間は30時間から40時間に引き上げられ、年間の上限残業時間200時間、繊維・縫製・履物・電気・電子製品の輸出のための製造・加工、農業・林業・塩業・水産養殖製品の加工など特定の業種や、高度な専門・技術水準を必要とするが、労働市場において十分かつ適時に提供されない労働を必要とする業務を処理する場合等についてのみ300時間までの残業をさせることができると規制している。
退職手当及び失業手当
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退職手当
使用者は、労働契約終了時点において12カ月以上連続して勤務していた労働者に対して退職手当を支払わなければならない。ただし、以下の場合には退職手当の支払いを行う必要はない(労働法第46条1項)。
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・労働者が社会保障に関する法令の定めるところにより年金を受給する条件を満たした
・労働者が正当な理由なく5営業日以上連続して無断欠勤した
退職手当の計算式は以下のとおり(労働法第46条、Decree No.145/2020/ND-CP第8条)。
【直近6か月の平均賃金+各種手当】×0.5×退職手当計算用勤務期間(年数)
※失業保険加入期間は退職手当計算用勤務期間に含まれない
※半年未満の退職手当計算用勤務期間は6か月に切り上げられ、半年以上勤務期間は1年に繰り上げられる。上記勤務期間について、労働者が失業保険に加入している期間は算入されない(労働法第46条2項)。2009年からベトナム人労働者は失業保険に強制加入となっているため、勤務期間が0となる場合もあり得ると考えられる。勤務期間が0であれば、退職手当を支払う必要は無い。ただし、試用期間や産休期間も勤務期間に含まれるため、この期間に失業保険に加入していないことが多く、この期間分についてのみ退職手当を支払う義務が発生することがある。また、外国人については、失業保険に加入していないことが多く、退職手当の支払いがなされる例が多い。
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失業手当
失業手当は、組織・技術の変更、経済的理由による変更、又は企業の分割、分社、合併、売却、賃貸、企業形態の転換、もしくは企業資産の所有権又は使用権の移転に伴う整理解雇に基づく労働契約の終了を実施する際、その対象となる者に対して支払う必要がある。退職手当の計算式は、上記退職手当と同様である。ただし、失業手当については、12カ月以上連続して勤務していた労働者には最低2カ月分の賃金による失業手当を支払わなければならない(Decree No.145/2020/ND-CP第8条2項)。
その他(一般的な休日等)
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週休・年休
原則1週間当たり1日(厳密には連続した24時間)の週休が与えられる(労働法第111条)。就業規則において週休日を定めることも可能である(同条2項)。
通常の条件で12カ月以上勤務した労働者については原則12日間の年次有給休暇(年休)が付与され(労働法第113条1項)、その後、勤続5年ごとに1日ずつ年休が加算されていく(労働法第114条)。なお、勤務期間が12カ月未満の者については、勤務した月数に比例して年休が付与される(労働法第113条2項)。具体的取得日については会社が労働者の意見を参考にして年休取得のスケジュールを設定し、それを労働者に事前通知することが必要となる(労働法第113条4項)。なお、未消化の年休について、労働者は、雇用契約の終了又は失業時に、その補償を雇用者に対して求めることができる(労働法第113条3項)。
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祝日等
労働者には、下記祝日及び正月休暇が保障される(労働法112条1項)。外国人労働者は更に、自国の伝統的・国家的祝日について各1日を休暇とすることができる。改正労働法において、新たに建国記念日が1日追加され、年間の祝日日数は11日となった。新たに追加される祝日は、ベトナムの建国記念日である9月2日の前後、9月1日か3日のいずれかの一日となる(前後どちらの一日を祝日とするかは、首相が毎年決定する(改正労働法第112条1項dd、同3項))。
2026年1月7日付Resolution No. 80-NQ/TWに基づき、ベトナム共産党中央政治局(Politburo)は毎年11月24日を従業員が全額支給を受ける権利を有する公休日とする方向性で「ベトナム文化の日」と指定することを承認した。上記決議に定められた決定に基づき、労働法第112条第1項に規定される従業員の公休日に関する規定が改正・補充され、毎年11月24日のベトナム文化の日が公休日に追加される可能性が高い。 -
慶弔休暇
労働法第115条1項で、下記事由による休暇が認められている。
