ソリューションコラム

なぜ誰も反対していないのに止まるのか ~「プロジェクトの詰まり」を解きほぐす“設計”の話 ⑤~

公開日:

執筆者

 プロダクト&マーケティング本部 プロダクトマネジメント部 プロジェクトマネジメントグループ シニアコンサルタント

プロダクト&マーケティング本部 プロダクトマネジメント部 プロジェクトマネジメントグループ シニアコンサルタント

中村 亜子

なぜ誰も反対していないのに止まるのか ~「プロジェクトの詰まり」を解きほぐす“設計”の話 ⑤~

連載コラム「プロジェクトの詰まり」を解きほぐす“設計”の話 第5回/全6回

DX推進、業務改善、新規事業、研究開発などの部門横断プロジェクトでは、会議で大きな反対が出ないにもかかわらず、なぜか前に進まないことがあります。誰も異論を唱えていない。方向性にも大きな違和感はなさそう。それなのに、次のアクションに移ろうとすると動きが鈍くなる。そのような状況に心当たりはないでしょうか。

  • 会議では「よさそうですね」と言われたのに、実行段階で止まる
  • 確認中のまま、なかなか判断に進まない
  • 関係者は参加しているが、誰が決めるのかが曖昧
  • 合意したはずの内容が、部門内に戻ると揺らぎ始める
  • 誰も反対していないのに、次の一手が決まらない

こうした状況は、当事者意識や巻き込み不足の問題として語られることがあります。もちろん、それらが原因である場合もあります。しかし、もう一段構造的に見ると、役割や責任の設計が曖昧なまま進んでいることがあります。

「会議で反論しなかった人」=「責任を持って判断し進める人」とは限らない

特に部門横断プロジェクトでは、「参加していること」と「責任を持って進めること」は同じではありません(図1)。会議に出る。内容を確認する。判断する。実行する。部門内に展開する。これらは似ているようで、それぞれ異なる役割です。

図1:「参加している」と「責任を持つ」は同じではない

問題が起きやすいのは、特に「確認」と「判断」が混ざっているときです。確認は、情報や前提、影響を確かめること。判断は、複数の選択肢の中から進む方向を決めることです。この二つが曖昧なままだと、

  • 「いったん確認します」
  • 「関係者に聞いてみます」
  • 「もう少し整理します」

という状態が続き、なかなか決定に至りません。さらに、誰が実行し、誰が部門内に展開するのかが決まっていなければ、会議で合意していても現場は動き出せません。

合意はできた。では、その後の役割は明確か?

誰も反対していないのに止まるとき、問題は合意形成そのものではなく、合意の後に必要な役割が見えていないことかもしれません(図2)。誰が確認するのか。誰が判断するのか。誰が実行するのか。そして、誰が周囲に働きかけるのか。関係者を集めるだけでなく、それぞれがどの役割を担うのかを明確にすることが重要です。

図2:止まりやすいのは、確認・判断・実行の間

誰も反対していないのに止まる。その背景には、関係者の意欲や協力の不足ではなく、「誰が確認し、誰が判断し、誰が動くのか」が曖昧なまま進んでいることがあるのかもしれません。

ここまで、プロジェクトで意思決定が進まない理由を出発点に、前提、依存関係、役割と責任という視点から、プロジェクトの詰まりを見てきました。しかし実際のプロジェクトでは、それらを整理しただけでは十分ではありません。変化し続ける環境の中で、前提も関係者も状況も変わっていきます。次回の最終回では、そうした変化に適応しながらプロジェクトを前に進めるための考え方について取り上げます。

執筆者紹介

 プロダクト&マーケティング本部 プロダクトマネジメント部 プロジェクトマネジメントグループ シニアコンサルタント 中村 亜子

プロダクト&マーケティング本部 プロダクトマネジメント部 プロジェクトマネジメントグループ シニアコンサルタント

中村 亜子 Ako Nakamura

大手電機メーカーにて国内外の開発・技術者向けのサービスマニュアル作成や技術研修企画・運営を担当。その後、部品メーカーにてアジア事業の経営企画を中国・香港で経験したのち、2006年よりパーソル総合研究所(旧 富士ゼロックス総合教育研究所)にて人材育成、研修ビジネスに携わる。現在はプロジェクトマネジメント、ビジネスアナリシス領域を中心に主に研究開発、技術者を対象とした人材育成、組織開発のコンサルテーション、コンテンツ開発に携わる。

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