第2回:BtoBフィールドセールスのオンライン化における新たな課題

新型コロナの影響を受け、BtoBの営業も大きく変わろうとしています。

そこで本連載ではシリーズテーマ「テレワーク時代のBtoB営業組織のあり方」として全5回のコラムをお届けいたします。

第2回は、BtoBフィールドセールスのオンライン化における新たな課題について考えていきます。

目次

フィールドセールスが抱えるオンライン営業の具体的な課題とは

昨今の状況により、「顧客と対面で面談できない」という状況に晒され、急遽オンライン面談ツールの選定・導入対応に追われている企業様が多いことと思います。
しかしツール選びの次に来るものとして以下の〝営業対応〟上の課題も存在します。

 

  • 面談自体の物理的ハードルは下がるが、「いつでも止められる」状態となり、面談の目的や価値、ゴールへの意識が高まる。
  • お客様の思考もより合理的になり、準備が足りていないとすぐに〝間〟が持たなくなってしまう。
  • 訪問をしてないことによる〝実感〟の薄れと共に、不意のお客様の参加(立場のわからない、お顔の見えない)などにより、お客様や商談の全体像がつかみ難くなる。
  • お客様はどのような意思決定をされるのか、自分は今商談のどこにいるのか、強い仮説と確認がないと全く前に進めなくなる。

第2回のコラムでは、このような営業対応の課題について考えていきます。

 

第1回でも述べたように、Sales Techの進展と共に営業の機能分業が進み「インサイドセールス」という電話やWebコミュニケーションツールを駆使した、非対面型営業という役割が導入・確立され、一定のノウハウが蓄積されています。

しかしその多くは、「プロダクト型」と呼ばれる〝プロダクト〟や〝キーパーソン〟がはっきりしている比較的〝シンプル〟な営業形態で、商談化したら次工程の「フィールドセールス」に引き渡すという〝発掘・見極め〟を主とするものでした。

そのため若手営業がフィールドセールスになるまでのキャリアとして位置づけられ、ある決められた面談の進め方にのっとって、お客様とどれだけ〝心地良い対話を通じて、次のステップに進められるか〟に焦点がおかれていました。

 

「プロダクト型」の営業形態であれば、オンライン面談が増えたとしても、インサイドセールスの延長線上でスキルアップを図ることができると思います。

 

しかし、今回お話ししたいのは、上記のような「プロダクト型」ではなく、これまで、一見対面型でなければ成り立たないと思われてきた〝売るものが複雑(複合・商談規模が大きな)〟で、〝売り方が複雑(商談スパンが長く、意思決定にかかわる人が多い)〟な「ソリューション型」と言われる高難度な商談(以後「高難度商談」)を〝オンライン〟で展開しなければならない営業担当者についてです。

 

 

solution_sales.png

 

※本稿では「面談」と「商談」の意味を使い分けています。
「面談」:1回の面談
「商談」:≒「案件」成約に向けた一連の営業行為

 

BtoBのオンライン営業では面談の目的や価値が問われる

オンラインですから、当然物理的制約がありません。

従来のように、なかなか進まない商談の様子伺いに「他の部署で用事があってお近くなので寄りました」や「ご挨拶で」といったアプローチはできません。

 

「出席者の調整が楽」「応接室や会議室の確保が不要」などお客様にもメリットがあるため、面談を設定することの物理的ハードルは下がるのですが、その分「来ないならメールでも良いのでは…」など面談の目的や価値により意識が向くようになります。

 

そうなればオフライン時よりも、常にお客様にとっての〝面談の価値〟を考え、準備し、訴求しなければなりません。
当然、面談の冒頭でこの〝価値〟をお客様の関心に沿って効果的に伝え、面談を進めることの合意を得るということにも、これまで以上に集中して取り組む必要があるのです。

BtoBのオンライン営業では面談の流れをコントロールし難くなる

実際にBtoBの高難度商談を「オンライン」で行うと、何となく間をつなぐことに苦労されたり、想定したよりも早く終わってしまったなと感じられたりしているかと思います。

 

対面の場合、アポイントを取る際に(もちろん業態や内容によりますが)特に時間枠を指定しなければ、何となく「最長1時間」という時間をお客様側も想定され、その枠内であれば、ある程度ゆるく時間を使うことが許されます。

 