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出産休暇
労働法第139条第1項は、女性従業員の出産前後の産前産後休暇の権利を規定している。これに基づき、女性従業員は出産前後に6か月間の産前産後休暇を取得する権利を有し、そのうち出産前に取得する休暇期間は2か月を超えてはならない。ただし、この規定は2025年12月10日付人口法No.113/2025/QH15号により改正され、2026年7月1日より施行される。新規定では第二子出産の場合が追加され、女性従業員は出産前後合わせて7カ月の産前産後休暇を取得できる10。第139条第1項のその他の産前産後休暇に関する規定に変更はなく、女性従業員は出産前後に6カ月間の産前産後休暇を取得する権利を有し、出産前に取得する休暇期間は2カ月を超えてはならないこととなる。
普通解雇としての雇用契約の終了、懲戒解雇、整理解雇としての雇用契約の終了のそれぞれの方法と留意点
雇用契約の終了
労働契約の終了事由は法定されており(労働法第34条)、会社が雇用契約を終了する場合、下記のいずれかに該当していなければならず、双方の合意によるほかは雇用契約の終了のためのハードルが高いといえる。雇用契約の終了事由には例えば、懲戒解雇や、整理解雇等がある。
- 参照 雇用契約の終了原因
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①労働契約の期間満了。ただし、当該従業員が社内の労働者代表組織の執行委員会の構成員で、その任期満了前に労働契約が満了する場合を除く。
②労働契約所定の業務の終了を理由とする労働契約の終了
③契約当事者双方の合意
④労働者が死刑、禁固刑又は契約上の業務遂行禁止の判決を受けた場合
⑤裁判所の確定判決又は決定、もしくは当局の決定により外国人労働者が国外退去処分となった
⑥労働者の死亡、又は裁判所により法的に無能力者、行方不明、死亡と宣告された場合
⑦雇用者が自然人である場合の死亡又は裁判所により法的に無能力者、行方不明、死亡と宣告された場合。雇用者が自然人ではない場合、営業の停止、又は省人民委員会傘下の事業登録機関が、雇用者に法定代理人又は法定代理人の権利義務を行使する権限を有する者がいない旨の通知をした場合。
⑧懲戒解雇
⑨労働法に従った労働者側からの一方的な契約解除
⑩労働法に従った会社側からの一方的な契約解除
⑪雇用者の、構造の変化、技術の変更又は経済的な理由による労働契約の終了。完全分割、部分分割、統合、合併、企業の売却、賃貸、転換、企業又は協同組合の資産の所有権又は使用権の移転による労働契約の終了
⑫外国人労働者に対する労働許可証の有効期間の満了
⑬試用期間において、使用者の要求する水準に達していない、または一方当事者が試用の合意を解除した
普通解雇としての労働契約の終了
ベトナムにおける雇用者からの一方的な労働契約の終了は、一般的に難しいということができる。普通解雇としての労働契約の終了の場合、会社は労働者の度重なる契約上の業務の不履行が証明できた場合や正当な理由なく5日以上連続で欠勤した場合等の限定された場合にのみ、一方的に労働者との労働契約を終了することができる(労働法第36条1項)。その他、長期間の療養(無期契約の場合連続して12カ月、12カ月以上36カ月未満の有期契約の場合連続して6カ月、12カ月未満の有期契約の場合は契約期間の2分の1を超える期間)の場合や、兵役等による労働契約休止期間後15日以内に労働者が出勤しない場合、労働者が労働法で定められた定年に達した場合、又は雇用契約締結時に労働者が真実の情報を提供せずかつその情報が採用に影響を与える事由だった場合などにも労働契約の終了が可能である。
なお、契約上の業務の不履行について、具体的業務の完了基準に照らした判断が求められるところ、当該基準は社内労働組合の意見を参考にして作成されたうえで、社内に告知されている必要がある。
懲戒解雇
懲戒解雇は、法で定められている一定の行為が認められる場合に限って可能である(労働法125条)。立証責任は会社側にあり、解雇手続についても以下で述べる通り、解雇の正当性を担保するために慎重に行わなければならない。
- 参照 懲戒解雇の対象となる行為
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①犯罪等の権利侵害行為
- 職場における窃盗、横領、賭博、故意の傷害又は麻薬使用等の一定の犯罪行為
- 企業秘密の漏えい、知的財産への侵害その他使用者の財産・利益に重大な損害を発生させる行為又は就業規則に規定されている職場でのセクシャルハラスメント行為
(「度重なる規律違反」とは、懲戒処分を受けた違反行為が、その処分が解除される前に再度行われたことを指す)
③正当な理由なく30日間に5日以上又は365日に20日以上の無断欠勤をしたこと
(正当な理由には、自然災害、火災、本人又は親族の病気(医療機関等による適切な証明を要する)、及び就業規則で定める事項が含まれる)。
整理解雇を理由とする労働契約の終了
