ソリューションコラム

キャリア開発風土醸成へ―管理職の役割と求められる教育【第4回】キャリア面談の目的

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 ラーニング&ディベロップメント本部 L&Dコンサル部 キャリアコンサルティンググループ エグゼクティブコンサルタント

ラーニング&ディベロップメント本部 L&Dコンサル部 キャリアコンサルティンググループ エグゼクティブコンサルタント

小室 銘子

キャリア開発風土醸成へ―管理職の役割と求められる教育【第4回】キャリア面談の目的

連載コラム「キャリア開発風土醸成へ ―管理職の役割と求められる教育」 第4回/全12回

前回は、大企業を中心に導入が進むキャリア面談について、ポジティブにとらえる層が多い反面、「目的が不明確」「できれば実施したくない」といったネガティブな認識をもつ層も約半数存在することをご紹介しました。その分岐点となるのが、キャリア面談の「目的」です。何のために行うのかが曖昧なままでは、上司・部下双方にとって貴重な時間が形骸化しかねません。

そこで今回は、キャリア面談の目的を整理します。なお、ここで提示する内容は一般的に考えられる論点を整理したものであり、自社の制度として適用する際には、自社の人事方針や運用実態を踏まえ、慎重に検討いただくことをおすすめします。

キャリア面談の目的

多くの企業ではキャリア面談を「実施すること」自体が目的化しがちですが、本来は、誰にとってどのような価値を生む場なのかを明確に定義する必要があります。キャリア面談の目的を、①本人、②上司、③組織の3つの視点でとらえ、さらに自社においてどこまでを面談の役割とするのかを設計しておくことが重要です(図表1)。

図表1:キャリア面談の目的(本人・上司・組織の3視点)

① 本人(部下)にとっての目的

本人にとっての目的は、自身のキャリアにおける中長期のありたい姿(キャリアビジョン)を主体的に考える機会を得ることにあります。出発点は自己理解(Will・Can・Must)であり、他者との対話を通じて価値観や強みに気づくことに意義があります。対話を重ねることで、中長期的なありたい姿を言語化し、その実現に向けて取り組むべきことを明確化していきます。さらに、必要な業務機会や育成機会など、実現に向けた支援について相談することも重要な要素です。

ただし、これらを1回の面談で完結させるのは容易ではありません。自己理解やキャリアビジョンがすでに明確な社員であれば、その内容を確認し、実現までの道筋を整えるだけでよい場合もあります。一方で、はじめて上司・部下の関係になった際には、これまでの仕事内容、得意なこと、大切にしていることなどを丁寧に対話していくことで、驚くほど関係構築が進みます。

②上司にとっての目的

上司の目的は、部下一人ひとりを価値観や志向をもつ個人として理解することです。各人のモチベーションや不安、ライフイベントなど仕事の背景を把握すれば、日常の関わり方や支援はより適切になります。キャリア面談は、信頼関係を築き、率直な対話の土台をつくる重要な機会でもあり、安心できる関係が本音や志向を引き出します。

その理解を踏まえ、キャリアビジョン実現に向けたアサインや育成を行い、適切な機会や経験を提供することで、成長と納得感を両立できます。さらに、組織の役割・期待とのすり合わせを通じ、現実的で実行可能な方向性を見出します。

つまり、キャリア面談は部下のためであると同時に、上司のマネジメント品質を高める機会にもなるのです。にもかかわらず、この意義が十分に理解されず、「忙しい中で負担が大きい業務」ととらえられがちなのは惜しい状況です。

③組織にとっての目的

組織にとっての目的は、社員の志向や強みを把握し、人材ポートフォリオの現状を可視化することです。これにより、配置や育成の検討に資する情報が蓄積されます。特に、タレントマネジメントシステムに情報が蓄積されている場合には、組織全体での活用が容易になります。また、新規事業やプロジェクトに向けた人材発掘や、組織課題の把握にもつながります。

一方で、こうした情報を活用する場合には透明性が不可欠であり、どのように活用するのかを実施ガイドなどに明記し、社員に共有することが重要です。

キャリア面談の目的を話す意義

パーソル総合研究所が実施した「キャリア面談に関する調査 2023」によれば、上司が面談の目的を示すことで、部下にはキャリアの明確化、自己理解の深化、成長実感といったポジティブな変化が確認されています(図表2)。

図表2:上司の行動がキャリア面談の結果に与える影響

キャリア面談の目的の言語化は、対話を意味のある内省の機会へ転換する重要な要素であり、本人・上司・組織の価値が重なり合う場です。

そこを目指して、自社で重視する目的を明確にし、それに即した設計と運用を行うことが、人材施策としての実効性を高める鍵となります。

産労総合研究所 『企業と人材』2026年7月号より転載

連載コラム「キャリア開発風土醸成へ ―管理職の役割と求められる教育」 第4回/全12回

執筆者紹介

 ラーニング&ディベロップメント本部 L&Dコンサル部 キャリアコンサルティンググループ エグゼクティブコンサルタント 小室 銘子

ラーニング&ディベロップメント本部 L&Dコンサル部 キャリアコンサルティンググループ エグゼクティブコンサルタント

小室 銘子 Meiko Komuro

大学卒業後、証券会社の営業、商社での企画職、人材派遣会社にて広告、営業、コーディネーター、スタッフ教育、企業向け研修など、人材ビジネスの幅広い分野を経験。管理職として27年間にわたり、マネジメントと人材育成に従事。働く人の成長支援をライフワークとし、アカデミック領域と実務を結び付けたキャリア開発・人材育成の研究に取り組む。2020年4月、キャリア開発支援を担当する部署を新設。キャリアデザイン学修士。

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