ケア就業者 関する研究

育児・介護といったケアに対する関心が一層高まる時代を迎えるにあたり、ケアと仕事を両立するための支援の在り方を探ります。

公開日:
2025/08/29
更新日:
2025/08/29

パーソル総合研究所と中央大学は2024年、「労働市場の未来推計2035」として、2035年の労働市場の見通しを発表しました。そこでは、就業者数が現在から300万人以上増加し、7,122万人になると予測しています。
就業者数を推計したことで新たな課題も見えてきました。課題のひとつに、あらゆる就業者を「1人」としてカウントする点があります。就業者を「1人」とカウントすることはわかりやすいものの、それぞれの就業者が様々な属性であり、様々な事情を抱えていることを見過ごしかねません。その一例が、育児や介護と仕事を両立する「ケア就業者」です。ケアに対する関心が一層高まる時代を迎えるにあたり、ケアと仕事を両立するための支援の在り方は一層重要になっていきます。
本研究では、「ケア就業者」を育児のみ行う「育児就業者」、介護のみ行う「介護就業者」、いずれも行う「ダブルケア就業者」と定め、2つの問いを設定しました。

  1. 1 ケア就業者は
    今後増えるのか?
  2. 2 ケア就業者が活躍できる
    職場の在り方とは?
就業者の定義
総務省「労働力調査」の分類に基づき、就業者を「15歳以上の人口のうち、収入を伴う仕事を少しでもした人」と定めています。
ケア(育児・介護)の定義
総務省「就業構造基本調査」の分類に基づき、育児・介護の有無を分類しています。
育児者
小学校就学前の0~6歳の未就学児を対象としたケアを指します。具体的には、「乳幼児の世話や見守り」や「送迎や習い事の相手」などが含まれます。ただし、孫やおい・めい、弟妹の世話などは含みません。
介護者
日常生活における入浴、着替え、トイレ、食事などの際に何らかの手助けをする場合を指します。介護保険制度で要介護認定を受けていない人や、自宅外にいる家族の介護も含まれますが、病気などで一時的に寝ている人に対する介護は含みません。
ダブルケアの定義
上記、育児・介護の定義に基づき、以下のように分類しています。
ダブルケア
育児と介護のいずれも行っているケース
1

ケア就業者は今後 増えるのか?

2035年の就業者数7,122万人を前提条件として、
ケア就業者(育児就業者、介護就業者、ダブルケア就業者)の人数をそれぞれ推計しました。

育児就業者の人数

育児就業者の人数は、2035年で844万人。2022年比で4.6%増の見込み。

育児就業者数の実績・予測

出所:2022年以前の実績値は総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」を基に算出、2035年の予測値は本推計結果

性年代別 育児就業者の人数

2022年と2035年の性年代別育児就業者数は、
男女ともに40代以外のすべての年代で増える見込み。

この背景には、男性は育児参加の増加、女性は労働力率(労働参加率)の増加があると考えられます。
なお、40代の育児就業者数の減少は、40代人口の減少傾向によるものと考えられます。
(傾向の詳細は「ケア就業者に関する研究 報告書」をご参照ください)

性年代別 育児就業者数の実績・予測

出所:2022年以前の実績値は総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」を基に算出、2035年の予測値は本推計結果

介護就業者の人数

介護就業者の人数は、2035年で420万人。2022年比で20.4%増の見込み。

介護就業者数の実績・予測

出所:2022年以前の実績値は総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」を基に算出、2035年の予測値は本推計結果

性年代別 介護就業者の人数

2022年と2035年の性年代別介護就業者数は、
男性では60代・70代以上、女性が50代・60代・70代以上で増える見込み。

この背景には、人口動態における高齢化の進行や、全般的な労働力率の上昇があると考えられます。

性年代別 介護就業者数の実績・予測

出所:2022年以前の実績値は総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」を基に算出、2035年の予測値は本推計結果

ダブルケア就業者の人数

ダブルケア就業者の人数は、2035年で21.2万人。2022年比で33.8%増の見込み。

ダブルケア就業者の実績・予測

出所:2022年以前の実績値は総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」を基に算出、2035年の予測値は本推計結果

性年代別
ダブルケア就業者の人数

2022年と2035年の性年代別ダブルケア就業者数は、
男女ともにすべての年代で増える見込み。

この要因には、晩婚化や晩産化、高齢化が考えられます。

性年代別 ダブルケア就業者数の実績・予測

出所:2022年以前の実績値は総務省「就業構造基本調査」「労働力調査」を基に算出、2035年の予測値は本推計結果
2

ケア就業者が活躍できる 職場の在り方とは?