しかし、オンラインの場合は「すぐ面談を終了する」ことができます。

お客様側も「わざわざ来てくれたのだから」という心理が働かず、「用件が済めば、面談を早めに切り上げてもよいのでは」という雰囲気が漂い、本来聞きたかった周辺情報や確認事項などが聞けずに面談を終了してしまうこともあります。

 

このような状況下で必要なことは、「本物の面談スキル」と「個々の面談に対する徹底した準備」です。

 

「本物の面談スキル」とは、最初から決まった面談の手順をその通り進めるのではなく、どのように展開するかわからない面談の流れの中でニーズを的確につかみ、情報を提供し、適切な合意を得るスキルです。

 

加えて、どのように展開するかわからない状況に備えて話の展開の可能性(分岐点)をできる限り想像し、それに対応した情報の準備や、それぞれの展開における適切な合意内容(良い合意や最低限許容できる合意)を具体的に描いておかなければなりません。それが「徹底した準備」です。

 

BtoBのオンライン営業ではお客様の全対象がつかみ難くなる

 

BtoBにおける高難度商談では、当然のことながら多くの意思決定者が存在します。それぞれに担う役割や影響力が異なり、かつ関係者の合議で物事が決定していきます。

 

もちろんこうした意思決定者に関する情報の整理はオンラインでなくても重要ですが、オンラインならではの難しさは、意思決定にかかわる対象者の全体像や関係者間の力関係といった人間的な側面を含めた情報を感じ取る機会が圧倒的に減ってしまうことにあります。

 

対面の場合は商談ステージに応じて必要な意思決定者が参加しますが、オンライン面談には比較的参加しやすくなるので、こちらが予期しない段階で参加者が増えていたりします。

さらに「話を聞くだけ」の参加で発言もしなければ、顔も映さないということもあります。

 

その場合、オフラインでは自然に読み取れていたお客様に関わる情報を、十分に得ることができず面談を終えてしまいがちです。しかもこちらが情報を得ないまま、お客様側からはしっかりこちら側が〝評価〟されていたりします。

 

またオンラインの場合、営業担当者が〝わざわざ来る〟わけではないので、〝同席を依頼していた人〟が安易にキャンセルされたりします。

このように、オンラインでは参加者のコントロールが難しくなるのです。

オンライン化した「フィールドセールス」に起こる変化に対応しよう

こういった状況下では、営業担当自身が、今まで以上に意思決定に関わる決裁ルート、人の役割、影響度、ものの考え方やお客様内での関係性の整理や攻略方法についての仮説を持ち、常に感度を高めておかなければなりません。

 

そして、「商談」全体を通して、成約に向けてどのように進めることが〝最短〟で〝最適〟になるのかという綿密な〝シナリオ〟を考え、そのシナリオ通りに進んでいるかのチェックと見直しを繰り返していかなければなりません。

 

以上、オンライン面談と商談に関するフィールドセールスを取り巻く課題を挙げてきましたが、最も重要なことは「オンライン面談」は現在の緊急避難的なものから、ある程度スタンダードな営業活動として定着してくると想定されることです。

 

オンライン化により、面談における物理的・心情的要素が取り除かれ、お客様の意思決定にかかわるスピードや合理性も加速します。

そのスピードに対応できる営業組織や営業担当者が出てくる以上、売り手と買い手双方にメリットが発生し、新たなスタンダードとなる不可逆的な変化をもたらします。

こうした変化に対応できず〝退場〟を余儀なくされるような事態を避けるためにも、変化への「感度」を高め「準備」をし、着実に営業活動の中で「実践」していくことが求められています。

次回は、第3回「One on Oneでの商談確認の限界」オンライン環境での商談管理を掲載いたします

全5回コラム一覧

執筆者紹介

河村 亨

株式会社パーソル総合研究所 シニアコンサルタント

河村 亨

Toru Kawamura

1990年、機械商社を経て(株)富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソル総合研究所)に入社。営業・営業マネジメントを経て、SFAの現場定着や戦略実行をテーマとした営業マネジメント力強化コンサルティングに従事。「自ら考え戦略的に動く営業集団をつくる 3つのフレームワーク」、「Sales Enablement アカウント型BtoB営業における営業力強化」などを執筆。セールスフォース社との「訪問しない時代の営業力強化の教科書」を共著。

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