ソリューションコラム

キャリア開発風土醸成へ―管理職の役割と求められる教育【第6回】キャリア面談力向上へ研修設計のポイント

公開日:

執筆者

 ラーニング&ディベロップメント本部 L&Dコンサル部 キャリアコンサルティンググループ エグゼクティブコンサルタント

ラーニング&ディベロップメント本部 L&Dコンサル部 キャリアコンサルティンググループ エグゼクティブコンサルタント

小室 銘子

キャリア開発風土醸成へ―管理職の役割と求められる教育【第6回】キャリア面談力向上へ研修設計のポイント

連載コラム「キャリア開発風土醸成へ ―管理職の役割と求められる教育」 第6回/全12回

ここまでキャリア面談について、「What(キャリア面談とは)」、「Why(キャリア面談の目的)」、「How ①(現場での進め方)」を取り上げてきました。今回は「How ②」として、「上司向けのキャリア面談力を向上させるための研修・プログラム設計のポイント」について解説します。

キャリア面談力向上の必要性

キャリア面談力は、いまや管理職に求められる新しいマネジメントスキルの1つといえるでしょう。では、上司向けのキャリア面談研修はどのように設計すればよいのでしょうか。まず重要なのは、研修を通じて受講者にどのような状態になってほしいのか、ゴールを明確にすることです。

例えば、「キャリア面談と評価面談の違いを説明できる」「部下のキャリアビジョンと現在の業務を接続できる」「支援策を一緒に考えられる」といった具体的な到達目標が考えられます。キャリア面談力の向上は一朝一夕で実現できるものではありません。だからこそ、目指す状態を定め、その実現に向けた学習内容や演習を組み込むことが重要です。

一般的な上司向けキャリア面談力向上研修で取り上げたい内容のポイントを以下に示します。

① キャリア開発支援の必要性

現在管理職となっている世代の中には、部下だった頃に「自らキャリアを考えること」が今ほど一般的ではなかった人も少なくありません。そのため、「なぜ上司に部下のキャリア支援が求められているのか」を十分に理解していないケースもあります。

研修の冒頭では、社会や働き方の変化に加え、自社がキャリア形成を重視する理由や人材育成方針について理解を促すことで、上司自身がキャリア支援に前向きに取り組むための動機づけが重要です。

② 自身のキャリアを考える機会

上司自身がキャリアについて考える経験をもつことは非常に有効です。自ら経験したことのない内容を部下に支援することには限界があります。実際に自分自身のキャリアを振り返ってみると、思いのほか簡単には整理できないことに気づきます。こうした体験を通じて、部下がキャリアを考える際の難しさや戸惑いを実感することができます。

また、キャリアを考える際に他者との対話が有効であることを体験する機会も重要です。研修ではグループでインタビューを行い、お互いの強みやこだわり、大切にしている価値観についてフィードバックし合うことで、自分では気づかなかった側面に気づき、自己理解を深めることができます。

1日研修の場合は、午前中は自身のキャリアを考え、午後は部下のキャリア支援に取り組むという構成にすることで学習効果が高まります。

また、キャリア面談を受けた経験のない上司も多いため、キャリアコンサルタントとの面談を実際に体験してみることも有効です。社内外を問わず、自身の話を傾聴してもらい、気づきにつながる問いかけを受ける経験は、キャリア支援の本質を理解するうえで大きな学びとなります。

キャリア面談があっても、管理職は対象外となっている会社もあります。本来は、課長であれば部長とキャリア面談をして、今後のありたい姿を対話しておくことは部門の運営上も有効だと思います。

③ 自社制度・支援策の理解

上司が部下の話を丁寧に聞けたとしても、その後にどのような支援ができるのかを知らなければ、面談は「話して終わり」になってしまいます。

そのため、研修では自社のキャリア支援制度や育成制度についても理解を深めておくことが重要です。社内公募制度、研修制度、資格取得支援、越境学習、副業制度など、自社で活用できる仕組みを整理し、どのような場面で部下に提案できるのかを考えることで、キャリア面談の実効性は高まります。

④ 面談スキルの習得

実際に部下とのキャリア面談の進め方を学ぶために、上司役・部下役・オブザーバー役の3人で行うロールプレイを取り入れる企業も多くあります。ケースは人事が用意したものを使用する方法もあれば、受講者自身が実際の部下とのケースを持ち寄り、より現実的な題材で演習する方法もあります。

ただし、ロールプレイは「実施しただけ」で満足してしまいがちです。本当に重要なのは、その後の振り返りです。それぞれの立場で感じたことを率直に共有することで、多くの学びが得られます。

特に部下役を経験すると、上司の「どのような問いかけが気づきにつながるのか」「どのような関わり方が話しやすさにつながるのか」を実感できます。また、オブザーバーとして参加することで、上司役が気づきにくい癖や改善点を客観的に把握することもできます。

⑤ 多様な部下への支援力の強化

キャリア面談ではさまざまなケースが想定されます。「辞めたいと言われたらどうするか」「年上の部下から『キャリアを考える意味があるのか』と言われたらどうするか」など、面談で困りそうなケースに対して、どのように対話を続けていくのかをグループワークで検討することも有効です。正解があるわけではありませんが、さまざまな対応方法を知ることで支援の引き出しを増やすことができます。

求められる継続的なフォロー

キャリア面談力は一度の研修だけで身につくものではありません。研修後に実際の面談を実施し、振り返りや管理職同士の情報共有、フォローアップ研修などを組み合わせることで定着していきます。キャリア面談力を高めることは、単なる面談スキルの習得ではなく、管理職のマネジメント力そのものを高める取り組みとしてとらえることが重要です。

次回からは、キャリア面談以外のキャリア開発支援について、取り上げます。

産労総合研究所 『企業と人材』2026年9月号より転載

連載コラム「キャリア開発風土醸成へ ―管理職の役割と求められる教育」 第6回/全12回

執筆者紹介

 ラーニング&ディベロップメント本部 L&Dコンサル部 キャリアコンサルティンググループ エグゼクティブコンサルタント 小室 銘子

ラーニング&ディベロップメント本部 L&Dコンサル部 キャリアコンサルティンググループ エグゼクティブコンサルタント

小室 銘子 Meiko Komuro

大学卒業後、証券会社の営業、商社での企画職、人材派遣会社にて広告、営業、コーディネーター、スタッフ教育、企業向け研修など、人材ビジネスの幅広い分野を経験。管理職として27年間にわたり、マネジメントと人材育成に従事。働く人の成長支援をライフワークとし、アカデミック領域と実務を結び付けたキャリア開発・人材育成の研究に取り組む。2020年4月、キャリア開発支援を担当する部署を新設。キャリアデザイン学修士。

オンライン相談のイメージ

CONSULTATION

オンライン個別相談

サービスについて詳しく知りたい、課題解決のヒントが欲しい、
思考整理したい、客観的視点が欲しいなどお気軽にご相談ください。

オンライン個別相談(30分)をする

CONTACT US

お問い合わせ

こちらのフォームからお問い合わせいただけます

お問い合わせフォーム

FOLLOW US

最新情報をチェック!

メルマガ登録・公式SNSフォローで最新情報をお届けします。