ケア就業者を含む、全国20~60代の就業者を対象とした調査結果から、ケア就業者のいる職場の課題と、
課題解決に向けて考えられる要素を探ります。
※本特設サイトでは「ケア就業者に関する研究 報告書」から抜粋したトピックを記載しています。
調査の詳細は報告書をご参照ください。

ケア就業者の
働き方制度の利用率

企業が定めている柔軟な働き方に関する制度の整備率と、
ケア就業者の利用率をそれぞれ見ました。
企業の整備率に対する個人利用率の割合は、平均で20.8%。

これは、柔軟な働き方に関する制度を8割のケア就業者は制度利用が認められているにも関わらず、利用していない状況を意味します。

柔軟な働き方に関する制度の企業整備率、個人利用率(%)

ケア就業者の周囲による
業務フォロー率

育児や介護が理由で、
ケア就業者が周りの従業員に自分の仕事を任せることがある割合は4割弱。

また、柔軟な働き方に関する制度を利用しているケア就業者の方が、「周囲からの業務フォロー率」が高い傾向。

周囲からの業務フォローの
実態(%)

働き方制度制度の利用有無別
業務フォロー率(%)

非ケア就業者の不満

ケア就業者の業務をフォローすることがある非ケア就業者側の意識を見ました。
ケア就業者に不満を抱いている非ケア就業者の割合は4割を超えています。

【非ケア就業者】ケア就業者に対する不満(%)

非ケア就業者が感じる不満内容

ケア就業者への不満あり層となし層で、
「(ケア就業者への)過度な優遇意識」と「就業者の不公平感」の差が見られます。

つまり、ケア就業者への不満と、ケア就業者の特別扱い感の関連が強い傾向。

ケア就業者への不満有無別 過度な優遇意識(%)

ケア就業者への不満有無別 就業者への不公平感(%)

提言

ケア と共に働く 社会の到来 に向けて

将来的なケア就業者数を算出したところ、2035年には現状からおよそ10%増え、1,285万人に達するという予測となりました。これは、性別や年齢問わず、誰にとってもケア就業者になる可能性が高まり、ケア就業者と共に働く可能性が高まる社会の到来を意味します。

こうした中で重要になってくるのは、ケアと仕事を両立するための仕組みづくりです。事実、政策的にも実務的にも、ケア就業者をターゲットとした様々な支援が形作られてきました。しかし、本調査では、制度が導入されていても、5人に4人は利用していないことがわかりました。

この背景には、周囲への仕事のしわ寄せを懸念するケア就業者側の意識が関係していると考えられます。本調査からは、ケア就業者からの業務を肩代わりすることで、約4割の非ケア就業者が不満を抱いており、こうした不満の蓄積が、ケア就業者の制度利用の足かせとなっている可能性がうかがえます。今後は、非ケア就業者の意識により一層目を向け、調整型の上司マネジメントを行っていくことや、柔軟な働き方に関する制度の特別扱い緩和などが重要です。

従来のケアと仕事の両立支援においては、その対象となるケア就業者だけに目を向けた支援が主に模索されてきました。しかし、ケア就業者の活躍を促進するには、その周りにいる非ケア就業者も含めた包括的なアプローチへと転換することが不可欠です。

調査報告書

  • 労働市場の未来推計2035 報告書

    ケア就業者に関する研究 報告書

    本特設サイトに掲載している調査結果を含む、全調査結果や補足情報を掲載した報告書となります。

    詳細を見る
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