整理解雇を理由とする労働契約の終了は、法で定められている場合に限って実施することができる(労働法第42条、第43条)。ただし、法で定められている内容が曖昧であるため、実際に整理解雇を理由とする労働契約の終了が実施可能かは、現地の専門家に相談を行う必要がある。
- 参照 整理解雇を理由とする労働契約の終了が実施可能な場合
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①組織再編又は技術的変更により労働者の雇用を維持することができない場合:
- 組織構造の変更、人員の配置転換
- 使用者の業種、職種にかかる業務プロセス、技術、機械、生産設備の変更
- 製品または製品構造の変更
- 経済の恐慌や不景気
- 経済の構造転換または国際条約の実施に伴う法律や国家政策の変更
上記①②の場合の整理解雇を理由とする労働契約の終了の実施の手続として、(i)労働使用計画の立案(労働法第44条)、(ii)労働者代表組織(存在する場合)との意見交換、(iii)30日前までの省級人民委員会及び労働者への通知(労働法第42条6項)、及び(iv)失業手当の支払い(労働法第47条)が必要となる。上記③の場合、現雇用者は労働使用計画を策定し、現雇用者と次期雇用者の双方が当該計画を実施する。解雇された従業員は、労働法47条に基づき失業手当を受け取る。
労働契約の終了に関する手続
ベトナムにおいて労働契約の終了は極めて限定された場合にしか許されておらず、労働契約が終了したとしても後日の労働紛争において労働者に有利な判断がなされることが多いため、会社側は細心の注意を払い労働契約の終了手続を行う必要がある。違法な解雇又は不当な退職強要等については、刑事責任を問われる可能性があるため注意を要する(刑法第162条第1項、2項参照)。
労働契約の終了する際には、一部の例外を除いて、雇用者から労働者に対して事前の通知が必要となる。雇用形態に応じて、以下表のとおり、通知の期限が異なっている(労働法第36条2項)。
労働紛争
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労働紛争の種類
ベトナムにおける労働紛争は、まず、労働者個人と使用者との紛争(以下「個別的労働紛争」という)と労働者代表組織と使用者との紛争(以下「集団的労働紛争」という)に大別される。そして、集団的労働紛争は、更に既に存在する労使間の合意・権利関係に関するもの(以下「権利に関する集団的労働紛争」という)と、労使間における新たな労働条件の形成に関するもの(以下「利益に関する集団的労働紛争」という)に分かれる(労働法第179条参照)。
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労働紛争の流れ
いずれの労働紛争においても、まず当事者による協議によって解決を図り、それでも解決ができない場合、原則として調停を前置した上、所定の紛争解決手続きの流れを経ることとなる。
労働紛争の流れについて、その概要は、以下のとおり。
①個別的労働紛争及び権利に関する集団的労働紛争の場合
当事者による解決⇒労働調停人による解決⇒労働仲裁評議会による解決または裁判所へ提訴
②利益に関する集団的労働紛争の場合
当事者による解決⇒労働調停人による解決⇒労働仲裁評議会による解決またはストライキの実施
もっとも、労働紛争の解決手続きについて、上記のとおり手続きが煩雑であるため、労使ともに労働法に従った合法的な手続きの流れを理解しておらず、実際には調停や仲裁が利用される例は少ないといわれている。
その他
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労働者側からの解除の場合
労働者は、雇用形態に応じて、以下表のとおり、事前の通知を行うことで、労働契約を一方的に解除できる。使用者のように解除事由が限定されていない点が特徴である(労働法第35条1項)。
ただし、以下の場合、事前通知は不要であり、労働者はただちに労働契約を解除することができる(労働法第35条2項)。
- 参照 事前通知が不要な場合
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① 労働契約と異なる業務への労働者の一時的な異動の場合を除き、労働契約で合意された業務や勤務地に配置されないまたは労働条件を保証されない場合
② 不可抗力により賃金の支払いが遅れた場合を除き、賃金が十分支払われないまたは賃金の支払いが遅延する場合
③ 使用者による暴力、侮辱的言動、健康、人格、名誉に悪影響を与える行為がなされた場合、強制労働がなされた場合
④ 職場においてセクシャルハラスメントがなされた場合
⑤ 勤務継続が胎児に悪影響を与えるという判断を医療機関がした妊娠中の女性労働者
⑥ 定年退職年齢に達している場合(別段の合意がある場合を除く)
⑦ 労働契約締結時の情報提供義務を使用者が誠実に履行せず、労働契約の履行に影響を与える場合
