調査結果 01
若年就業者の
ウェルビーイングと
学びに関する定量調査
本研究プロジェクトは、若年就業者のウェルビーイングと学びに関して「若年就業者の多様な活躍とウェルビーイング（主観的幸福感）に重要となる資質・能力・適性を明らかにする」「活躍とウェルビーイング（主観的幸福感）のために重要となる仕事経験／大学時代の学び・経験の内容を探る」ことを目的に調査しました。
幸せな活躍状態の定義
若年層の「幸せ（はたらく幸せ実感）」を「私は、はたらくことを通じて、幸せを感じている」などの５項目、「活躍（個人のジョブ・パフォーマンスの高さ）」を「顧客や関係者に任された役割を果たしている」「担当した業務の責任を果たしている」などの５項目で測定。「幸せ」と「活躍」の５項目の平均値を標準化して足し合わせた数値を、「幸せな活躍（活躍していて幸せ）」の度合いとして定義。
図１．幸せな活躍状態の定義
幸せな活躍につながる５つの学び特性
若年層の幸せな活躍とポジティブに関連している５つの学び特性が明らかになった。
図２．５つの基本学び特性
幸せな活躍層の学び実態
幸せな活躍をしている層は、若年層全体と比べて、「学びや学習に前向きにとりくんでいる」人が多い。また、社内勉強会への参加や主催、勤務時間外の研修参加など、業務以外の学習行動も多く実施している。学び方について分析すると、幸せな活躍への影響が最も強いのは、人を巻き込んで学ぶ「ソーシャル・ラーニング」の学びであった。
幸せな活躍層のソーシャル・ラーニングの具体的な行動割合は、全体平均のおよそ２倍。
図３．ソーシャル・ラーニングと幸せな活躍
ソーシャル・エンゲージメントと
ソーシャル・レリバンス
社会の一員として社会課題解決への関心の強さを示す「ソーシャル・エンゲージメント」の高さ、自社での仕事が社会課題解決につながっている実感である「ソーシャル・レリバンス」の高さが、ともに幸せな活躍にプラスの影響を与えている。
図４．幸せな活躍に与える影響
学びのスタイルと学び特性
大学時代の学びのスタイルとの関連を分析すると、自分の考えを深め学びと社会や将来をつなげるなど、学びの意味づけをする「ラーニング・クラフティング」は５つの学び特性すべてに影響しており、学びの意義を考え、意味づけることの重要性を示している。
図５．「学びのスタイル」「学びの特性」の
重回帰分析
まとめ
今回の調査で、幸せに活躍している若者は、社会人になっても主体的な学びの意欲が高いこと、また、積極的に人を巻き込みながら学ぶという「ソーシャル・ラーニング」の学びの特性を持っていることが明らかになりました。
現在、大学や社会人の現場ではコロナ禍によるオンライン化に伴い、学びの個人化が進んでいます。しかし、今回の結果から「個」としての学びだけでなく、「人とともに学ぶ」「周囲の人に意見を聞く」といったことを通じて、学びを社会化できる力を身につけることが若い世代の学びのポイントになるといえそうです。
また近年、企業経営においてSDGsやESG投資が盛んに叫ばれる中で、若い世代の社会課題への関心に注目が集まっています。今回、社会課題への関心の高さや課題解決への効力感を、「ソーシャル・エンゲージメント」という概念で測定したところ、そうした関心が強い若者ほど、幸せに活躍しているということもわかりました。
自身の利益だけを追い求めるのではなく、こうした社会課題への関心を強く持ちながら多くの人とともに学んでいくことが、これからの世代の豊かなキャリアにつながりそうです。
調査概要
| 調査名称 | パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・中原淳「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」 |
|---|---|
| 調査内容 | ①若年就業者の多様な活躍とウェルビーイング（主観的幸福感）に重要となる資質・能力・適性を明らかにする ②活躍とウェルビーイング（主観的幸福感）のために重要となる仕事経験／大学時代の学び・経験の内容を探る |
| 調査手法 | 調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 |
| 調査時期 | 2021年11月5日〜11月8日 |
| 調査 対象者 |
有期雇用を除く25〜35歳の就労者 2000名 ※全国、大卒・院卒 ※業種・職種は不問 25〜29歳男性 25.1％／30〜35歳男性 35.1％ 25〜29歳女性 17.9％／30〜35歳女性 21.3％／性別不明 0.8％ |
| 実施主体 | パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・中原淳（ハタチからの「学びと幸せ」探究ラボ） |
※本調査を引用いただく際は、出所として『パーソル総合研究所・ベネッセ教育総合研究所・中原淳「若年就業者のウェルビーイングと学びに関する定量調査」』と明記してください。