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未消化の年次有給休暇の精算
前記のとおり、未消化の年休について、労働者は、労働契約の終了時又は失業時に、その補償を雇用者に対して求めることができる(労働法第113条3項)。精算額は、日割りの賃金に未消化の年休を乗ずることによって、算定される。労働契約の終了時又は失業時に思いがけず大量の年休の買取義務を負うことの無いよう、適切な管理を実施することが推奨される。
外国人ビザの種類及び取得要件
ベトナムで外国人が就労するためには、①ベトナムへの入国及び滞在について認められるビザ及び②ベトナムでの就労が認められる労働許可証の双方の取得が必要となる。
①につき、日系企業就労者は企業就労者向けのLDビザを取得するのが通例である。なお、要件を満たせば①のビザの代わりに一時在留許可証(TRC)を取得することも可能である。
なお、ビザ取得に関するルールを定めた外国人の出入国・乗継及び居住に関する法律(法律第47/2014/QH13号、法律51/2019/QH14号により一部改正)は、2023年6月24日に改正され(法律23/2023/QH15号)、同年8月15日から施行された。この2023年の法改正により、日本など13か国を対象とした外国人旅行者のノービザでの滞在期間が15日から45日に拡大されたほか、日本など80か国を対象とした電子ビザ(E-Visa)の有効期限が30日から90日に延長された。又、電子ビザを発給された外国人は、有効期間内であれば回数制限なく出入国できる。この改正により、専門家、管理者、業務執行役員、技術者が1回の勤務期間が30日未満で年間3回以下の条件でベトナムで勤務する際は、ノービザでの滞在が可能となった。
ビザ
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ビザの種類
最大5年間のビザが設けられており、組織や役職に応じ種類が多くあるため、大使館等への問い合わせをして適切なビザを確認することが好ましい。
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取得要件
取得要件
各ビザに応じ、改正入管法に規定された書面の提出が必要となる。
手続き等
ビザ取得のためには、会社から出入国管理局への書面提出が必要となる。ベトナム法人発行の労働者の招聘状をはじめ、指定書面の必要書類はビザの種類に応じ異なるが、一般的には、①書面による通知、②認可機関による招へい元組織の設立の許可又は決定に関する原文証明写し、③代表者署名付きの会社印登録書が要求される。
2026年7月1日より、会社は以下の3つの方法で入国管理局に書類を提出できる:直接提出、郵送、又は電子環境11ビザ申請受理後5営業日以内に、入国管理局はビザ発給の可否を審査し、招へい元企業に回答を通知するとともに、ベトナムの海外ビザ発給機関に通知する。
入国管理局から書面による回答を受け取った後、招へい元企業は、ベトナムの海外ビザ発給機関でビザを受け取る手続きに従うよう、外国人に通知しなければならない。 -
違反の影響
違反の内容に応じて、罰金が科される。(例:労働者が許可なくビザ発給の際に承認されたものと異なる活動を行った場合には2,000万~2,500万ドンの罰金が科される。)
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一時在留許可証(Temporary Residence Card(TRC))
外国人労働者の一年を超える滞在の場合には、ビザの代わりに、一時在留許可証を申請することも可能である。対象は上記ビザの表ではLV1、LV2、PV1、LS、ĐT1、ĐT2、ĐT3、NN1、NN2、DH、LĐ1、LĐ2、TT(その他にUĐ1、UĐ2)に該当する者であり、許可される期間は種類により異なる。各発給条件はビザと類似しており、有効期間は1年から最長で10年である。但し、一時在留許可証の有効期間は、パスポート有効期間や以下でみる労働許可証の期限に応じることとなるため通常は実質最長2年となる。
労働許可証
雇用に先立ち、会社は中央直轄市・省人民委員会へ報告し、労働許可証を取得しなければならず、違反すると外国人労働者が国外退去となる可能性があるため注意が必要である。
労働許可証の期限は、雇用契約内での期限にもよるが最長で2年を超えない。更新は可能だがこの場合も最長2年間となる。
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種類
職種により3種類に分けられる。即ち、①代表者又は管理職、②各分野の専門家・専門職、及び③技術労働者である。いずれについても当該資格についての職務・勤務経験等が必要となり、専門家についてはその専門性立証のための学位取得証明書を求められる。従来、外国からベトナムに派遣される専門家・技術労働者の要件の1つとして、当該者の高等教育・専攻分野がベトナムでの職務内容と関連性を有することを求めていた(Decree 152/2020/ND-CP第3条3項及び6項)。しかし、以前の政令(70/2023/ND-CP)は、この関連性の要件を削除した(Decree 70/2023/ND-CP第1条1項(a)及び(c))。当該要件はDecree No. 219/2025/ND-CP下でも引き続き任意の内容となっている。これにより、外国企業がベトナムに専門家または技術者を派遣する際のハードルが大幅に緩和されることになった。
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発給要件と手続き
ベトナム人労働者では事業上のニーズに対応できない管理職、経営職、専門家及び技術労働者の職位に限り、外国人労働者を雇用することができる(労働法第152条1項)。前述のとおり、会社は労働許可申請書類提出の少なくとも5日前に、該当の職位に関するベトナム人労働者の募集情報を掲示しなければならない。その後、会社は、労働者の勤務開始の少なくとも10日前ただし60日を超えない期間までに就労予定地を管轄する内務省(DOHA)に対し、申請を行う。
一般的には下記の書類が必要となる。
- 参照 必要書類の一例
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- 外国人労働者需要説明書及び労働許可証申請書(指定形式)
- 健康証明書
- 無犯罪証明書(犯罪経歴がないことの証明書)
- 労働者が管理者、最高経営責任者(CEO)、専門家又は技術労働者であることを証明する書類
- パスポートのコピー、写真
- 外国人労働者の就労形態を証明する書類(例:外国人労働者が、経済・社会分野に関する契約又はベトナムにおける業務パッケージもしくはプロジェクトの履行に関する契約・合意に基づいてベトナムへ渡航する場合には、当該外国人労働者を派遣する旨を記載した雇用者からの書面及び署名入り契約書又は合意書)
- その他適宜指定される書類
さらに、外国人労働者の使用の際、使用予定日の30日以上前にて労働傷病兵社会省(MOLISA)又は省レベル人民委員会委員長に対し採用計画を提出する義務がDecree 219/2025/ND-CPにより廃止された点につき、注意が必要である。
労働許可証の発給を受けた後、会社は労働者(労働契約に基づく外国人労働者の場合)との間で書面による労働契約を締結する。労働契約は就労予定の前までになされなければならない。又、労働契約締結後、会社は、提出を求められた場合には、DOHAへ労働契約のコピーを提出しなければならないとされている。
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不要となる場合
発給が不要となるのは以下の場合である(労働法154条、Decree No. 219/2025/ND-CP 7条)。
- 参照 労働許可証が不要となる外国人労働者
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労働法第154条、Decree No. 219/2025/ND-CP抄訳は、以下を含む:
- ①出資額が30億ドン以上の有限責任会社の所有者又は出資社員
- ②出資額が30億ドン以上の株式会社の取締役会の会長及び構成員
- ③国際組織若しくはNGOの在ベトナムの駐在所所長又はプロジェクトの代表者
- ④販売活動目的で入国し、ベトナムに滞在する期間が3カ月未満の者
- ⑤現在ベトナムにいるベトナムの専門家や外国人専門家では解決できない生産活動や事業活動に影響を与えるおそれのある複雑な技術上の問題に対処するため、ベトナムに3カ月未満滞在する者
- ⑥ベトナムで弁護士業の免許の発給を受けた外国人弁護士
- ⑦ベトナム社会主義共和国が調印した国際条約で認められる者
- ⑧ベトナム人配偶者を持ち、ベトナムで生活する外国人
- ⑨商業拠点を設立する責任を負う外国人
- ⑩その他政府が定める者
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労働許可が不要となる場合、以下を含む:
- (i)労働許可要件免除証明書の発行対象となる外国人労働者の場合:外国人労働者が労働許可を取得する必要がないカテゴリーに該当するが、 (ii) に該当しない場合、外国人労働者の雇用開始予定日の60日前から10日前までに労働許可要件免除証明書発行申請書類を提出しなければならない。
- (ii)労働許可要件免除証明書の発行対象とならない外国人労働者の場合:雇用者は、外国人労働者がベトナムでの就労を開始する予定日の少なくとも3営業日前までに、労働許可要件免除証明書の発行を担当する当局(DOHA)に通知しなければならない。
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違反の影響
違反については、労働者自身が国外退去となる他、使用者についても罰金(3,000万~7,500万ドン)などが課される(Decree No. 12/2022/ND-CP 第32条4項、5項)。